Page top

本文

電力・機器用保護機器 概要


電力・機器用保護機器は、産業用機械や生産設備の電源主回路の状態監視を行い、過電流、過電圧、漏電、欠相、逆相などの異常から機器を保護するための機器です。ここでは、電力・機器用保護機器の概要を解説します。

関連情報


保護機器の概要

過電流保護継電器とは

過電流継電器(OCR=Over Current Relay)は、電路の短絡や負荷の過負荷による過電流を変流器(CT)により取り出し、その電流値の大きさによって動作する継電器です。
一般に、JIS C 4602(高圧受電用過電流継電器)に規定される過電流継電器が使用されます。

過電流継電器には瞬時要素と限時要素の2つの動作要素があり、瞬時要素は契約最大電力の500~1,500%の電流を検出して動作します。限時要素は、電流の大きさが大きくなるに従って早い時間で動作するように反限時特性をもち、瞬時要素は短時間の定限時特性をもっており、どちらの要素が働いたかは継電器自身が備えている動作表示器で区別がつき、事故処理に役立ちます。

地絡継電器とは

地絡継電器は電路におけるケーブル・電気機器の絶縁が劣化、または破壊し、アーク地絡・完全地絡を起こし、電路と大地間が接触する事故を検出する継電器です。
この継電器は電力の受電側で地絡事故が発生した場合、受電側のみしゃ断して事故を限定化し、上位である配電用変電所への波及を未然に防ぐ目的で使用されます。
この保護目的のため上位(電力会社の配電用変電所)との保護協調を必要とします。

継電器としては、事故電流を零相変流器(ZCT)で検出し、その大きさのみで動作する地絡継電器(GR=Ground Relay)と事故電流をZCT、および零相電圧検出装置(ZPD)の組み合わせで検出し、その大きさと両者の位相関係で動作する地絡方向継電器(DGR=Directional Ground Relay)の2種類に大別されております。一般的にはGRが多く使用されておりますが、最近では設備内ケーブル長が長くなる場合が多いため、他回線事故での誤動作防止として、DGRが使われる場合が多くなっています。

電圧継電器とは

異常電圧には発電機の故障による電圧の急上昇や、停電または短絡による電圧低下などがあります。
電圧継電器は交流回路の電圧変動に応じて、電圧があらかじめ設定した状態に達したとき、これを検出して動作する継電器です。
基本的な動作の区別としては過電圧検出、不足電圧検出の2種があります。

過電圧継電器(OVR)

電圧が設定値を超えたとき、接点動作を行い、警報あるいは、しゃ断器の引きはずしなどの動作を行う継電器です。

不足電圧継電器(UVR)

電圧が設定値以下になったとき、動作する継電器です。
主な用途としては、電圧低下保護、配電線の短絡故障検出などに用いられます。

モータ・リレーとは

モータといってもたくさんの種類がありますが、産業設備の動力用として最も普及しているのは三相誘導電動機で、これを保護するものを単にモータ・リレーと呼んでいます。
モータの保護は重要です。
異常を早く検出してモータ自身とそれにつながる負荷の被害を最小限にくいとめ、深井戸ポンプ用など取り換えに非常に手数のかかるものは焼損しないように保護しなければなりません。
モータへの小型化・軽量化などの要求が厳しくなり、重要度が増すにつれて、それを保護するモータ・リレーにもだんだん高性能、高信頼度が要求され、従来の単純なサーマル形から静止形(トランジスタ形)へと移行しています。

系統連系用保護機器とは

CGSとは

CGS(Co-Generation System)とは、分散型電源のひとつでガスエンジンやガスタービンなどの原動機により発電機を駆動し、電力を構内負荷に供給すると共に、原動機の排熱を利用して暖房・給湯あるいは冷房を行うものです。エネルギーの総合効率を高めるシステムで、熱併給発電システムと呼ばれます。21世紀に向かってのエネルギービジョンとして、通産省資源エネルギー庁が中心となり、複合エネルギー時代の幕開けと提唱されている自家発電システムです。

なぜ連系用保護継電器が必要か

従来の受電端の保護システムでは、需要家構内事故(短絡・地絡)のみに対応して、受電端のしゃ断器を動作させていました。
しかし、電力系統に連系される分散型電源においては

  1. 公衆および作業者の安全確保と、電力供給設備または他の需要家の設備に悪影響を及ぼさないこと。
  2. 供給信頼度と電気の品質の面で、他の需要家に悪影響を及ぼさないこと。

を実現する必要があります。すなわち、需要家構内事故のみでなく、電力系統側の停電や事故においてもこれを検出し、発電機を系統から解列しなければなりません。

具体的には

  1. 発電機から系統の事故点に事故電流を供給させない。
  2. 逆潮流を許容しない場合は、系統側に電力を送出させない。
  3. 系統での再開路時に、両者の電圧を非同期状態で結合させない。

などがあげられます。このシステムは、資源エネルギー庁からの「電力系統連系技術要件ガイドライン」に示されており、これに適合している場合に電力系統への連系が可能になります。

連系用保護継電器は、連系する系統の種類(高圧連系か特高連系か)・分散型電源需要家の発電機の種類(同期発電機か誘導発電機か)・系統の重要度によって、設置しなければならない機種が決まります。
あらゆる条件下の系統事故を確実に検出するものでなければなりません。

連系用保護継電器構成例(高圧受電需要家・同期発電機)

事故形態による継電器の動作

次の表は、それぞれの継電器がどの事故に対して動作するのかを簡単に示したものです。
このようなマトリックスにより検証を行い、必要な機種を選定します。

機種名称保護目的設置相数等の条件構内事故系統側事故動作させる
しゃ断器
(例)
地絡短絡地絡短絡断線・
停電
OCR-H過電流
継電器
構内設備の過負荷・
短絡事故検出
2相受電端CB
OCGR地絡
継電器
構内設備の地絡
事故検出
1相(零相回路)構内
設備の対地静電容量
が大きい時はDGR
DGR地絡方向
継電器
1相(零相回路)
OVGR地絡過電圧
継電器
系統側の地絡事故
の継続検出
1相(零相回路)零相
電圧検出はコンデン
サ形が基本

*1
発電機CB
UVR不足電圧
継電器
系統側の短絡事故・
停電検出
3相
*1

*2
OVR過電圧
継電器
発電機の制御異常
による系統過電圧
検出
1相 発電機自体に
保護装置があれば
省略できる
DSR方向短絡
継電器
系統側の短絡事故
検出
3相を基本とする
同期発電機の場合
に必要
RPR逆電力
継電器
系統側への逆潮流
検出
1相
*3
UFR不足周波数
継電器
上位送電側事故時
の周波数低下検出
1相 逆電流がなく、
RPRで高速に保護
できれば省略できる

*2
OFR過周波数
継電器
電圧低下による負荷
脱落時の周波数上
昇検出
UPR不足電力
継電器
系統側の短絡事故・
停電検出
2相
*4
△f周波数急変
検出継電器
系統側の停電検出1相

*1. 継電器は検出しますが、電力系統側(変電所)保護継電器と時間協調をとっているため動作に至りません。
*2. 発電機容量と系統の負荷のバランスがとれていると動作しないことがあります。
*3. 電圧が極端に低下(至近端短絡の場合)すると動作しないことがあります。
*4. 変電所の地絡方向継電器の動作により、系統が停電となり、動作します。
注. 線路無電圧確認装置省略に伴うシステムの二重化を行う場合は、1つの事故に対して2つ以上の継電器が動作する必要があります。

各継電器の整定例

次に連系用保護継電器の標準的な整定について示します。
最終的には、電力会社への連系申請時に行う系統故障計算およびそれに基づく協調確認によって決まります。

機種整定例背景
動作値動作時間
OCR-H配電用変電所OCRと協調が
とれること
従来の受電端保護と同じ
OCGR零相電流:0.2A(JIS C 4601で
規定する時間)
DGR零相電流:0.2A
零相電圧:5%
0.2s
OVGR零相電圧:10%5s配電用変電所の同バンク・他フィーダーの
DGRと協調をとる
UVR不足電圧:85V2s配電用変電所の同バンク・他フィーダーの
OCRとの時間協調をとる
OVR過電圧:125V2s
DSR電流:*1、不足電圧:90V0.7s配電用変電所の同バンク・他フィーダーの
OCRとの時間協調をとる
RPR逆電力:発電機容量の10%*20.5s*3
UFR不足周波数:
定格周波数-1Hz
1s
OFR過周波数:定格周波数+1Hz1s
UPR不足電力・契約電力の10%0.5sCGS需要家の最小消費電力以下とする

