Page top

本文

電力・機器用保護機器 モータ・リレー概要


モータ・リレーは、モータ保護リレーとも呼ばれモータ(誘導電動機)の過負荷、誤接続などからモータを保護するために使用する継電器です。ここでは、モータ・リレーの概要を示します。

関連情報


モータ・リレー(3Eリレー)とは

モータはたくさんの種類がありますが、産業設備の動力用として代表的なものに三相誘導電動機があります。
モータの故障は、修理が完了するまでの間、生産、環境に影響する場合もあるため、日常管理が大切です。
故障にもさまざまな要因がありますが、モータに過電流が流れると、内部のコイルが焼損し故障に至る場合があります。
過電流は、三相交流電源の1つの相が何らかの原因で切れた(欠相)した場合やモータの能力以上の力がかかった(過負荷)の場合などに発生します。
また、モータに加わる電源の相順が逆(反相)になることで、モータの回転方向が逆になり故障に至る場合もあります。
このような状態からモータを保護する機器がモータ・リレーです。保護する項目によっては、保護条件を設定できるものもありモータの状況により調整することができます。なお、設定する値を整定値と表現される場合があります。

モータで想定される故障(事故)とそれを検出するための代表的な異常検出要素を以下に示します。

モータ保護の目的

モータ保護の目的は次の2つです。
(1) モータ自身の保護(焼損防止)
(2) モータにつながる負荷の被害を最小限にとどめる
なお、(2)の場合には、モータよりもその負荷を念頭においてモータ・リレーの選定をする必要があります。

誘導電動機の保護

誘導電動機の保護対策に対する各種保護機器の検出可否は以下の通りです。埋込型保護リレーは、電動機内蔵したサーミスタの出力を用いて電動機を保護しますが、サーミスタを内蔵した電動機は一般的ではありません。そのため、用途の少ない単相電動機を除いた電動機に過負荷、欠相、反相の3つの検出要素(Element)を1つのリレーで保護か可能な3Eリレーが三相誘導電動機の保護には主に使用されます。これがモータ・リレーです。なお、漏電、地絡については漏電遮断器などを使用することが一般的です。

誘導電動機の保護対策と各種保護機器の検出一覧

適用リレーサーマルリレー飽和リアクトル
付きサーマル
リレー
2E式
サーマル
リレー
速動形
サーマル
リレー
保護対策2素子付き3素子付き
過負荷標準
責務
一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機×
間欠
運転
一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機
拘束一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機
配電系異常欠相運転(焼損防止)
三相不平衡運転
短絡
過・不足電圧
漏電×××××
地絡
反相×××××
適用リレー埋込形(PTC
サーミスタ式)
保護リレー
モータ
ブレーカ
3E(4E)リレー
保護対策一般電動機
保護用
水中電動機
保護用
過負荷標準
責務
一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機
間欠
運転
一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機
拘束一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機
配電系異常欠相運転(焼損防止)
三相不平衡運転×
短絡×
過・不足電圧×
漏電××◎(4E)◎(4E)
地絡×◎(4E)◎(4E)
反相××

