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機器内蔵用フォト・マイクロセンサ 参考情報


フォト・マイクロセンサは、主に機器内蔵用として使われる小型のアンプ内蔵光電センサです。ここでは、フォト・マイクロセンサの参考資料を解説します。

関連情報


設計編

フォト・マイクロセンサをご使用いただくうえにおいて、具体的にはどのようにして設計していくかについて述べます。

発光素子側の設計

(発光素子の特性)

オムロンのフォト・マイクロセンサの発光素子には、赤外LEDと可視(赤色)LEDが使用されています。図3に赤外LEDを使用した形EE-SX1018のLED順電流―順電圧特性を示しました。ここでの大きなポイントは、それらの順方向特性には差があるということです(順方向特性とは、アノードからカソードに順電流IFを流したとき、LEDの両端の電圧(降下)がどのようになるかを表わしたものです)。図3より、赤外LEDに比べ赤色LEDは順電圧VFが大きくなることがわかります。常用(実使用)電流レベルにおける順電圧はVFは、赤外LEDで1.2V程度、赤色LEDで1.8~2V程度となりますので、概念としてご留意ください。

図3 LED順電流̶順電圧特性(代表例)

(駆動電流レベルについて)

発光素子側の設計でとくに重要なことは、順電流IFをどれだけ流すかということです。フォト・マイクロセンサは絶対最大定格で説明しましたように、ご使用条件上の制約があるため、少なすぎても多すぎてもいけません。
まず最初に上限について述べます。上限は絶対最大定格に示される値によって規定されており、カタログなどから読みとってください。形EE-SX1018を例にとりますと、絶対最大定格(Ta=25℃)と書かれた項目の1番目に直流順電流IF=50mAとなっており、これより順電流IFの最大値は50mAとなります。しかしながら、これは周囲温度Ta=25℃における規定ですので、実際のご使用(温度範囲)にあわせて軽減することが必要であり、カタログに記載されている温度定格図をみていただくことによりわかります(形EE-SX1018の例を図4に掲げました)。図4において横軸は周囲温度Ta、縦軸は直流順電流IFとなっており、この図より、例えばご使用温度の上限が60℃であるとしますと、横軸の60℃におけるたて軸の値が、ご使用温度範囲内で流すことのできる上限の電流値となります。
図4よりTa=60℃における順電流IFは約27mAとなりますので、ご使用状態において、27mAより絶対越えて使用してはならないものとしてお考えください。つぎに下限について考えます。LEDである以上順電流IF=0では発光しませんので、いくらかは流さなければなりません。

図4 温度定格図(形EE-SX1018)

詳細な説明は割愛しますが、赤外LEDを使用したものは5mA以上、赤色LEDを使用したものは2mA以上としてください(あまり低いと安定した発光出力が得られないためです)。では最適値はどれ位かというと、オムロンのフォト・マイクロセンサではつぎのようにお考えいただくと便利です。まず、カタログの電気的特性の中の光電流ILという項目をご覧ください。この光電流ILの詳細は後述しますが、LEDに順電流IFをどれだけ流したら、どれだけの出力電流が得られるかという性能を表わすもので、フォト・マイクロセンサにとって最も重要な特性の1つです。この光電流ILに記載されている順電流IFの条件(たとえば形EE-SX1018ですとIF=20mA)にある値を適切なレベルの電流としていただければ使いやすい出力が得られ、出力処理(回路設計)も容易となります。

(設計法)

ではつぎに、具体的にどのように定数を設計するかを考えます。図5は発光素子を駆動する基本回路です。ここで注意することは、必ず制限抵抗Rを挿入しなければならないことです。もし、抵抗なしに、LEDに順方向バイアスをかけますと、順方向の抵抗(インピーダンス)分は低いので、理論上無限大の電流が流れ、LEDは焼損してしまいます。なお、LEDにどれだけ電圧をかけたら良いかというご質問をよくいただきますが、電流制限抵抗さえつければ何Vでも良いということになります。しかしながら、注意しなければならないのは下限があることで、図3の順方向特性例でわかりますように、1.2V~2Vぐらいはかけないと順電流が流れないため、これ以上の電圧が必要となります。電子回路の電源電圧は一般に5V程度が最小レベルのため、ここでの(下限の)めやすとしては、最低5Vとしてください。具体的な設計手段は、
1. 順電流IFの決定
2. 抵抗Rの決定(図5)
となります。まず順電流IFですが、上記で述べました最適レベルの電流となるように決定します。形EE-SX1018ではIF=20mAのため、IF=20mA程度となるように抵抗Rを決定します。
抵抗Rは、