*1. フィーダー送り出し点の2相短絡時に、発電機より流出する電流値以下とする必要があり、次の計算によります。

*2. RPRはは受電端CTに接続されますので、逆電力整定値は、となります。
*3. 発電機の並列投入時の動揺時間を考慮してください。

その他連系用保護継電器として要求される事項

「ガイドライン」では、分散型電源設備が系統に与える影響の重要性から、連系用保護システムおよび継電器の機能に次の項目を要求し、信頼度を高めています。

線路無電圧確認装置省略に伴うシステムの二重化

「ガイドライン」では、分散型電源需要家負担で変電所に線路無電圧確認装置(再閉路時、線路の電圧有無を確認する装置)の設置を義務付けています。しかし本装置の設置は、同系統に複数の分散型電源需要家が存在する場合の問題や設置コストの問題で困難な状況です。このため、系統が停電状態である時、発電機を系統から確実に解列させる継電器を二重化することによって、本装置を省略できるとされています。二重化実現のための手段として、UPRの設置も認められています。この場合は、二相に設置することが必要です。

継電器の制御電源は専用の直流回路で供給

連系用保護継電器への制御電源は、専用の直流回路で供給しなくてはなりません。これは電源の供給信頼性を確保すると共に、系統の短絡事故時にも動作する必要があるからです。
(計器用変成器VTの電源では短絡時に、出力電圧がなくなってしまいます。)

地絡継電器の概要

受電用GRの選択

地絡事故点の有効な選択しゃ断のためには、系統条件の相違によって設置するGRをOCGR(地絡過電流継電器)またはDGR(地絡方向継電器)のいずれかを選択します。

継電器の選択手順

零相変流器(ZCT)の地絡電流監視

回路に流れる電流の大きさは、単相でも三相でも行き帰りは同じです。地絡事故が起きますと、行きと帰りに差ができます。この差により、ZCTに磁束が誘起し二次側に電流が流れます。その電流を継電器が検出し監視します。低圧でよく使用される漏電ブレーカも、この原理で構成されています。

零相電圧検出装置(ZPD)の電流方向監視

地絡事故が発生しますと、ZPDに発生する零相電圧Voと、ZCTで検出する零相電流Ioの方向(位相)は、自己回線では事故電流が電源側から負荷側に向かって流れます。
一方、他回線では、事故電流が負荷側から電源側に向かって流れます。このことを利用して、事故の発生した回線のみを選択しゃ断します。

地絡保護協調

地絡保護協調は、地絡保護継電装置を運用する上で、最も重要な概念といえます。
保護協調とは、回路に事故が発生した場合、事故回路のしゃ断器以外は動作しないよう動作協調をとり、健全回路の給電を維持すること、および負荷機器や回路機器が損傷しないよう各機器の動作特性を調整・配置することをいいます。

地絡電流、電圧感度協調

地絡故障は、地絡点の位置、地絡点の形態によって発生する零相電圧、零相電流はさまざまです。

OCGRの感度協調

ZCTの検出する零相電流の大きさが自回線故障と他回線故障が異なることを原理として、回線選択する方法です。
図1はそのようすを示します。

図1. OCGR・DGRの位相特性

この場合、次の関係が満足されなければOCGRは誤動作をおこす可能性があります。
 IR≧2 Ic
  IR:継電器整定値
  Ic:構内対地充電電流
  2 :余裕係数
そして、前式が満足できない場合には、DGRを使用することが必要になってきます。つまり、ケーブルのこう長が長い需要家では、OCGRの協調が無理ということになります。
キュービクル受電等での高圧の線路こう長の短い場合には、OCGRで十分保護協調が可能です。

ケーブルこう長と充電電流の関係を図2に、ケーブルの静電容量を表2に示し、継電器整定に対するケーブルこう長の限界を表1に示します。

表1. ケーブルこう長限界目安

公称断面積(mm2)0.2A整定の場合(m)0.4A整定の場合(m)
8135270
14115230
22100200
3885170
6070140
10060120
15050100
20050100
2504795

(CVケーブル 50Hz 6,600V)

図2. ケーブルこう長と充電電流

DGRの感度協調

DGRの感度協調は零相電圧要素が入ってきます。零相電流の感度協調はOCGRとまったく同じです。
零相電圧の感度は、配電線のどの場所でも、故障時に発生する零相電圧は同じ値です。
短絡電流のように、末端の故障時ほど故障電流が小さいということはありません。したがって零相電圧の感度だけでは多くの場合、故障点を選択しゃ断することはできませんが、末端機器ほど感度を上げる(段協調の一般的通念)という形は軽微な地絡は末端でしゃ断し、変電所のGRはその後備保護という形態になっています。ですから、重地絡保護の場合には、零相電圧の感度協調だけではなく、他回線との間では位相判定が必要であり、自回線ではシリーズに入っているGRとの時間協調が必要になります。
継電器の零相電圧-零相電流特性上に地絡故障点をプロットしたものが図3です。

表2. ケーブルの静電容量一覧表

電圧(kV)形状公称断面積(mm2)高圧架橋ポリエチレンケーブルJIS
C 3606-1987(CV)
静電容量(μF/km)
6.63芯
(3芯一括~
アース間)
8
14
22
38
60
100
150
200
250
0.63
0.75
0.84
0.99
1.17
1.41
1.65
1.62
1.77
単芯8
14
22
38
60
100
150
200
250
0.21
0.25
0.28
0.33
0.39
0.47
0.55
0.54
0.59
3.33芯
(3芯一括~
アース間)
8
14
22
38
60
100
150
200
250
0.63
0.78
0.90
1.11
1.14
1.41
1.65
1.62
1.77
単芯8
14
22
38
60
100
150
200
250
0.21
0.26
0.30
0.37
0.38
0.47
0.55
0.54
0.59

*参考
 充電電流算出式
  Ic=2πfCE(A)
   Ic:3線一括充電電流(A)
   f:周波数(50Hzまたは60Hz)
   C:3線一括静電容量(F)
   E:対地電圧(V)=線間電圧/√3

図3. DGRの感度協調例

位相協調

通常のケースでは、ほとんど問題にはなりません。また一般に市販されているDGRも位相特性は固定されています。
継電器の位相判別は、自回線か他回線かの方向判断をします。

モータ・リレーの概要

モータ・リレーに必要な機能

モータ・リレーを使用する目的は次の2つに分類できます。
(1) モータ自身の保護(焼損防止)
(2) モータにつながる負荷の被害を最小限にとどめる。
(この場合、モータよりもその負荷を念頭においてモータ・リレーの選定をする必要があります。)
以上の(1)および(2)を満足するために、モータ・リレーは次の3つの機能を持っています。

次に、この3つの要素についてもう少し詳しく説明しましょう。

過負荷要素

モータが過負荷になり、過電流が長時間流れるとモータは焼けてしまいます。
したがって、過電流が流れるとただちにこれを検出してモータの電源をしゃ断し、モータを保護しなければなりません。
しかし、誘導電動機は一般に、図1のように起動時に500%程度の過電流が数秒~数十秒の間流れます。もしこの時にモータの過負荷要素がはたらくと、モータを起動するとすぐしゃ断することになってモータの運転ができません。このためモータ・リレーには、モータに流れている電流が定格値を超えているかどうかを検出する“過電流要素”の他に、過電流の継続時間がモータの起動時間内であれば動作せず、それより長く過電流が継続した場合は動作させるための“時間要素”が必要になります。すなわち、モータ起動時にモータ・リレーが誤動作することを避けるための手段として時間要素が必要ということです。
時間要素が必要なもう一つ積極的な理由があります。
図2はモータの過熱特性を示すI2t曲線で、この曲線の下側の範囲であればモータは焼損せず、十分使用できることを示しています。この例ですと、モータに500%の過電流が流れても40秒であれば使用可能ですから、もし電流値が半分の250%になれば

となり、4倍の160秒までOKということになります。同様に100%のときは、上の計算式に従えば

となり、1000秒しかもたないことになりますが、100%というのは定格電流ですから連続運転可能で、この式は適用されません。
ですからこの曲線は正確にI2tを示すものではなく、ほぼI2tということです。
さて、モータ自身はこのように過電流が流れてもすぐに焼けるわけではなく、ある程度の時間は許されるわけで、少なくとも起動電流、起動時間程度の過負荷には耐えるわけです。したがって、モータをその限界まで使用した方が得策であるという観点にたてば、モータ・リレーが過電流でも直ちに動作するのは好ましくなく、図2の曲線の下側の曲線にそって動作するように、大きな電流が流れた場合は早く、小さな電流だと長い時間で動作するような、いわゆる反限時特性と呼ばれる時間特性をもつ方が望ましいわけで、これが過負荷要素に時間要素を付加する積極的な理由です。これによって、少しでも過負荷になるとモータ・リレーがすぐ動作して停止してしまうという不要な運転停止が防げるわけです。
ところでこの積極的な理由は、用途によってはない方が良い場合もあります。たとえば、負荷は定まったもので定格電流以上流れるということが負荷の異常状態であることが明確な場合は、過電流が流れると直ちにモータの電源をしゃ断してしまわないと負荷に被害が発生したり、被害が増大してしまいます。こういった、負荷を保護する用途は過負荷要素の動作時間は早ければ早い方が望ましいわけです。もちろん、この場合でも起動時には過大な起動電流が流れますから、起動時は一定時間動作せず、その後は瞬時に動作する機能をもつ過負荷要素が必要で、これを普通、瞬時形と呼んでいます。
さて、いままで過負荷要素には電流値を検出する要素と時間要素の2つの要素が必要なことを説明しましたが、この電流、時間の値はいくらに定めれば良いでしょうか。