注. ◎:確実に保護可能
  ○:ほとんどの場合に保護可能
  △:条件付き保護可能
  □:保護不可能な場合が多い
  ×:保護不可

推奨形式

反相
検出
方式
過負荷検出特性過負荷・
反相検出
後の復帰
形式特徴
モータ・リレー
(3Eリレー)
電流
*1
反限時手動形K2CM-□□□・モータ・リレー、カレント・
 コンバータ一体
・ネジ取付
・過負荷検出、欠相検出ともに
 各相で検出条件を満足すれば動作
・形SEより過負荷検出では不要動作
 しにくい
自動形K2CM-□□□A
瞬時
(起動時ロック)
手動形K2CM-Q□□□
自動形K2CM-Q□□□A
電圧反限時手動形K2CM-□□V
自動形K2CM-□□AV
瞬時
(起動時ロック)
手動形K2CM-Q□□V
自動形K2CM-Q□□AV
反限時手動形SE-KP□N・モータ・リレー、カレント・
 コンバータ分離 *2
・プラグイン形
 DINレールおよびネジ取付
・過負荷検出、欠相検出ともに
 カレント・コンパレータ
 (形SET-3□)との組み合わせ
 による三相全波整流での検出
自動形SE-KP□AN
瞬時
(起動時ロック)
手動形SE-KQP□□N
自動形SE-KQP□AN
反限時手動形SE-K□N
自動形SE-K□AN
瞬時
(起動時ロック)
手動形SE-K□QN
自動形SE-K□QAN
逆転防止リレー形APR-S・電圧検出方式の三相モータ
 逆転防止に特化したリレー
・プラグイン形
 DINレールおよびネジ取付
カレント・センサ
(モータ過電流
リレー)
反限時自動形SAO-R□N・電圧検出方式の三相モータ
 過負荷検出に特化したリレー、
 カレント・コンバータ分離 *2
・プラグイン形
 DINレールおよびネジ取付
瞬時
(起動時ロック)
形SAO-Q□N
瞬時形SAO-S□N
瞬時
(不足電流)
形SAO-SU□N
反限時形SAO-RS□N・電圧検出方式の単相モータ
 過負荷検出に特化したリレー、
 カレント・コンバータ分離 *2
・プラグイン形
 DINレールおよびネジ取付
瞬時
(起動時ロック)
形SAO-QS□N
瞬時形SAO-SS□N

*1. 電流歪の影響により誤検出する場合があります。
*2. カレント・コンパレータは、形SET-3をご使用ください。
   カレント・コンパレータを使用する形式は、電流歪の影響により過負荷要素で不要動作する場合があります。

過負荷要素

モータに過電流が発生する要因の1つとしてモータの能力を超える負荷が発生する場合があります。
モータに過電流が長時間流れるとモータ内部の電線が焼けてしまいます。
したがって、過電流が発生した場合、モータの電源を遮断し保護しなければなりません。しかし、誘導電動機は一般に、図1のように起動時に500%程度の過電流が数秒~数十秒の間流れます。もしこの時に過電流を検出し、モータの電源を遮断するとモータの運転ができません。このためモータ・リレーでは、起動時の電流に対する考慮が必要となります。

反限時動作特性

図2はモータの過熱特性を示すI2t曲線で、この曲線の下側の範囲であればモータは焼損せず、十分使用できることを示しています。この例では、モータに500%の過電流が流れても40秒であれば使用可能であるため、もし電流値が半分の250%になれば

となり、4倍の160秒までであれば保護できることになります。同様に100%のときは、上の計算式に従えば

となり、1000秒となりますが、100%は連続運転可能な定格電流であるため、この式は適用されません。
以上から、図2の曲線の下側の曲線に沿って、大きな電流が流れた場合は早く、小さな電流だと長い時間で動作するような、いわゆる反限時動作特性を選定する場合があります。

瞬時動作

異常状態により過電流で設備や製品に被害が発生したり、被害の増大につながる場合は、過電流を瞬時に検出することが必要となります。このように一定時間で動作するものを、瞬時動作特性と呼んでいます。この場合も、モータ起動時の過電流を考慮しておくことが必要です。
また、起動時間の間検出を行わない起動ロック機能を搭載している場合もあります。

過負荷要素には、動作値と動作時間の要素が必要ですが、これらの考え方は以下の通りです。

  • 動作値
    JEM 1357「静止形保護継電器」の規格には、動作値は、電流整定値の105~125%の範囲内であることと定めてあり、モータ・リレーの各メーカも一般的にこれに準拠しています。したがって、特に指定のないモータにはこの規格を参考に設定してください。
  • 動作時間
    同じくJEM 1357の規格には、電流整定値の600%過電流で40秒以下、200%過電流で4分以下と定めてあります。
    また、JIS B 8324「深井戸用水中モータ・ポンプ」のモータ保護として「全負荷電流の5倍の電流を通じて5 秒以内に動作すること」と規定されています。したがって、一般にモータ・リレーは、500%過電流にて数秒~数十秒の動作時間の種類があります。

