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共通編 近接スイッチとは

2. 用語の定義

JIS規格で定義されている用語の定義を基本定義、要素・動作ごとの定義、開閉素子特性、端子及びリード線色に分けて示す。

(1) 基本定義

表5に近接スイッチの要素の定義を示す。

<表4 近接スイッチの基本用語の定義>
用語 定義
近接スイッチ 可動部による機械的接触なしに動作する位置検出用スイッチ
誘導形近接スイッチ 半導体開閉素子を備え、検出領域内に磁界を発生させる近接スイッチ
静電容量形近接スイッチ 半導体開閉素子を備え、検出領域内に電界を発生させる近接スイッチ
超音波形近接スイッチ 半導体開閉素子を備え、検出領域内で超音波を送・受波する近接スイッチ
光電形近接スイッチ 半導体開閉素子を備え、可視、不可視光線の反射または遮光のいずれかにより物体を検出する近接スイッチ
磁気形近接スイッチ 半導体開閉素子を備え、磁気検出素子と磁石(静磁界)の組み合わせにより、検出体が接近したときの磁束変化を利用して検出する近接スイッチ

(引用 JISC 8201-5-2:1999 注:磁気形近接スイッチは除く)

(2) 近接スイッチの要素

表4に近接スイッチの基本用語の定義を示す。

<表5 近接スイッチの要素の定義>
用語 定義
半導体開閉素子 半導体の誘電率を制御することにより、電気回路の電流を切り換えるよう設計された素子
基準軸 誘導形、静電容量形、超音波形近接スイッチの基準軸ー検出面に垂直で、その中心を通る軸
リクレクタ形(R)と反射形(D)の光電形近接スイッチの基準軸 投光と受光の素子またはレンズの光軸の中心にある軸
透過形(T)光電形近接スイッチの基準軸 投光器の中心に垂直な軸
標準検出物体 動作距離と検出距離の比較測定のために使われる定められた物体
フリーゾーン 近接スイッチの特性に影響を与える物体の全くない近接スイッチの周囲の領域
感応物質 近接スイッチの特性に影響を与える物質
不感応物質 近接スイッチの特性に影響を与えない物質
音響反射物 超音波を反射し、検出可能な反響をする物質
吸音材 超音波に対し、ほんのわずかの反射特性を持ち、検出に影響する反響をしない物質
埋め込み形近接スイッチ 検出面の平面周囲に感応物質を置いても特性に影響を受けない近接スイッチ
誘導形近接スイッチの検出面 磁界が発生する近接スイッチの表面
静電容量形近接スイッチの検出面 電界が発生する近接スイッチの表面
超音波形の近接スイッチの検出面 超音波を送・受波する近接スイッチの表面
投光器 光ビームを供給する光源、レンズおよび必要な回路
受光器 投光器から与えられた光ビームを感知するための検出素子、レンズ及び必要な回路
リフレクタ リフレクタ(R)形の光電近接スイッチにおいて、光を受光器に戻すために使われる部品
静電容量形近接スイッチの調整器 動作距離を調整するための静電容量形近接スイッチの一部。
これを調整することにより、検出体の材質、媒体の材質及び設置条件による影響を補正できる。
超音波形近接スイッチまたは、
光電形近接スイッチの調整器
動作距離を検出範囲に調整するための超音波形近接スイッチまたは、光電スイッチの一部

(3) 近接スイッチの動作

表6に近接スイッチの動作の定義を示す。

<表6 近接スイッチの動作の定義>
用語 定義
動作距離(S) 基準軸に沿って検出体が検出面に近接し出力が反転する距離
定格動作距離(Sn) 動作距離を定めるための規定値。この数値には電圧・温度などの外部条件及び製造公差の変化を考慮していない
検出範囲(Sd) 動作距離を調整できる範囲(不感帯を除く)
最小動作距離 超音波又は、光電形スイッチ特有の検出範囲の下限値
最大動作距離 超音波又は、光電形スイッチ特有の検出範囲の上限値
不感帯 検出面と最小動作距離の間で、検出体を検出できない部分
全ビーム角度 超音波形近接スイッチにおいて基準軸の周りの立体角をいい、そこでは音響レベルが3dB低下する。
実効動作距離(Sr) 個々の近接スイッチで一定の温度、電圧及び取付条件の下で測定した動作距離
有効動作距離(Su) 個々の近接スイッチで特定の条件で測定した動作距離
保証動作距離(Sa) 検出面からの距離をいい、この距離以内の特定条件での正しい動作が保証される
横方向近接 基準軸に垂直な状態で検出物体が接近する検出方法
縦方向近接 基準軸の中心を維持した状態で検出物体が接近する検出方法
繰り返し精度(R) 指定された状態での実効動作距離(Sr)の変動値
応差(H) 検出体が近接スイッチに近接したときの動作点と、検出体が離れていくときの復帰点との間の距離

(4) 開閉素子特性

表7に近接スイッチの開閉素子特性に関する用語の定義を示す。

<表7 近接スイッチの開閉素子特性に関する用語の定義>
用語 定義
メイク機能 検出体が検出されたときに負荷電流を流し、検出体が検出されないときに負荷電流を流さない機能
ブレイク機能 検出体が検出されたときに負荷電流を流さず、検出体が検出されないときに負荷電流を流す機能
メイクーブレイク(切換え)機能 一つのメイク機能と一つのブレイク機能を持つ開閉素子の組み合わせ
近接スイッチの応答時間 検出体が検出領域に入る、または出た後、開閉素子が応答するのに必要な時間
光電形近接スイッチのターンオン時間 検出体が余裕利得2(光電スイッチの余裕利得参照)の検出範囲に入った後、開閉素子が応答するのに必要な時間
光電形近接スイッチのターンオフ時間 検出体が余裕利得0.5(光電スイッチの余裕利得参照)の検出範囲に入った後、開閉素子が応答するのに必要な時間
スナッブアクション 検出体の速度に影響されないで確実に開閉を行う機能
動作サイクル周波数(f) 特定期間に近接スイッチが行った動作サイクル数
使用可能になるまでの遅れ時間(tv) 電源電圧のスイッチオンと近接スイッチが正しく動作する準備が整うまでの時間差
オフ状態電流(Ir) オフ状態で、近接スイッチの負荷回路を流れる電流
最小使用電流(Im) 開閉素子のオン状態の通電を維持するのに必要な電流
無負荷電流(Io) 負荷が接続されていないときに、3または4線式の近接スイッチに電源から供給される電流
光電形近接スイッチの余裕利得 光電形近接スイッチが受けた光と光電形近接スイッチが動作するのに必要な光との比率
光電形近接スイッチの周囲光 周囲光とは、投光器から発する光以外の、受光器が受ける光

(5) 端子及びリード線色

表8に近接スイッチの端子及びリード線色の定義を示す。なお、緑/黄のストライプは保護導線を識別するためだけに使用される。歴史的背景もあり、緑色は保護接地導体を識別する目的以外に使用してはならない。

<表8 近接スイッチの端子及びリード線色の定義>

出典 : 社団法人 日本電気制御機器工業会「制御機器の基礎知識-選び方・使い方-センサ編」 2001年7月

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一部誤記修正しています。