  • 電流値について:
    JEM 1357「三相誘導電動機用誘導形および静止形保護継電器」の規格には、動作値は、電流整定値の105~125%の範囲内であることと定めてあり、モータ・リレーの各メーカも大部分がこれに準拠しています。したがって、特に指定のないモータにはこの規格で充分です。
  • 時間について:
    同じくJEM 1357の規格には、電流整定値の600%過電流で40秒以下、200%過電流で4分以下と定めてあります。
    また、JIS B 8324深井戸用水中モータ・ポンプのモータ保護として「全負荷電流の5 倍の電流を通じて5 秒以内に動作すること」と規定されています。したがって、一般にモータ・リレーは、500%過電流にて数秒~数十秒の動作時間の種類があります。

図1. モータの起動電流

図2. モータの過熱特性と保護曲線

過負荷要素のまとめ

  1. 過負荷要素の電流要素は定格値で動作せず、125%で動作するよう定めるのが一般的である。時間は、500%過電流時に数秒~数十秒程度でモータの起動時間より長めに選択する。普通は反限時特性といって電流値が大きくなると早く、電流が少ないと長い時間かかって動作するような時間特性である。
  2. 時間要素は、起動時およびその後の運転時とも同じ時間特性で動作するものと、起動時のみ時間遅れをもち、運転時は瞬時動作としてモータにつながる負荷の保護をねらったものとがあり、後者は一般に瞬時形と呼ばれている。

欠相検出要素

モータの電源線が断線したり、接続部のゆるみ、制御用開閉器の接触不良、モータ内部の断線などによって、本来、三相電圧で運転されるべきモータが単相で運転されている状態を“欠相”と呼んでいます。
停止している誘導電動機は単相では回転を始めませんので、欠相状態で起動すると起動電流がいつまでも流れ続けるために、先に述べた過負荷要素によって検出され、モータ自身の焼損は防止することができます。ところが正常に運転している最中に欠相しても単相状態になると、ご存知のように負荷が軽ければ三相誘導電動機は単相誘導電動機として回転を継続することができます。
図3を見てください。結線モータの場合と△結線モータの電源相欠相、△内部の欠相の3つの状態があります。このとき電源線に挿入した過負荷要素だけでモータの焼損が防げるかどうかを考えてみましょう。

(1) 結線モータの欠相
図3(a)のように電源線に流れる電流とモータの巻線に流れる電流はどこで断線しても同じです。したがって、もし欠相を発生して過電流が流れても電源線の過負荷要素が検出するので、モータが焼損することはありません。さらに、またモータの負荷が軽くて過電流に至らない場合は過負荷要素は検出できませんが、モータも電流が小さいため焼損するには至らず、軽負荷運転を継続します。

図3. 欠相時の電流分布

(2) △結線モータの外部欠相
図3(b)のような場合はどうでしょう。正常時に巻線に流れる電流をIとすれば電源線に流れる電流は当然√3I、すなわち、巻線の定格電流がInとすれば電源線の定格電流は√3Inで、過負荷要素は√3In<√3Iを監視することによって等価的に巻線の電流がIn<Iでないかどうかを監視しているわけです。
ところが(b)の欠相状態となるとI=Inとなったときの電源線の電流は3/2Inで、これは当然3/2In<√3Inもしくは1.5In<1.732Inというわけで、したがって、モータの負荷状態によっては巻線は過電流となっても電源線は定格電流以下であるために過負荷要素は動作せず、巻線が焼けてしまう可能性がありますので、このような場合にモータの焼損を防止するためには、別に欠相を検出する要素が必要となります。

(3) △結線モータの内部欠相
図3(c)の場合はどうでしょう。I1とI2は正常時と同じく│I1│=│I2│、位相差は120°ですからV相電源線電流はこれも正常時と同じ√3Iとなり、またU、W相の電流は各々I1、I2となって電源線から見た場合、巻線に正常時より過電流が流れているように見えますから、過負荷要素が検出し焼損の心配はないでしょう。
したがって、(1)の結線と同様のことがいえます。さて、いままで述べたのはモータの焼損を防止するという観点からの説明です。

図4. 欠相時の電源線電流ベクトル図

ところで欠相というのは異常状態です。運転中に欠相し、軽負荷でそのまま運転を継続するならそのままにしておくというのは不適切で、もう少し負荷が増えると停止するかもしれませんし、接続のはずれた導線が外被に接触して感電事故、短絡事故につながる可能性もあります。
異常状態は、直ちに検出して処置をするのが保護の原則ですから、単にモータの焼損を防ぐというだけでなく、この場合もできるだけ早く欠相を検出するのが原則です。
すなわち、単にモータの焼損を防ぐというだけでなく、軽負荷時でも欠相を検出するために、過負荷要素で検出すると非常に時間がかかるので、これを早く行うためなどの理由から図3(a)、(c)の場合でも欠相要素を設けるのが普通です。
欠相要素について、もう一つ注意をしておきましょう。図3(a)、(b)においては正常時U、V、W相の電流が平衡三相電流であったものが、欠相すると欠相した相の電源線電流は完全に零で、他の2相に単相の往復電流が流れます。この場合図4(a)に示すように欠相の前後でベクトル関係は大きく変化します。
ところが、図3(c)の場合ですと、図4(b)のようなベクトル変化となり図4(a)に比べて変化が少ないことが直感的にわかります。
実際に図3(c)の場合は図3(a)、(b)に比べて欠相の検出がやりにくくなります。
普通図3(a)、(b)のような状態を欠相、(c)の場合を△内部欠相と呼んで区別しており、一般に欠相検出可能というのは(a)(b)の場合をさしていますので、△結線電動機(1.5kW以上はこの方が多いですが)をお使いの場合、注意する必要があります。

図5. 電流方式欠相要素の優位性

また、図5のように変流器を使わず、モータの電圧で欠相を検出する方式もありますが、この方式だと、欠相検出用の接続点よりモータ側で欠相した場合は検出できず、また、電源側欠相であっても、軽負荷運転中の欠相はモータ端子電圧が、それほど低下しないため検出できない場合があるため、電流検出の方が圧倒的に有利です。

欠相要素のまとめ

  1. 過電流要素だけでは欠相時、モータの焼損を防止できない場合があり、欠相要素が必要である。
  2. 軽負荷時には欠相しても過電流といわれるほどの電流が流れないので、過負荷検出ができない。異常を早く検出するためには欠相要素が必要である。
  3. 一般には、欠相といわれるのは電源線の欠相であり、△内部欠相は検出できない場合が多いので注意が必要である。
  4. 電圧方式もあるが電流方式が有利である。

反相要素

三相誘導電動機は、相順が逆になるとモータの回転方向が反対になります。モータがどちらに回ってもかまわないという用途は、まずありませんし、時には一瞬でも逆に回るとモータの負荷に致命的打撃を与える場合があります。このために、モータに加わる電源の相順が逆になると直ちにこれを検出する要素が“反相要素” です。

図6. 反相要素の電圧電流方式比較

この場合にも欠相検出と同じように電流方式、電圧方式が考えられます。図6をみてください。図6のようにマグネット・コンタクタ前に反相要素を接続すると、反相はモータを起動させる前に検出できます。これによって先に述べたモータを一瞬でも逆転させないということが可能になります。この点、電流方式はいくら動作を早くしても0.5秒程度ですから、多少逆転するのはやむをえず、その意味では電圧方式が有利になります。しかし、電圧方式はモータ・リレーへの接続が1本余分になる欠点がありますし、高圧モータなどではVTを1個追加する必要があるなどの欠点もあります。また、電流方式はモータに流れる電流の相順を直接判定することができる利点がありますが、前にも述べたように検出に多少の時間を要する(モータが回転した後の検出となる)欠点もあります。
なお、いずれの場合も反相検出はその接続点(電圧検出の場合は接続した電源ラインの位置、電流検出の場合はCTを挿入した位置)のみの相順検出となりますので設置時にはその点にも注意をはらう必要があるでしょう。
ところでモータは、一度設置してしまえば相順が逆になることはきわめてまれで、反相要素が必要でない場合も多いものです。しかし、移動用電源のモータなどで接続変更の頻度の高いもの、保守点検時に接続変更するものなどについては、付加した方が良いでしょう。

反相要素のまとめ

  1. 反相要素は不要な場合も多い。
  2. 電圧検出は起動前に検出できる利点が、また電流検出はモータの電流相順を直接監視できる利点があるが、それぞれの欠点もある。

モータ・リレーの特異点

モータおよびモータ・リレーの使用上で注意しなければならない問題がいくつかありますが、ここでは欠相時の電圧降下、モータ電流波形の歪(ひずみ)、力率改善用コンデンサの配置、モータ電流の不平衡について説明しましょう。