にて求められ、例として電源電圧VCC=5Vとして考えます。(式1)で不明な数字は順電圧VFとなりますが、これは図3の順方向特性から求めます。図3よりIF=20mAにおける順電圧VFは約1.2Vとなりますので、これらを(式1)に代入しますと、

となります。なお、電源電圧VCCや順電圧VFさらには抵抗値にバラツキがあり、IFが変動しますので絶対最大定格値に対し余裕があるか否かを確認するようにしてください。

図5 基本回路

なお、図5の抵抗RとLEDの位置は逆であってもかまいません。また、LEDに逆電圧がかかることがある場合、(ノイズ・サージも含め)は、図6のようにLEDと逆並列に整流用ダイオードを挿入してください。なお、LEDの駆動方法には、これまでの説明のような直流通電(駆動)以外にパルス駆動がありますが、これはフォト・マイクロセンサの場合あまり使用されていませんのでここでは割愛いたします。
以上より、設計のポイントは下記の事項となります。

・赤外LEDのVFは約1.2V、赤色LEDのVFは約2Vである。
・IFには最適レベルがある。
・IFを選定してから制限抵抗値を設計する。
・逆電圧が加わるときはLEDと逆並列にダイオードを入れる。

図6 逆電圧保護回路

フォト・マイクロセンサとしての設計①

~フォト・トランジスタ出力形~

(受光素子の特性)

受光素子として重要な特性は、光が入らないときと光が入るときにどのようになるかということです。図7は、LEDに所定の順電流IFを流したとき、フォト・トランジスタにどのような電流が流れるかを測定する回路の例です。ここでは、理想的環境条件として周囲が暗黒(0ℓx)であるものとして説明します。最初に順電流IFが流れない(=入光しない)状態では、電流計の指示は数nA(nA=10-9A)となります。これはフォト・トランジスタ自体のもれ電流で、暗電流IDと称されています。この状態は不透過物体でLEDからの光をしゃ光しても同じ結果となります。つぎに、順電流IFを流した状態をみますと、電流計の指示は数mA(mA=10-3A)となり、この電流は光電流ILと称されます。この2つの電流を比較しますと、

・フォト・トランジスタへの光をさえぎった状態‥‥‥暗電流ID:10-9A
・フォト・トランジスタに光を当てた状態‥‥‥光電流IL:10-3A

となり、106倍もの差があることがわかります。したがってこの電流の(レベル)差を利用してやれば、いろいろな物体の検出を行うことが可能となります。

図7 測定回路

なお、実使用においては周囲が暗黒ということは少なく、周囲光が存在しますので、暗電流IDプラスアルファの電流がしゃ光時に流れます。つぎに反射形フォト・マイクロセンサの場合は、反射物体がないときに暗電流が流れます。また、構造上、暗電流ID以外にLEDの光がフォト・マイクロセンサ内部でわずかながら反射しますので、暗電流プラス内部反射電流が流れます(この電流を漏れ電流ILEAKと称しております)。この漏れ電流ILEAKはIDがnAであるのに対し、数百nAとなっています。
その他にご留意いただきたいこととして、暗電流IDや光電流ILの温度依存性があります。まず暗電流IDの温度依存性についてですが、とくに高温時ではその依存性が大きくなりますので注意することが必要です。図8に形EE-SX1018の暗電流IDの温度依存性を示します。

図8 暗電流の温度依存性(代表例)(形EE-SX1018)

