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電力・機器用保護機器 保護継電器概要


電力・機器用保護機器は、産業用機械や生産設備の電圧、電流、周波数などの変化を検出することで電気設備を保護する機器です。保護機器は、継電器やリレーと呼ばれる場合があります。 ここでは、保護継電器、モータ・リレー、監視リレーに分けて製品概要や動作原理などを解説しています。 なお、『商品情報』のページではモータ・リレーと監視リレーを機器用保護機器としてまとめてご紹介しています。 保護継電器は、保護リレーとも呼ばれ、電気設備で発生する事故などにより変化する電圧、電流、周波数などを検出することで電気設備を故障などから保護し、影響を一定の範囲に抑えるために使用するものです。ここでは、保護継電器の概要を解説します。 製品個別の詳細については、それぞれのカタログまたはマニュアルをご覧ください。

関連情報


保護継電器とは

保護継電器は、電気設備で発生する事故などにより変化する電圧、電流、周波数などを検出することで電気設備を故障などから保護し、影響を一定の範囲に抑えるために使用するものです。検出するために設定する値は整定値と表現される場合があります。
主に、6.6kV系の電気設備に使用されます。
また、保護継電器は保護リレーと呼ばれる場合もあります。

過電流継電器

電気設備に規定以上の電流が発生すると発熱により、電路や機器の故障が想定されます。過電流は、想定以上の電力を継続して使用した場合や、電路や機器の短絡により発生します。
これらの状況が発生しないように、高圧の電気設備では過電流継電器(OCR:OverCurrent Relays)や電力用ヒューズ(PF)を使用します。一般的に300kVAを超える受電設備では過電流をOCRで検出し、遮断器を動作させることで設備を保護します。
計測する電流は、計器用変流器(CT)で電流変換を行いOCRに入力します。
一般的には、JIS C 4602(高圧受電用過電流継電器)に規定される過電流継電器が使用されます。
また、保護継電器で使用するCTは過電流時の計測ができるように保護用変流器または十分な過電流定数を持ったものを使用す
る必要があります。

OCRの検出動作には、瞬時特性と限時特性などがあります。
瞬時特性:
 設定(整定)した電流の大きさ(一般的には、契約最大電力の500~1,500%)以上の電流が一定時間継続したことを検出
 して動作
反限時特性:
 電流の大きさが大きくなるに従って短時間で検出して動作
 なお、電流の大きさの特性は、限時電流動作値にて設定

OCRには、どちらの要素で動作したのかを判断できる表示灯を搭載しています。
実際には、電力会社からの指示に基づく検討や、大規模な高圧の設備では遮断による設備停止の影響範囲を抑えたり、早期に原因を特定するために分岐する回路毎にOCRを設置する場合があるため、過電流保護協調をご確認頂くとともに、日本電気協会の高圧受電設備規程などを理解したうえで、動作値、動作時間を設定してください。

CTを複数の継電器で使用する場合、後述の『CTの選定について』などをご確認頂き、CTの出力電力(定格負担)を理解したうえで、継電器の消費電力(入力負担)から接続台数を決めてください。

推奨形式

単体設置時:
 形K2OC(丸胴埋込)
 形K2ZC-K2CA(角胴埋込)

他の継電器を含め複数設置時または分散型電源使用時:
 形K2ZC-K2CA(角胴埋込)

CTは、2次側が5Aで出力される市販品を別途ご用意ください。

地絡継電器

電気設備の電路や設備で絶縁劣化や樹木などとの接触、低圧電源との接触(混触)すると、感電や、機器故障が想定されます。
地絡が発生すると電路と大地との間で、地絡電圧(零相電圧)と地絡電流(零相電流)が発生します。零相電圧は高電圧のため零相電圧検出装置(ZPD)、零相電流は、大電流のため零相変流器(ZCT)を用いて地絡継電器に入力します。
なお、地絡継電器は、地絡過電流継電器と呼ばれる場合があります。
また、一般的な電気設備では使用されませんが接地形計器用変圧器(EVT)で零相電圧を変換する方式もあります。

地絡検出は3種類に分かれます。
(1)地絡(過電流)継電器(GR:Ground Relays/OCGR:Earth-fault OverCurrent Relays)
(2)地絡過電圧継電器(OVGR:Earth-fault OverVoltage Relays)
(3)地絡方向継電器(DGR:Earth-fault Directional Relays)
主に地絡(過電流)継電器が多く使用されていますが、他回線事故の影響による誤動作防止として地絡方向継電器が使用されます。分散型電源では電力系統での地絡事故から発電機を保護する地絡過電圧継電器が使用されます。

推奨形式

継電器
 単体設置時:
  地絡(過電流)継電器(GR/OCGR)
   形K2GR(丸胴埋込)
   形K2ZC-K2GA(角胴埋込)
   形AGF-1-P5(表面/DINレール取付)
  地絡方向継電器(DGR)(ZPD方式)
   形K2DG(丸胴埋込)
 他の継電器を含め複数設置時または分散型電源使用時:
  地絡過電圧継電器(OVGR)(ZPD方式)
   形K2ZC-K2GV (角胴、ユニット、表面/DINレール取付 分散型電源向け遠隔監視対応出力搭載)
   形K2ZC-K2RV(表面/DINレール取付 分散型電源向け遠隔監視対応出力、RPRも搭載)
  地絡(過電流)継電器(GR/OCGR) 形K2ZC-K2GA(角胴埋込)
  地絡方向継電器(DGR)(ZPD方式)
   形K2ZC-K2GS(角胴埋込)
  地絡方向継電器(DGR)(EVT方式)
   形K2ZC-K2GF(角胴埋込)
  地絡方向・地絡過電圧継電器
   形K2ZC-K2GW(角胴埋込)

