「光電センサ」は、光のさまざまな性質を利用して物体の有無や表面状態の変化などを検出するセンサです。
光電センサは、おもに光を出す投光部と光を受ける受光部から構成されています。投光された光が検出物体によってさえぎられたり反射したりすると、受光部に到達する量が変化します。受光部は、この変化を検出して電気信号に変換し、出力します。使用される光としては、可視光(主に赤、色判別用に緑、青)と赤外光が大半です。
光電センサは、下の図に示すように主に3種類に分類されます。(詳細は「分類」参照)
透過形
回帰反射形
拡散反射形
①検出距離が長い
たとえば透過形では10m以上の検出距離がとれるなど、他の検出手段(磁気、超音波など)では不可能な長距離検出が可能です。
②検出物体に対する制約が少ない
検出物体によるしゃ光や反射を検出原理としているので、近接センサのように検出物体が金属に限定されるのとは異なり、ガラス・プラスチック・木材・液体など、ほとんどの物体を検出できます。
③応答時間が短い
光そのものが高速であり、またセンサの回路がすべて電子部品で構成されているので機械的な動作時間を含まず、応答時間は非常に短くなっています。
④分解能が高い
高度な設計技術によって投光ビームを小さなスポットとしたり、特殊な受光光学系を構成したりすることにより、高い分解能を実現できます。その結果、微小物体の検出や高精度の位置検出が可能となります。
⑤非接触で検出が可能
検出物体に機械的に触れることなく検出できるので、検出物体もセンサも傷つくことがありません。従って、センサを長期にわたって使用できます。
⑥色の判別が可能
検出物体による光の反射率や吸収率は、投光された光の波長と検出物体の色の組合わせに応じて異なります。この性質を利用して、検出物体の色を検出することが可能です。
⑦調整が容易
可視光を投光するタイプでは投光ビームが目にみえるので、検出物体に対する位置合わせなどが容易です。
① 光の性質
●直進
光は、空気中や水中を進む場合、常にまっすぐ進みます。
透過形センサに外付けスリットを使用して微細物体を検出する例は、この原理を応用したものです。
●屈折
光が屈折率の異なる境界面に入射した時、その境界面を通過後進行方向が変わる現象をいいます。
●反射(正反射、回帰反射、拡散反射)
鏡やガラスのような平面上では、光は入射角と同じ角度で反射し、これを正反射と呼びます。
3つの平面を互いに直交するように組み合わせた形状をコーナーキューブと呼びます。
コーナーキューブに向けて投光すると、正反射を繰り返し、最終的な反射光は投光と対向する方向に進みます。このような反射を回帰反射と呼びます。
多くの回帰反射板は数mm角のコーナーキューブを規則正しく配列した構成となっています。
また、白紙など光沢性のない表面上では光があらゆる方向に反射し、このような反射を拡散反射と呼びます。拡散反射形は、この原理を検出方式としたものです。
●偏光
光は、その進行方向と垂直な方向に振動する波として表現できます。光電センサの光源としては、おもにLEDが使用されます。LEDから投光される光は、進行方向と垂直なさまざまな方向に振動しており、この状態の光を無偏光と呼びます。無偏光の光の振動方向を一方向に制限する光学フィルタを偏光フィルタと呼びます。つまり、LEDから投光され偏光フィルタを通過した光は一方向だけに振動しており、この状態の光を偏光(正確には直線偏光)と呼びます。ある方向(たとえば縦方向)で振動する偏光は、それと垂直方向(横方向)に振動を制限する偏光フィルタを通過することができません。
回帰反射形のM.S.R機能(「参考資料」参照)や、透過形のアクセサリである相互干渉防止フィルタは、この原理を応用したものです。
② 光源
●光の点灯のしかた
〈パルス変調光〉
大半の光電センサはパルス変調光を採用しており、一定周期で投光を繰り返すのが基本です。
外乱光の影響を除きやすいので長距離検出が可能です。相互干渉防止機能付きのタイプでは、干渉光や外乱光に応じて、投光の周期が一定の範囲内で変化します。
〈直流光〉
一定の光量の光を連続して投光するもので、マークセンサなど一部の機種で採用されています。高速応答性が得られますが、検出距離が短い、外乱光に弱いなどの欠点があります。
●光源色と種類
③ 三角測距
距離設定形光電センサは、おもに三角測距を検出原理としています。下の図は三角測距の原理を示したものです。