つぎに光電流ILについてですが、温度依存性は受光素子としてとらえますと、温度上昇にともない光電流ILは増えていく傾向となりますが、フォト・マイクロセンサの出力素子としてとらえますと、温度変化にともない、LED発光出力とフォト・トランジスタ光電流には図9のような依存性がありますので、フォト・マイクロセンサの光電流ILとしては相殺され比較的少ない出力変化(依存性)となります。図10に形EE-SX1018の光電流ILの温度依存性を示します。
なお、依存性の傾向(右上がりのカーブ、左上がりのカーブ、山形のカーブ…)は不定ですので、カタログに記載されているものは代表例として考えてください。依存性の傾向が不定ということは、温度補償や温度補正を行うことが難しいことを意味します。

図9 発光・受光素子出力の温度依存性(代表例)

図10 光電流の温度依存性(代表例)
(形EE-SX1018)

(各種特性の変化について)

前項では出力(受光)素子の特性について述べました。
ここでは設計にあたって何をポイントにするかを説明いたします(なお、ここでは最悪値設計〔Worst casedesign〕という手法をとり入れて説明します)。最悪値設計とは、フォト・マイクロセンサの各種特性が、機能上悪い(最悪の)方にかたよった場合でも、正常に動作するように設計する手法です。フォト・マイクロセンサでは光電流ILが最少、暗電流IDなどの漏れ電流が最大となったときを想定することにより最悪値設計を行います。つまり物体検出時の電流と非検出時の電流の比が最小になる状態を想定することになります。
光電流ILと暗電流IDの最悪値は、カタログなどの規格、(電気的特性)をみることによって把握することができます(いずれの規格も最小値あるいは最大値が規格化されています)。
表1はオムロンフォト・マイクロセンサ数種の光電流ILと暗電流IDの限界規格値を示しています。

実際の設計においては、表1の限界の規格値をもとに展開していきますが、これだけでは最悪値設計とはなりません。なぜなら、暗電流IDについては、
・周囲(外乱)光
・温度上昇
・電源電圧
・反射形の場合、内部反射による漏れ電流
などの要素による「加算分」を考慮しなければならず、
また光電流ILについては、
・温度変化
・経年変化
などの要素による「減算分」を設計の中に組入れてなければならないためです。表2に暗電流IDの「加算分」、光電流ILの「減算分」を掲げます。
つぎに表1を表2の依存性を加味して置き換えてみますと(ここでの条件は最高周囲温度をTa=60 ℃、VCC=10V使用時間5万時間程度としておきます)、たとえば形EE-SX1018についてみますと、暗電流IDの最大値は、周囲温度Ta=25℃で200nAですので、周囲温度Ta=60℃では約4μAとなり、光電流ILの最小値は、周囲温度Ta=25℃で0.5mA MIN.ですので5万時間後には、温度依存性も含め1/2程度の0.25mA程度と考えることになります。
各種フォト・マイクロセンサの最悪推定値を表3に掲げましたので、ご設計の際にご利用ください。
また、これ以外に、諸特性のバラツキについても考慮しなければならないことがありますが、これについてはそのつど説明いたします。なお、反射形フォト・マイクロセンサの光電流ILの値については、当社標準測定条件における値であり、検出する物体や距離によって大きく変わりますので、ご注意ください。

表1 暗電流ID光電流ILの規格値

*当社標準測定条件における値

表2 各種要素における受光素子の依存性

図11 暗電流の印加電圧依存性(代表例)(形EE-SX1018)

表3 各種フォト・マイクロセンサの最悪推定値

*当社標準測定条件における値

(基本回路の設計法)