地絡関連機器
 零相変流器(ZCT)
  形OTG-N、形OTG-D
 零相電圧検出装置(ZPD)
  形VOC-1MS2
 電流制限用抵抗器
  形2R

継電器の選定

地絡事故点の有効な選択遮断のためには、DGRを選定します。

継電器の選定手順

零相変流器(ZCT)の地絡電流監視

通常、電路の電流は単相でも三相でも行き帰りは同じです。地絡事故が発生すると大地に電流が流れるため、行きと帰りに差ができます。この差によりZCTに磁束が誘起し二次側に電流が流れます。継電器は、その電流が設定した動作値、動作時間になると動作します。低圧でよく使用される漏電ブレーカも、この原理で構成されています。

零相電圧検出装置(ZPD)の地絡電圧監視

高圧線は大地に接続(接地、アース)されていないため正常な状態では三相の合成電圧と大地間には大きな電圧変化は発生しません。しかし、地絡が発生すると三相の合成電圧と大地間に大きな電圧変化が発生します。ZPDは高圧線と大地間をコンデンサで分圧し、トランスにより高電圧を低電圧に変換し、二次側に出力します。継電器は、その電圧の大きさや、地絡電流との位相関係を判断して動作します。なお、零相基準入力装置と呼ばれる場合もあります。

零相電圧検出装置(ZPD)と地絡方向継電器(DGR)による電流方向監視

地絡事故が発生すると事故回線では事故電流が電源側から負荷側に向かって流れます。
一方、ほかの回線では、事故電流が負荷側から電源側に向かって流れます。
GR/OCGRのように地絡電流の大きさだけで地絡事故を検出すると、設備内の地絡事故だけでなく、設備外の事故を誤検出(もらい事故)する場合があります。一方、DGRは、零相電圧Voと、零相電流Ioから地絡電流の方向(位相)を検出できるため、事故が発生した回線のみを遮断することができます。

過電圧継電器、不足電圧継電器

異常電圧には電路や設備の短絡による電圧低下や、発電機などによる電圧上昇などの事故があります。
電圧継電器は電圧変動に応じて、電圧があらかじめ設定した状態に達したとき、これを検出して動作する継電器です。基本的な動作の区別としては過電圧検出、不足電圧検出の2種があります。
電圧は、計器用変圧器(VT)により取り出し継電器に接続します。
VTを複数の継電器で使用する場合、VTの出力電力(定格負担)を理解したうえで、継電器の消費電力(入力負担)から接続台数を決めてください。
なお、分散型電源(発電機)に内蔵されているため省略できる場合があります。

(1)過電圧継電器(OVR:OverVoltage Relays)
   電圧が動作値以上を動作時間以上継続したときに動作

(2)不足電圧継電器(UVR:UnderVoltage Relays)
   電圧が動作値以下を動作時間以上継続したときに動作

推奨形式
 単体設置時:
  過電圧継電器(OVR)
   形K2OV(丸胴埋込)
   形K2ZC-K2VA(角胴埋込)
  不足電圧継電器(UVR)
   形K2UV(丸胴埋込)
   形K2ZC-K2VU(角胴埋込)
 他の継電器を含め複数設置時または分散型電源使用時:
  過電圧継電器(OVR)
   形K2ZC-K2VA(角胴埋込)
  不足電圧継電器(UVR)
   形K2ZC-K2VU(角胴埋込)
  過電圧・不足電圧継電器
   形K2ZC-K2VW(角胴埋込)

過周波数継電器、不足周波数継電器

異常周波数は、電路、設備、発電機などにより変動する場合があります。
電力系統は、東日本では50Hz、西日本では60Hzであり、周波数の変動がモータの回転などに影響を与える場合があります。
周波数継電器は電圧の周波数変動に応じて、周波数があらかじめ設定した状態に達したとき、これを検出して動作する継電器です。基本的な動作の区別としては過周波数検出、不足周波数検出の2種があります。
電圧は、計器用変圧器(VT)により取り出し継電器に接続します。また電圧継電器などと並列に接続して共用する場合もあります。
なお、分散型電源(発電機)に内蔵されているため省略できる場合があります。
(1)過周波数継電器(OFR:Over Frequency Relays)
  周波数が動作値以上を動作時間以上継続したときに動作
(2)不足周波数継電器(UFR:Under Frequency Relays)
  周波数が動作値以下を動作時間以上継続したときに動作

推奨形式
 単体設置時:
  過周波数継電器(OFR)  形K2ZC-K2FA(角胴埋込)
  不足周波数継電器(UFR) 形K2ZC-K2FU(角胴埋込)
 他の継電器を含め複数設置時または分散型電源使用時:
  過周波数継電器(OFR)  形K2ZC-K2FA(角胴埋込)
  不足周波数継電器(UFR) 形K2ZC-K2FU(角胴埋込)

短絡方向継電器、逆電力継電器、不足電力継電器

分散型電源を設置する際には、電圧と電流を組み合わせて電流の方向と電流の大きさで保護を行う継電器を使用する場合があります。
VTは、電圧継電器などと並列に、CTは、過電流継電器などと直列に接続し、共用する場合があります。
短絡方向継電器(DSR:Directional-overcurrent Relays)は、同期発電機を設置する際に、短絡の原因が同期発電機ではないことを検出します。
電力会社に電力を出力(売電)する状態を逆潮流といいますが、逆電力継電器、不足電力継電器は、発電した電力を全て発電機のある設備内で使用する(自家消費、逆潮流なし)設備に使用します。
逆電力継電器(RPR:Reverse Power Relays)は、電力系統が停電状態で発電機が発電を継続する状態(単独運転)を防止するために設置します。停電することにより発電機の電力が電力系統へ逆電力として出力されることで検出します。
不足電力継電器(UPR:Under Power Relays)は、発電機が稼働している状態であっても通常は一定の電力を電力系統から取り込んでいますが、単独運転になることで電圧が低下し、取り込んでいる電力が一定の電力を下回る(取り込む電力が不足する)ことで検出します。
実際の設計に当たっては、次に説明する系統連系用保護継電器や日本電気協会の系統連系規程をご確認ください。