図1. モータの起動電流

図2. モータの過熱特性と保護曲線

欠相検出要素

三相電源の電源線が断線したり、接続部のゆるみ、制御用開閉器の接触不良、機器内部の断線などによって、一部の電圧(相)が欠落している状態を“欠相”と呼んでいます。
欠相した状態で、三相誘導モータを起動するとモータが回転せずに起動電流が流れ続けるために、過負荷要素によって検出し、モータの焼損を防止することができます。しかし、正常に運転している状態で欠相した場合、負荷が軽ければ三相誘導モータは単相誘導モータとして回転を継続することができます。
欠相時の電流分布を図3に示す通り欠相状態には、結線モータ、△結線モータの電源相欠相と△内部の欠相の3つがあります。このとき電源線に挿入した過負荷要素だけでモータの焼損が防げるかどうかについて以下に説明します。

(1)結線モータの欠相

図3(a)のように電源線に流れる電流とモータの巻線に流れる電流はどこで断線しても同じです。よって、もし欠相が発生し過電流が流れても電源線の過負荷要素が検出するのでモータが焼損することはありません。また、モータの負荷が軽い場合は、モータの電流が小さいため過負荷要素は検出せず焼損にも至らず、軽負荷運転を継続します。

(2) △結線モータの外部欠相

図3(b)の場合、正常時に巻線に流れる電流をIとすれば電源線に流れる電流は当然√3I、すなわち、巻線の定格電流がInとすれば電源線の定格電流は√3Inで、過負荷要素は√3In<√3Iを監視することで、等価的に巻線の電流がIn<Iを監視していることになります。
ところが(b)の欠相状態となるとI=Inとなったときの電源線の電流は3/2Inで、これは当然3/2In<√3Inもしくは1.5In<1.732Inとなり、したがって、モータの負荷状態によっては巻線は過電流となっても電源線は定格電流以下であるために過負荷要素は動作せず、巻線が焼けてしまう可能性があります。
よって、このような場合にモータの焼損を防止するためには、欠相を検出することが必要となります。

(3) △結線モータの内部欠相

図3(c)の場合、I1とI2は正常時と同じく、位相差は120°ですからV相電源線電流はこれも正常時と同じ√3Iとなり、またU、W相の電流は各々I1、I2となって電源線から見た場合、巻線に正常時より過電流が流れることで、過負荷要素が検出し焼損からモータを保護できます。
したがって、(1)の結線と同様のことがいえます。

図3. 欠相時の電流分布

これまで、欠相に対するモータの焼損保護という観点で説明しましたが、軽負荷ではモータがそのまま運転を継続していると、負荷の増加による停止や、外れた電線が装置筐体などに接触して感電事故、短絡事故につながる可能性もあります。
よって、欠相の検出はモータ保護の観点だけでなく事故防止の観点からできるだけ早く欠相を検出することが必要です。
以上から、欠相要素を搭載したリレーを設置することが一般的です。

だたし、欠相要素は注意が必要です。
図3(a)、(b)においては正常時U、V、W相の電流は平衡ですが、欠相すると欠相した相の電流は完全に零で、他の2相に過電流が流れます。この場合図4(a)に示すように欠相の前後でベクトル関係は大きく変化します。
ところが、図3(c)の場合ですと、図4(b)のようなベクトル変化となり図4(a)に比べて変化が少ないことがわかります。
実際に図3(c)の場合は図3(a)、(b)に比べて欠相の検出が難しくなります。
一般的に、図3(a)、(b)のような状態を欠相、(c)の場合を△内部欠相と呼んで区別しており、欠相検出可能というのは(a)(b)の場合をさしていますので、△結線モータ(1.5kW以上で多い)をお使いの場合には注意が必要です。

図4. 欠相時の電源線電流ベクトル図

欠相事故と電流変化を図に示します。図中の回路パターンNo.2、3、5では相電流の増加が線電流の増加と比較して大きくなっており、線電流の過負荷検出では故障を検出できない場合があることを示しています。
なお、弊社のモータ・リレーでは欠相検出感度が固定になっているため、欠相による過電流に対する動作整定の検討は必要ありませんが、難しい故障現象ですので一例を紹介します。

欠相事故と電流変化

また、図5のように変流器を使わず、モータの電圧で欠相を検出する方式もありますが、この場合、欠相検出用の接続点よりモータ側で欠相した場合に検出できません。また、電源側欠相であっても、軽負荷運転中の欠相はモータ端子電圧があまり低下せず検出できない場合があります。
この場合には、電流方式を選定することとなります。