欠相時の電圧降下(電源接続上の注意)

図7のようにV相で欠相(断線)しても、モータ・リレーおよびマグネット・コンタクタに加わる電圧は零になるのではなくて、U、W間の線間電圧Vuwがモータの巻線XとYで分圧され、そして通常、マグネット・コンタクタ励磁コイルおよびモータ・リレーの電源回路のインピーダンスはXとY巻線のインピーダンスに比べてかなり大きいので、ほぼ1/2Vuwの電圧が加わります。したがって、この状態でもマグネット・コンタクタがしゃ断するためには、モータ・リレーが定格電圧の半分の電圧でも欠相を検出して動作しうるようにするか、それができない場合はマグネット・コンタクタが1/2の電圧では保持できず、自動的に復帰してしまうように選定します。
ところが、もしマグネット・コンタクタの電源をモータ・リレーの電源とは別の相、たとえば図7ではモータ・リレー、マグネット・コンタクタとも、U、W相から電源をとっていますが、これをマグネット・コンタクタのみU、W相からとるようにするとマグネット・コンタクタにはV相が欠相しても定格電圧が加わったままで復帰せず、しかも、モータ・リレーには1/2の電圧しか加わらないのでモータ・リレーが動作できない場合は、保護が不可能となります。
そのため、モータ・リレーに 1/ 2の電圧でも動作するという条件をつけるか、配線に注意してマグネット・コンタクタに1/2の電圧では必ず復帰するという条件をつけるか、いずれにしても注意を要する事項となります。

図7. 欠相時の電圧降下、進相コンデンサの位置

注. モータの軽負荷運転中の欠相においては電圧は1/2まで下がりません。
  モータ側から正常に近い電圧が逆供給されます。
  この場合にはマグネット・コンタクタの釈放電圧に期待した保護はできません。

モータ電流の波形歪

送風ファン用モータ電流波形の例

図のように、モータに流入する電流は本来、正弦波のはずですが、水中モータとか使い古したものなどの中には、正常に運転できているモータでも電流波形が極端に歪んでいるものが観測されています。
モータ・リレーは、入力が正弦波であるという前提にたって設計されているために波形の歪によって、過負荷要素では動作電流値の誤差が増大したり、また、欠相、反相要素では誤動作の問題などが発生します。モータの電圧波形は一般に歪みが少ないので動作の早い反相要素などはこの点から電流方式より電圧方式の方が無難ということもできるでしょう。しかし、波形歪みの問題は各メーカとも検討を重ねて最近では方式による差はほとんどありません。

力率改善用コンデンサの設置位置

モータは、その力率を改善するために図7のようにモータと並列に進相用コンデンサを挿入します。モータの軽負荷時に流れる電流はほとんど無効分で、かなり高調波が混入しています。そして、これにコンデンサを並列接続して基本波成分をうち消すと高調波だけが残る結果となり、これが大きい場合は本来入力が50/60Hzの正弦波として設計されている欠相、反相回路などが誤動作しやすくなります。もちろん、大部分の場合の高調波電流は小さくて誤動作するようなことはありませんが、誤動作の確率をさげるためには図7のように、モータ・リレーより前にコンデンサを設置する方が無難です。
また、コンデンサをモータ・リレーの後に挿入すると、見かけ上モータ電流が減少することになり、モータ・リレーの過電流動作値はその分を見込んで設定する必要があるので面倒となりますから、この点からもモータに流れる電流だけをモータ・リレーに与える方が望ましいわけです。

静止形モータ・リレーの構造(当社 形SEの例で示します)

カレント・コンバータ

この中には、モータ電流をトランジスタ回路で使用しやすい大きさの電流に変換する変流器と、その変流器二次電流を三相全波整流するダイオードと、その整流された電流を直流電圧に変換する抵抗器が入っています。
特にこのカレント・コンバータはそれに内蔵されたタップを変更することによって、その抵抗値を3段階に変えることができ、モータ電流の広い範囲で使えるように工夫されています。
たとえばモータ電流が80Aのとき、カレント・コンバータの出力電圧を21Vにするためこの抵抗器が600Ωであったとすれば、40Aのときに21Vにするためには1,200Ω、また、20Aのときには2,400Ωの抵抗を接続することによってカレント・コンバータの出力電圧はいつも21Vになるので、したがって、モータ・リレー本体が21Vで動作するとすればみかけ上、このタップ変更により20A、40A、80Aのいずれでも動作するようにセットできるわけです。
(注. 電圧・抵抗値は一例を示すものです)
また、20Aで動作するようタップを選んだ時でも、カレント・コンバータにモータ電源線を2回巻けば、モータ電流10Aでもカレント・コンバータからみると20A流れているようにみえるので、10Aで動作させることができます。同様に4回巻けば5Aで動作させることができます。

図8. 形SE 静止形モータ・リレー(反限時タイプ)内部ブロック図

注1. 数字はプラグイン形の端子番号を表示し、( )内はパネルマウント形の端子記号を示す。
注2. 反相要素「切」で使用する場合は、端子③(W)の配線は不要。

過負荷要素

カレント・コンバータの出力は、接続線を通してモータ・リレー本体の7(C+)、8(C-)端子〔数字はプラグイン形の場合の端子番号、( )内は埋込形の場合の端子番号です〕に入り、電流目盛整定回路で分圧されて過電流検出回路に入ります。電流目盛整定回路は可変抵抗による簡単な分圧回路で、この分圧比率を変えることにより、電流動作値を変えることができ、この場合カレント・コンバータのタップを20Aとすると、この可変抵抗器のつまみを回すことで8A~20Aの範囲で動作値を整定することができるようになっています。もし、過電流が発生していると、過電流検出回路がこれを検出して次の時間整定回路をドライブします。
この時間整定回路は先に述べた反限時特性をもっており、図9のような時間特性です。

図9. 過負荷動作時間特性(参考値)

時間目盛倍率:×1

時間目盛倍率×4

この時間整定回路にも可変抵抗器がついていて、そのつまみを回すことにより電流整定値の600%の電流が流れた時の動作時間が1~10秒の範囲で変えることができます。
この他に時間倍率用スイッチがついて、この4倍、すなわち4~40秒とすることが簡単にでき、1~40秒の広い範囲に時間を整定できる特長があります。
過電流が整定時間以上流れるとOR回路を通じ出力回路により出力リレー(X)が励磁されてその接点X/cが切り替わり、それにつながる警報、しゃ断などの動作を行います。
なお、瞬時形のものは図10のように、モータ電流が定格値の約30%以上になるとモータが起動したとみなされて、起動時間回路が動作を始めますが、入力電流の大きさに関係なく一定時間は出力を出さないので、過電流検出回路が直ちに動作し出力を出してもAND回路出力はなく、動作しません。そして起動時間が過ぎると、モータ電流は定格値~定格値の50%程度の電流が流れますので、起動時間回路の出力は出たままです。
そしてその後、過電流が発生すると過電流検出回路が直ちに動作し、0.5秒以下で(X)リレーが動作します。

図10. 形SE静止形モータ・リレー(瞬時タイプ)内部ブロック図

(X)リレーの動作について

(手動復帰形)

形SE . . . . . . . (X)リレーは機械的に自己保持して停電しても手動復帰させるまでは動作したままです。
形K2CM. . . . . (X)リレーはキープリレーを採用しているため、停電してもロックしたままです。復帰には電源が必要です。

(自動復帰形)

整定を下まわれば自動に復帰します。(ただし欠相要素と併用してご使用になる時は、欠相した場合、操作電源が低下するのでU、Vへの供給電源はモータの電源と別電源にしてください。上記の理由により反相要素は使えません)

欠相要素

図11. カレント・コンバータの出力波形

図11(a)は正常時の整流出力波形、(b)は欠相時、(c)は△結線電動機の相内欠相時の波形です。これから正常時は直流分が大で交流分が小さく、しかも第6調波以上で周波数成分が高いことがわかり、欠相時は直流分が小で交流分が大きく、しかもその交流分は第2調波がもっとも大きいことがわかります。したがって第2調波/直流分もしくは、交流分/直流分の比に応答するように構成すれば欠相検出できることが直感的に理解できます。

図12. 欠相検出回路の構成

そしてこの静止形モータ・リレーはこの原理を応用したもので、図12のようにカレント・コンバータの出力(正確にはそれを分圧したもの)の中から直流分だけをとり出すフィルタと第2調波成分だけをとり出すフィルタとを設け、その比がある値を超えた時に欠相と判定するようになっています。そしてこの欠相時の動作時間特性は図13に示すように、電流値にあまり関係なく約1.5秒となっています。

図13. 欠相動作特性

ところで、第2調波成分/直流分はほぼ不平衡率の関数であることが確認されています。したがってこのモータ・リレーは、欠相検出というより不平衡検出として設計されており、不平衡率が約35%のとき動作するよう整定されています。この動作不平衡率が電流値によってどう変わるかを図14に示しています。

