定格使用電圧は交流の場合はAC100/110VあるいはAC200/220V、直流の場合はDC12V、DC24Vが多く使用されるが、使用電圧範囲はAC90~250V、DC10~30Vなどのように広範囲となり、使用電圧の共用化がみられる。 これは生産管理、販売管理、流通、在庫管理などの面で、メリットが大きい。ユーザにおいても直流、交流のみ区別しておけばあとの細かい電圧仕様はほとんど考慮する必要がない。
誘導形近接スイッチは金属しか検出しないが、静電容量形近接スイッチの場合は金属のような導体はもちろん、水、ガラス、陶器、木材、油、プラスチックなどほとんどの物体を検出することができる。 しかし前項(■ 原理と構造 1.動作原理)で述べたとおり、検出体の材質、大きさ、厚さなどにより動作距離が異なる。定格動作距離とは、その近接スイッチの検出感度の能力を示すもので、定められた使用条件の範囲で許される最高感度を、 標準検出体の動作距離で表したものである。したがってこの定格動作距離以上の感度で使用すると、温度変化などにより検出体に無関係に検出状態(復帰不良)になる。ただし、あくまでも標準検出体での所定の使用条件全範囲でのことであり、 実際にはもっと良好な検出であるとか、使用条件、特に温度範囲が狭い場合にはもっと高い感度で使用できるので、取扱説明書に従って有効に使用すべきである。定格動作距離は、円柱形では径φ30mm程度のもので15~20mm、 φ34mmのもので20~25mmであり、平置形の長距離タイプでは30~75mm程度である。
静電容量形近接スイッチは種々の材質を検出し得るので、標準検出体も種々の材質が考えられるが、周囲温度、周囲湿度、含水状態、材料のバラツキなどの影響を受けず、容易に入手できるということで金属体が望ましい。 また、金属体の場合でも非接地のままでは周囲物体の影響を受けやすく、確実に測定しにくいので接地する方が良い。このような理由から静電容量形近接スイッチの場合には、標準検出体は所定の大きさの接地された金属体が適している。 検出体の大きさと検出距離特性の代表例を図16に示す。
応差は適度にもたせる必要があるが、通常、応差の大きさは動作距離の3~15%程度に設定してある。
交流2線式の場合で最大200mA、直流3線式で最大50~200mA程度である。直流3線式では問題にはならないが、交流2線式の場合にはオフ状態電流(弊社では漏れ電流と呼んでいる。)というものがあるので最小使用電流にも注意する必要がある。
検出体を繰り返し接近させたとき、これに追従して所定の出力が得られる毎秒時の繰り返し回数をいう。開閉頻度は速い方がよいが、基本的に発振の開始、停止に一定の時間を要すること、 あるいは検波回路のノイズマージンを上げるために時間遅れをもたせていることなどにより、直流3線式では70~100Hz、交流2線式では電源周波数の影響より10~20Hz程度に制限される。
構成材料あるいは電子部品の使用温度範囲などにより、最低温度は−25℃、最高温度は+70℃の範囲が使用可能な温度範囲である。静電容量形近接スイッチにおいては、 検出ヘッドに霜がついたり結露したりすると、検出距離に影響を与えるので氷点下での使用には十分な注意が必要である。
静電容量形近接スイッチの場合には、水に対して高い感度をもっていることから、水中で、あるいは常時水がかかるような状態では使用できない。しかし、メンテナンス時の水洗いなどには十分耐えられる程度の構造となっている。
表6は静電容量形近接スイッチの性能をまとめたものである。
−25~+70℃の温度変動、±20%の電源電圧変動で、動作距離の変化は±20%以下である。一般的に発振回路は微小な静電容量変化を検出するように構成されているので、 周囲温度による電子部品などの定数変化は動作距離に大きな影響を与える。したがって周囲温度を考慮することは使用上の重要なポイントである。 また、内部回路には定電圧回路が入っているので、使用電圧範囲内で電圧変動が±20%以下であれば、動作距離の変化も問題となるほどではない。 また、直流の場合のリップル率も10%以下であれば、ほとんどのものが使用上問題はない。
図17に示すとおり誘導形近接スイッチとほぼ同じ動作領域が得られる。これは標準検出体に対する動作領域を示したものであり、実際に使用する個々の検出体に対しては異なるので、 それぞれについて動作領域を求める必要がある。また、連続して検出体がくる場合には、周囲物体の影響と同じで感度アップとなり動作領域が若干広がるので、 一個一個のカウントをするときには分解能に気をつけなければならない。
直流3線式の消費電流は8~15mA程度である。
交流2線式の場合、負荷側からみればオフ時には近接スイッチのインピーダンスは無限大で負荷には電流が流れず、オン時には近接スイッチのインピーダンスは0で負荷には電源電圧が100%かかる状態が理想である。 しかし近接スイッチ側では回路を動作させるための電流を必要とするためオフ時でもわずかながら電流が流れるし、オン時でも近接スイッチに電圧を残すために負荷にかかる電圧は減少する。 この特性の一例を図18、図19に示す。
静電容量形近接スイッチは誘電体も検出できることから、周囲物体の影響も誘導形近接スイッチのように金属だけでなくあらゆる周囲物体を考慮する必要がある。 ただしほとんどの機種において感度調整が可能であるから、周囲物体の影響で変化した感度はある程度までは調整できる。しかし使用中にその周囲物体が動く場合、 あるいは固定されていても周囲金属の接地状態が変化する場合には注意しなければならない。
基本的には、周囲物体を検出面からできる限り離す配慮が必要である。図20に示すように、外殻ケースの外径がφ34mmで定格動作距離25mmのもので80mm以上離れていれば十分である。 ただし、これは接地金属の場合であるから、他の場合の影響はこれより小さい。
複数個の静電容量形近接スイッチを並べて使用する場合には、お互いに発生する電界が干渉しあって動作距離が変わったり、誤動作したりするので、ある間隔をおいて取付けなければならない。
図21に示すようにケース外径が φ34mmで定格動作距離25mmのもので100mm以上の間隔が必要である。静電容量形近接スイッチの場合は物体の接近状況で発振周波数が大きく変化するために、相互干渉対策のための異周波タイプはない。