前項までの説明で、設計の際に重要な特性が何であるか、また、それらの特性がどのような要素のもとで、どのように変化するか、変化した特性を、設計の際どのように生かすかが、ご理解いただけたかと思います。本項では具体的な設計法について述べるとともに設計に際しての要点を説明いたします。
まず前項では、フォト・トランジスタにLEDからの光が入光されたときとしゃ光されたときにフォト・トランジスタはどうなるかを説明しましたが、第1のポイントは、このフォト・トランジスタに流れる電流(ILやIDなど)を、出力としてどのように処理するかです。
図12にフォト・マイクロセンサの基本回路を掲げました。図において、フォト・トランジスタ側に接続される抵抗RLには、フォト・トランジスタに入光されたとき光電流ILが流れ、しゃ光されたときには暗電流ID(プラスアルファ)の電流が流れます。したがって、抵抗RL両端の電圧(降下)を出力としてとらえますと、入光時の出力電圧はIL×RL、しゃ光時の出力電圧はID(+α)×RLとなります(なお、以後の説明で述べるILやIDは、先に述べた最悪推定値を適用するようにしてください)。
さて、出力として電圧の形でとり出すには単に抵抗RLをつなぐことによって可能となります。一例をあげますと、光電流ILの最悪値が0.25mA、暗電流IDプラスアルファの漏れ電流の最大値が0.01mAとし、出力電圧としてフォト・トランジスタオンのとき4V以上、オフのとき1V以下としたいような場合を考えますと、図13のように、負荷抵抗RLとして22kΩ程度とすればオンのとき5.5V(0.25mA×22kΩ)、オフのとき0.22V(0.01mA×22kΩ)となります。なお実使用においては、(先の計算は最悪値における計算結果ですので)、オンのときの出力電圧はそれ以上の電圧、オフのときの出力電圧はそれ以下の電圧となります。このようにして得られる出力電圧を、増幅してICの入力としたりしてフォト・マイクロセンサを活用していくことになります。

図12 基本回路

図13 出力のとり方(具体例)

(応用回路の設計法)

では次に、図14に示す応用回路について、その設計法を説明します。
図14において、LEDの光がフォト・トランジスタに入光されますと光電流ILが流れ、この光電流ILはR1→R2の方向に流れます。そしてR2の両端の電圧が、トランジスタQ1のベース・エミッタ間のバイアス電圧(0.6~0.9V位)をこえるようになると、光電流ILはR2

図14 応用回路

の方向以外に、Q1のベース・エミッタの方へ分流して流れ、これがQ1のベース電流となり、Q1がオンすることになります。Q1がオンに移行すると、R3を通しコレクタ電流が流れ、Q1のコレクタ電位は下がり、ロジックレベルでいう「L(LOW)」レベルとなります。つぎにしゃ光されたときは、暗電流IDプラスアルファの漏れ電流が流れますが、この場合は、(ID+α)×R2の電位がQ1のベース・エミッタ間のベース・エミッタ間バイアス電圧まで達しませんので、Q1にはベース電流が流れず、Q1はオフとなり、Q1出力は「H(HIGH)」レベルとなります。
なお、ここでR1はフォト・マイクロセンサがオンしたとき、フォト・マイクロセンサがみかけ上Q1のベース・エミッタ間(ダイオードと等価)で短絡され(図15)、フォト・マイクロセンサの光電流ILが大きいとフォト・マイクロセンサに過大なコレクタ損失PCを生じますので、これを抑えるために入れてあります。
図14でのポイントは、
・IL×R2 の電圧がベース・エミッタ間のバイアス電圧を十分上まわるようにすること。
・(ID+α)×R2の電圧がベース・エミッタ間のバイアス電圧を十分下まわるようにすること。
であり、これらの共通項であるR2をいかに設定するかが決め手となります。具体例として、フォト・マイクロセンサに形EE-SX1018を使用し、電源電圧VCC=5Vで標準TTL IC(74シリーズ)を駆動する場合をとりあげ、ポイントとなるR2とR1について設計法を説明します(図16)。

図15 等価回路

図16 応用回路例

(R2の算出)

R2の値は、トランジスタQ1がオンとなるベース・エミッタ間のバイアス電圧VBE(ON)が印加されるように選定しますので、次式を使用することになります。

(式2)でVBE(ON)は、一般的な小信号トランジスタの場合、約0.8V、ILは表3の最悪特性値0.25mA、IBは概ね20μA位となります。
従って、今回の例では