図14. 不平衡動作特性

横軸の電流値は、3相の電流のうちもっとも大きい相の電流値を示しています。欠相検出回路から出力が出ると図8のOR回路を通して同様に(X)リレーが働きます。

反相要素

図15に構成図、図16にベクトル図を示します。抵抗器とコンデンサで構成されているOR位相回路で検出された反相信号を、反相検出回路にて動作値レベル(制御電源電圧の80%以下)に達したことを検出しています。反相検出回路の出力はORを通してリレーを動作させます。ところでモータ・リレーの電源はU、V相からとられていますので、反相要素が不要なとき端子3(W)の接続をはずせばいいかというと、結果は逆でVuvがRP1とCC1で分圧され、分圧された電圧がトランジスタに加わって動作することがあります。もちろん、入力電圧が小さいと動作しない場合もありますが不確定ですから、この場合は反相要素のないものに変える必要があります。
なお、このモータ・リレーは50/60Hz共用ですからVdeは正常時でも完全に零とはなりませんが、正常時と反相時のVdeの差が大きいために充分安定に動作するようになっています。

図15. 反相検出回路の構成

図16. 反相検出回路のベクトル図

外部接続

図17(a)、(b)に各々の外部接続の一例を示しています。もちろん反相要素を使用しない時は端子3(W)の接続は不要です。

  1. マグネット・コンタクタの励磁コイルとモータ・リレーの電源端子(U、V)相を同じ相に入れる方がよい。
  2. 進相用コンデンサはカレント・コンバータより電源側に入れる。
  3. カレント・コンバータとモータ・リレー本体との接続は極性を間違えないようにする。この接続後に流れる電流は通常数mA、最大数十mAですから接続線の電流容量には特に留意する必要はなく、電圧も通常は数十V 以下、過電流時でも400V以下ですから600V絶縁電線でも問題ありません。ノイズなどについても、特に気をつかう必要はありませんが、大電流線とはできる限り離隔することが望ましい。
  4. 電圧端子(U、V、W)への相順を間違えないこと、反相要素が不要の場合(反相要素切」)はU、Vだけですから相順は関係ありません。
  5. U、V、Wへの配線はマグネット・コンタクタの前に入れる方がモータ起動前に反相検出ができて有利です。

図17. (a)-△起動モータの場合の外部接続

図17. (b)高圧電動機無電圧引きはずしの場合の外部接続

モータ電流の不平衡

モータ電流の不平衡率は普通では数%程度ですが、多年使用したものやV結線変圧器を通してモータに電源が供給されている場合などでは10~20%以上の不平衡が観測されています。
次ページの参考に簡単な不平衡率の計算法を示していますので、測定してみてください。もし20%をこえる場合は△内部欠相検出は不可能な場合があります。

参考

不平衡率について

対称座標法によると三相の電流を各々またベクトルオペレータを

と定義され、三相電流、電圧の不平衡の程度を示す尺度として使用されます。しかし、この計算は面倒ですから次に示す不平衡率計算表を用いると簡単に不平衡率が求められます。
図18は三相入力の3つの絶対値を知ってその不平衡率を求めるためのグラフです。
たとえば三相交流入力のA相の電流IA=50A、B相の電流IB=35A、C相の電流IC=45Aであったとすると、電流IAを基準にとり、電流IAで他の相の電流を除して、

を求めます。そして右側縦軸のKB=0.7の位置よりでる円弧Bおよび左側縦軸のKC=0.9の位置よりでる円弧Cとの交点P1を確認します。点P1は不平衡率20%を示す円上に位置するから、この場合の不平衡率は20%と判断されます。
また、IA=50A、IB=65A、IC=50Aのときは、KA=1.0、KB=1.3、KC=1.0となり、この場合、各々よりの円弧の交点はP2であり、この点P2もほぼ不平衡率20%の円上にあるので不平衡率は20%と判断されます。このようにKB、KCからでる円弧の交点が不平衡率の20%の円上にある組み合わせにおいてはすべての不平衡率は20%となり、同一不平衡となる組み合わせは無数にあることがわかります。
同様にD1~D8はすべて不平衡率25%の組み合わせを表わしています。
ここで△P1XYを考えてみるとすなわち△P1XYはのベクトル図を示しています。

図18. 三相電流、電圧の不平衡率計算図表

モータ保護

モータ回路の故障には様々なケースがあり、それらの故障を保護するためには、その目的に適した保護機器を用いなければなりません。モータの事故内容と保護方式を次に示します。
モータの保護機器には、3Eリレー、サーマルリレー、モータブレーカ等種々のものがありますが、それ等をまとめて次に示します。
モータの保護機器は、各々いくつかの特異的な機能を有しています。しかし、それらの機能も正しく運用されなければその能力を発揮することはできません。そのためには、保護目的に合った保護機器を選ぶ必要があります。

誘導電動機の保護

誘導形のモータも種々のタイプがあり、故障現象も様々です。
それぞれのタイプに適した保護機器の一覧表を次に示します。

誘導電動機の保護目的と適用保護継電器

適用リレーサーマルリレー飽和リアクトル
付きサーマル
リレー
2E式
サーマル
リレー
速動形
サーマル
リレー
保護対策2素子付き3素子付き
過負荷標準
責務
一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機×
間欠
運転
一般かご形電動機
単相電動機巻線形
電動機
水中電動機
拘束一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機
配電系異常欠相運転(焼損防止)
三相不平衡運転
短絡
過・不足電圧
漏電×××××
地絡
反相×××××
適用リレー静止形 3E(4E)リレー埋込形(PTC
サーミスタ式)
保護リレー
モータ
ブレーカ
保護対策一般電動機
保護用
水中電動機
保護用
過負荷標準
責務
一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機
間欠
運転
一般かご形電動機
単相電動機巻線形
電動機
水中電動機
拘束一般かご形電動機
単相電動機
巻線形電動機
水中電動機
配電系異常欠相運転(焼損防止)
三相不平衡運転×
短絡×
過・不足電圧×
漏電◎(4E)◎(4E)××
地絡◎(4E)◎(4E)×
反相××

注. ◎:確実に保護可能
  ○:ほとんどの場合に保護可能
  △:条件付き保護可能
  □:保護不可能な場合が多い
  ×:保護不可

3Eリレーによる保護

モータの保護機器としては、種々のものがありますが、特に3Eリレー(過負荷要素、欠相要素、反相要素)によるモータ保護について説明します。

過負荷保護

過負荷要素はモータ保護機能で、この要素が正常に発揮されればモータ保護の大部分がカバーできます。過負荷の確実な保護のためには、3Eリレーの動作値整定、および動作時間整定を正しく行うことが必要です。
保護機能を発揮させるための保護協調曲線は次の手順で作成します。

モータ保護協調

モータの保護協調を考える場合、回路に接続されている機器相互の協調を検討することが必要です。以下に検討事項を列記します。

電磁開閉器・開閉容量は必要十分か
・短絡電流通電に耐えるか。
ノーヒューズ
しゃ断器(MCCB)
・短絡電流をしゃ断できるか。
・モータのラッシュ電流で誤動作しないか。
分岐回路の電線・MCCBがしゃ断するまでの時間短絡電流に耐えるか。
・MCCB、サーマルリレーまたは3Eリレーの動作するまでの時間、過負荷電流に耐えるか。
サーマルリレー
または3Eリレー
・電動機の過負荷、拘束時の保護ができるか。
・MCCBまたはPFと過電流保護協調がとれているか。

保護協調曲線の作成

保護協調曲線の正しい例と、正しくない例を図に示します

正しい保護協調曲線

正しくない保護協調曲線

欠相保護

欠相状態とは、モータの電源線の断線や接続部のゆるみ、開閉器の接触不良、モータの内部断線などによって、モータが単相運転された状態をいいます。この状態になりますと、モータの線電流の増加と比較して相電流の増加が著しく、巻線の温度上昇が許容値を超えてモータ焼損にいたるケースが発生します。このような場合は、過負荷検出ではなく欠相検出によって保護しなければなりません。欠相事故と電流変化を図に示します。この図のポイントは、図中の2、3、5のケースでは相電流の増加が線電流の増加と比較して大きくなっており、この場合には線電流の過負荷検出では故障を検出できない場合が生じるということです。
欠相検出感度は固定になっていますので、ユーザサイドにおける協調のための動作値整定は必要ないのですが、難しい故障現象ですので一例を紹介しました。

欠相事故と電流変化

欠相状態回路パターン運転状態の欠相電流と負荷率始動電流
欠相時の温度上昇
線電流相電流
電源直接欠相No.1
86.6
No.2
86.6
△相内欠相No.3
I2=100(%)
I1、I3=58(%)
変圧器一次側欠相No.4
I3=100(%)
I1、I2=50(%)
No.5
電圧不平衡No.6-
-

