半導体業界で押さえておくべき
トレーサビリティ関連の規格・法規制
半導体業界(SEMI)では、半導体ウェーハや各種キャリア(FOUP、FOSB)、レチクルPod等の管理をバーコード、2次元コード、およびRFIDで実現しています。特に300mmのウェーハが登場した際に、RFIDを活用してキャリアを管理するためのSEMI規格が制定され、それまでバーコードが主流だった管理方法から一気にRFIDによる管理へと変わりました。現在も国内外を問わず、多くのFabでRFIDを使ったシステムが稼働しています。
ここでは、ウエーハ情報管理、ウエーハキャリアの情報管理、2次元コードリーダ関連規格、2次元コードリーダ・RFID関連の規格について紹介します。
SEMIにおけるウェーハのトレサビリティ関連規格
■ SEMI T7
「二次元マトリクスコードシンボルの両面研磨ウェーハ裏面マーキングの仕様」
- ・本仕様は、ウェーハの品質保証領域への影響を最小にして、シリコンウェーハにマークを付けるための記号表示を提供することを意図しています。
- ・本仕様は、SEMI M1.15の仕様、および直径が300mmかこれより大きい他の材料に合致するノッチ付き、両面研磨シリコンウェーハの材料の裏面にマークするための、機械で読取れる長方形の二次元バイナリデータマトリクスコードシンボル(エラーのチェックおよび訂正コードを含む)の幾何学的および空間的な関係とその内容について規定しています。
- ・本仕様はその要求条件に適合するときに使用可能なマーキング手法を規定するものではなく、シンボルはレーザによって個々のドットが書き込まれるものと想定されています。
- ・マトリクスコードは、エピタキシャルウェーハ、SOIウェーハ、およびパターン形成前あるいは後の鏡面ウェーハを含む広範なウェーハ製品に適用できます。このコードのフォーマットとアルゴリズムはISO/IEC 16022に規定された二次元記号表示に準拠しています。
SEMIにおけるRFID関連規格
■ SEMI E47.1
「300mmウェーハ搬送および保管用FOUPの機械仕様」
- ・本規格は、IC製造工場において300mm径ウェーハの搬送および保管に使用されるFOUPを、部分的に規定しています。
- ・本規格が意図しているのは、すべてのメカニカルインタフェースにておいて、モジュール性と互換性を確保しながら、技術革新を妨げないよう最小レベルの仕様を定めることです。本仕様におけるほとんどの要求事項は、最大および最小の寸法という形をとっており、(ドアメカニズムやキネマティックカプリングを除き)表面仕様が要求されることはほとんどありません。FOUPに対する物理的インタフェースだけが規定されており、材料に対する要求事項やパーティクルなどの汚染限度は示されていません。本規格に規定された容器は、密閉されたミニエンバイロメント用途を意図していますが、自動化動化インタフェースを伴ったボックスであるとの解釈も可能です。
- ・RFIDタグ設置領域も規定しています。
■ SEMI M31
「300mmウェーハの搬送および出荷用フロントオープニング・シッピングボックスの機械仕様」
- ・本規格は、ウェーハの品質を維持しながら、ウェーハサプライヤから顧客(主にIC製造者)へ300mm径ウェーハを搬送するのに使用されるフロントオープニングシッピングボックス(front-opening shipping Box: FOSB)を規定しています。
- ・本規格が意図しているのは、すべてのメカニカルインタフェースにおいて、モジュール性と互換性を確保しながら、技術革新を妨げないよう最小レベルの仕様を定めることです。しかしながら、射出成型プラスチック製のFOSBが本規格に準拠して製造できるように、そしてそのFOSBがウェーハ輸送、ドアの開閉時においてウェーハ品質を維持するために使用可能なように、本規格は作成されています。
- ・本規格が想定しているのは、FOSBがウェーハ製造の最終段階でウェーハが詰められ、受け入れと検査を経て、IC工場内でFOSBからFOUP、FOBITあるいはオープンカセットに詰めかえられるまでの工程に使われることであり、IC工場内のプロセス工程で使うことは想定していません。ウェーハは自動化された装置によってFOSBからFOUP、FOBITあるいはオープンカセットに詰め替えられることが望ましいとされています。
- ・RFIDタグ設置領域も規定しています。
■ SEMI E144
「半導体製造装置および材料ハンドリング装置におけるキャリア内のRFIDタグとRFIDリーダの間の無線インタフェースの仕様」
- ・本仕様では、新しいキャリア無線周波数(RF)識別タグを既存(2006年より前)装置の設備と100%の下位互換性を持たせるために必要な要素の公的仕様について記載しています。
- ・本仕様は、そのようなタグの無線インタフェースに対応しています。
- ・本仕様では、半導体製造および材料ハンドリングのための無線周波数識別を目的とした共通の通信プロトコルを記述しています。
- ・本仕様では、周波数134.2kHz(キロヘルツ)で動作するHDX RFIDシステムを定義しています。
