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基礎知識を学ぶ - 継電器とは?
突入電流について
第5章 保護協調と保護継電器
受電端のしゃ断器を投入すると、構内電気設備が充電され、過渡的な電流が流れます。このうち、①変圧器の励磁突入電流、②高圧コンデンサの充電電流について、受電端OCRへの動作影響を考えてみます。
●変圧器の励磁突入電流
変圧器が無励磁の状態で1 次側に電圧を急激に印加すると(投入すると)、変圧器には逆起電力が発生していませんので、鉄心の磁束は一時的に飽和してしまいます。
リアクタンス分が零となり、変圧器の1次側が短絡されたのと同じ状態となり、過大電流が過渡的に流れます。第1波の波高値は、定格電流の十数倍から数十倍にも達し、ピークの接続時間は1~2Hz、定格電流に落ち着くまで2~3秒もかかります。これを励磁突入電流といいます。
励磁突入電流の大きさと継続時間は、一義的に計算されず、
①変圧器の種類、②印加電圧、③投入位相、④鉄心の残留磁束、⑤変圧器の負荷状況などにより大きく変化し、投入ごとに異なります。
1次電圧が急に変動した場合にも、同じ現象が発生します。
励磁突入電流は減衰するとはいえ、ピーク値が高く、また、接続時間も割と長いので、しゃ断器投入時にOCRが動作してしまう可能性があります。したがって、整定値を決定するための保護協調曲線を描く時には、この励磁突入電流を必ず考慮しなければなりません。
励磁突入電流によりOCR が動作するからといって、しゃ断器投入時にOCRをロックしてしまうことはできませんので、保護協調曲線を描く中で、励磁突入電流で動作せず、短絡事故では確実に動作するよう整定値(特に瞬時要素動作電流値)を選択することになります。
変圧器励磁突入電流(単相):6,600V
種別 変圧器の容量 時間経過後の電流値(A)
容量
(kVA)
定格電流
(A)
0.01s後 0.05s後 0.1s後 0.5s後 1s後 5s後
油入
変圧器
10 1.5 35.6 21.1 16.1 7.2 5.3 2.4
20 3.0 67.2 42.0 32.6 14.7 10.5 4.8
30 4.5 97.9 61.2 47.4 21.4 15.3 7.0
50 7.6 165 109 85.3 38.8 28.4 12.9
75 11.4 212 139 109 49.6 36.4 16.5
100 15.2 272 179 140 63.8 46.8 21.3
150 22.7 349 234 191 92.6 65.4 28.9
200 30.3 427 287 233 113 80.0 35.3
300 45.5 524 360 303 147 106 50.8
500 75.8 825 580 490 245 180 82.5
モールド
変圧器
10 1.5 30.7 18.2 13.9 6.2 4.6 2.1
20 3.0 57.6 34.2 26.1 11.7 8.6 3.9
30 4.5 77.8 48.6 37.3 17.6 12.2 5.6
50 7.6 107 66.9 51.8 23.4 16.7 7.7
75 11.4 153 101 79.0 35.9 26.3 12.0
100 15.2 175 115 90.3 41.0 30.1 15.2
150 22.7 218 146 119 57.9 40.9 22.7
200 30.3 271 187 153 76.4 55.1 30.3
330 45.5 379 266 225 112 82.8 45.5
500 75.8 631 453 394 217 158 75.8
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次にこの方法について述べます。
(1) 定格電流の10倍の電流のポイントは0.1秒とする考え方
従来、励磁突入電流は、変圧器の定格電流の10倍の電流値と0.1秒の時間のポイントをプロットし、これをOCRの動作時間特性曲線が下がらないこと、という考え方がありました。
しかし、これでは1ポイントのため、その前後はどうなのかというところについては判りませんし、変圧器の小型化が進んでいる現状では、むやみに瞬時要素のタップ値を大きくすることになっていました。(次項の計算からみると安全サイドで考えすぎています)
(2) 励磁突入電流の経過時間ごとの電流値より曲線を書く考え方
最適な瞬時タップ値を選択するためには、少なくとも保護協調曲線上に表わされる励磁突入電流の減衰カーブを知る必要があります。
右表は変圧器の容量ごとに時間経過後の電流値を計算したものです。計算のベースとなったものは、変圧器メーカから提出された、①第一波波高値(倍数)、②減衰時定数(サイクル)、③励磁突入電流の実効値-時間曲線などです。具体的に保護協調曲線に描き込めるように電流値で表わしてあります。たとえば油入の三相変圧器300kVAでは、0.01秒時には218A、0.05秒時には146A、0.1秒時には119A流れることになります。したがって、この値をプロットしていきます。この系統にさらに単相100kVAの変圧器があれば、この変圧器分の電流を加算していき、0.01秒時には218+272=490Aをプロットします。