図5. 電流方式欠相要素の優位性

反相要素

三相誘導電動機は、相順が逆になるとモータの回転方向が反対になります。よって、場合によっては設備が故障する場合もあります。このために、モータに加わる電源の相順が逆になると直ちにこれを検出する要素が“反相要素” です。

この場合にも欠相検出と同じように電流方式と電圧方式が考えられます。
電圧方式の場合、図6のようにマグネット・コンタクタより電源側に反相要素を接続すると、モータを起動させる前に検出ができるという利点があります。
しかし、電圧方式はモータ・リレーへの配線が1本増え、さらに高圧の場合はVTを1個追加する必要がある欠点があります。
一方、電流方式の場合は、モータに流れる電流の相順を直接判定する利点がありますが、モータに電圧が供給されるため高速で遮断しても逆回転する可能性があります。
据付型設備のモータでは保守時の接続や、変更可搬型設備のモータでは移動後の接続が発生し、誤配線の可能性が想定されるためリスク軽減には反相検出が有効です。

図6. 反相要素の電圧電流方式比較

3Eリレー

3Eリレーとは、モータ保護として主に使用される過負荷要素、欠相要素、反相要素の3つの要素を搭載したリレーを呼びます。
過負荷検出でモータ保護の大部分をカバーできます。過負荷の確実な保護のためには、3Eリレーの動作値整定、および動作時間整定を正しく行うことが必要です。

保護協調

保護協調とは、事故を検出し、事故区間のみを切り離し、他の健全回路を守ることができるように、機器の損傷を防止と合わせて、直列、並列に接続された遮断器など複数の保護装置間の動作値(タップ、整定値)、動作時間を相互に調整(協調)することをいいます。
モータの保護協調を考える場合、回路に接続されている機器相互の協調を検討することが必要です。
保護機能を発揮させるための検討事項と保護協調曲線の作成手順は以下の通りです。

電磁開閉器・開閉容量は必要十分か
・短絡電流通電に耐えるか。
ノーヒューズ
遮断器(MCCB)
・短絡電流を遮断できるか。
・モータの始動電流で誤動作しないか。
分岐回路の電線・MCCBが遮断するまでの時間短絡電流に耐えるか。
・MCCB、サーマルリレーまたは3Eリレーの動作するまでの時間、過負荷電流に耐えるか。
サーマルリレー
または3Eリレー
・電動機の過負荷、拘束時の保護ができるか。
・MCCBまたはPFと過電流保護協調がとれているか。

保護協調曲線の作成

保護協調曲線の正しい例と、正しくない例を図に示します。

モータを保護するための注意点

モータおよびモータ・リレーの使用上で注意点はいくつかありますが、ここでは欠相時の電圧降下、モータ電流波形の歪(ひずみ)、力率改善用コンデンサの配置、モータ電流の不平衡についてモータ・リレーのしくみを交えて説明します。

欠相時の分圧について(欠相設定とマグネット・コンタクタ接続上の注意)

単純に考えると欠相(断線)が発生すると、電圧が0Vになったことを検出すれば実現できると思いがちですが、注意が必要です。
図7の回路構成でV相が欠相した例では、モータの巻線XとYのインピーダンスよりも、V-W間に接続されたマグネット・コンタクタの励磁コイルとU-V間に接続されたモータ・リレーの電源回路のインピーダンスが大きいため、U-W間の定格電圧が分圧され、U-V間、V-W間にはそれぞれ約1/2がそれぞれ加わることが分かります。
よって、この状態でモータを欠相から保護するためには、モータ・リレーが定格電圧の1/2で欠相検出するか、定格電圧の1/2で遮断するマグネット・コンタクタ選定することになります。
しかし、定格電圧の1/2で遮断するマグネット・コンタクタだけを選定しても、励磁コイルをU-W間に接続した場合のV相欠相では、励磁コイルは定格電圧が供給されるため遮断せず、モータの保護ができません。
そのため、モータ・リレーに 定格の1/2未満で欠相検出する設定をするか、定格電圧の1/2で遮断するマグネット・コンタクタの励磁コイルをV-W間に接続する必要があります。

