
今からおよそ30年前の1990年頃、産業用のオープンネットワークや産業用イーサネットが登場し、「相互接続性」は大幅に向上しました。1996年に発表されたOPC DA (OPC Data Access)も、相互接続性の向上に大きく貢献をしました。こうしてメーカーや機器の枠を越えて"つなげる"状態が実現できるようになりました。
次にOPCは、その先の状態「相互運用性 (インターオペラビリティ)」を向上させる "伝える"を目指しました。OPC UA(OPC Unified Architecture)は、2006年に発表され、ここ数年で急速に普及。”伝える”価値を提供できる産業用の相互運用基準となっています。
メーカーや機器の枠を越えてつながり、データを交換するだけではなく、マシンやアプリケーションが意味を持った情報をお互いに伝えることで、より効率よく装置や生産システムを構築・運用できるようになること、さらには、装置や製造現場にある「価値ある情報」を、改善を行うエンジニアだけでなく、生産性や経営効率を高めたいマネジメント層も活用できる状態を目指しています。
そして、"伝える"です。
"つなげる"ことが実現して、データを交換することができても、その意味が分からないと活用することができません。
従来はデータを交換する当事者の間で暗黙にその意味を理解している必要がありました。
OPC UAではマルチベンダー間の情報連携を実現するために、情報や機能を表す「情報モデル」という統一されたモデリング機能を提供します。交換したい情報をきちんと分類し、意味づけをして、テンプレートのようにかたまり・モジュールとして表現したものが情報モデルです。
例えば、PLCの国際標準 IEC61131-3 (PLCopen)に対応したコントローラだと、構造体変数として表現できます。
構造体の名前がテンプレートにしたいモジュールの名前となり、モジュールで扱いたいデータを構造体のメンバー名・データ型で表現します。光電センサのデータを扱う場合の例を下図に示します。
そして、実際のデータは構造体変数名やメンバー名を指定してデータを交換します。これにより、情報の構造や意味が伝えやすくなり、情報の活用も容易となります。また情報やインタフェースの標準化にも役立ちます。
OPC Foundationでは、このような情報モデルの仕組みを提供するだけでなく、実際に活用できる情報モデルを生み出す取組も積極的に行っています。産業分野で使われる機器や装置、アプリケーションを普及・推進している業界団体と連携し、情報モデルの仕様策定を行っています。この情報モデルを「コンパニオン仕様」と呼びます。例えば、PLCの国際標準化団体PLCopenと連携し、「OPC UA Information Model for IEC 61131-3」というコンパニオン仕様を作成、2010年に公開しました。オムロンのNX701-1□□□/NX102-□□□□/NJ501-1□00に標準搭載しているOPC UAはこのコンパニオン仕様に準拠しています。
コンパニオン仕様や業界団体との連携の取組は、次回(第3回 OPC UAの特長2 コラボレーションとコンプライアンス)で詳しくご紹介します。
産業IoTやつながる工場の実現のために、製造現場のサイバーセキュリティへの対応はとても重要になってきています。
製造現場のFAシステムと上位ITシステムの接続、リモートアクセスによるメンテナンス、生産性を追求し続けるためのさらなるインターネット技術の活用において課題となるのが、セキュリティの確保です。
また、医薬品や自動車部品の製造においては「安心・安全なモノづくり」の重要性が高まっています。「正しく作られたのか」を証明するため、製造データが改ざんされていないことを示すような仕組みの導入も始まっています。
OPC UAでは、インターネットで標準的に使用されているセキュリティ技術を採用し、セキュリティの三大要件である完全性・機密性・可用性に対応。デジタル署名を用いたデータ確認、メッセージの強固な暗号化を実現し、FAとITを安全に接続します。
また、OPC UAの仕様や基盤となるソフトウェアは、ドイツ情報セキュリティ庁(BSI)でセキュリティの分析が行われ、高いレベルのセキュリティが提供されていることが示されました。仕様や設計の観点からも、セキュリティ性が高い "Secure By Design" な国際標準だと言えます。
このようにOPC UAがIndustrie4.0の標準通信として推奨されているのも、セキュアな接続・データ伝送に対応していることが理由の1つとなっています。
(次回へ続く)
マシンオートメーションコントローラ
NJ/NXシリーズ CPUユニット
NX701-1□□□/NX102-□□□□/NJ501-1□00