推奨形式
 単体設置時:
  短絡方向継電器(DSR) 形K2ZC-K2DS(角胴埋込)
  逆電力継電器(RPR)  形K2ZC-K2WR(角胴埋込)
  不足電力継電器(UPR) 形K2ZC-K2WU(角胴埋込)
 他の継電器を含め複数設置時または分散型電源使用時:
  短絡方向継電器(DSR) 形K2ZC-K2DS(角胴埋込)
  逆電力継電器(RPR)  形K2ZC-K2WR(角胴埋込)
  不足電力継電器(UPR) 形K2ZC-K2WU(角胴埋込)

系統連系用保護継電器

電力系統と接続(系統連系)して使用する発電機を分散型電源といいます。
分散型電源は、発電設備以外の設備とも電力系統で繋がっていることから、発電設備による事故が発生した場合、電圧、周波数の変化などが設置している設備以外にも波及する可能性があります。
よって、分散型電源設置者は、事故が発生した場合に分散型電源を系統から切り離し、他の設備を保護する必要があります。
また、電力系統や受電設備に事故が発生した場合には発電機を保護することも必要です。
以上の考え方をもとに、「系統連系規程」が定められており、規程に対応した複数の継電器をまとめて系統連系用保護継電器と呼んでいます。
なお、連系用保護継電器は、連系する電力系統の区分(高圧連系/特高連系など)・分散型電源の種類(同期発電機/誘導発電機など)・売電の有無(逆潮流)などによって、設置する継電器が異なります。1つの機能を持つ継電器を単体で設置すると構成品や設置場所が増えるため、複数の機能を1つの継電器にまとめた継電器や、必要な継電器を組み合わせて1つのユニットに構成することができる複合保護継電器があります。

推奨形式
 逆潮なし(自家消費)太陽光発電機用
  地絡過電圧継電器(OVGR 自動/手動)、逆電力継電器(RPR)、バックアップ電源内蔵(表面、DINレール取付
  分散型電源向けRPRも搭載)のオールインワン継電器
    形K2ZC-K2RV-NPC(表面/DINレール取付)
 太陽光発電機用
  地絡過電圧継電器(OVGR 自動/手動) 分散型電源向け遠隔監視対応出力搭載
   形K2ZC-K2GV(角胴、ユニット、表面/DINレール取付)
 必要な継電器を組み合わせて使用できる複合継電器
   形K2ZC-N(ユニット)
 保護継電器用専用直流電源(バックアップ電源)
   形S8T、形S8TS
 零相変流器(ZCT)
   形OTG-N、形OTG-D
 零相電圧検出装置(ZPD)
   形VOC-1MS2

事故形態による継電器の動作

次の表は、それぞれの継電器がどの事故に対して動作するのかを簡単に示したものです。
このようなマトリックスにより検証を行い、必要な機種を選定します。

機種名称保護目的設置相数等の
条件
構内事故系統側事故動作させる
遮断器
(例)
地絡短絡地絡短絡断線・
停電
OCR過電流
継電器
構内設備の過負荷・
短絡事故検出
2相受電端CB
OCGR地絡
継電器
構内設備の地絡
事故検出
1相(零相回路)構内
設備の対地静電容
量が大きい時はDGR
DGR地絡方向
継電器
1相(零相回路)
OVGR地絡過電圧
継電器
系統側の地絡事故
の継続検出
1相(零相回路)零相
電圧検出はコンデン
サ形が基本

*1
発電機CB
UVR不足電圧
継電器
系統側の短絡事故・
停電検出
3相
*1

*2
OVR過電圧
継電器
発電機の制御異常
による系統過電圧
検出
1相 発電機自体に
保護装置があれば
省略できる
DSR方向短絡
継電器
系統側の短絡事故
検出
3相を基本とする
同期発電機の場合
に必要
RPR逆電力
継電器
系統側への逆潮流
検出
1相
*3
UFR不足周波数
継電器
上位送電側事故時
の周波数低下検出
1相 逆電流がなく、
RPRで高速に保護
できれば省略できる

*2
OFR過周波数
継電器
電圧低下による負荷
脱落時の周波数上
昇検出
UPR不足電力
継電器
系統側の短絡事故・
停電検出
2相
*4
△f周波数急変
検出継電器
系統側の停電検出1相

*1. 継電器は検出しますが、電力系統側(変電所)保護継電器と時間協調をとっているため動作に至りません。
*2. 発電機容量と系統の負荷のバランスがとれていると動作しないことがあります。
*3. 電圧が極端に低下(至近端短絡の場合)すると動作しないことがあります。
*4. 変電所の地絡方向継電器の動作により、系統が停電となり、動作します。
注. 線路無電圧確認装置省略に伴うシステムの二重化を行う場合は、1つの事故に対して2つ以上の継電器が動作する必要があります。

各継電器の整定例

次に連系用保護継電器の標準的な整定について示します。
最終的には、電力会社への連系申請時に行う系統故障計算およびそれに基づく協調確認によって決まります。

機種整定例背景
動作値動作時間
OCR配電用変電所OCRと協調が
とれること
従来の受電端保護と同じ
OCGR零相電流:0.2A(JIS C 4601で
規定する時間)
DGR零相電流:0.2A
零相電圧:5%
0.2s
OVGR零相電圧:10%5s配電用変電所の同バンク・他フィーダーのDGRと
協調をとる
UVR不足電圧:85V2s配電用変電所の同バンク・他フィーダーのOCR
との時間協調をとる
OVR過電圧:125V2s
DSR電流:*1、不足電圧:90V0.7s配電用変電所の同バンク・他フィーダーのOCR
との時間協調をとる
RPR逆電力:発電機容量の10% *20.5s *3
UFR不足周波数:定格周波数−1Hz1s
OFR過周波数:定格周波数+1Hz1s
UPR不足電力・契約電力の10%0.5sCGS需要家の最小消費電力以下とする