図7. 欠相時の電圧降下、進相コンデンサの位置

モータ電流の波形歪
送風ファン用モータ電流波形の例

図のように、モータの稼働環境により電流波形が歪んでいる場合があります。
過電流の検出を繰り返すような場合は、整定値を見直すことも必要です。

力率改善用コンデンサの設置位置

モータは、巻線による力率を改善するために進相用コンデンサを挿入する場合があります。この状態でモータの負荷が軽いと高調波が発生する場合があり、条件によっては計測誤差により欠相、反相回路が誤動作する場合があります。多くの場合は誤動作するようなことはありませんが、誤動作を極力回避するために図7に示す通り、カレント・コンバータより電源側にコンデンサの設置を推奨します。

モータ・リレーのしくみ

当社 形SEを例にモータ・リレーのしくみを説明します。

カレント・コンバータ

カレント・コンバータは、電流の大きさに応じて電圧を出力する変換器です。モータ・リレーはカレント・コンバータで変換された電圧を電流として計測します。カレント・コンバータは電流を回路に適した大きさに変換する変流器(CT)、三相それぞれのCTの2次電流を合成する整流回路、合成された電流を整定タップに応じて直流電圧に変換する電流タップ整定回路が入っています。
モータの電流に応じて、電流タップを適正に選択することで精度よく電流を計測できます。
入力電流が10Aの場合、カレント・コンバータに電線を2回巻くことで20Aが入力されることになり、入力電流に応じて巻数を調整することで過電流検出が可能となります。

図8. 形SE 静止形モータ・リレー(反限時タイプ)内部ブロック図

過負荷要素

過負荷は過電流を検出することで判断します。
カレント・コンバータの出力は、モータ・リレー本体の7(C+)、8(C-)端子〔数字はプラグイン形の場合の端子番号、( )内は埋込形の場合の端子番号です〕に入り、電流目盛整定回路で動作値を7段階で整定できます。過電流が発生していると、過電流検出回路が時間整定回路に信号を出力します。
この時間整定回路は、保護する内容に応じて図9に示す反限時特性と図10に示す瞬時動作特性があり、モータ・リレー選定の際には注意が必要です。

過電流検出回路は、図9に示す反限時特性に基づき過電流の大きさに応じた動作時間で動作します。
過電流検出回路は、電流整定値の600%の電流が流れた時の動作時間を1~10秒の範囲で設定できます。また、時間倍率用スイッチにより4倍に変更することで、1~40秒の範囲で設定できます。
瞬時動作動作型の場合は、モータ起動時の過電流による誤検出への配慮が必要です。このため、図10に示す通り時間整定回路と合わせて起動時ロック時間整定回路を搭載しています。
起動時ロック時間整定回路は、モータ電流が定格値の約30%以上を一定時間経過後に動作時間整定回路を動かします。
このため、モータ起動時に過電流が発生しても過電流を検出しません。
過電流整定回路は、瞬時特性を持っており、モータを起動して一定時間が経過した後電流整定値の140%過電流が発生すると0.5s以下で動作します。

図9. 過負荷動作時間特性(参考値)

図10. 形SE静止形モータ・リレー(瞬時タイプ)内部ブロック図

出力リレーの動作について

(手動復帰形)

形SE: 出力リレーは機械的に自己保持して停電しても手動復帰させるまでは動作したままです。
形K2CM: 出力リレーはラッチングリレーを採用しているため、停電してもロックしたままです。復帰には電源が必要です。

(自動復帰形)

整定を下まわれば自動に復帰します。(ただし欠相要素と併用してご使用になる時は、欠相した場合、操作電源が低下するのでU、Vへの供給電源はモータの電源と別電源にしてください。上記の理由により反相要素は使えません)

欠相要素

図11(a)は正常時の整流出力波形、(b)は欠相時、(c)は△結線モータの相内欠相時の波形です。これから正常時は直流分が大きく、交流分が小さいことが分かります。一方で、欠相時は直流分が小さくで交流分が大きいことが分かります。
よって、これらの特性に応答する回路を構成すれば欠相検出できることがわかります。