となります。なお、R2は(式2)の右辺より大きいということですので、実際は(式2)で求めた値の2~3倍は大きくしてください(今回はR2=10kΩとします)。

(R2の検証)

前項では、Q1をオンにさせるということを前提にR2を算出しました。ここでは、先に求めたR2でQ1をオフにできるかどうかを確認し、R2の妥当性を検証します。
Q1をオフさせるためには、

となりますので、この(式3)に以下に示す数字をあてはめてみて、(式3)の条件(式)をみたすか確認します。なお(式3)にはαが入っていますので、ここでは10μAと仮定し、暗電流IDは表3の4μAを適用します。

となり、(式3)を十分に満足することがわかり、R2の検証ができたことになります。
この検証で問題がなければ設計はほぼ完了です。

(R1の決定)

R1は先にも述べましたように、フォト・マイクロセンサの光電流ILが大きいものが組込まれますと、みかけ上Q1のベース・エミッタ間で短絡され(図15)、過大な電流が流れるため、これを抑えフォト・トランジスタのコレクタ損失PCを下げるために挿入します。R1を決定するには、「フォト・トランジスタのコレクタ損失PCはいくらまで許容できるか。(絶対最大定格の面から)」によりますので、カタログに示されるコレクタ損失の温度定格図より求めることになり、ここでは途中の計算(設計法)と説明を省略しますが、数百Ω(ここでは200Ω)となります。
以上で設計は完了です。
フォト・マイクロセンサの受光素子側の設計のポイントは、とにかくトランジスタを1石使用してフォト・マイクロセンサの出力を増幅してやることです。回路の信頼性向上および動作の安定性の点でも、フォト・マイクロセンサだけの出力を利用する方法に比べ、大きな性能差があらわれます。図14の回路は図12の基本回路に比べ、フォト・マイクロセンサの、みかけ上のインピーダンス(負荷抵抗)がR1という比較的小さな値により決定されますので、応答性などの点でも比較にならないほどの性能差を発揮します。なお、最近では、受光素子にフォト・ICという増幅回路を内蔵しているものもあり、設計が簡単で使いやすいため、フォト・IC出力形も多く使われる傾向にあります。

フォト・マイクロセンサとしての設計②

~フォト・IC出力形~

図17は、フォト・IC出力形フォト・マイクロセンサの回路構成図です(形EE-SX384、形EE-SX484)。
この図を元に、フォト・IC出力形フォト・マイクロセンサの設計法を説明します。

図17 回路構成図

(LED順電流IF供給回路)

LEDが単独に構成されていますので、外部から適切なレベルの電流を供給してやることが必要で、フォト・IC出力形フォト・マイクロセンサの設計で一番重要な項目です。すなわち、

・どれ位の順電流IFで、受光側(フォト・IC)が動作するか。がポイントであり、これさえうまく設計できれば、受光側(フォト・IC)は、電源につなぐだけといった簡単な考え方で、フォト・IC出力形フォト・マイクロセンサを使いこなしていただくことができます。さて、最適電流値についてですが、これは、カタログなどに示される特性の中で、「出力オフ(オン)時LED電流」を知ることにより、設計することが可能となります。表4は、形EE-SX384、形EE-SX484のカタログから、その一部を抜粋したものです。

表4 電気的特性(一部抜粋)

さて、いよいよ設計に入ります。ポイントとしては、
・形EE-SX384ではIFTOFF以上の順電流を流す。
・形EE-SX484ではIFTON以上の順電流を流す。
ことが必要条件となります。形EE-SX384、形EE-SX484では、この値が最大8mAとなっており、実使用においては8mA以上の順電流IFを流すことになります。では、8mA以上なら、8.1mAでも100mAでも良いのか…という事になりますが、これらについて、まず上限値は、絶対最大定格で決定(制限)されます。したがって、この上限値の設計は、図18をもとに使用周囲温度(最大値)より、行ってください。つぎに、必要でかつ十分なレベルですが、絶対最大定格以内でできる限り、高目の順電流IFを流すようにしてください。このレベルが(あまりに)8mAに近い値ですと、温度変化や経年的な発光出力の低下、さらには塵埃などの付着による伝達効率の低下により受光側(フォト・IC)が働かなくなることがありますので、具体的にはIFTOFF(ON)の規格値の2倍程度の順電流IFを流すようにしてください。図19に、フォト・IC出力形フォト・マイクロセンサの基本回路を掲げます。
なお、受光側における注意点としては、リレーなどを駆動する時は、図20のように、逆電圧吸収用ダイオードDを外付けするようにしてください。

