アプリケーション概要と安全機能

この事例では、電子部品の組立・検査装置をモデルケースに解説します。

主に、ワークをセットする部分に関係する危険源に対する安全機能を検討します。

危険エリアと危険源

この事例で取り扱う危険エリアと危険源は、以下のとおりです。

危険エリア

  • ワークセットエリア
    作業者がワークをセットするエリア。通常作業でアクセスを必要とする。
  • 装置内部エリア
    ワークが引き込まれて組立・検査が行われるエリア。通常作業でのアクセスは不要だが、メンテナンス時にはアクセスする必要がある。
  • 駆動部
    サーボモータ3軸により構成される機構

危険源

ワークセットの作業に関連して想定される、可動部での作業者の手・指の「押しつぶし」「捕捉」の危険源

安全機能の定義

リスク低減方策として、以下3つの安全機能を定義します:

【SF1:侵入検知】

目的 ワークセットエリアへの作業者の手・指の侵入を検知
使用する機器 セーフティライトカーテン(AOPD)
動作 機械稼働中に遮光されると、制御出力(OSSD)をOFFにする

【SF2:ガード開閉検知】

目的 装置内部エリアへアクセスするための可動式ガードの開閉を検知
使用する機器 非接触式セーフティドアスイッチ(ガードロックの機能なし)
動作 ガード開を検知すると、セーフティドアスイッチ出力をOFFにする

【SF3:非常停止】

目的 緊急時に作業者が能動的に機械全体を停止
使用する機器 非常停止用押ボタンスイッチ
動作 スイッチ部が押されると、直接開路動作(direct opening action)の接点が開路する

安全機能作動時の状態

SF1~SF3の安全機能が作動すると、ブレーキによって可動部の動作を停止させた後に動力を遮断することによって安全状態を達成します。

これを実現するために、以下を用います。

  • 使用する機能
    サーボシステムのモーションセーフティ機能
  • 停止カテゴリ
    停止カテゴリ1(IEC 60204-1)

要求パフォーマンスレベル(PLr)の決定

ISO 13849-1 Annex Aに示されるリスクグラフを用いて、各安全機能に求められる要求パフォーマンスレベル(PLr)を決定します。

リスクパラメータの評価

安全機能SF1では、作業者のワークセット作業時のリスクを考慮してPLrを評価します。

【S:傷害のひどさ】

選択 S2(重傷 - 通常、回復不可能または死亡)
根拠 押しつぶし・捕捉により手・指の骨折等の重傷リスクがある

【F:危険源への暴露頻度/暴露時間】

選択 F2(高頻度〜連続/暴露時間が長い)
根拠
  • 作業者は定期的にワークセットエリアへアクセスし、ワークの供給と移動を行う
  • 15分に1回を超える頻度*で危険源へ暴露される(サイクルタイム:2分)

* ISO 13849-1 Annex Aでは、暴露頻度が15分に1回を超える場合は、他に正当な理由がない限りF2を選択すべきとされている

【P:危険源の回避/危害の制限の可能性】

選択 P1(特定の条件下で可能)
根拠

ISO 13849-1 Annex AのTable A.1、Table A.2を用いて、以下の要素に基づき判断する

  • 機械の使用者
    熟練者(ワークセット作業は訓練を受けた作業者のみが行う)
  • 危険事象を生じる可能性のある機械部位の速度
    中速(可動部は251mm/sから1 000mm/s以下で動作する)
  • 危険源から逃れるための空間的な可能性
    容易(ワークセットエリアから手を引けば退避可能な空間がある)
  • 危険源の認識・認知の可能性(可動部の動作は容易に認識可能である)
  • 操作の複雑さ
    低(ワークの供給・移動)

(ISO 13849-1:2023、Table A.1よりオムロン編)

要素 C B A
1. 機械の使用者 非熟練者* 熟練者*
2. 危険事象を生じる可能性のある機械部位の速度(特定の機械及び危険状態からの脱出又は回避するための時間) 高速事象
例えば、>1000mm/s、危険事象に至るまでの時間<1s及び/又は逃れる時間がない、又はほとんどない。
中速事象
例えば、251mm/s~1000mm/s、1s≦危険事象に至るまでの時間<3s及び/又は逃れる時間が限られている。
低速事象又は超低速事象
例えば、<250mm/s、危険事象に至るまでの時間≧3s及び/又は逃れるのに十分な時間がある。
3. 危険源から逃れるための空間的な可能性 不可能 時々・まれ50%未満 容易50%以上
4. 危険源の認識・認知の可能性(例:高温・低温表面、非電離放射線、その他) 不可能
例えば、計測機器が必要、人間の感覚では危険源を知覚できない、環境条件によって知覚が妨げられる。
時々・まれ50%未満 容易50%以上
5. 操作の複雑さ(操作回数や、操作可能なタイミングなど人の介入の観点) 複雑さ中~高
例えば、トラブルシューティング、機械の一部を設定するためのホールド・ツゥ・ラン制御の使用
複雑さ低
例えば、ワークピースのクランプの調整、又は複雑さが非常に低い、又は介入なし例えば、ワークピースを機械に置く。

注1. この表の数値は、あくまでも目安である。またタイプC規格において又は特定の機械アプリケーションに基づいて、異なる可能性がある。

* 3.1.55では、知識、訓練、及び長年の実務経験を含む「熟練者」を定義している。

(ISO 13849-1:2023、Table A.2よりオムロン編)

全スコア パラメータP
“C”一つ以上 P2
“C”なし、“B”三つ以上
“C”なし、“B”二つ、残り“A” P1又はP2、個々の状況に基づく
“C”なし、“B”一つ又はなし、残り“A” P1

SF2、SF3も同様に、それぞれの安全機能でリスク低減を行う危険源の内容や実施する作業の条件などに応じて、リスクパラメータを評価します。

PLr決定

ISO 13849-1 Annex Aのリスクグラフに基づき、PLrを決定します。
SF1のPLrは、S2→F2→P1より、dとなります。
SF2、SF3についても、リスクパラメータの評価結果に基づきPLrを決定します。
この事例では、それぞれ以下のPLrとします。

安全機能 PLr
SF1 - 侵入検知 d
SF2 - ガード開閉検知 d
SF3 - 非常停止 c