図11. カレント・コンバータの出力波形

図12は、直流分と交流分の特性(第2調波)の成分を取り出すフィルタ回路と2つの成分から欠相を検出する特性を持たせた比較回路です。
これらの回路の動作時間特性は図13に示すように、電流値にあまり関係なく約1.5秒となっています。

図12. 欠相検出回路の構成

図13. 欠相動作特性

欠相検出は、直流分と交流分の特性成分で検出をしていることを説明してきましたが、この特性が不平衡率の関数と近似していることが確認されています。よって、欠相検出と不平衡検出が同一とみなすと、モータ・リレーは不平衡率が約35%のとき動作するよう整定されています。この動作不平衡率と電流の関係を図14に示します。
横軸の電流値は、3相の電流のうちもっとも大きい相の電流値を示しています。

図14. 不平衡動作特性

反相要素

図15に構成図、図16にベクトル図を示します。欠相検出は、抵抗器、コンデンサ、移動レベル検出回路で構成され、反相検出回路にて動作値レベルに達したことを検出し動作します。
反相要素があるモータ・リレーを反相要素不要な用途で使用すると、モータ・リレーの電源がU-V間の場合、先ほどの抵抗とコンデンサにより反相レベル検出回路の誤動作につながります。よって、反相要素が不要な場合は、反相要素のない形式を使用してください。

図15. 反相検出回路の構成

図16. 反相検出回路のベクトル図

周辺機器との接続

図17(a)、(b)に各々の外部接続の一例を示しています。
反相要素を使用しない時は端子3(W)の接続は不要です。

  • モータ・リレーの接続極性(相順)、カレント・コンバータの電流極性を間違えない
    (反相要素検出不要時の反相要素「切」設定時を除く)
  • マグネット・コンタクタの励磁コイルとモータ・リレーの電源端子はU-W間など同じ相に入れる
  • 進相用コンデンサはカレント・コンバータより電源側に入れる
  • カレント・コンバータとモータ・リレー本体との接続は極性を間違えない
  • 大電流線とモータ・リレーおよび配線はできる限り離隔する
  • モータ・リレーの配線はマグネット・コンタクタの前に入れるとモータ起動前に反相検出ができて有利

図17.(a)-△起動モータの場合の外部接続

図17.(b)高圧モータ無電圧引きはずしの場合の外部接続

モータ電流の不平衡

モータ電流の不平衡率が20%程度を超えると△内部欠相検ができない可能性があります。モータの稼働状況により変化しますので実際に計測して確認することを推奨します。
参考として、簡単な不平衡率の計算法を説明します。
対称座標法によると三相の電流を各々またベクトルオペレータを

と定義され、三相電流、電圧の不平衡の程度を示す尺度として使用されます。しかし、この計算は面倒ですから次に示す不平衡率計算表を用いると簡単に不平衡率が求められます。
図18は三相入力の3つの絶対値を知ってその不平衡率を求めるためのグラフです。
たとえば三相交流入力のA相の電流IA=50A、B相の電流IB=35A、C相の電流IC=45Aであったとすると、電流IAを基準にとり、電流IAで他の相の電流を除して、

を求めます。そして右側縦軸のKB=0.7の位置よりでる円弧Bおよび左側縦軸のKC=0.9の位置よりでる円弧Cとの交点P1を確認します。点P1は不平衡率20%を示す円上に位置するから、この場合の不平衡率は20%と判断されます。
また、IA=50A、IB=65A、IC=50Aのときは、KA=1.0、KB=1.3、KC=1.0となり、この場合、各々よりの円弧の交点はP2であり、この点P2もほぼ不平衡率20%の円上にあるので不平衡率は20%と判断されます。このようにKB、KCからでる円弧の交点が不平衡率の20%の円上にある組み合わせにおいてはすべての不平衡率は20%となり、同一不平衡となる組み合わせは無数にあることがわかります。
同様にD1~D8はすべて不平衡率25%の組み合わせを表わしています。
ここで△P1XYを考えてみるとすなわち△P1XYは、のベクトル図を示しています。

図18. 三相電流、電圧の不平衡率計算図表


最終更新日:2024年03月01日