(受光側回路)

電源端子(図17の+、-端子)に、所定(絶対最大定格)内の電圧、出力端子(図17のOUT端子)には、同様に所定内の電流(出力電流IOUT)を流せば完了です。

図18 温度定格図(形EE-SX384,形EE-SX484)

図19 基本回路

図20 誘導負荷時の接続例

使用上の注意

前項までの説明で、フォト・マイクロセンサの特異性や定格・特性などの概要についてはおわかりいただけたと思います。本項では、実際、どのような場合にどのようなことを注意する必要があるかを説明します。

透過形フォト・マイクロセンサ

(フォト・トランジスタ出力形)

透過形フォト・マイクロセンサで、とくに注意しなければならないのは、
・透過率の高い物体(例:紙、フィルム、プラスチックなど)
・発光・受光面の形状・寸法よりも小さい物体
を検出する場合です。これらはいずれも、LED光を物体でしゃ光しても受光素子には何割かの光が入光し、その結果、受光素子の出力にいくらかの電流が流れてしまう例です。したがってこのような物体の検出においては、物体があるときとないときの受光素子の光電流ILがどれくらいになるかを測定し、これらの比がどれくらいになるかを算出した上で、フォト・マイクロセンサが使用できるか否かを決定しなければなりません。物体があるときの光電流をIL(N)、物体がないときの光電流をIL(S)としますと、S/N比(信号/雑音)比は、

S/N=IL(S)/IL(N)

で求められます。フォト・マイクロセンサの光電流ILには、温度による変化や経年的な変化などがありますので、S/N比<~4程度の場合、使用回路は十分注意をはらうことが必要です。また、フォト・マイクロセンサの光電流ILには「バラツキ」があるため、S/N比に比べ「バラツキ」の範囲が大きいときは、固定抵抗での使用は不可能なため、図21のように可変抵抗VRを使用し1台ごとに調整することが必要です。

図21 感度調整例

なお、検出物体が小さいときも同様の考え方をしますが、実際は発光・受光面の大きさに依存することになるため、できるだけ発光・受光面の形状寸法の小さいものをご使用ください。そこで、具体的には発光面・受光面にスリットを設けて使用することになりますが、発光面・受光面に図22のようにスリットをつけますと、光電流ILが低下するためご注意ください。なおスリットは発光面・受光面ともにつけることが望ましく、受光面だけにつけた場合、検出する物体が発光面側を通過するようなとき、トラブルを発生することがあるため注意してください。

図22 スリット(例)

なお、以上のような特殊物体(検出)の他、回路処理についても、注意していただくことがあります。これは検出物体の運動に「ブレ」がある場合、移動速度がきわめて遅い場合、物体のエッジ(端)面での反射率が高い場合などによくおこる現象で、このような場合、フォト・マイクロセンサの出力波形に図23のようなチャタリング(をした)波形を生じることがあることです。このような波形をカウンタなどに入れますと誤カウントしたり、あるいはシステムとしての理論が得られないというような問題がおこるため、図24のようにコンデンサC(0.01~0.02μF程度)を入れたり、図25のようにシュミット・トリガ回路を設けたりしてください。

図23 出力波形のチャタリング

図24 チャタリング防止法(1)

図25 チャタリング防止法(2)

反射形フォト・マイクロセンサ

(フォト・トランジスタ出力形)

