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センサの上手な使い方

5. 故障原因とその対策

(1) 初期不良

近接スイッチなど半導体主体のセンサは、半導体同様、初期不良に起因する不良発生が見られる。初期不良の原因は、主として回路中の半導体が製造中に受けた種々のストレスにより使用開始後、 短期間の内に破損に至るものであり、半導体より率は低いが抵抗、コンデンサにも初期不良の発生がみられる。初期不良の発生期間は、製造ロットにより異なるので一概に何時間ときめることはできないが、1週間から10日以内に発生することが多い。

(2) 偶発故障

半導体部品の劣化による故障、抵抗、コンデンサの断線、短絡、容量抜け、プリント基板のパターン切れ、ハンダ付けの不良などにより発生するが、一般にその発生率はきわめて低い。近接スイッチの故障が多発する場合は、 使用環境に問題があることが考えられるので、メーカに相談することが望ましい。

(3) 負荷短絡と誤配線

誤配線や活線作業により、負荷の短絡があるとセンサに大電流が流れ、出力回路を焼損する可能性が強い。

1)直流開閉出力[図20の (a)、(b)、(c)、(d)]

負荷または出力端子の短絡に対しては、(a)及び(c)の場合、短絡電流 I は大電流となり、トランジスタを焼損する。(b)及び(d)の場合、短絡電流 I は負荷を通して流れるので、 電流値は定格負荷電流に等しく、センサが損傷を受けることはない。短絡保護対策としてセンサ外で行う方法としては、速断ヒューズで短絡電流を遮断する方法があるが、 センサ内の出力トランジスタの容量に余裕が少ないため100%の効果は望めない。速断ヒューズは、図21に示すように出力端子側に入れること。負荷の電源側に入れたときは、 センサのリード線側で短絡が起きると保護できない。速断ヒューズの容量は定格負荷電流値の2倍以上で、かつセンサの定格出力電流値以内で、 通常の使用時にヒューズが切れない値でなければならない。このようにヒューズの選定がむずかしい上に短絡時に短時間ではあるが大電流が流れるので、出力トランジスタを保護できないこともある。

2)2線式出力形

交流2線式出力形は図22に示すような回路となっている。

短絡場所は同図(a)の負荷そのものの短絡と、同図(b)のようなセンサ側での短絡が考えられる。(a)の場合、センサ内部回路を通じて、大電流が流れ、内部のダイオードやサイリスタを焼損する。 交流開閉出力形はAC100~200Vの高電圧で使用されるため、短絡電流の値も大きく短絡保護は最も困難である。(b)の場合、短絡電流は負荷を通して流れるので、その値は定格負荷電流値に等しくセンサは何の影響も受けない。  ヒューズによる保護を行う場合、ヒューズの入れ場所は図23に示す場所に入れると、負荷短絡の他に地絡に対しても保護作用がある。直流2線式出力形についても交流2線式出力形と同様である。

(4) ノイズによる破損

「ノイズ対策」項で解説したように電気回路、特にパワー開閉部にはノイズが付きものであるから、ノイズによる影響を受けないよう対策する必要がある。ノイズによる破損はゆっくり進行するため、 使用開始後、1ヶ月ないし、2、3ヶ月経過してから発生するのが普通であるから、この時期に破損が発生したらノイズによる破損を疑ってみることである。 また、誘導負荷が開閉される度にセンサが瞬間誤動作をする場合はノイズによる誤動作であるから、「ノイズ対策」に解説してあるノイズ対策をほどこす必要がある。

(5) 電源

電源電圧が定格値を超えた場合、センサは表面上正常な動作を続けることが多いが、内部の発熱が増大し、半導体やコンデンサに印加される電圧も高くなるので、寿命は著しく短縮する。 電源電圧が定格値を下まわる場合は、正常に動作しなくなる。センサに供給する電源電圧の許容範囲はカタログなどに記載されているから、その値からはずれることのないよう注意すべきである。 電源電圧が変動する場合は安定化電源装置を使用し電圧を安定させる必要がある。

DC電源には、絶縁トランスを用いた回路を使用する。オートトランス(単巻トランス)や一方が接地された蓄電池は、図24の破線のようなまわり回路を形成し危険でありセンサの破損の原因になる。

使用電源には、ノイズ・サージの少ないものを用い、ソレノイド、コンタクタおよびブザーのようなノイズ発生源に対しては、ノイズ吸収対策を施す。最近多く利用されているスイッチングレギュレータ方式の定電圧電源には、 パルス性のノイズを発生するものもあり、動作が不安定になることがある。さらに、シリーズレギュレータ方式の定電圧電源にあっては、センサの出力で、リレーを駆動している場合、リレーのサージ吸収が完全でないと、 定電圧電源の出力電圧が大きく変動するものもあり動作が不安定になることがある。このときセンサは、絶縁して取付け、レギュレータの2次側の0Vを接地すれば、安定になる場合がある。

制御内蔵形のものには、ノイズ対策のために、大容量コンデンサが内蔵されているので、定電圧電源の電源投入時に過電流が流れ、過電流保護が動作することがあるので、多数並列使用する場合注意を要する。

金属ケースのものには、ノイズ・サージの影響を避けるために、電気回路の0Vとケースを直接接続(ケースアース)、コンデンサにより接続、非接続している3種がある。これらはカタログなどに明記されているから注意を要する。 接地されていないものでも小さく作られているので耐電圧試験、絶縁抵抗試験を避ける。接地されているものは、なるべく、周囲金属から絶縁した取付けを行う。

センサの0Vラインがケースに接地されているもので、制御部・電源部の接地端子を接地すると、工事の際に溶接などを行う場合、0Vラインの破損などの事故が発生することがあるので、工事の時は、接地線をはずすなどの注意が必要である。 また、アースの位相の関係で動作が不安定になることがある。

<図24 ノイズサージとケースアース>

(6) 電源投入時の動作

電源電圧のスイッチオンとセンサが正しく動作する準備が整うまでの時間差があり、電源投入時の誤動作時間、電源リセット時間、電源遅延時間、使用可能になるまでの遅れ時間などと呼ばれて(弊社では電源リセット時間と呼んでいる。) 内部にその防止回路が組込まれているものもある。この時間の間は、入力に相対した出力信号が得られないが、電源投入時の瞬間の誤動作を防止している。この時間は機種により差がある。この時間を逆利用することは避けるべきである。例えば、電源のオン、オフで同期をとることなど。

出典 : 社団法人 日本電気制御機器工業会「制御機器の基礎知識-選び方・使い方-センサ編」 2001年7月

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一部誤記修正しています。