反相保護

相順が逆ですと、モータの回転方向は逆になります。反相要素は電源の相順を検出し、反相の場合にモータ始動をロックします。
相順検出は、一度正しく設置すれば不要となりますので、モータの保護としては副次的な要素ですが、負荷の保護などに有効です。

保護協調と保護継電器

保護協調とは

保護継電器を説明する上で保護協調という言葉が数多く使われています。
保護継電器の役割は電力系統の事故(故障)が発生した場合、事故を検出し、すみやかに事故区間を切り離し、他の健全回路を守ることにあるから事故による異常を継電器が検出、判断、そして処理する過程において他の健全回路が誤って動作しないよう、保護機能が相互に協調をとりながら健全回路へ給電を継続すること、ならびに負荷機器、回路機器、および開閉路が損傷しないように保護機器の保護レベルを調整し役割を果たすことを保護協調といいます。保護協調の中には電力を送るケーブルの保護協調、電圧を変換する変圧器の保護協調といったように目的、用途により協調の意味する内容が変わります。たとえば、需要家設備における過電流継電器(OCR)と配線用しゃ断器(MCCB)の保護協調を考えた場合、保護協調の考え方は次のようになります。

保護継電器と配線用しゃ断器の保護協調

保護協調は先ほど述べたように事故が発生した場所をすみやかに切り離し、健全回路を確保することにありますので、前述のような設備を考える上での各機器における協調特性は下図のように保護協調特性を配慮し、万一、事故点(1)で事故が発生した場合は必ずMCCB-1で回路をしゃ断し、上位に事故が波及しないように設計、部品の選択をします。

項目内容
事故点(1)事故点(1)で事故が発生した場合は必ずMCCB-1で保護しなければ事故の波及が上位のMCCB-0を
動作させ、MCCB-0以下が全停電となります。
事故点(2)事故点(2)で発生した場合はOCRで守り、上位への波及を防ぎます。

保護協調のとり方を簡単に説明しましたが、さらに保護を細分化して下位を考えた場合、事故発生箇所をいかにくいとめ、上位への波及を保護するかということです。

回路

このためMCCB-5 から見たMCCB-4 は上位で、さらにMCCB-3はその上位にあります。このように上位の保護装置が設備保護装置で一般的にはバックアップと呼ばれ、上位に行くほど広範な回路保護を必要とし、しゃ断特性も遅くなるように保護協調をとっています。
しかし保護協調を考える場合、まだまだ数多くの検討項目が残っています。それは、各MCCBから見た場合の負荷の突入電流であり、短絡電流にも破損しないような線路の選択であり、OCRとトランスの熱特性などの協調です。
詳細につきましては専門書をご参照していただくとして、以下に保護協調の基本的事項を記載しました。

保護協調特性

保護協調の基本的検討事項

保護協調を考慮する場合に検討しなければならない基本的事項には下記のものがあります。

  • 機器、ケーブルなどの過電流耐量や過電圧耐量。
  • 変圧器、電動機、コンデンサ等の負荷機器に発生する突入電流や始動電流。
  • 保護継電器や保護装置の動作特性。

以上の項目を、保護協調曲線用紙上にプロットしたときに満足しなければならない原則的な事項としては次のものがあります。

  • しゃ断器のしゃ断容量は、設置点の短絡電流以上であること。
  • 保護装置の動作時間は、線路や機器の損傷時間よりも短いこと。
  • 保護装置は、変圧器の突入電流や電動機の始動電流で誤動作しないこと。
  • 直列に入っている保護装置相互では電源側に近い程、時限を長くとるなどの処置をして故障の極限化を計る。

保護協調曲線の作成

保護協調曲線用紙に次の内容を記入していきます。

1系統図・保護対象の単線結線図
・線路、機器の特性
・保護装置の整定タップ値
2保護対象の特性・保護対象の過電流耐量、突入電流
3事故電流・事故点を想定して算出された事故電流
・保護装置への入力
4保護装置・保護装置の特性 (保護協調がとれるように図上で検討)
・上位および下位からの制約条件

系統図の記入方法

系統図は協調曲線用紙の右上部に単線結線図にて記入します。

記入するデータ
・主回路機器、負荷
・ケーブル
・保護機器
記入事項
系統電圧
しゃ断器(CB)定格しゃ断容量、全しゃ断時間
配線用しゃ断器(MCCB)定格電圧、定格電流
気中しゃ断器(ACB)定格電流
変流器(CT)定格、変流比
ケーブル種別、太さ
変圧器(T)定格容量、電圧、%インピーダンス、タップ値
電動機(IM)定格容量、電流、始動電流
過電流継電器(OCR)整定タップ値(電流、時間)
地絡継電器(GR)整定タップ値(電流、電圧、時間)
静止形モータリレー(3E)定格電流、整定タップ値(電流、時間)
熱動形継電器(THR)定格電流、整定タップ値
電力ヒューズ(PF)定格電流

保護対象

保護対象の主なものには下記のものがあります。

  • 線路  :ケーブル
  • 負荷機器:電動機、変圧器

これらの特性については個別の保護協調のところで説明します。

短絡電流の算定

過電流保護の基礎となるのは系統の短絡電流の算定です。
短絡電流の算定には%インピーダンス法が一般的に利用されていますが、詳細な内容については専門書を参照してください。
この方法は以下に示す手順で処理されます。

%インピーダンスを求める式

または

と、異なる基準容量の%Zに変換することができます。

短絡電流Isを求める式

短絡電流計算手順

注1. 受電点より電源側の%Zは、短絡容量Ps(電力会社より提示)とすれば次のようになる。
    %Z=100P/Ps
 2. 変圧器のインピーダンス。
   主として1次電圧および変圧器容量によって決まる。
 3. 電動機のインピーダンス。
   %Zは約20~25%として考える。
   高圧モータは事故時に、短時間は発電機として作用するので短時間の事故現象には注意を要する。
 4. 配線のインピーダンス。
   %インピーダンスは、リアクタンス分Xと抵抗分Rを考慮する。

保護装置

受電盤などに使用する保護装置には、過電流継電器をはじめ種々のしゃ断器、パワーヒューズなど、その保護目的に応じて各種ありますが、保護協調を考える場合これらの機器の特性を十分検討しなければなりません。

保護装置の検討事項

(1)過電流継電器(OCR)

  • 上位継電器と下位継電器との間の時間協調(段協調)。
  • 限時特性。
    時間特性曲線(限時特性、瞬時特性)にて、OCRとPFまたはMCCBなどの保護機器との関係、ならびにOCRと被保護機器限界曲線との関係。

過電流継電器保護協調曲線

(2)電力用ヒューズ(PF)

  • 許容電流時間特性。
    下位の保護機器や負荷機器の特性とヒューズエレメントの劣化のない限界値特性。
  • 溶断特性。
    ヒューズエレメントの溶断しはじめる電流・時間特性。
  • しゃ断特性。
    上位保護機器との関係。

電力用ヒューズ(PF)保護協調曲線

(3)気中しゃ断器(ACB)
AC1,000V未満、DC3,000V以下の回路に使用の場合の主な特性。

  • 長時間引きはずし:過負荷保護5~30s(コイル定格の600%)
  • 短限時引きはずし:過負荷保護0.1~1s(整定目盛の250%)。
  • 瞬時引きはずし:短絡保護。

気中しゃ断器(ACB)保護協調曲線

電動機保護協調曲線

(4)配線用しゃ断器(MCCB)

  • 定格電流5,000A 以下、AC600V以下、DC750V以下。
    個々の特性はメーカ提示。

配線用しゃ断器(MCCB)保護協調曲線

(5)熱動形継電器(THR)

  • 過負荷保護特性。
    モータの熱持性との関係。
  • 欠相保護特性。
    欠相による電流不平衡との関係。

熱動形継電器保護協調曲線

線路の過電流保護協調

線路保護協調について説明します。

保護協調曲線の作成

保護協調曲線を次の手順で作成します。

短絡電流の計算

%インピーダンス法で短絡電流を計算します。図中の系統のインピーダンスマップは下図のようになり、このマップから求めたA母線、B母線における短絡電流は下記のとおりとなります。

ここに
 XSA=XS+XT1=4%
 XSB=XS+XT1+XT2=16%
ここで計算したIは6.6kV側の換算値です。

保護協調の検討

協調曲線上に必要なデータが記入されると、各データ間で正しく協調がとれているかを検討します。

OCの協調はとれているか

  • 隣接するOC の時限は次の関係を満足すること。
    Tn+1=Tn+Bn+On+1

On+1の慣性動作時間は、動作時間と慣性特性測定時の入力印加時間との差をいいます。(JISの静止形OCRでは、動作時間の約10%に相当します。)

ACB1、ACB2の重なりはないか

  • 重なりのないようにすること。

被保護機器の保護は万全か

  • OC1でA母線の短絡保護。
  • OC2でT2の保護。
  • OC3でコントロールセンタの保護。
    各々の保護ができること。

保護機器の耐量は十分か

  • CB1でA母線短絡電流のしゃ断。
  • CT1でA母線短絡電流の通過・検出。
  • ACB1でB母線短絡電流のしゃ断。
  • CT3でB母線短絡電流の通過・検出。
    各々に耐えること。

