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オムロンの取り組み

  • 進化する日本の製造業
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ユーザ事例: キューピー伊丹工場
「良品しか作らない」を信念に進化

大正14年に日本で初めてマヨネーズの量産を始めたキユーピー。
同社の代表的商品であるマヨネーズの国内主力生産拠点の一つが伊丹工場だ。
品質に徹底的にこだわる同工場が目指すのは、良品しか作らない製造プロセスの実現。
このために最新技術を活用しながら、絶え間なく工程の改善に取り組んできた。
「予兆保全」といった先進的な管理手法の導入も、いち早く視野に入れている。


キユーピー株式会社 執行役員 伊丹工場長 時任 久雄氏

キユーピーの伊丹工場(兵庫県伊丹市)は、同社にとって西日本の生産拠点。2013年に操業開始75周年を迎えた長い歴史を持つ工場だ。同社製品の中でもっとも国内出荷量が多い450g入りのマヨネーズの生産を担当している。伊丹工場は、五霞工場(茨城県猿島郡)とともに同社の「マザー工場」と位置付けられており、生産にまつわる様々な新技術を創出する役割を担っている。

「生産拠点における最重要課題は『安定稼働』。安定稼働を追求することは、そのまま品質の向上につながります。このための技術開発をリードするのもマザー工場の役割です」(同社執行役員伊丹工場長 時任久雄氏)。一般的に工程から離れた所で作業することが多い設備の技術者も、同工場では積極的に生産現場に足を運ぶ。現状を把握することで、さらなる安定稼働につながる技術開発の課題を見いだすことができるからだ。

「不良ゼロ」に向けて工程を改良

最近の伊丹工場における安定稼働に向けた具体的な取り組みの一つが、マヨネーズを充填した容器にキャップを自動的に取り付ける装置の改良である(写真)。この装置では、ガイドレールに沿って1列になって流れてくる容器にマヨネーズを充填。続いてネジを切った容器の口に、上から水平方向に回転させたキャップをかぶせて一定の力で締め付ける。この作業を16本の容器に対して同時に行い、1分間に240本もの容器にキャップを取り付ける。1本の容器にキャップを取り付ける作業に要する時間は最大でもわずか1.9秒である。

実はこの工程では、同社が“ベレー”と呼ぶ不良が発生する可能性がある。水平にかぶせるべきキャップが斜めになり、ネジがかみ合わないまま締め付けてしまうことで、容器の封止が不十分になるという不良だ。斜めになったキャップがベレー帽をかぶっている状態に似ていることから“ベレー”と呼ばれている。

「従来から“ベレー”の発生頻度は週に1本あるかないかというところまで抑えこんでいました。さらにキャップの状態を画像センサーで検査することで、“ベレー”が発生した商品を次工程で除去し、市場に不良品を絶対に出さないようにしています。ただし安定稼働を追求するうえでは、“ベレー”の発生を『ゼロ』にしなければなりません。そこで、生産後に不良品を除去するのではなく、最初から良品しか生産しない製造プロセスの実現を目指したのです」(時任氏)。

写真;伊丹工場が改良した装置

技術の「壁」を破りアイデア実現


キユーピー株式会社 生産本部生産技術部 堂本 慎太郎氏

“ベレー”の発生をなくすために同社の技術者が考案したアイデアが、キャップをかぶせて締め付ける前に一度逆に回す方法だ。ネジ式のキャップを容器にかぶせて逆に回すと、ネジがかみ合ったときにカタンという手応えが得られる。この手応えを電気的に検出して、ネジがかみ合ったことを確認してから、一定の回転速度と力でキャップを回して締め付ける。

だが、実現に当たって大きな壁に直面した。「ネジがかみ合ったときの手応えに応じ、キャップを回転させるモータを駆動する電流の値が変化します。この変化を、モータを制御しているコントローラで検出すれば実現できると思っていました。ところが電流値の変化はほんの一瞬で、変化量も微小なことから、まったく検出できませんでした」(同社生産本部生産技術部の堂本慎太郎氏)。

この壁を打ち破り、アイデアを実現するために同社が新たに導入したのが、オムロンが「Sysmacオートメーションプラットフォーム(Sysmac)」のブランドで展開しているマシンコントローラとACサーボモータ/ドライバである。Sysmacはサーボドライバとコントローラ間の通信速度が従来に比べて格段に速く、コントローラの演算処理も速いため、微小で瞬間的な電流値の変化を検出でき、ネジを締める速度も速められる。そのため“ベレー”の発生を検出した際でも、作業時間1.9秒以内という生産性を維持しながら、キャップを締め直し、“ベレー”を修正することができる。「実際に試してみると、期待通りの効果が得られました。

しかも、コントローラのパフォーマンスが高まったことで、生産効率も一段と向上しました」(堂本氏)。同社のアイデアを基に実際にSysmacを用いて装置を開発したのは、産業用装置のシステムインテグレータ静甲株式会社である。キユーピーと静甲は、この技術の特許を共同で出願している(特開2014-37272)。

「止まらない工場」の実現に挑戦


キユーピー株式会社 伊丹工場ラインテクニクスチーム 大八木 信介氏

伊丹工場は、こうした工程改良をキッカケに、一段と高度な管理手法を導入する取り組みも始めた。生産設備の「予兆保全」である。設備から吸い上げた大量のデータを随時分析し、そこから異常をいち早く検出。故障で設備が突然停止するという事態の発生を未然に防ぐ技術だ。

この実現に向け同社は、オムロンとともに装置に関する様々なデータを、Sysmacを介してデータベースに直結し、収集する仕組みを構築している。「サーボモータにかかる負荷や振動、温度などをモニタリングすることで、故障の予兆を掴めたり、商品の品質保証につながることがわかりました」(伊丹工場ラインテクニクスチームの大八木信介氏)。

さらに同社は、完全無人運転による稼働。つまり究極の安定稼働とも言える「止まらない工場」の実現を、予兆保全の先に見据えている。「無人でのライン稼働が可能になれば、時間を問わないフレキシブルな生産活動が実現し、在庫を減らしながら突発的な需給変動に対応できるようになります。何より、消費者にこれまで以上に新鮮な商品を届けられます。製造業にとって工場の安定稼働は経営の基盤です。マザー工場の役割を担う伊丹工場は、攻めの姿勢で安定稼働を追求し続けます」(時任氏)。

新技術を採り入れることで進化を続ける伊丹工場。理想のものづくりを追求する絶え間ない挑戦は、高い品質と生産性が求められる食品業界におけるキユーピーの競争力強化に着実に貢献するはずだ。

オムロン株式会社

グローバル戦略本部 コーポレートコミュニケーション部
TEL:075-344-7175
URL:http://www.omron.co.jp/オムロン株式会社グローバル戦略本部コーポレートコミュニケーション部

シリーズ「進化する日本の製造業」は、2013年12月から2014年4月にかけて日経ビジネス誌及び日経ビジネスオンラインにて4回にわたって掲載されたものを転載したものです。登場する方々の肩書などは当時のものとなっておりますのでご了承ください。