この表における数値は、最大値付近で計算されていますので、この表に基づいて励磁突入電流曲線を描くことによって、ほぼOCRの動作を防ぐことができます。
変圧器励磁突入電流(三相):6,600V
種別 変圧器の容量 時間経過後の電流値(A)
容量
(kVA)
定格電流
(A)
0.01s後 0.05s後 0.1s後 0.5s後 1s後 5s後
油入
変圧器
20 1.7 28.3 16.8 12.8 5.7 4.2 1.9
30 2.6 43.3 25.7 19.6 8.8 6.4 2.9
50 4.4 64.8 40.5 31.4 14.2 10.1 4.7
75 6.6 76.0 47.5 36.8 16.6 11.9 6.6
100 8.7 94.7 59.2 45.8 20.7 14.8 8.7
150 13.1 117 77.0 60.5 27.5 20.2 13.1
200 17.5 146 95.6 75.1 34.1 25.0 17.5
300 26.2 218 146 119 57.9 40.9 26.2
500 43.7 308 212 178 86.5 62.5 43.7
750 65.6 462 325 274 137 101 65.6
1.000 87.5 616 433 366 183 135 87.5
1,500 131 755 542 472 259 189 131
2,000 175 896 672 616 364 252 175
モールド
変圧器
10 0.9 15.6 9.2 7.0 3.2 2.3 1.0
20 1.7 27.2 16.2 12.3 5.5 4.0 1.8
30 2.6 41.6 24.7 18.9 8.5 6.2 2.8
50 4.4 62.0 38.7 30.0 13.6 9.7 4.5
75 6.6 88.7 55.4 43.0 19.4 13.9 6.6
100 8.7 111 73.1 57.4 26.1 19.1 8.7
150 13.1 151 99.0 77.8 35.4 25.9 13.1
200 17.5 190 125 98.2 44.6 32.7 17.5
300 26.2 252 169 138 66.8 47.2 26.2
500 43.7 420 295 249 125 91.8 43.7
750 65.6 504 354 299 150 110 65.6
1,000 87.5 616 443 385 212 154 87.5
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●高圧コンデンサの充電電流
系統に進相用のコンデンサがありますと、しゃ断器投入時に、過渡的な充電電流が流れます。変圧器の励磁突入電流に比べると、線路定数が小さな値のため、時定数は極めて小さく、すぐに減衰してしまいます。したがって、OCRの瞬時要素の動作時間レベルの0.02~0.05秒ではすでに、定常状態となり、OCRが動作することは考えられません。しかし、ピーク時は数10倍~100倍にもなることがあり、この電流の電圧降下(すなわち電圧)によって、CT の2次側のフラッシュオーバ事故を引き起こしたり、電力ヒューズを含んでいる回路では溶断や劣化の可能性もあります。
●充電電流の大きさ
ある条件下での充電電流を参考としてあげます。
変圧器励磁突入電流(三相):6,600V
コンデンサ
容量
(kVA)
定格
電流
(A)
電線径
(想定)
時間経過後の電流値(A) 6%リアクタンスを挿入
t=0の
最大値
0.05s後 0.1s後 0.5s後 1s後 5s後 リアクタンス
容量
(kVA)
t=0の
最大値
10
20
50
75
100
200
500
750
1,000
0.9
1.7
4.4
6.6
8.7
17.5
43.7
65.6
87.5
2.6mm2
2.6mm2
2.6mm2
3.2mm2
4mm2
22mm2
50mm2
80mm2
100mm2
149
249
336
428
503
736
1,226
1,548
1,819
1.3
2.3
5.2
12.5
38.2
146
544
929
1,383
0.9
1.7
4.4
6.7
10.5
40.3
256
564
1,057
0.9
1.7
4.4
6.6
8.7
18.2
82.0
233
636
0.9
1.7
4.4
6.6
8.7
17.5
43.9
72.0
105
0.9
1.7
4.4
6.6
8.7
17.5
43.7
65.6
92.9


3
4.5
6
12
30
40
60


5.9
8.9
11.7
23.6
58.9
88.3
118
注. 計算上での条件
1. 電線自長は1km
2. 周波数は60Hz
3. 電圧は6,600V

上表は、コンデンサに線路定数を通して電圧の波高値が印加された時の過渡電流と、定常状態に流れている交流電流とを加算した最大値を示しています。過渡電流は、コンデンサ容量と線路定数で決まる固有周波数の高周波電流となり、右図のように、減衰波形となっています。
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