安全入力機器
セーフティセンサ

セーフティセンサとは、機械の稼働中に人体の侵入または存在を検知したら、
機械を停止させることを目的としたセンサです。

安全入力機器セーフティセンサ

自己診断機能

セーフティセンサ全体の要求事項を規定している規格であるIEC 61496-1では、セーフティセンサの故障を検知できる性能や故障検知の際のセンサの挙動に応じて、タイプを規定しています。セーフティライトカーテンで主に採用されているタイプ4では、ISO 13849-1のPLeに相当する性能をもつように規定されており、下図のようなデュアルCPUによる相互チェックと信号処理回路や出力回路の二重化などを行っています。セーフティレーザースキャナでは主に採用されているタイプ3では、ISO 13849-1のPLdに相当する性能をもつように規定されています。いずれもセンサ内部で自己診断機能を備えることにより、これらの性能を確保しています。

タイプ4セーフティライトカーテンの回路ブロック図

回路ブロック図

安全距離

セーフティセンサなどの安全防護物を設置する場合、人体が危険領域に侵入し、可動部などの危険源に到達する前に機械を停止させる必要があります。そのために必要な距離がISO 13855により規定されています。セーフティセンサの検出能力を示す最小検出物体の大きさやセーフティセンサの設置位置を決めるためには、このISO 13855における安全距離の考え方が特に重要です。

ISO 13855による安全距離の計算式

ISO 13855では、安全防護物と危険源との間にとるべき安全距離を、「最小距離(S)」と表現しています。この最小距離は、以下の考え方で求めます。

最小距離(S)= 人体の接近速度(K)×安全防護物が作動してからシステム全体が停止するまでの応答時間(T)+安全防護物の特性に応じた追加距離(C)

A. 接近方向に対して垂直な検出区域

A. 接近方向に対して垂直な検出区域

指・手の検出に用いる場合(セーフティセンサの最小検出物体径dが40mm以下)

  • S=(K×T)+8(d-14)
    この式に以下をあてはめて計算した値をSとします。
    • K=2,000mm/s《指の侵入速度を想定》
    • T=機械の最大停止時間+セーフティセンサの応答時間(s)
    • d=セーフティセンサの検出能力(mm)《最小検出物体径、40mm以下》

注.d<14mmの場合、追加距離C=8(d-14)は0mmとする

計算結果がS<100mmとなった場合にはS=100mmを採用します。
S>500mmとなった場合にはK=1,600mm/sで再計算した値を採用しますが、再計算した値がS<500mmの場合には、S=500mmを採用します。

全身の検出に用いる場合(セーフティセンサの最小検出物体径dが40mm超70mm以下)

  • S=(K×T)+850
    この式に以下をあてはめて計算した値をSとします。
    • K=1,600mm/s 《全身の歩行速度を想定》
    • T=機械の最大停止時間+セーフティセンサの応答時間(s)
    • C=850mm 《セーフティセンサの検出能力によらず一定、標準的な腕の長さを想定》

この式は、マルチビームセーフティセンサなどの、全身を検出する用途で用いる光軸の間隔の広いセーフティセンサの最小距離の計算にも用いることができます。ただしその場合には、人がビームの間をくぐったり床を這ったりすることでビームを迂回して危険源に接近する可能性を、リスクアセスメントで考慮する必要があります。

B. 接近方向に対して平行な検出区域

B. 接近方向に対して平行な検出区域
  • S=(K×T)+(1,200-0.4H)
    この式に以下をあてはめて計算した値をSとします。
    • K=1,600mm/s《人体の歩行速度を想定》
    • T=機械の最大停止時間+セーフティセンサの応答時間(s)
    • H=セーフティセンサの設置高さ(mm)

注. H≧875mmの場合、追加距離C=1200-0.4Hは850mmとする

セーフティセンサの設置高さ(検出区域の高さ)Hは、セーフティセンサの検出能力dを用いてH≧15(d-50)とします。ただしd<50mmのときでもHは0mmを下回らず、またHの最大値は1000mmとします。H>300mmのときには検出区域の下をくぐって危険源に接近する可能性をリスクアセスメントで考慮し、追加の保護方策の設置等を検討する必要があります。

C. 接近方向に対して角度をもった検出区域

C. 接近方向に対して角度をもった検出区域

検出区域の角度が接近方向に対して±30°を超えるときは、垂直接近とみなしてAの計算式を適用します。

C. 接近方向に対して角度をもった検出区域

検出区域の角度が接近方向に対して±30°未満のときは、平行接近とみなしてBの計算式を適用します。

これらの安全距離(最小距離)の考え方は、セーフティセンサ以外にも、ロック機能をもたないガードインターロックスイッチや両手押しボタンなどの両手操作機器、セーフティマットの設置位置を決定する際にも考慮する必要があります。詳細についてはISO 13855をご確認ください。

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