反射形フォト・マイクロセンサで注意する点は、
・外乱光
・背景の状態
・出力レベルの把握
の3点です。
まず、反射形フォト・マイクロセンサは、構造上、図26のように受光素子が外界に向かって組み込まれていますので、外乱光の影響を非常にうけやすくなっていることです。オムロン反射形フォト・マイクロセンサはある波長以下の光をしゃ断するようなフィルタを設け、できる限り外乱光の影響を避けるようにしていますが、完全ではありません(図27にフィルタのしゃ断特性例を示します)。したがってできる限り外乱光が入らないように設置していただく配慮が必要です。

図26 反射形フォト・マイクロセンサの構造

図27 フィルタのしゃ断特性例(代表例)

図28 背景の物体による影響

つぎに背景の状態について説明します(ここでは、理想的な条件の1つとして周囲は暗黒状態であるとしておきます)。図28は検出物があるときとないときの検出状態を示した図です。この図からおわかりいただけるように、検出物体がなくとも、背景物体の影響でフォト・マイクロセンサのLED光が受光素子に反射して入るということです。したがってこのような場合も、先と同じようにS/N比という考え方をしますと、S/N比が低下することとなります。このような例としては、ステンレスや亜鉛メッキのフレームの上を紙が通過し、その紙の通過を検出するような場合があげられますが、場合によっては、紙検出時の光電流IL(S)よりも紙のないときの光電流IL(N)の方が大きくなることもあります。このように、機構上どうしても背景に物を設置しなければならないときは、図29のように背景物体の

図29 対策例

一部分をくり抜くようなことが必要です(この場合の寸法は、センサ表面の寸法以上としてください)。また黒のつや消し塗装を施したり、表面を荒らしてやることもその方法の1つです。なお背景物体の影響は、誤動作の要因として多く見受けられますので必ず確認をとるようにしてください。
では、つぎに出力レベルについて考えましょう。透過形フォト・マイクロセンサの出力(光電流IL)と大きく異なるのは、検出物体の種類や距離、大きさにより光電流ILが大きく変化することです。透過形フォト・マイクロセンサの場合は、溝中に物体がないときの状態での出力を光電流ILとしているため簡単明瞭に考えられますが、反射形フォト・マイクロセンサの場合は、当社標準物体、距離における出力を光電流ILとしていますので、当社標準物体、距離と異なるときはこの光電流

図30 検出特性例(形EE-SF5)

ILの値が大きく異なってしまいます。図30は、形EE-SF5(-B)の検出物体と検出距離を変化させたときの出力がどのように変わるかを表わしたものです。
もし実際の検出物体がこのグラフで紹介される範中のものであれば、当社標準物体*との比は把握することができますが、これ以外のものでしたら、実際にどれ位の光電流が得られるのか測定するしかありません(*形EE-SF5(-B)の場合反射率90%の白色紙)。この測定はフォト・マイクロセンサを実使用状態と同じように設定し、図31のようにして物体がある時とない時の電流

図31 出力電流の測定

を測ることになります。当然のことながら、図31のようにして求めた電流よりS/N比を算出し、使用できるか否かを検証していくことになりますが、さらにもう1つ注意する事項があります。これは、反射形フォト・マイクロセンサの光電流は、物体を検出しているときでも数十μA~数百μA程度の電流レベルしか得られませんので、S/N比のS(信号)の絶対値レベル自体が低いということを認識することにあります。このことは、周囲が暗黒であっても、暗電流IDや漏れ電流ILEAKが流れ、これらが温度上昇で数μA~10数μA(表3)に達することがあり、この絶対値レベル(N:雑音レベル)が、先のS(信号)レベルに対し無視できないこととなります。これらの理由で、反射率の低い物体は、極端にS/N比が小さくなるため注意が必要です。
その他、反射形フォト・マイクロセンサで注意しなければならない使用例としては、
・マーク検出(例:白地上の黒マークの検出)
・小さな物体の検出
などがありますが、これらも先と同様の検討をするしかありません。
以上述べましたように、反射形フォト・マイクロセンサはその使用にかなりむずかしい面が多々ありますので十分ご注意のうえご使用いただきますようお願いいたします。


最終更新日:2024年04月01日