医薬品・医療器具・医療機器業界で押さえておくべき
トレーサビリティ関連の規格・法規制
世界中の医薬品、医療機器及び医療器具、医療機関関係者、さらには各国の行政、規制当局などが参画する世界規模の会議体「GS1ヘルスケア協議会」では、医薬品の取り違え防止、トレーサビリティの確保、および流通の効率化を図るためにGS1標準コードの積極的な普及と利用を推進しています。
ここでは、医薬品と医療機器及び医療器具に分けてGS1標準で定められているコード表示について紹介します。
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医薬品へのバーコード表示
アンプルに代表される調剤包装単位へのGS1データバーの表示は2008年から始まっており、2021年4月からは販売包装単位に有効期限や製造番号(ロット番号)の表示が必須となります。
■ 医薬品調剤包装単位(アンプル)へのGS1データバー表示
アンプルなどの調剤包装単位には、2008年9月からGS1データバーでGS1事業者コード、アイテムコードの表示を実施しています。
■ 医薬品調剤包装単位(PTPシート)へGS1データバー表示
PTPシートなどの調剤包装単位には、2015年7月からGS1データバーでGS1事業者コード、アイテムコードの表示を完全実施しています。
■ 医薬品販売包装単位へのGS1データバー表示
販売包装単位には、2015年7月からGS1データバー、2021年4月以降はGS1データバー合成シンボルを表示することが必須となっています。
■ 医薬品販売包装単位へのGS1データバー表示
販売包装単位には、2021年7月からGS1データバー合成シンボルを表示することになっています。それにより、有効期限、製造番号(ロット番号)が付記されます。
医療機器等へのダイレクトマーキング運用ガイド
手術用のメス等の鋼製器具などに代表される滅菌あるいは洗浄して繰り返し使用される医療機器にはダイレクトマーキング(Direct Marking:直接印字)が必須とされており、すでに米国FDAのUDI 規則では2022年までにダイレクトマーキングが順次行われる運びとなっています。
医療機器についてもバーコードの貼付が進んでおり、近年、RFIDを活用してより高度な管理をする動きも出てきています。
■ GS1コード体系
医療機器のダイレクトマーキングに用いられるGS1識別コードはGTIN(ジーティン)、またはGIAI(ジーアイエーアイ)であり、属性情報としては、シリアル番号が主に利用されています。
・製造業者がダイレクトマーキングする場合 GTIN(ジーティン)
製品の識別にはGTIN(Global Trade Item Number:商品識別コード)が利用されます。GTINは、GS1により標準化された国際標準の商品識別コードの総称であり、事業者を特定するためのGS1 事業者コード、商品アイテムコード、チェックデジットから構成される、8桁、12桁、13桁、または14桁のコードです(GTIN-14にはインジケータが構成要素として追加される)。
GTINを表すアプリケーション識別子(AI)は01です。アプリケーション識別子を用いる場合のGTINのフォーマットは14桁であるため、14桁に満たないGTIN(例:GTIN-13)の場合は、必要な分だけ前に“0”(リーディング0)をつけて表示します。なお、コードを目視可能文字として表す場合、AIは( )で囲うこととなっています(括弧はバーコードのデータとしてはエンコードしないことに注意が必要)。
<コード表示例>
- GTIN:4569951110016
- シリアル番号:42345A-2
- (01)04569951110016(21)42345A-2
- (01)04569951110016
- (21)42345A-2
・医療機関等が独自にダイレクトマーキングする場合 GIAI(ジーアイエーアイ)
製造業者が製品に識別番号を設定する場合はGTINを用いますが、GTINが設定されていない医療機器等を医療機関などが独自の資産として管理する場合には、その医療機関のGS1事業者コードを用いてGIAI(Global Individual Asset Identifier:資産管理識別番号)を設定することができます。GIAIはGS1事業者コードと資産管理番号から構成される最大30桁のコードです。
GIAIを表すアプリケーション識別子は8004です。GIAIは資産の管理のみに使用可能であり、取引の対象には使用できません。
<コード表示例>
- GS1事業者コード:456995111
- 資産管理番号:100025A
- (8004)456995111100025A
- (8004)456995111100025A
■ 表示シンボル
医療機器のダイレクトマーキングにはGS1 データマトリックスを用います。
GS1データマトリックスは、ISO/IEC 16022(JIS X 0512)で規定されているデータマトリックスをベースに、GS1アプリケーション識別子を使用できるようにしたものです。正方形と長方形の形状がありますが、長方形に比べて正方形の方が、規定されている最大シンボルサイズが大きいため、通常は正方形が優先して使用されます。