分散型電源での保護継電器検討の流れ

  • 接続する電力系統の配電方式、受電電圧(高圧、低圧)、逆潮の有無(売電、自家消費)、発電機の種類(逆変換機:インバーター/パワーコンディショナ、誘導発電機、同期発電機)をもとに「系統連系規程」より必要な保護継電器を確認
  • 使用する発電機に搭載している保護継電器を確認
  • 保護継電器で計測する位置(CT、VT、ZCT、ZPDの設置位置)
  • 設置場所の受電設備にある保護継電器とCT、VT、ZCT、ZPDの接続状況を確認
  • 既設のCT、VT、ZCT、ZPDに、必要となる保護継電器を接続する場合は負担容量が問題ないことを確認
  • 線路無電圧確認装置省略について
    逆潮流がない場合は、UPRの二相に設置により省略が可能
    逆潮流がある場合は、単独運転検出装置が必要
  • 継電器の制御電源は専用の直流回路で供給
    保護継電器の電源を電力系統にすると、短絡事故時に保護継電器が動作しないため、専用の直流回路(バックアップ電源)が必要

既存設備に保護継電器を後付けする場合のポイント

  • 表面取付が便利
  • CT2次側に保護継電器専用の分割型CTを接続できる継電器が便利
  • VT、CTの配線は極性(VTのR、S、T、CTの向き)に注意が必要
  • 保護継電器の年次点検のため、電圧試験端子(VTT)、電流試験端子(CTT)、継電器出力端子の設置と名称、極性を表示
過電流保護協調

保護協調とは、事故を検出し、事故区間のみを切り離し、他の健全回路を守ることができるように、機器の損傷を防止と合わせて、直列、並列に接続された複数の保護装置間の動作値、動作時間を相互に調整(協調)することをいいます。
保護協調には、使用設備内での保護協調だけでなく電力会社の変電所との保護協調も必要となります。
過電流継電器は、一般的に300kVAを超える受電設備で使用します。また、設備の規模や影響度に応じ必要により直列、並列に複数設置します。一般的な保護協調の考え方は、電力会社と需要家受電設備間では、SOG装置で、SOG装置と受電設備の保護継電器間では、保護継電器で行います。

保護継電器と配線用遮断器の保護協調

事故が発生した場所をすみやかに切り離し、健全回路を確保することを実現するためには、下図のように保護協調特性に配慮し、万一、事故点(1)で事故が発生した場合は必ずMCCB-1で回路を遮断し、上位に事故が波及しないように過電流継電器の動作特性、動作電流、動作時間の設計や部品を選定します。

項目内容
事故点(1)事故点(1)で事故が発生した場合は必ずMCCB-1で保護しなければ事故の波及が上位のMCCB-0を
動作させ、MCCB-0以下が全停電となります。
事故点(2)事故点(2)で発生した場合はOCRで守り、上位への波及を防ぎます。

保護を細分化して下位を考えた場合、事故発生箇所の範囲にくいとめ、上位への波及を保護することを考える必要があります。
このため上位に行くほど遮断特性も遅くなるように設計します。
しかし保護協調を考える場合、負荷の突入電流、短絡電流に耐える線路の選定や、トランスの熱特性についての検討が必
要です。
これらについて以下にの基本的事項を説明します。

保護協調の基本的検討事項

保護協調を考慮する場合に検討しなければならない基本的事項には下記のものがあります。

  • 機器、ケーブルなどの過電流耐量や過電圧耐量。
  • 変圧器、電動機、コンデンサ等の負荷機器に発生する突入電流や始動電流。
  • 保護継電器や保護装置の動作特性。

以上の項目を、保護協調曲線用紙上にプロットしたときに満足しなければならない原則的な事項としては次のものがあります。

  • 遮断器の遮断容量は、設置点の短絡電流以上であること。
  • 保護装置の動作時間は、線路や機器の損傷時間よりも短いこと。
  • 保護装置は、変圧器の突入電流や電動機の始動電流で誤動作しないこと。
  • 直列に入っている保護装置相互では電源側に近い程、時限を長くとるなどの処置をして故障の極限化を計る。

保護協調曲線の作成

保護協調曲線用紙に次の内容を記入していきます。

1系統図・保護対象の単線結線図
・線路、機器の特性
・保護装置の整定タップ値
2保護対象の特性・保護対象の過電流耐量、突入電流
3事故電流・事故点を想定して算出された事故電流
・保護装置への入力
4保護装置・保護装置の特性 (保護協調がとれるように図上で検討)
・上位および下位からの制約条件

系統図の記入方法

系統図は協調曲線用紙の右上部に単線結線図にて記入します。

記入するデータ
・主回路機器、負荷
・ケーブル
・保護機器
記入事項
系統電圧
遮断器(CB)定格遮断容量、全遮断時間
配線用遮断器(MCCB)定格電圧、定格電流
気中遮断器(ACB)定格電流
変流器(CT)定格、変流比
ケーブル種別、太さ
変圧器(T)定格容量、電圧、%インピーダンス、タップ値
電動機(IM)定格容量、電流、始動電流
過電流継電器(OCR)整定タップ値(電流、時間)
地絡継電器(GR/DGR)整定タップ値(電流、電圧、時間)
静止形モータリレー(3E)定格電流、整定タップ値(電流、時間)
熱動形継電器(THR)定格電流、整定タップ値
電力ヒューズ(PF)定格電流

