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磁気形近接センサ(定格と性能)

磁気形近接センサ(定格と性能)

磁気形近接スイッチの定格及び性能を規定している規格では、既述のNECA規格リードスイッチ形近接スイッチがある。

磁気形近接スイッチの定格と性能は使用する動作原理、すなわち検出素子によって大きく左右され、実際に開発されている製品も製造業者によって差異がある。

1. 定格

(1) 動作距離

定格動作距離は、近接スイッチの検出面から標準検出体(製造業者の定める、磁性金属または永久磁石)までの距離の規定値である。溝形の近接スイッチの場合は、その表示方法が異なる。

磁性金属を検出する一体形の近接スイッチの動作距離は分離形に比べて一般に短くなる。リードスイッチ形で、3~20mm程度、固体磁気素子形ではさらに短くなり2~5mmとなる。誘導形近接スイッチと同じ程度である。

永久磁石を検出する分離形の場合には、リードスイッチ形で、10~100mm程度と比較的長距離となっている。固体磁気素子形では、2~10mm程度と短くなる。

(2) 開閉容量

リードスイッチ形は有接点出力であり、開閉容量は内蔵するリードスイッチによって決定される。リードスイッチの定格には直流定格と交流定格があり、それぞれ「W」、「VA」で規定されているとともに最大電圧、 電流がさらに規定されていて、定格電力以内であっても最大電圧、電流を超えて使用することはできない。

定格使用電流で最大1Aまで、電圧は最大AC200V、DC100Vまで規定されている。開閉容量としては2~100VAまたはWとなっている。

固体磁気素子形は、出力素子として半導体スイッチング素子が使用されている。誘導形近接スイッチと同じ形態が考えられ、一般に直流3線式では、定格使用電流は200mA以下である。

(3) 出力の寿命

リードスイッチ形では、接点の寿命について規定されている。最大1億回まで規定されている。

電気的寿命は、表8にある判定基準により規定される。表中の接点の接触抵抗については、初期値として500mΩ以下となっている。

(4) 開閉頻度

開閉頻度は、基準の検出体を所定の位置(間隔)で取付けた円盤を回転させ、出力部有効開閉時間 t 1 及び t 2 を測定し規定する。リードスイッチ形では接点のバウンス時間を差し引く。

リードスイッチ形で、最大400Hz、固定磁気素子形で1kHz程度になっている。

(5) 耐振動、耐衝撃

磁気形近接スイッチは、内部にエポキシ樹脂などを充填してあるので、比較的に強い。

耐久振動は、10~55Hz、複振幅1.5mmをX、Y、Z各方向に2時間加える試験を行っている近接スイッチが多い。リードスイッチタイプではリードスイッチ自体の共振点があるため注意する必要がある。 共振点は一般に1,000~3,000Hz程度でリードスイッチの種類構造によって異なる。

(6) 絶縁抵抗・耐電圧

絶縁抵抗は、20MΩ以上となっており、実際には、50MΩ、100MΩ以上の近接スイッチが多い。

耐電圧については、リード線とケース間、リードスイッチ形の接点間耐電圧を規定したものがある。リードスイッチの接点間耐電圧はDC250V以上が一般的である。

2. 性能

磁気形近接スイッチは、誘導形近接スイッチとほぼ同様な性能をもっているが一部特殊な性能もあるため、主な性能について述べる。

(1) 動作距離

動作領域は、一体形、分離形及び溝形で表わし方が異なっている。

一体形では標準検出体を使用し、図27に示すように、検出面に水平な方向に移動し、動作する点aの位置をさまざまな距離において求めプロットしたものである。 リードスイッチを使用した一体形においては、リードスイッチの短軸方向と長軸方向とでは、一般的に動作領域に差異がある。

分離形のリードスイッチ形においては、リードスイッチの短軸と長軸方向や永久磁石の向きによって、図28に示すようにさまざまな動作領域を持つ。

(2) 検出体の大きさ

磁気形近接スイッチの動作距離はそれぞれの機種に応じて、標準検出体及び磁石が定められている。検出体の大きさ特性は標準検出体の大きさを変化させた場合の動作点、 復帰点の変化を測定したもので、一般に検出体が大きくなると動作距離は長くなる。

(3) 磁気吸引力

磁気形近接スイッチでは何らかの形で必ず永久磁石を使用する。永久磁石を使用すると鉄粉、切粉などを吸引する。 この吸引力は動作距離を長くしたり、リードスイッチ形では開閉容量を大きくしたりすると磁束を強くする必要があるため大きくなる。

(4) 周囲金属の影響

磁気形近接スイッチを磁性金属板に取付けたり、周囲に近接して検出体以外の磁性金属があると動作距離は影響を受ける。 図29にリードスイッチ形で鉄板に取付けた場合の動作距離の変化を示す。鉄板の影響を受け動作距離は短くなっている。 一般的に一体形では動作距離が長くなり、分離形では動作距離が短くなる傾向を示す。この値は製品によって異なるので注意が必要である。

以上、主な性能について説明したが、この他にも動作距離の応差の値、温度特性、固体磁気検出素子を使用した近接スイッチでは、電圧特性などが上げられる。 応差の値については、リードスイッチ形では100%まで規定されており、一般に応差は誘導形近接スイッチに比べて大き目である。

出典 : 社団法人 日本電気制御機器工業会「制御機器の基礎知識-選び方・使い方-センサ編」 2001年7月

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