過渡入力の誤動作はないか

  • T2のラッシュ電流でOC2が誤作動しないこと。

保護協調曲線

ケーブルの保護協調

ケーブルの仕様を決定するには、通電容量のみではなく短絡電流の大きさにも考慮を払うことが必要です。

系統の条件

  • 系統電圧  :6kV
  • 定格負荷電流:70A
  • こう長   :20m
  • 種類    :CVケーブル(3心1条)
  • 布設条件  :空中暗渠式

ケーブルの選定

「CVケーブルの許容電流値表」から、余裕をみて22mm2のケーブルを選び出します。
通電容量は105Aまで可能ですから、70Aに比べて十分余裕があります。

CVケーブル許容電流値表

布設条件空中暗渠式管路式
公称断面積単心3条3心1条単心4孔3条3心4孔4条
250mm2645A490A550A320A
200mm2535A410A470A275A
150mm2475A360A415A250A
100mm2350A260A315A185A
60mm2265A195A245A150A
38mm2200A145A190A115A
22mm2140A105A135A84A
14mm2110A83A107A67A
8mm279A59A78A49A

次にケーブルの送り出し端での3相短絡事故時の短絡電流が「CVケーブルの短時間耐量」を超過しているかどうかを検討します。

次項に示すように、この場合の短絡電流は5770Aで、OCR+CBの保護の場合のしゃ断時間0.2sを考慮して表中にプロットしますと、38mm2のケーブルで十分耐え得ることがわかります。
CBの代わりにPFで保護する場合はしゃ断時間が0.01s以下ですので、8mm2のケーブルでも保護ができます。

短絡電流の計算

この計算の条件としては、

  • 系統電圧V:6kV
  • 電源短絡容量Ps:60MVA
  • 定格負荷電流I:70A
  • CVケーブル(22mm2)のインピーダンスZ:0.840Ω/km
  • CVケーブル(22mm2)の恒長20m

そこで、基準容量(P)を6MVAとして%インピーダンスを求めます。
電源側のインピーダンスはすべてリアクタンス分とし、ケーブルのそれは抵抗分として、

短絡電流Isは、

保護協調曲線

保護協調曲線は、上記で求めた諸データと保護機器の特性を協調曲線上にプロットし、協調の良否を判定します。

変圧器の保護協調

変圧器の故障原因と保護機器

変圧器の故障原因とその保護機器には次のものがあります。

原因保護機器
過負荷温度計(警報つき)、過電流継電器(OCR)、サーマルリレー
内部事故ブッフホルツ継電器
比率差動継電器
2次側電路の短絡電力ヒューズ(PF)
過電流継電器(OCR)

変圧器の特性

変圧器の特性の中で特に保護上必要な特性の例を次に示します。

変圧器励磁突入電流例(実効値換算)

変圧器倍率(倍)減衰時間(Hz)
単相変圧器
6.6kV/210V
50kVA10~182~7
100kVA10~171.8~10
150kVA10~152~10
三相変圧器
6.6kV/210V
300kVA5.5~122~10
500kVA5.5~122.6~5

変圧器の短絡強度

熱的強度機械的強度
①自己インピーダンスで制限される電流
②ただし、%Z4%未満のものは定格電流の25倍
2s熱的強度
   電流×2.5倍

保護協調のチェックポイント

保護機器チェックポイント
PF・変圧器の許容過負荷でヒューズエレメントが劣化しない
・変圧器の励磁突入電流でヒューズエレメントが劣化しない
・2次側短絡時、変圧器の耐量以内でしゃ断する
・上、下位保護機器との協調
OCR・突入電流で誤動作しない
・上、下位保護機器との協調

PFの適用

単相変圧器、三相変圧器を一括して電力ヒューズで保護する場合の適用例を表に示します。

PFの適用例(T社Qヒューズの場合)

項目単相(kVA)
57.510152025305075100
三相
(kVA)
55A
7.5
1010A
15
2015A
25
3020A30A
50
75
100
150
20040A
250
30050A75A

注1. 下図のように3φ、1φ、変圧器および、高圧コンデンサの保護用として電力ヒューズを使用した場合の電力ヒューズの定格電流を示したもの。
 2. 変圧器励磁突入電流は、変圧器定格電流×10 倍0.1秒通電相当と仮定。

 3. 高圧コンデンサの容量が変圧器バンク容量の1/3以下と仮定し、コンデンサの充電電流は無視。

実例の検討

保護協調曲線をもとに検討します。

  • OCR :変圧器の過負荷保護と高圧母線の短絡保護を受持、PF との協調がとれていること。
  • PF :変圧器の突入電流で劣化することなく、1次、2次側の短絡故障を適確に保護できること。
  • ACB :変圧器の過負荷保護用。
  • MCCB:MCCB以降の短絡保護用。

変圧器の保護協調曲線

過電流継電器の保護協調

電力系統で使用される継電器には、系統全体の中で保護協調がとれていなければなりませんし、過電流継電器も例外ではありません。受電端に設置される過電流継電器の保護協調を考えるのに必要な項目は、

  1. 需要家内系統における短絡・過負荷事故において確実に動作すること。(事故点を想定し、インピーダンスマップを作成して故障電流を算出すること)
  2. PF・CB形の場合には、PF(限流ヒューズ)とCB(しゃ断器)との責務分担が適切であること。(PFの容量およびCBのしゃ断容量の選定など)
  3. 上位系統にある配電変電所OCR との動作協調がとれていること。(OCRの慣性特性やしゃ断器の全しゃ断時間も考慮すること)
  4. 需要家内の分岐OCRとも動作協調がとれていること。
  5. 低圧側事故によって、受電端OCRが動作しないように低圧側MCCB(配線用しゃ断器)と動作協調がとれていると。
  6. OCRの限時要素の動作時間は、負荷変圧器の熱持性曲線を超えないこと。
  7. しゃ断器を投入した時に流れる変圧器の励磁突入電流により、OCRの瞬時要素が動作しないこと。
  8. 事故時に変圧器・しゃ断器・ケーブル・CT(変流器)などの機器は、短絡強度や過負荷耐量に充分耐えられるものであること。
  9. CTの選定に留意すること。(容量・過電流定数など)などがあります。

このうち、OCRの使用面(特にタップの整定)からみて大きく関係する項目は 3~7 と考えられます。

保護協調曲線の作成

系統に設置されている保護機器の動作時間特性が一枚の表に重ねて書かれ、これを保護協調曲線図と呼びます。電流値はすべて高圧側に換算して描きます。保護協調は、事故限定を目的としていますから、当該OCRは上位のOCRよりも必ず先に動作しなければなりません。ですから、受電端OCR(メイン側OCR)は配電変電所OCRよりも、同じ事故電流値において短い動作時間を持つ必要があります。
このためには、動作時間整定や動作電流整定に差をつけ、特性曲線が重ならないようにします。
さらに、受電端OCRと低圧側事故との協調にMCCBとの関係があります。低圧負荷は数多くのMCCBで分岐されて保護されますが、MCCBフレーム(電流値)が大きくなりますと、動作特性曲線のA部でOCRの動作特性と重なることがあります。この場合、低圧側の限定された事故であるにもかかわらず受電端のOCRの方が先に動作して、全停電となり不具合が生じます。これを防ぐためには、MCCBのフレームを分割するとか、限時要素部分の動作時間特性を傾斜の強い特性を持つOCRを使用して動作特性が重ならないようにする必要があります。
変圧器は寿命から規定される熱特性を持っており、これも保護協調曲線に描くことができます。変圧器の過負荷保護も受電端OCRの重要な役目の一つですから、OCRの動作特性はこの熱特性よりも下側に位置されなければなりません。
また、しゃ断器投入時に発生する変圧器への励磁突入電流との協調も考慮する必要があります。これについては次項で詳しく述べますが、受電端OCRにおいては瞬時要素のタップ整定に関係してきます。

OCRの動作時間特性

突入電流について

受電端のしゃ断器を投入すると、構内電気設備が充電され、過渡的な電流が流れます。このうち、①変圧器の励磁突入電流、②高圧コンデンサの充電電流について、受電端OCRへの動作影響を考えてみます。

変圧器の励磁突入電流

  • 変圧器が無励磁の状態で1 次側に電圧を急激に印加すると(投入すると)、変圧器には逆起電力が発生していませんので、鉄心の磁束は一時的に飽和してしまいます。
    リアクタンス分が零となり、変圧器の1次側が短絡されたのと同じ状態となり、過大電流が過渡的に流れます。第1波の波高値は、定格電流の十数倍から数十倍にも達し、ピークの接続時間は1~2Hz、定格電流に落ち着くまで2~3秒もかかります。これを励磁突入電流といいます。
    励磁突入電流の大きさと継続時間は、一義的に計算されず、①変圧器の種類、②印加電圧、③投入位相、④鉄心の残留磁束、⑤変圧器の負荷状況などにより大きく変化し、投入ごとに異なります。
    1次電圧が急に変動した場合にも、同じ現象が発生します。
  • 励磁突入電流は減衰するとはいえ、ピーク値が高く、また、接続時間も割と長いので、しゃ断器投入時にOCRが動作してしまう可能性があります。したがって、整定値を決定するための保護協調曲線を描く時には、この励磁突入電流を必ず考慮しなければなりません。
  • 励磁突入電流によりOCRが動作するからといって、しゃ断器投入時にOCRをロックしてしまうことはできませんので、保護協調曲線を描く中で、励磁突入電流で動作せず、短絡事故では確実に動作するよう整定値(特に瞬時要素動作電流値)を選択することになります。

