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オムロンの取り組み

  • 進化する日本の製造業
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ユーザ事例: 明電舎
世界に広がる顧客のために革新を断行

重電機器を中心に幅広い分野で事業を展開する明電舎。
市場で高い評価を受ける製品の一つが自動車試験装置である。
国内で圧倒的なシェアを誇る同社の装置には海外からの引き合いも多い。
世界の顧客に、より使いやすい製品を、いち早く届けるために、
同社は、先進の制御技術を駆使した世界戦略製品「TYPE-i」を開発した。

明電舎が手掛けている自動車試験装置の一つに、自動車の走行試験に使う「シャシダイナモメータ」がある(図1)。回転するローラーのうえに駆動輪を載せた状態で車体を固定し、ローラ上で駆動輪を回すことで、走行状態を再現。そのうえで動力性能や走行中の排ガスの成分や燃費、騒音などを測定できる。四輪車、二輪車や特殊車両の開発に欠かせない装置である。

シャシダイナモメータの国内最大手である同社の製品は、日本の大手自動車メーカー全社が多数採用している。海外でも採用されており、最近では海外の自動車メーカーからの引き合いが一段と増えているという。「背景には新興国で自動車市場が拡大してきたことなどから、シャシダイナモメータの需要が世界全体で伸びていることがあります」(同社自動車・搬送システム事業部 動力計測システム工場 工場長 山本晃氏)。

図1 シャシダイナモメータ「TYPE-i」の外観

設計を革新し世界へ


株式会社明電舎 自動車・搬送システム事業部 動力計測システム工場 工場長  山本 晃氏

こうした市場の動きを受けて同社が開発した最新のシャシダイナモメータが「TYPE-iシリーズ」である。「international」の頭文字「i」を冠した同シリーズの注目すべき点は、グローバル展開を前提に、設計を大幅に見直したことだ。具体的には、制御回路を中心に国際標準や先進的な技術を積極的に取り入れ、設計や生産の合理化を進めている。「お客様にとっての扱いやすさを重視すると、設計はできるだけシンプルな方が有利です。シンプルにすることで装置全体の信頼性や耐久性も高まります」(山本氏)。

自動車試験装置の場合、極めて高い信頼性と実績が要求されることから、これまで大幅な設計の見直しはなされてこなかった。「大部分は従来の設計を継承し、新規の設計は必要最小限にとどめるというのが、従来の製品開発の基本方針でした」(山本氏)。こうした従来の考えを振り切って大幅な設計変更を断行したのは、グローバル市場における装置の付加価値を一段と高めるためだ。「例えば、海外では必ずしも国内と同様の仕様で使われるとは限りません。そこで、設計をシンプルにして、様々な仕様に対応できるようにしました」(山本氏)。

最新技術で生産を合理化


株式会社明電舎 自動車・搬送システム事業部 動力計測システム工場 技術部技術第一課主任 兒玉 安紀彦氏

こうした取り組みの具体的な成果の一つを、シャシダイナモメータとともにオプションで提供されるドライブロボットに見ることができる。試験の際に人間に代わって自動車のアクセルやブレーキ、トランスミッション、イグニッションキーなどを操作するロボットである。このロボットには、最大5台のサーボモータが搭載される。

従来製品では、モータを駆動するサーボドライバと、制御信号を送信する制御ユニットを接続する専用ケーブルの数は、モータ1台当たり30本。5台のモータを使うとその数は150本にも及ぶ。「ドライブロボットを含めたシャシダイナモメータは受注生産で、お客様の試験環境や車種が変わると、毎回配線も異なります。その分、生産にも時間がかかるため、出荷までに相応の時間を要していました。さらに、配線の数が多いと維持管理も複雑になっていました」(同社自動車・搬送システム事業部 動力計測システム工場 技術部技術第一課主任 兒玉安紀彦氏)。

これに対してTYPE-i向けの自動操作ロボットでは、オムロンが「Sysmacオートメーションプラットフォーム」のブランドで展開しているマシンコントローラとACサーボモータ/ドライバを採用。これまで制御ユニットが担っていた機能を、コントローラに集約したうえで、コントローラとサーボドライバ間を、高速産業用ネットワーク「EtherCAT」で接続している(図2)。各サーボドライバとコントローラの接続は通信ケーブル1本となり、モータが5台になっても配線は5本で済む。

「これまでは装置の信頼性や耐久性を維持するために専用ケーブルを配線し、管理してきましたが、通信ケーブル1本でシステムの信頼性や耐久性を維持・向上することができるようになりました。しかも、車両ごとに配線を組み替えていた作業が、コントローラのプログラム変更だけで済むようになり、受注してから出荷までにかかる作業時間を大幅に短縮できます」(兒玉氏)。

図2「Sysmacオートメーションプラットフォーム」の導入で設計を合理化

世界を見据え国際標準を導入

さらに、同社はグローバル市場に向けた事業を強化していくにあたり、Sysmacのプログラミングにおける利点にも着目している。「Sysmacのコントローラでは、複雑な情報処理や演算処理に適したプログラミング言語である『Structured Text(ST)』と、従来から製造現場で普及しているプログラミング言語『ラダー』が併用できます。そこでプログラムの基幹部分をSTで作成し、立ち上げやメンテナンス時に現場のオペレータやお客様が確認する部分をラダーで記述すれば、これまでに蓄積した現場の知識やノウハウを生かしつつ、STの特長を生かせます。当社はこの構成でプログラムの標準化を進めていきます」(兒玉氏)。

Sysmacのプログラミング言語は、国際標準規格IEC61131-3に厳格に準拠しており、装置の維持や更新に必要なソフトウエア技術者を世界中で確保できる。これは事業のグローバル化を進める顧客にとっても魅力的だ。

世界に広がる顧客に目を向けて最新技術を導入し、安定した評価と実績を築いてきた装置の大胆な設計革新に踏み切った明電舎。同社は、国際標準言語やオープン・ネットワーク技術を、シャシダイナモメータ以外の、エンジンベンチシステム、ドライブトレインシステムなど自動車試験装置全体へと展開し始めている。これを契機に、めまぐるしく変化しながら拡大するグローバル市場における同社の存在感は一段と高まるに違いない。

オムロン株式会社

グローバル戦略本部 コーポレートコミュニケーション部
TEL:075-344-7175
URL:http://www.omron.co.jp/オムロン株式会社グローバル戦略本部コーポレートコミュニケーション部

シリーズ「進化する日本の製造業」は、2013年12月から2014年4月にかけて日経ビジネス誌及び日経ビジネスオンラインにて4回にわたって掲載されたものを転載したものです。登場する方々の肩書などは当時のものとなっておりますのでご了承ください。