
前回・前々回の2回で、OPC UAは 「つなげる・伝える・安全に」の3つの価値を通じて、産業分野の相互運用(インターオペラビリティ)を実現する国際標準"The Industial Interoperability Standard"を目指していることを紹介してきました。
産業分野のインターオペラビリティを実現するOPC UAの技術は、国際規格IEC62541として公開されています。また、OPC UAに対応する製品の開発を支えるためのソフトウェア開発キットやアプリケーションのサンプルもオープンソースとして一般に公開されています。
OPC UAは、実際にインターオペラビリティを可能にするために、特に2つの活動に力を入れています。
1つがコラボレーション、もう1つがコンプライアンスです。
今回は「コラボレーション」について紹介します。
「コラボレーション (collaboration)」は、「共に働く、協力するの意味で、共演、合作、共同作業、利的協力を指す言葉」(出典元:引用 - Wikipedia) とウィキペディアで説明されています。OPC UAはOPC Foundationを中心に「共に働く、協力する」を積極的に推進し、「共演、合作」を生み出し続けています。真のインターオペラビリティを実現し、その価値を多くの方々に届けるためには、価値の実現に必要な多くの団体や技術と協力・共演し、合作を生み出す必要があります。その活動がコラボレーションです。
コラボレーションの具体的な活動は、OPC UAが適用される市場・業界団体と協力して、
前回紹介した、OPC UAのPLC用コンパニオン仕様「OPC UA Information Model for IEC 61131-3」もその一例です。
OPC UAの仕様では、インターオペラビリティを実現する枠組みとして"コンパニオン情報モデル"を提供しています。そして、OPC UAが適用されていく市場や業界団体の専門家が、各領域でインターオペラビリティを実現するために必要な中身(コンテンツ)として、コンパニオン仕様やユースケースを創出しています。
Industrie4.0など産業IoTへの関心が高まるにつれ、多くの団体とのコラボレーションが進み、2019年4月現在で50を越える団体と連携が進められています。
(コラボレーションの一覧: https://opcfoundation.org/markets-collaboration/)
今年2019年4月のハノーバ・メッセ2019では、OPC Foundationとコラボレーションを進めている35の業界団体が集まり、"OPC UAとのコラボレーション"だけをテーマにしたイベント"1st World Interoperability Conference"が開催されました。
300名を超える方が参加し、OPC Foundationが重点的に進めてきたコラボレーションの質と量を実感できる空間がそこにありました。
コラボレーションは、OPCの当初の適用範囲である工場自動化分野にとどまらず、ビルオートメーション、エネルギー、オイル・ガス、輸送といった業界や、IoTやセキュリティなどの技術分野にも拡大しています。
コンパニオン仕様は、ジョイントワーキンググループを中心に作成されており、OPC Foundationの会員*1であれば参加することができます。
*1 ロゴ会員を除く、コーポレート会員、エンドユーザ会員。
実際にコンパニオン仕様が創出されているコラボレーションの実例をいくつか紹介します。
最も早く取り組まれたコラボレーションの1つで、2006年にOPC FoundationがPLCopenにコラボレーションを提案、2008年にジョイントワーキンググループが設立されました。
PLCopenが普及推進しているPLCの国際標準規格IEC61131-3と、OPC Foundationが推進しているIEC62541(OPC UA)を連携させ、特定のメーカやプラットフォームに依存せずに、PLCが持つ制御や製造現場の情報を生産管理システム(MES)や監視制御システム(SCADA)などの上位システムに提供できるようになるコンパニオン仕様が策定されました。2010年にV1.0として公開されています*2。
オムロンのNX701-1□□□/NX102-□□□□/NJ501-1□00に標準搭載しているOPC UAはこのコンパニオン仕様「OPC UA Information Model for IEC 61131-3」に準拠しています。
その後もコラボレーションを継続し、コンパニオン仕様のバージョンアップや、イベントで共同展示を行うなど、コンパニオン仕様の普及推進に取り組んでいます。
FDTは、機器メーカ、機種、通信プロトコルを問わず、一元的に、統一された表示方法、操作感でフィールド機器の設定を行うことが可能になるソフトウェアインタフェース技術です*3。
FDT GroupとOPC Foundationは、2014年にコラボレーションを開始し、OPC UA情報モデルをFDT技術に適用するコンパニオン仕様の策定が行われてきました。そして2016年11月、FDT/OPC UA仕様として公開され、2017年ドイツ・ハノーバメッセでデモ展示が行われています。
このコンパニオン仕様により、OPC UAに対応した上位システムやアプリケーションから、フィールドバスの通信プロトコルや制御機器に依存した設定、パラメータが透過的に扱えるようになることが期待されます。
OMAC (The Organization for Machine Automation and Control)*4 では、食品・日用品の包装ラインの構築コストを削減し、運用効率の向上を図るため、Packaging Working Groupを設立し、包装機械の動作・操作・上位インタフェースのガイドラインを策定、PackML (ISA-TR88.00.02)として公開しています。
PackMLでは、上位インタフェースなどのデータ構造は明確に定義されていますが、通信プロトコルは定義されていませんでした。その後 2016年にOMACとOPC Foundationの間で、PackMLの標準通信プロトコルとしてOPC UAを適用する検討を開始することが合意されました。PackMLで定義されているデータ構造や情報モデルと、OPC UAの親和性が非常に高いこと、特定のメーカやプラットフォームに依存していないことがポイントとなりました。現在、ジョイントワーキンググループでコンパニオン仕様が策定中で、近日公開が期待されています。
また、OMACのガイドラインではプログラミング言語としてIEC61131-3が推奨されていることもあり、2016年9月にはOMAC, PLCopen, OPC Foundationの3者が共同で、標準化を推進していくことが発表されました。
*2 PLCopen OPC UA Information Model for IEC 61131-3 仕様書
https://www.plcopen.org/downloads/plcopen-opc-ua-information-model-iec-61131-3-version-100
*3 FDT Group 日本支部ホームページ
http://fdtgroup.jp/
*4 OMAC ホームページ
https://omac.org/
(次回へ続く)
マシンオートメーションコントローラ
NJ/NXシリーズ CPUユニット
NX701-1□□□/NX102-□□□□/NJ501-1□00