投光素子から投光された光は、検出物体上で拡散反射します。反射光は受光レンズによって位置検出素子(光の当たる位置に応じた信号を出力する半導体素子)上に結像します。検出物体が光学系に近い位置Aに存在する場合は位置検出素子のaの位置に、また光学系から遠い位置Bに存在する場合はbの位置に、反射光が結像します。従って、位置検出素子上の結像位置を測ることによって、検出物体までの距離が測れることになります。
① 検出方式による分類
(1)透過形
検出方式
投光器からの光が受光器に入るように投光器と受光器を対向設置します。
検出物体が投光器と受光器の間に来て光をさえぎると、受光器に入る光の量が減少します。
この減少をとらえ検出を行います。
また、検出方式は透過形と同じで、センサの形状として投受光部が一体化した溝型と呼ばれる種類もあります。
特長
(2)拡散反射形
検出方式
投受光器一体形で、通常受光部に光は戻りません。投光部から出た光が検出物体にあたると、検出物体から反射した光が受光部に入り、受光量が増加します。
その増加をとらえ検出を行います。
特長
(3)回帰反射形
検出方式
投受光器一体形で、通常投光部から出された光は、対向設置した反射板に反射して受光部に戻ってきます。検出物体が光をさえぎると、受光部に入る光の量が減少します。
その減少をとらえ検出を行います。
特長
(4)距離設定形
検出方式
センサの受光素子として、2分割フォトダイオードまたは位置検出素子を使用しています。検出物体によって反射した投光ビームは、受光素子上で結像します。この結像位置が、検出物体の距離によって異なるという三角測距の原理を検出原理としています。
下の図は、2分割フォトダイオードを用いた検出方式を示します。2分割フォトダイオードの一方(ケースに近い側)をN(Near)側、他方をF(Far)側と呼びます。距離を設定した位置に検出物体が存在する場合、反射光はN側とF側の中間地点で結像し、両側のフォトダイオードが等しい光量を受光しています。また、設定距離よりセンサに近い位置に検出物体が存在する場合、反射光はN側で結像しています。逆に設定距離より遠い位置に検出物体が存在する場合、反射光はF側で結像しています。センサは、N側の受光量とF側の受光量の差を演算することによって、検出物体の位置を判別します。
距離設定形の特長
BGS(Background Suppression)とFGS(Foreground Suppression)
形E3Z-LS61/-66/-81/-86では、コンベヤ上の物体を検出する場合、BGSとFGSの2つの機能のいずれかを選択します。
BGSは、設定距離より遠くにある背景(コンベヤ)を検出しない機能です。
FGSは、設定距離より近くにある物体と、受光器にもどる光量が所定より小さい物体を検出しない機能で、逆に言えばコンベヤだけを検出する機能です。受光器に戻る光量が少ない物体とは、
① 検出物体の反射率が極めて低い、黒画用紙よりもさらに黒い物体
② 反射光がほとんど投光側にもどる、鏡のような物体
③ 反射光量は大きいがランダムな方向に散る、凹凸のある光沢面
などが相当します。③の場合は、検出物体の移動により一時的に受光側に反射光が戻ることがあるので、OFFディレイタイマなどによってチャタリングを防ぐ必要がある場合があります。
BGSモード・FGSモードの特長
BGSモード
FGSモード
(5)限定反射形
検出方式
拡散反射形と同じく検出物体からの反射光を受光し検出を行います。投光ビームと受光エリアを限定した光学系を持ち、センサから一定の距離(投光ビームと受光エリアの重なった範囲)にある検出物体だけ検出するようにしています。右記の図では、(A)の位置では検出物体は検出できますが、(B)の位置では検出できません。
〔例〕
特長
② 検出方式による選定ポイント
●透過形/回帰反射形の確認事項
検出物体
センサ
環境
●拡散反射形、距離設定形、限定反射形の確認事項
検出物体
センサ
背景
環境
③ 構成による分類
光電センサは通常 投光部、受光部、増幅部、制御部、電源部から構成されており、その構成状態から次のように分類されます。
(1)アンプ分離形
投光部と受光部だけを分離して、それぞれ投光器、受光器としたもの(透過形)、あるいは一体の投受光器としたもの(反射形)です。その他の増幅部、制御部は一体のアンプユニットの形をとります。
特長
(2)アンプ内蔵形
電源部以外を一体としたもの。(透過形は投光部を含む投光器と、受光部、増幅部、制御部を含む受光器に分かれる)。電源部は単独に電源ユニットなどの形をとります。
特長
(3)電源内蔵形
電源部まで投光器、受光器に含めて一体化したものです。
特長
(4)エリアセンサ
投光部、受光部を多光軸にしたもの(透過形)
用途に合わせて、センサの検出幅が選択可能
特長