- (01)04569951110016
- (21)42345A-2
- (01)04569951110016
- (21)42345A-2
■ 目視可能文字
目視可能文字は、バーコードにエンコードされているデータを表すものであり、バーコードの下に表示するのが基本となっていますが、ダイレクトマーキングの場合には表示を省くことが可能です。
■ 表示サイズ
GS1標準で定められている医療機器等ヘルスケア製品へのダイレクトマーキングの表示サイズは次表のとおりです。
*品質に関してはISO/IEC 15415(JIS X 0526)、ISO/IEC TR 29158 をご参照ください。
横にスクロールできます。
印字方法 | モジュール幅(X) mm(インチ) |
クワイエットゾーン | ||
---|---|---|---|---|
最小 | 目標 | 最大 | ||
インク式 | 0.254(0.0100”) | 0.300(0.0118”) | 0.615(0.0242”) | 1X、4辺とも |
A方式:レーザマーキングなど | 0.100(0.0039”) | 0.200(0.0079”) | 0.300(0.0118”) | 1X、4辺とも |
B方式:ドットピンマーキングなど | 0.200(0.0079”) | 0.300(0.0118”) | 0.495(0.0195”) | 1X、4辺とも |
■ 医療機器へのダイレクトマーキングの例
■ ポイント
医療器具にダイレクトマーキングされた2次元コードを確実に読取るには、優れたマーキング品質を有するレーザマーカと2次元コードリーダが必要になります。特に医療器具は使用するうちに傷がついたり、経年変化によってマーキングした2次元コードが読取りにくくなる可能性が高くなります。
また、医薬品管理においては、バーコードだけではなく、GS1データバー合成シンボルの読取りが不可欠です。運用時のトラブルを防ぐためにきちんとしたバーコードが印刷されているかを評価しておくこともスピーディで正確な読取り実現には不可欠です。
*本内容は、(一財)流通システム開発センター 、GS1ヘルスケアジャパン協議会 作成の「医療機器本体へのバーコード表⽰」、「医療機器等へのダイレクトマーキング運用ガイド」、「GS1バーコードの仕組みと世界の医療分野における利用」を参考に記載しています。
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改正薬機法のポイント
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医療機器のRFIDによる管理
(一社)米国医療機器・IVD工業会(AMDD)が、カテーテルやインプラントに代表される医療機器の管理をRFIDで行うことを決定しました。
■ AMDDの報告文(2019年5月1日)
この度AMDDは、医療機器に貼付するRFIDタグの「書込み情報」についてGS1推奨フォーマットを推奨形式とする決定をいたしました。併せて、「通信周波数帯」についてもUHF帯を推奨形式とすることといたしました。
RFIDの活用があらゆる業界で注目され始めている中、医療機器においても、非接触による情報認識・照合というRFIDの特徴を生かした利用方法が広がりを見せています。RFIDの利活用により、製造販売業者、代理店・特約店、医療機関、それぞれの環境における作業の効率化向上が期待されるとともに患者さんの安全と安心へとつなげていくことが可能となります。
医療機器が実際に使用される医療機関や、医療機器の流通を担う代理店・特約店においては、複数の製造販売業者の製品を混在して使用する環境が想定されることから、それぞれのRFIDタグの「書込み情報」と「通信周波数帯」が統一されていることが望ましいといえます。このことから、AMDDでは、医療機器に貼付するRFIDタグの「書込み情報」と「通信周波数帯」に関する推奨方式を決定することを目的として、2018年10月にRFID Working Groupを結成、AMDD加盟23社の参加を得て議論を進めてきました。2019年3月Working Groupは「GS1推奨フォーマットとUHF帯の使用をAMDD推奨形式とする」との結論を理事会に答申、同月の理事会で承認されました。
■ RFIDの仕様
商品情報は、EPC(UII)メモリ(MB01)に格納し、有効期限とロット番号は、USERメモリ(MB11)にPacked Object方式で格納する仕様になっています。
書込み情報 | 商品情報 - SGTIN96 またはSGTIN198 ロット番号、有効期限 |
---|---|
通信周波数帯 | UHF帯 |
■ ポイント
医療器具の製造、出荷工程では確実な製品管理をする必要があります。また、1回に取り扱う数量が多い場合には、RFIDの特長である一括読取りが作業効率化のための大きなメリットとなります。しかし、RFIDによる一括読取りには様々なノウハウが必要となるため、しっかりと現場に精通したメーカによるシステム構築が必要条件となります。
*本内容は、(一社)米国医療機器・IVD工業会(AMDD) のホームページを参考に記載しています。