- ・本仕様では、周波数、変調、データレート、データフォーマット、リード/ライト機能、メモリ機能などのパラメータの要求条件を記載しています。
- ・本仕様は、大多数の半導体製造装置に使用する用途で現在使用されているRFIDパラメータに基づいています。
- ・本仕様は、注記されているところを除き、ISO/IEC 18000-2と互換性がある。本仕様は、半導体デバイスおよび集積回路の製造用途に、この規格を拡張し、特化するものです。
- ・本仕様では、半導体製造および材料ハンドリングのための無線周波数識別を目的とした共通の通信プロトコルを記述しています。
- ・本文書では、次の2つのタイプのインタフェースを定義しています。
タイプ1)RI-TRP-DR2B HDX MPT
タイプ2)ISO/IEC18000-2 Type B(HDX)
■ SEMI E99
「キャリアIDリーダ/ライタ機能スタンダード:コンセプト、挙動、およびサービスに関する仕様」
- ・キャリアIDリーダ/ライタ機能スタンダード作業の目的はキャリアIDリーダおよびキャリアIDリーダ/ライタが上位コントローラに提供するコンセプト、挙動、およびサービス(機能)に関する共通仕様を提供することです。スタンダードインタフェースはキャリアIDリーダ/ライタの互換性を上げるので、ユーザおよび装置サプライヤの選択の範囲が広がることになります。
- ・キャリアIDリーダ/ライタインタフェーススタンダードは上位コントローラを持っている包括的なキャリアIDリーダ/ライタインタフェースに関する機能的な要求条件を扱います。
- ・本仕様にはキャリアIDリーダおよびキャリアIDリーダ/ライタの両方に要求される挙動および通信が含まれます。
- ・本仕様ではキャリアIDリーダあるいはリーダ/ライタが送信する非同期メッセージを要求、定義、あるいは禁止していません。
■ その他、関連規格
- ・SEMI E111/SEMI E112(Reticle Pod関連)、SEMI E4/E5(SECS-II関連)など。
この他に450mmのRFID、2次元コード関連規格も存在します。
SEMIにおける2次元コードリーダ関連規格
■ SEMI E118
「ウェーハIDリーダ通信インタフェースの仕様 — ウェーハIDリーダの機能スタンダード:概念、動作、サービス」
- ・ウェーハIDリーダの機能スタンダードの目的は、概念、動作、ウェーハIDリーダによって上位のコントローラに提供されるサービス(機能)について共通の仕様を提供することです。
- ・スタンダードのインタフェースにより、ユーザー及び装置サプライヤが広範囲の選択肢を持てるようになり、ウェーハIDリーダの相互交換性を向上できます。
- ・ウェーハIDリーダの機能スタンダードは、ウェーハIDリーダと上位のコントローラとの包括的インタフェースに対する機能要求条件を扱います。
- ・本仕様には、ウェーハIDリーダに必要な動作と必要な通信機能が含まれます。
- ・この仕様では、ウェーハIDリーダによって送信される非同期メッセージは要件でもなく、定義することも禁止していません。
- ・本仕様は、SEMIによって規定され、ウェーハの搬入、搬出がキャリアユニットによって実行される装置内でアクセスされるウェーハIDを読出すことを目的とします。
SEMIにおけるRFID、2次元コードリーダ関連規格
■ SEMI E15.1
「300mm装置ロードポートのための仕様」
- ・この仕様が規定しているのは、300mmウェーハ処理および検査装置のロードポートに関する寸法上の要求事項です。目的としているのは、装置と工場との間の一様な機械的インタフェースを促進すること、自動ウェーハキャリア搬送システムを使いやすくすること、人が積載する装置のための人間工学上の要求事項を満たすことです。
- ・本規格は、300mm装置のみを扱っています。200mm以下のウェーハ用の装置を扱う同様の要求事項は、SEMI E15で扱っています。
- ・キャリアIDリーダ(バーコードリーダ)、およびキャリアIDリーダライタ(RFIDリーダライタ)の排他的領域も規定しています。
■ ポイント
半導体業界においてはメモリやCPU関連の300mmFabでRFIDや2次元コードを活用した管理が行われています。
ウェーハが300mmと大型化した際に、装置メーカではユーザ個別対応設計をすることは利益を減らし、装置の納期も長期化することを恐れ、様々なSEMI標準化を図ったという背景があります。
また、RFIDについては、300mmに対応する際に初めてSEMIの標準化の対象となりました。
SEMI規格で推奨されているRFIDはISO/IEC 18000-2に準拠した134.2kHz帯のRFIDであるため、耐ノイズ性に問題があり、特に搬送装置から出るノイズの影響を受けやすいので注意が必要です。
なお、検査装置関連のロードポートの場合は、RFIDよりもバーコードリーダを採用することが多くなっています。
*本内容は、各SEMIスタンダードの「目的」および「範囲」 を引用しています。