カテゴリ

カテゴリ(Category)の概念

カテゴリとは、主に安全関連部の構造(アーキテクチャ)を表す概念です。
安全関連部は、機械の安全を確保するという目的は同じでも、機械の目的や危険の度合い、機械の規模、使われる頻度などによって適切な構造(アーキテクチャ)が異なります。
たとえて言えば、「雨風を防げる空間」を考えたとき、テント、木造の住宅、オフィスビルなどの建物の基礎や骨組み、外壁や屋根などの基本的な構造が、目的に応じてそれぞれ異なるようなものです。安全関連部におけるこのような基本的な構造のパターンは指定アーキテクチャ(指定構造)と呼ばれ、各カテゴリの基本形になっています。カテゴリにはこの構造に対する要件のほか、MTTFDDCavgCCFについての要件も定められています。

カテゴリ(Category)

カテゴリ(Category)の要件

カテゴリB、カテゴリ1に適用される指定アーキテクチャ

カテゴリB、カテゴリ1に適用される指定アーキテクチャ

カテゴリB 要求事項の概要

カテゴリBの安全関連部に求められることは、目的とする安全機能が遂行できることです。
それには、下記に示すような意図した使用条件に耐えられるような設計が求められます。

  • 接点の遮断容量や開閉頻度など、機器の動作に関する予期されるストレス
  • 薬品による腐食など、使用する材料に関する影響
  • 機械的振動、電磁的ノイズ、制御電源回路の中断や変動などのその他の要因

これらを満たすためには基本安全原則に従うほか、用途に合った規格に適合した部品を選択した上でその適合規格の要求事項に従って外部影響への対策を実施する事が必要です。
カテゴリBは単一チャンネル系であるため、故障の発生により安全機能は損なわれます。故障検知の機能もないため、カテゴリBの診断範囲 (DCavg)は0%です。また、共通原因故障 (CCF)を考慮する必要はなく、MTTFDは"低" ~ "中"です。
カテゴリBで達成可能な最大PLはPL=bです。

注. 基本安全原則に関しての詳細はISO 13849-2:2012を参照。

カテゴリ1 要求事項の概要

カテゴリ1の安全関連部に求められることは、安全機能が遂行できることに加えてその信頼性が高いことです。
そのためには安全関連部の構造は、カテゴリBの要求事項に加えて以下を適用することが必要です。

  • "十分吟味された"部品の使用
  • "十分吟味された"安全原則の使用

このうち"十分吟味された"部品とは、次のいずれかです。

  1. a)

    過去類似の用途において幅広く使用されて実績のあるもの

  2. b)

    安全性関連用途での使用に適合し信頼性が検証されているもの

ただし、複雑な電子部品で構成された一般PLCなどの部品は"十分吟味された"部品とはみなせません。
カテゴリ1はカテゴリBと同じく単一チャンネル系であるため、故障の発生により安全機能は損なわれます。また故障検知機能はなく診断範囲(DCavg)は0%であり、共通原因故障(CCF)の考慮は不要です。
ただしMTTFDは "高" でカテゴリBより高いため、安全機能が損なわれる可能性はカテゴリBより低いといえます。
カテゴリ1で達成可能な最大PLはPL=cです。

注. 十分吟味された部品または安全原則に関しての詳細はISO 13849-2:2012を参照。

カテゴリ2に適用される指定アーキテクチャ

カテゴリ2に適用される指定アーキテクチャ

カテゴリ2 要求事項の概要

カテゴリ2の安全関連部に求められることは、危険側故障が生じて安全機能が損なわれた場合には補足的な点検機能によってこれを補えることです。そのためには、カテゴリBの要求事項に加えて"十分吟味された"安全原則を用いて設計および組立てられること、そして機械の制御システムの持つ点検機能が、適切な間隔で安全機能を点検することが必要です。
点検機能は点検機器(TE)とその出力機器(OTE)で構成されます。安全機能の点検には以下が求められます。

  • 点検は次のタイミングで実施されること
    • 機械の起動時
    • 危険状態が発生する前(たとえば新しいサイクルの開始や必要な場合は動作中定期的に)
  • 点検の結果
    • 故障が検出されない場合は運転を許可すること
    • 故障が検出された場合、出力によって安全側に働く適切な制御出力を出すこと。これができない場合(例えばコンタクタの溶着による危険側故障)は警告を発すること。また故障が取り除かれるまでその状態を維持すること。
  • チェック自体によって危険状態が生じないこと(たとえば安全機能の応答時間の増大など)

カテゴリ2はI-L-Oの制御機能に加えて点検機能を持つことから冗長系として扱われますが、点検と点検の間の故障により安全機能は損なわれます。
点検機能により定期的な故障検知を行うことから診断範囲 (DCavg)は "低" または "中" (60%以上99%未満)となります。また、共通原因故障 (CCF)を考慮する必要があります。
I-L-Oの安全機能系統に関するMTTFDはPLrに応じて "低" ~ "高" のいずれかとなりますが、いずれの場合においても点検機能 (TE)の
MTTFDはI-L-OのMTTFDの半分以上となるように設計する必要があります。カテゴリ2で達成可能な最大PLはPL=dです。

注. カテゴリ2における適切な点検頻度とそれを達成できない場合の方策についてはISO 13849-1:2015を参照。

カテゴリ3に適用される指定アーキテクチャ

カテゴリ3に適用される指定アーキテクチャ

カテゴリ3 要求事項の概要

カテゴリ3の安全関連部に求められることは、安全機能のある一部に故障が生じても、全体として安全機能は損なわれないことです。
そのためには、カテゴリBの要求事項に加えて "十分吟味された" 安全原則を用いて設計および組立てられること、安全機能の中に故障の検出手段をもち、合理的に実施可能な場合、故障は安全機能の次の動作要求時かそれ以前に故障を検出することが必要です。
カテゴリ3は2チャンネルの冗長化された構造をもち、チャンネル間で相互監視することによりその安全性を確保しています。
単一の故障に対しては安全機能は損なわれませんが、検出できない故障の累積により安全機能が損なわれることがあります。このことから診断範囲 (DCavg)は "低" または "中" (60%以上99%未満)となります。また共通原因故障 (CCF)を考慮する必要があり、MTTFDはPLrに応じて "低" ~ "高" のいずれかとなります。
カテゴリ3で達成可能な最大PLはPL=eです。

カテゴリ4に適用される指定アーキテクチャ

カテゴリ4に適用される指定アーキテクチャ

注. カテゴリ3と基本的な構造は同じですが、DCavgおよびMTTFDは" 高" でなければなりません。上図のうちモニタリングを表す実線はカテゴリ3よりも高い診断範囲を表します。

カテゴリ4 要求事項の概要

カテゴリ4の安全関連部に求められることは、安全機能にある程度の故障の累積が生じても、安全機能は損なわれないことです。
そのためには、カテゴリBの要求事項に加えて "十分吟味された" 安全原則を用いて設計および組立てられること、安全機能の中に故障の検出手段をもち、安全機能の次の動作要求時かそれ以前に故障を検出することが必要です。
カテゴリ4はカテゴリ3と同様に2チャンネルの冗長化された構造をもち、チャンネル間で相互監視することによりその安全性を確保しています。
故障の検出能力はカテゴリ3よりも高く、単一の故障に加え故障の累積に関しても安全機能が損なわれる確率は極めて低いといえます。このことから診断範囲 (DCavg)は "高" (99%以上)となります。
また共通原因故障 (CCF)を考慮する必要があり、MTTFDは "高" でなければなりません。
カテゴリ4で達成可能なPLはPL=eです。

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