次にこの方法について述べます。

  1. 定格電流の10倍の電流のポイントは0.1秒とする考え方
    従来、励磁突入電流は、変圧器の定格電流の10倍の電流値と0.1秒の時間のポイントをプロットし、これをOCRの動作時間特性曲線が下がらないこと、という考え方がありました。しかし、これでは1ポイントのため、その前後はどうなのかというところについては判りませんし、変圧器の小型化が進んでいる現状では、むやみに瞬時要素のタップ値を大きくすることになっていました。
    (次項の計算からみると安全サイドで考えすぎています)
  2. 励磁突入電流の経過時間ごとの電流値より曲線を書く考え方
    最適な瞬時タップ値を選択するためには、少なくとも保護協調曲線上に表わされる励磁突入電流の減衰カーブを知る必要があります。
    右表は変圧器の容量ごとに時間経過後の電流値を計算したものです。計算のベースとなったものは、変圧器メーカから提出された、①第一波波高値(倍数)、②減衰時定数(サイクル)、③励磁突入電流の実効値-時間曲線などです。具体的に保護協調曲線に描き込めるように電流値で表わしてあります。たとえば油入の三相変圧器300kVAでは、0.01秒時には218A、0.05秒時には146A、0.1秒時には119A流れることになります。したがって、この値をプロットしていきます。この系統にさらに単相100kVAの変圧器があれば、この変圧器分の電流を加算していき、0.01秒時には218+272=490Aをプロットします。
    この表における数値は、最大値付近で計算されていますので、この表に基づいて励磁突入電流曲線を描くことによって、ほぼOCRの動作を防ぐことができます。

変圧器励磁突入電流(単相):6,600V

種別変圧器の容量時間経過後の電流値(A)
容量(kVA)定格電流(A)0.01s後0.05s後0.1s後0.5s後1s後5s後
油入
変圧器
101.535.621.116.17.25.32.4
203.067.242.032.614.710.54.8
304.597.961.247.421.415.37.0
507.616510985.338.828.412.9
7511.421213910949.636.416.5
10015.227217914063.846.821.3
15022.734923419192.665.428.9
20030.342728723311380.035.3
30045.552436030314710650.8
50075.882558049024518082.5
モールド
変圧器
101.530.718.213.96.24.62.1
203.057.634.226.111.78.63.9
304.577.848.637.717.612.25.6
507.610766.951.823.416.77.7
7511.415310179.035.926.312.0
10015.217511590.341.030.115.2
15022.721814611957.940.922.7
20030.327118715376.455.130.3
33045.537926622511282.845.5
50075.863145339421715875.8

変圧器励磁突入電流(三相):6,600V

種別変圧器の容量時間経過後の電流値(A)
容量(kVA)定格電流(A)0.01s後0.05s後0.1s後0.5s後1s後5s後
油入
変圧器
201.728.316.812.85.74.21.9
302.643.325.719.68.86.42.9
504.464.840.531.414.210.14.7
756.676.047.536.816.611.96.6
1008.794.759.245.820.714.88.7
15013.111777.060.527.520.213.1
20017.514695.675.134.125.017.5
30026.221814611957.940.926.2
50043.730821217886.562.543.7
75065.646232527413710165.6
1,00087.561643336618313587.5
1,500131755542472259189131
2,000175896672616364252175
モールド
変圧器
100.915.69.27.03.22.31.0
201.727.216.212.35.54.01.8
302.641.624.718.98.56.22.8
504.462.038.730.013.69.74.5
756.688.755.443.019.413.96.6
1008.711173.157.426.119.18.7
15013.115199.077.835.425.913.1
20017.519012598.244.632.717.5
30026.225216913866.847.226.2
50043.742029524912591.843.7
75065.650435429915011065.6
1,00087.561644338521215487.5

高圧コンデンサの充電電流

系統に進相用のコンデンサがありますと、しゃ断器投入時に、過渡的な充電電流が流れます。変圧器の励磁突入電流に比べると、線路定数が小さな値のため、時定数は極めて小さく、すぐに減衰してしまいます。したがって、OCRの瞬時要素の動作時間レベルの0.02~0.05秒ではすでに、定常状態となり、OCRが動作することは考えられません。しかし、ピーク時は数10倍~100倍にもなることがあり、この電流の電圧降下(すなわち電圧)によって、CTの2次側のフラッシュオーバ事故を引き起こしたり、電力ヒューズを含んでいる回路では溶断や劣化の可能性もあります。

充電電流の大きさ

ある条件下での充電電流を参考としてあげます。

高圧コンデンサ充電電流

コンデンサ
容量(kVA)
定格電流
(A)
電線径
(想定)
時間経過後の電流値(A)6%リアクタンスを挿入
t=0の
最大値
0.005s
0.01s
0.02s
0.05s
0.1s
リアクタンス
容量(kVA)
t=0の
最大値
100.92.6mm21491.30.90.90.90.9--
201.72.6mm22492.31.71.71.71.7--
504.42.6mm23365.24.44.44.44.435.9
756.63.2mm242812.56.76.66.66.64.58.9
1008.74mm250338.210.58.78.78.7611.7
20017.522mm273614640.318.217.517.51223.6
50043.750mm21,22654425682.043.943.73058.9
75065.680mm21,5489295642337265.64088.3
1,00087.5100mm21,8191,3831,05763610592.960118

注. 計算上での条件
  1. 電線自長は1km
  2. 周波数は60Hz
  3. 電圧は6,600V

上表は、コンデンサに線路定数を通して電圧の波高値が印加された時の過渡電流と、定常状態に流れている交流電流とを加算した最大値を示しています。過渡電流は、コンデンサ容量と線路定数で決まる固有周波数の高周波電流となり、下図のように、減衰波形となっています。

保護協調例

ある系統例において、変圧器の励磁突入電流の曲線を算出し、それによって、動作しないOCRの瞬時タップを求めてみます。

(1)まず、保護協調シートに形K2CAの動作時間特性曲線を描きます。限時整定が4Aですから、

が100%電流となります。

(2)次に、変圧器励磁突入電流の表より、変圧器の容量ごとに計算された電流値をリストアップし、この場合2つの変圧器があるので、これらを加算します。

0.01s0.05s0.1s0.5s1s5s
3Φ T 300kVA218A146A119A57.9A40.9A26.2A
1Φ T 100kVA272A179A140A63.8A46.8A21.3A
合計490A325A259A121.7A87.7A47.5A

(3)時間に対する電流値をシートにプロットし、曲線を引きます。

(4)この励磁突入電流曲線が、OCR瞬時要素時間特性と交叉しない瞬時要素タップを選び、この場合40A以上となります。

(5)下の保護協調の例に定格電流の10倍、0.1秒の点を破線で示してみましたが、これによると、50A以上となります。

(6)コンデンサの充電電流も高圧コンデンサ充電電流の表よりプロットしてみました。この曲線は、電流値が小さく、励磁突入電流曲線と時間ごとに加算しても励磁突入電流曲線のみと大差がなく、OCRの動作の面からは、励磁突入電流だけを考えれば良いことがわかります。

CTの選択について

OCRを正しく使用するためには、事故電流を検出するCTについても、注意が必要です。OCR用CTは、事故時にOCRを正確に動作させ、誤動作・誤不動作が起きないようにしなければなりません。そのためには、定常状態の誤差はあまり問題ではなく、むしろCTの過電流領域の特性が問題となります。容量(VA)が不足しているCTに定格電流値以上の大きな電流が流れますと、CTは磁気飽和を起し、OCRに流れる電流が CT 1次電流に比例して増加しなくなり、その結果、瞬時要素動作値の誤差が増えます。また、CT 2次電流引きはずし方式では、OCRが動作してトリップコイルがCTの負担に加わりますと、CTの飽和はさらに高まり、電流実効値が減少して、OCRは動作しているのにトリップしないことも起こりえます。このため、CTの容量や過電流定数の選定についての検討が必要です。
CTの容量を決定する一応の目安として、

という式を参考にしてください。
また、CT 2次電流引きはずし方式のOCRでは、CT容量が過大であったり、2次負担が極端に少ないと、大きな事故電流をOCRのトリップ接点が開放することになり、接点の損傷を招くことがあります。(形K2CAの項参照)


最終更新日:2019年11月18日