保護対象

保護対象として、変圧器、高圧進相コンデンサ、変流器、ケーブル、電動機などがあります。

短絡電流の算定

過電流保護の基礎となるのは系統の短絡電流の算定です。
短絡電流の算定には%インピーダンス法が一般的に利用され、以下に示す手順で検討を行います。

と、異なる基準容量の%Zに変換することができます。

短絡電流計算手順

保護装置の保護協調

受電盤などに使用する保護装置には、過電流継電器や遮断器(CB)、高圧限流ヒューズ(電力ヒューズ:PF)などがあり、保護協調を考える場合これらの機器の特性を十分検討しなければなりません。

保護装置の検討事項

(1)過電流継電器(OCR)

  • 上位継電器と下位継電器との間の時間協調(段協調)。
  • 限時特性。
    時間特性曲線(限時特性、瞬時特性)にて、OCRとPFまたはCBなどの保護機器との関係、ならびにOCRと被保護機器限界曲線との関係。

(2)電力用ヒューズ(PF)

  • 許容電流時間特性。
    下位の保護機器や負荷機器の特性とヒューズエレメントの劣化のない限界値特性。
  • 溶断特性。
    ヒューズエレメントの溶断しはじめる電流・時間特性。
  • 遮断特性。
    上位保護機器との関係。

(3)気中遮断器(ACB)

AC1,000V未満、DC3,000V以下の回路に使用の場合の主な特性。

  • 長時間引きはずし:過負荷保護5~30s(コイル定格の600%)。
  • 短限時引きはずし:過負荷保護0.1~1s(整定目盛の250%)。
  • 瞬時引きはずし:短絡保護。

(4)配線用遮断器(MCCB)

  • 定格電流5,000A 以下、AC600V以下、DC750V以下。
    個々の特性はメーカ提示。

(5)熱動形継電器(THR)

  • 過負荷保護特性。
    モータの熱持性との関係。
  • 欠相保護特性。
    欠相による電流不平衡との関係。

(6)電動機保護協調曲線

  • モータ始動電流、モータ熱特性、負荷線路の許容電流時間特性および負荷線路の短絡電流と、サーマルリレーおよびMCCBとの関係

線路の過電流保護協調

線路保護協調について説明します。

保護協調曲線の作成

保護協調曲線を次の手順で作成します。

短絡電流の計算

%インピーダンス法で短絡電流を計算します。図中の系統のインピーダンスマップは下図のようになり、このマップから求めたA母線、B母線における短絡電流は下記のとおりとなります。

ここに
XSA=XS+XT1=4%
XSB=XST1X+XT2=16%
ここで計算したIは6.6kV側の換算値です。

保護協調の検討

協調曲線上に必要なデータが記入されると、各データ間で正しく協調がとれているかを検討します。

OCの協調はとれているか

  • 隣接するOC の時限は次の関係を満足すること。
    Tn+1=Tn+Bn+On+1

On+1の慣性動作時間は、動作時間と慣性特性測定時の入力印加時間との差をいいます。(JISの静止形OCRでは、動作時間の約10%に相当します。)

ACB1、ACB2の重なりはないか

  • 重なりのないようにすること。

被保護機器の保護は万全か

  • OC1でA母線の短絡保護。
  • OC2でT2の保護。
  • OC3でコントロールセンタの保護。
    各々の保護ができること。

保護機器の耐量は十分か

  • CB1でA母線短絡電流の遮断。
  • CT1でA母線短絡電流の通過・検出。
  • ACB1でB母線短絡電流の遮断。
  • CT3でB母線短絡電流の通過・検出。
    各々に耐えること。

過渡入力の誤動作はないか

  • T2のラッシュ電流でOC2が誤作動しないこと。

保護協調曲線

ケーブルの保護協調

ケーブルの仕様を決定するには、通電容量のみではなく短絡電流の大きさにも考慮を払うことが必要です。

系統の条件

  • 系統電圧:6kV
  • 定格負荷電流:70A
  • こう長:20m
  • 種類:CVケーブル(3心1条)
  • 布設条件:空中暗渠式

ケーブルの選定

「CVケーブルの許容電流値表」から、余裕をみて22mm2のケーブルを選び出します。
通電容量は105Aまで可能ですから、70Aに比べて十分余裕があります。

CVケーブル許容電流値表

布設条件空中暗渠式管路式
公称断面積単心3条3心1条単心4孔3条3心4孔4条
250mm2645A490A550A320A
200mm2535A410A470A275A
150mm2475A360A415A250A
100mm2350A260A315A185A
60mm2265A195A245A150A
38mm2200A145A190A115A
22mm2140A105A135A84A
14mm2110A83A107A67A
8mm279A59A78A49A

次にケーブルの送り出し端での3相短絡事故時の短絡電流が「CVケーブルの短時間耐量」を超過しているかどうかを検討します。

次項に示すように、この場合の短絡電流は5770Aで、OCR+CBの保護の場合の遮断時間0.2s を考慮して表中にプロットしますと、38mm2のケーブルで十分耐え得ることがわかります。
CBの代わりにPFで保護する場合は遮断時間が0.01s以下ですので、8mm2のケーブルでも保護ができます。

短絡電流の計算

この計算の条件としては、

  • 系統電圧V:6kV
  • 電源短絡容量Ps:60MVA
  • 定格負荷電流I:70A
  • CVケーブル(22mm2)のインピーダンスZ:0.840Ω/km
  • CVケーブル(22mm2)の恒長20m

そこで、基準容量(P)を6MVAとして%インピーダンスを求めます。
電源側のインピーダンスはすべてリアクタンス分とし、ケーブルのそれは抵抗分として、

短絡電流Isは、

保護協調曲線

保護協調曲線は、上記で求めた諸データと保護機器の特性を協調曲線上にプロットし、協調の良否を判定します。

変圧器の保護協調

変圧器の故障原因と保護機器

変圧器の故障原因とその保護機器には次のものがあります。

原因保護機器
過負荷温度計(警報つき)、過電流継電器(OCR)、サーマルリレー
内部事故ブッフホルツ継電器
比率差動継電器
2次側電路の短絡電力ヒューズ(PF)
過電流継電器(OCR)

