ロータリーエンコーダは、回転の機械的変位量を電気信号に変換し、この信号を処理して位置、速度などを検出するセンサです。ここではロータリ-エンコーダの概要を解説します。
ロータリエンコーダとは、回転の機械的変位量を電気信号に変換し、この信号を処理して位置・速度などを検出するセンサです。直線の機械的変位量を検出するセンサをリニアエンコーダといいます。
①軸の回転変位量に応じて出力します
軸にカプリングを用いて結合することにより、直接、回転変位量を検出できます。
②起動時の原点復帰が不要です(アブソリュート形のみ)
アブソリュート形の場合、回転角度を絶対的な数値としてパラレル出力します。(詳細は下記の「原理」参照)
③回転方向も検出できます
インクリメンタル形の場合、A 相とB 相の出力タイミング、アブソリュート形の場合はコードの増減で回転方向がわかります。(詳細は下記の「原理」参照)
④豊富な分解能と出力形式より最適なセンサをお選びいただけます
要求精度やコスト、接続回路などに応じて適したセンサを選定いただけます。
分類 | 特長 | 構造 | 出力波形 |
インクリメン タル形 形E6A2-C 形E6B2-C 形E6C2-C 形E6C3-C 形E6D-C 形E6F-C 形E6H-C | ・軸の回転変位量に応じてパル ス列を出力するタイプです。 別途カウンタで出力パルス数 を計数し、カウント数により 回転量を検出する方式です。 ・ある入力軸の位置からの回転 量を知るには、基準とする位 置でカウンタの計数値をリセッ トし、その位置からのパルス 数をカウンタで累積加算しま す。 従って、基準位置を任意に選 ぶことができ、しかも、回転 量の計数が無限にできます。 さらに、回路を追加し、信号 の1周期の2倍、4倍のパルス 数を発生させ、電気的に分解 能を高めることができるのも 大きな特長です(*)。 また、1回転につき1回だけ発 生するZ相信号は、1回転内 の原点として使用できます。 *高分解能が必要な場合、一般 的には4逓倍回路方式がとら れます。(A相、B相のそれぞ れの立上り、立下り波形を微 分することにより4倍出力が 得られ、分解能が4倍になり ます。) | 軸の回転と共に光学パターンが 書き込まれたディスクが回転す ると、それに応じて、2ヶ所のス リットを通る光が透過、しゃ断さ れます。この光は、それぞれの スリットに対抗する受光素子で 電流に変換され、波形整形され て2つの矩形波出力として出力 されます。 この2ヶ所のスリットは、矩形波 出力の位相が互いに1/4ピッチ 異なるように配置されています。 | *分解能が変わっても 「相」数は変化しません |
アブソリュー ト形 形E6CP-A 形E6C3-A 形E6F-A | ・回転角度を2n のコードで絶対 的な数値としてパラレルで出 力するタイプです。 従って、出力コードビット数 分の出力数を持ち、分解能が 大きくなると出力数が増加し ます。この出力コードを直接 読み取ることにより回転位置 検出を行う方式です。 ・エンコーダがいったん機械に 組み込まれると、入力回転 軸のゼロ位置が定まり、常 にゼロ位置を座標原点にし た回転角度がデジタルで出 力されます。 ノイズなどによりデータの狂 いが生じることもなく、起動 時の原点復帰も不必要で す。 しかも、高速回転で符号が読 めなくなっても、回転速度を 落とすと、正しいデータが読 みとれ、また、停電などで電 源が切れ、再び電源を入れ た場合でも正しい回転データ を読みとることができます。 | パターンの書き込まれたディスク が回転すると、パターンに従って スリットを通過した光は、あるも のは透過、あるものは遮られま す。 透過した光は受光素子で電流に 変換され、波形整形された後デ ジタル信号になります。 |
詳細は上記の「原理」参照
選定ポイント
【1】インクリメンタル形か、アブソリュート形か
許容コストの関係、電源立ち上げ時の原点復帰の可否、制御速度、耐ノイズ性などを考慮し、適したタイプを選定する。
【2】分解能はどれくらいがよいか
組み込む機械装置の要求精度と機械のコストを考慮して最適なものを選択する。機械の総合精度の1/2~1/4精度となる分解能を選定するのがよい。
【3】外形寸法
取りつけスペースの関係から選定する軸の形態(中空軸、シャフトタイプ)も考慮に入れながら選定する。
【4】軸許容荷重
取りつけ方法による軸負荷の状態、機械的寿命などを考慮し選定する。
【5】許容最大回転数
使用時の機械的な最大回転数から選定する。
【6】最高応答周波数
組み込む機械装置の使用時の軸の最大回転数から決定する。
最大応答周波数=(回転数(RPM)/60)×分解能
ただし、実際の信号の周期はばらつきがあるため、上記の計算値に対し、余裕のある仕様のものを選定する。
【7】保護構造
使用環境にほこり、水、油がどの程度あるかにより選定する。
【8】軸の回転起動トルク
駆動源のトルクはどれくらいあるか。
【9】出力回路方式
接続する後段機器、信号の周波数、伝送距離、ノイズ環境などを考慮し、回路方式を選定する。
長距離伝送する場合は、ラインドライバ出力を選定するのがよい。