レーザマーカは、レーザビームのパワーで対象物表面に文字や2次元コードを印字する機器です。インクのようにほかの物質を付着させるのではなく、対象物の表面を加工するので、印字された文字などは半永久的に消えることはありません。ここではレーザマーカの概要を解説します。
概要 |
レーザマーカとは、レーザのエネルギーを用いて、物質表面に文字や図形を非接触でマーキングするレーザ加工装置です。近年のレーザマーカは、コンピュータ上のグラフィックツールで文字や図形などのマーキングデータを編集することが可能です。また、マーキング用途のほか、穴あけや切断、トリミングなど、微細加工用途にも広く使用されています。
適用業界
レーザマーカは自動車部品への2次元コードの印字や、電子部品/電機製品のロゴ、ロットナンバーの印字など、さまざまな業界で活用されています。
レーザマーカで加工するメリット
(1)消えない・はがれない信頼性の高い加工・マーキング
レーザ光によって、対象物に直接物理的な加工を施すため、消えたり、はがれたりすることがなく、製造履歴や工程管理などの重要な情報のマーキングに適しています。
(2)高品質・微細な加工・マーキング
非接触だから、対象物の変形や破損が抑制され、高品質な微細加工・マーキングができます。
(3)生産性向上に貢献する高速加工・マーキング
レーザマーカによる加工・マーキングは他の手段に比べ加工速度も速く、工程も簡単です。さまざまな工法の中でも、より生産性向上に貢献できます。
(4)定期的なメンテナンスが不要 ランニングコストはほぼ電気代
レーザマーカによる加工・マーキングは、インクの補充や清掃、刃の交換や研磨といった定期メンテナンスが不要です。ランニングコストはほぼ電気代のみです。
(5)幅広い材質、多種多様な加工内容に対応
金属や樹脂、フィルム材など、さまざまな材質に加工できます。( ただし、加工の成否はレーザの種類や特性で決まります。)
また、ロゴや図形などの画像、形式やシリアル番号などの文字、2次元コードなど多種多様な内容をマーキングできます。
(6)環境にやさしい加工・マーキング
インクと違って溶剤を一切必要とせず、印刷時に発生するラベル台紙などの廃棄物も発生しません。
他加工との比較表(例)
レーザマーカ | インクジェット | ラベル | スタンプ | 刻印機 | 液体処理 | |
接触/非接触 | 非接触 | 非接触 | 接触 | 接触 | 接触 | 接触 |
耐久性・改変性 | ○半永久 | ×消える | ×はがれる | ×消える | ○半永久 | ○ |
微細度 | ○ | △ | △ | × | △ | ○ |
工程 | ○簡単 | △乾燥必要 | △別工程必要 | △乾燥必要 | ○ | ×別工程必要 |
印字内容の変更 | ○簡単 | ○簡単 | ×ラベル変更要 | × | △ | × |
在庫管理 | ○不要 | ○不要 | ×ラベル在庫 | ○不要 | ○不要 | ×ロット生産 |
廃棄物・環境影響 | ○ほとんどなし | ×インク | ×ラベル台紙 | ×インク | ○ほとんどなし | ×液処理課題 |
ランニングコスト | ○ほとんどなし | ×インク消耗 | ×ラベル | ×インク消耗 | ×接触部品交換 | ×液処理課題 |
レーザマーカは、グラフィックツール上で編集したマーキングデータをもとに、レーザ光を制御・走査することで加工・マーキングを行います。平面上に印字する2D式や、平面だけでなく立体形状にも印字できる3D式のレーザマーカがあります。
●2D(Fθレンズ)式の例
ガルバノメータ・スキャンミラーでレーザ光を走査し、マーキングを行います。
Fθレンズと呼ばれるレンズで加工面に集光します。
●3D式の例
ガルバノメータ・スキャンミラーでレーザ光を走査し、マーキングを行います。
Fθレンズに代わる焦点レンズを前後に動かすことで、XYだけでなくZ方向にも集光点を移動させることができます。
レーザマーカの種類は、搭載するレーザ発振器の特性で区別されます。
代表的には、1.06μmの固体(YAG、YVO4)レーザマーカやファイバレーザ発振器を搭載したレーザマーカ、10.6μmのCO2レーザ発振器を搭載したレーザマーカ等があります。
また、波長を変換することで得られるSHG、THGといった発振器を搭載したレーザマーカも特殊な用途で使われています。
代表的な波長 | レーザマーカ名称 | レーザ媒質 | 特長 |
基本波 1.06μm | 固体(YVO4) レーザマーカ | Nd:YVO4 | YVO4の場合は、細かい文字や精密加工など 熱を加えない加工に向いており、YAGは大きな出力で 熱を加える加工に向いています。 |
固体(YAG) レーザマーカ | Nd:YAG | ||
ファイバレーザマーカ | 希土類添加ファイバ | ファイバレーザはその発振原理からコンパクト、 高効率で大きなパワーが得られるという特長があります。 | |
第2高調波 (SHG) 0.53μm | SHGレーザマーカ | 基本波レーザを非線形 光学結晶で1/2波長に 変換 | 基本波レーザを波長変換することで得られ、これらの 波長における吸収率の高い材料では、熱影響の 低い加工、微細な加工が可能となります。 反面、ランニングコストを含め高コストとなりがちです。 |
第3高調波 (THG) 0.355μm | UV(THG) レーザマーカ | 基本波レーザを非線形 光学結晶で1/3波長に 変換 | |
10.6μm | CO2レーザ | CO2(炭酸ガス) | CO2レーザは固体やファイバレーザと比べ波長が長く、 透明体に吸収されやすい性質をもっているため、 ガラスなどへの加工に適しています。 |
レーザ光による加工は、加工対象物の素材やその表面層がレーザ光を吸収することで可能になります。レーザ光の波長に対する吸収率は物質(素材)によって異なり、素材によっては吸収率の高いものや低いものがあります。比較的波長が短いファイバ・YAG・YVO4レーザの場合は、CO2に比べて各種金属材料に対する吸収率が高く、金属加工に適しています。
レーザ波長と代表的な金属への吸収特性