変圧器の特性

変圧器の特性の中で特に保護上必要な特性の例を次に示します。

変圧器励磁突入電流例(実効値換算)

変圧器倍率(倍)減衰時間(Hz)
単相変圧器
6.6kV/210V
50kVA10~182~7
100kVA10~171.8~10
150kVA10~152~10
三相変圧器
6.6kV/210V
300kVA5.5~122~10
500kVA5.5~122.6~5

変圧器の短絡強度

熱的強度機械的強度
①自己インピーダンスで制限される電流
②ただし、%Z4%未満のものは定格電流の25倍
2s熱的強度
   電流×2.5倍

保護協調のチェックポイント

保護機器チェックポイント
PF・変圧器の許容過負荷でヒューズエレメントが劣化しない
・変圧器の励磁突入電流でヒューズエレメントが劣化しない
・2次側短絡時、変圧器の耐量以内でしゃ断する
・上、下位保護機器との協調
OCR・突入電流で誤動作しない
・上、下位保護機器との協調

PFの適用

単相変圧器、三相変圧器を一括してPFで保護する場合の適用例を表に示します。

PFの適用例(T社Qヒューズの場合)

項目単相(kVA)
57.510152025305075100
三相
(kVA)
55A
7.5
1010A
15
2015A
25
3020A30A
50
75
100
150
20040A
250
30050A75A

注1. 下図のように3φ、1φ、変圧器および、高圧コンデンサの保護用として電力ヒューズを使用した場合の電力ヒューズの定格電流を示したもの。
 2. 変圧器励磁突入電流は、変圧器定格電流×10 倍0.1秒通電相当と仮定。

 3. 高圧コンデンサの容量が変圧器バンク容量の1/3以下と仮定し、コンデンサの充電電流は無視。

実例の検討

保護協調曲線をもとに検討します。

  • OCR:変圧器の過負荷保護と高圧母線の短絡保護を受持、PFとの協調がとれていること。
  • PF:変圧器の突入電流で劣化することなく、1次、2次側の短絡故障を適確に保護できること。
  • ACB:変圧器の過負荷保護用。
  • MCCB:MCCB以降の短絡保護用。

変圧器の保護協調曲線

過電流継電器による保護協調

系統全体の中で保護協調をとるためには、以下の検討が必要です。

(1)需要家内系統における短絡・過負荷事故において確実に動作すること。
  (事故点を想定し、インピーダンスマップを作成して故障電流を算出すること)

(2)PF・CB形の場合には、PFとCBとの責務分担が適切であること。(PFの容量およびCBの遮断容量の選定など)

(3)上位系統にある配電変電所OCR との動作協調がとれていること。
  (OCRの慣性特性や遮断器の全遮断時間も考慮すること)

(4)需要家内の分岐OCRとも動作協調がとれていること。

(5)低圧側事故によって、受電端OCRが動作しないように低圧側MCCB(配線用遮断器)と動作協調がとれていること。

(6)OCRの限時要素の動作時間は、負荷変圧器の熱持性曲線を超えないこと。

(7)遮断器を投入した時に流れる変圧器の励磁突入電流により、OCRの瞬時要素が動作しないこと。

(8)事故時に変圧器・遮断器・ケーブル・CT(変流器)などの機器は、短絡強度や過負荷耐量に充分耐えられるもので
   あること。

(9)CTの選定に留意すること。(容量・過電流定数など)

などがあります。
このうち、OCRの使用面(特にタップの整定)からみて大きく関係する項目は(3)~(7)と考えられます。

保護協調曲線の作成

系統に設置されている保護機器の動作時間特性を一枚にまとめた図を保護協調曲線図と呼びます。電流値はすべて高圧側に換算して描きます。保護協調は、事故限定を目的としていますので、当該OCRは上位のOCRよりも必ず先に動作しなければなりません。よって、受電端OCR(メイン側OCR)は配電変電所OCRよりも、同じ事故電流値において短い動作時間を持つ必要があります。
このためには、動作時間整定や動作電流整定に差をつけ、特性曲線が重ならないようにします。
さらに、受電端OCRと低圧側事故との協調にMCCBとの関係があります。低圧負荷は数多くのMCCBで分岐されて保護されますが、MCCBフレーム(電流値)が大きくなると、動作特性曲線のA部でOCRの動作特性と重なることがあります。
この場合、低圧側の限定された事故であるにもかかわらず受電端のOCRの方が先に動作して、全停電となり不具合が生じます。これを防ぐためには、MCCBのフレームを分割するとか、限時要素部分の動作時間特性を傾斜の強い特性を持つOCRを使用して動作特性が重ならないようにする必要があります。
変圧器は寿命から規定される熱特性を持っており、これも保護協調曲線に描くことができます。変圧器の過負荷保護も受電端OCRの重要な役目の一つですから、OCRの動作特性はこの熱特性よりも下側に位置されなければなりません。
また、遮断器投入時に発生する変圧器への励磁突入電流との協調も考慮する必要があります。これについては次項で詳しく述べますが、受電端OCRにおいては瞬時要素のタップ整定に関係してきます。

OCRの動作時間特性

突入電流について

遮断器を投入すると、構内電気設備に過渡的な電流が流れます。このうち、①変圧器の励磁突入電流、②高圧コンデンサの充電電流について、受電端OCRへの動作影響を考えてみます。

変圧器の励磁突入電流

  • 変圧器が無励磁の状態で1 次側に電圧を急激に印加すると(投入すると)、変圧器には逆起電力が発生していませんので、鉄心の磁束は一時的に飽和してしまいます。
    リアクタンス分が零となり、変圧器の1次側が短絡されたのと同じ状態となり、過大電流が過渡的に流れます。第1波の波高値は、定格電流の十数倍から数十倍にも達し、ピークの接続時間は1~2Hz、定格電流に落ち着くまで2~3秒もかかります。これを励磁突入電流といいます。
    励磁突入電流の大きさと継続時間は、一義的に計算されず、①変圧器の種類、②印加電圧、③投入位相、④鉄心の残留磁束、⑤変圧器の負荷状況などにより大きく変化し、投入ごとに異なります。
    1次電圧が急に変動した場合にも、同じ現象が発生します。
  • 励磁突入電流は減衰するとはいえ、ピーク値が高く、また、接続時間も割と長いので、遮断器投入時にOCRが動作してしまう可能性があります。したがって、整定値を決定するための保護協調曲線を描く時には、この励磁突入電流を必ず考慮しなければなりません。
  • 励磁突入電流による不要動作防止のため、遮断器投入の間、OCRの動作を停止させることはできませんので、保護協調曲線を描く中で、励磁突入電流で動作せず、短絡事故では確実に動作するよう整定値(特に瞬時要素動作電流値)を選択することになります。

変圧器励磁突入電流(単相):6,600V

種別変圧器の容量時間経過後の電流値(A)
容量(kVA)定格電流(A)0.01s後0.05s後0.1s後0.5s後1s後5s後
油入
変圧器
101.535.621.116.17.25.32.4
203.067.242.032.614.710.54.8
304.597.961.247.421.415.37.0
507.616510985.338.828.412.9
7511.421213910949.636.416.5
10015.227217914063.846.821.3
15022.734923419192.665.428.9
20030.342728723311380.035.3
30045.552436030314710650.8
50075.882558049024518082.5
モールド
変圧器
101.530.718.213.96.24.62.1
203.057.634.226.111.78.63.9
304.577.848.637.717.612.25.6
507.610766.951.823.416.77.7
7511.415310179.035.926.312.0
10015.217511590.341.030.115.2
15022.721814611957.940.922.7
20030.327118715376.455.130.3
33045.537926622511282.845.5
50075.863145339421715875.8

変圧器励磁突入電流(三相):6,600V

種別変圧器の容量時間経過後の電流値(A)
容量(kVA)定格電流(A)0.01s後0.05s後0.1s後0.5s後1s後5s後
油入
変圧器
201.728.316.812.85.74.21.9
302.643.325.719.68.86.42.9
504.464.840.531.414.210.14.7
756.676.047.536.816.611.96.6
1008.794.759.245.820.714.88.7
15013.111777.060.527.520.213.1
20017.514695.675.134.125.017.5
30026.221814611957.940.926.2
50043.730821217886.562.543.7
75065.646232527413710165.6
1,00087.561643336618313587.5
1,500131755542472259189131
2,000175896672616364252175
モールド
変圧器
100.915.69.27.03.22.31.0
201.727.216.212.35.54.01.8
302.641.624.718.98.56.22.8
504.462.038.730.013.69.74.5
756.688.755.443.019.413.96.6
1008.711173.157.426.119.18.7
15013.115199.077.835.425.913.1
20017.519012598.244.632.717.5
30026.225216913866.847.226.2
50043.742029524912591.843.7
75065.650435429915011065.6
1,00087.561644338521215487.5

励磁突入電流を考慮した整定値の考え方

最適な瞬時タップ値を選択するためには、少なくとも保護協調曲線上に表わされる励磁突入電流の減衰カーブを知る必要があります。
下表は変圧器の容量ごとに時間経過後の電流値を計算したものです。
計算のベースとなったものは、変圧器メーカから提出された、①第一波波高値(倍数)、②減衰時定数(サイクル)、③励磁突入電流の実効値-時間曲線などです。具体的に保護協調曲線に描き込めるように電流値で表わしてあります。
たとえば油入の三相変圧器300kVAでは、0.01秒時には218A、0.05秒時には146A、0.1秒時には119A流れることになります。
したがって、この値をプロットしていきます。この系統にさらに単相100kVAの変圧器があれば、この変圧器分の電流を加算していき、0.01秒時には218+272=490Aをプロットします。
この表における数値は、最大値付近で計算されていますので、この表に基づいて励磁突入電流曲線を描くことによって、ほぼOCRの動作を防ぐことができます。

高圧進相コンデンサの充電電流

系統に高圧進相コンデンサが設置されていると、遮断器投入時に、過渡的な充電電流が流れます。変圧器の励磁突入電流に比べると、線路定数が小さな値のため、時定数は極めて小さく、すぐに減衰してしまいます。したがって、OCRの瞬時要素の動作時間レベルの0.02~0.05秒ではすでに、定常状態となり、OCRが動作することは考えられません。しかし、ピーク時は数10倍~100倍にもなることがあり、この電流の電圧降下(すなわち電圧)によって、CTの2次側のフラッシュオーバ事故を引き起こしたり、電力ヒューズを含んでいる回路では溶断や劣化の可能性もあります。

充電電流の大きさ

ある条件下での充電電流を参考としてあげます。

高圧進相コンデンサ充電電流
コンデンサ
容量(kVA)
定格電流
(A)
電線径
(想定)
時間経過後の電流値(A)6%リアクタンスを挿入
t=0の
最大値
0.005s
0.01s
0.02s
0.05s
0.1s
リアクタンス
容量(kVA)
t=0の
最大値
100.92.6mm21491.30.90.90.90.9--
201.72.6mm22492.31.71.71.71.7--
504.42.6mm23365.24.44.44.44.435.9
756.63.2mm242812.56.76.66.66.64.58.9
1008.74mm250338.210.58.78.78.7611.7
20017.522mm273614640.318.217.517.51223.6
50043.750mm21,22654425682.043.943.73058.9
75065.680mm21,54892956423372.065.64088.3
1,00087.5100mm21,8191,3831,05763610592.960118

注. 計算上での条件
  1. 電線自長は1km
  2. 周波数は60Hz
  3. 電圧は6,600V

上表は、コンデンサに線路定数を通して電圧の波高値が印加された時の過渡電流と、定常状態に流れている交流電流とを加算した最大値を示しています。過渡電流は、コンデンサ容量と線路定数で決まる固有周波数の高周波電流となり、下図のように、減衰波形となっています。

保護協調例

ある系統例において、変圧器の励磁突入電流の曲線を算出し、それによって、動作しないOCRの瞬時タップを求めてみます。

(1)まず、保護協調シートにOCRの動作時間特性曲線を描きます。限時整定が4Aですから、

    が100%電流となります。

(2)次に、変圧器励磁突入電流の表より、変圧器の容量ごとに計算された電流値をリストアップし、この場合2つの変圧器
   があるので、これらを加算します。

0.01s0.05s0.1s0.5s1s5s
3Φ T 300kVA218A146A119A57.9A40.9A26.2A
1Φ T 100kVA272A179A140A63.8A46.8A21.3A
合計490A325A259A121.7A87.7A47.5A

(3)時間に対する電流値をシートにプロットし、曲線を引きます。

(4)この励磁突入電流曲線が、OCR瞬時要素時間特性と交叉しない瞬時要素タップを選び、この場合40A以上となります。

(5)下の保護協調の例に定格電流の10倍、0.1秒の点を破線で示してみましたが、これによると、50A以上となります。

(6)コンデンサの充電電流も高圧コンデンサ充電電流の表よりプロットしてみました。この曲線は、電流値が小さく、
   励磁突入電流曲線と時間ごとに加算しても励磁突入電流曲線のみと大差がなく、OCRの動作の面からは、励磁突入電流
   だけを考えれば良いことがわかります。

CTの選定について

OCRのCT選定は検出精度、過電流強度の側面から選定が必要です。
詳細は、日本電気協会の高圧受電設備規程や、CTメーカの仕様書などをご確認頂くこととなりますがCTの容量を決定する目安としては、以下の式があります。

また、使用負担時の過電流定数(n')については、以下の式となります。

過電流定数が大きければ検出精度は向上し定格負担を小さくすることができますが、二次側回路に大きな電流が流れるためOCRの接点に損傷を招く可能性があります。
下記はCTの過電流定数とCTの負担VAの関係を表すグラフです。

地絡保護協調

保護協調とは、電路や設備に地絡事故が発生した場合、事故回路のみを遮断し、かつ機器が損傷しないように動作値や動作時間調整(協調)することです。
使用設備内での保護協調だけでなく電力会社の変電所との保護協調も必要となります。
地絡保護協調では、地絡電流、地絡電圧、地絡方向を検討します。設備の規模や影響度に応じ必要によりSOG装置や直列、並列に複数設置した保護継電器で保護協調を行います。
詳細は、日本電気協会の高圧受電設備規程などをご確認頂くことになりますが、以下に概要を説明します。

OCGRの感度協調

ZCTの検出する零相電流の大きさが自回線故障と他回線故障が異なることを原理として、回線選択する方法です。
図1はそのようすを示します。

図1. OCGR・DGRの位相特性

この場合、次の関係が満足されなければOCGRは誤動作をおこす可能性があります。

IR≧2 Ic
 IR:継電器整定値
 Ic:構内対地充電電流
 2 :余裕係数

そして、前式が満足できない場合には、DGRを使用することが必要になってきます。つまり、ケーブルのこう長が長い電路では、OCGRの協調ができないことになります。
キュービクル受電など高圧電路のこう長が短い場合には、OCGRで十分保護協調が可能です。

ケーブルこう長と充電電流の関係を図2に、ケーブルの静電容量を表2に示し、継電器整定に対するケーブルこう長の限界を表1に示します。

表1. ケーブルこう長限界目安

公称断面積(mm20.2A整定の場合(m)0.4A整定の場合(m)
8135270
14115230
22100200
3885170
6070140
10060120
15050100
20050100
2504795

(CVケーブル 50Hz 6,600V)

図2. ケーブルこう長と充電電流

表2. ケーブルの静電容量一覧表

電圧(kV)形状公称断面積(mm2高圧架橋ポリエチレンケーブル
JIS C 3606-1987(CV)
静電容量(μF/km)
6.63芯
(3芯一括~アース間)
8
14
22
38
60
100
150
200
250
0.63
0.75
0.84
0.99
1.17
1.41
1.65
1.62
1.77
単芯8
14
22
38
60
100
150
200
250
0.21
0.25
0.28
0.33
0.39
0.47
0.55
0.54
0.59
3.33芯
(3芯一括~アース間)
8
14
22
38
60
100
150
200
250
0.63
0.78
0.90
1.11
1.14
1.41
1.65
1.62
1.77
単芯8
14
22
38
60
100
150
200
250
0.21
0.26
0.30
0.37
0.38
0.47
0.55
0.54
0.59

*参考
 充電電流算出式
  Ic=2πfCE(A)
   Ic:3線一括充電電流(A)
   f:周波数(50Hzまたは60Hz)
   C:3線一括静電容量(F)
   E:対地電圧(V)=線間電圧/√3

DGRの感度協調

DGRの感度協調は零相電圧要素が入ってきます。零相電流の感度協調はOCGRと同じです。
零相電圧の感度は、配電線のどの場所でも、故障時に発生する零相電圧は同じ値です。
また地絡は、変電所から受電設備間の送電線でも発生するため、DGRによる位相判定が有効です。また、動作値は変電所との感度協調(電圧、電流、移動、動作時間)を考慮する必要があります。

図3. DGRの感度協調例

位相協調

通常のケースでは、ほとんど問題にはなりません。また一般に市販されているDGRも位相特性は固定されています。
継電器の位相判別は、自回線か他回線かの方向判断をします。


最終更新日:2024年07月16日