第3回 OPC UAの活動(1)コラボレーション

第3回 OPC UAの活動(1)
コラボレーション

前回・前々回の2回で、OPC UAは 「つなげる・伝える・安全に」の3つの価値を通じて、産業分野の相互運用(インターオペラビリティ)を実現する国際標準"The Industial Interoperability Standard"を目指していることを紹介してきました。

産業分野のインターオペラビリティを実現するOPC UAの技術は、国際規格IEC62541として公開されています。また、OPC UAに対応する製品の開発を支えるためのソフトウェア開発キットやアプリケーションのサンプルもオープンソースとして一般に公開されています。

OPC UAは、実際にインターオペラビリティを可能にするために、特に2つの活動に力を入れています。
1つがコラボレーション、もう1つがコンプライアンスです。

今回は「コラボレーション」について紹介します。

コラボレーション

コラボレーションの具体的な活動は、OPC UAが適用される市場・業界団体と協力して、

  • ・適用するための仕様(コンパニオン仕様)
  • ・適用事例(ユースケース)や適用のためのガイドライン
を創出することです。

前回紹介した、OPC UAのPLC用コンパニオン仕様「OPC UA Information Model for IEC 61131-3」もその一例です。

OPC UAの仕様では、インターオペラビリティを実現する枠組みとして"コンパニオン情報モデル"を提供しています。そして、OPC UAが適用されていく市場や業界団体の専門家が、各領域でインターオペラビリティを実現するために必要な中身(コンテンツ)として、コンパニオン仕様やユースケースを創出しています。

OPC UAの構造

Industrie4.0など産業IoTへの関心が高まるにつれ、多くの団体とのコラボレーションが進み、2019年4月現在で50を越える団体と連携が進められています。

今年2019年4月のハノーバ・メッセ2019では、OPC Foundationとコラボレーションを進めている35の業界団体が集まり、"OPC UAとのコラボレーション"だけをテーマにしたイベント"1st World Interoperability Conference"が開催されました。

1st World Interoperability Conference 1st World Interoperability Conference 1st World Interoperability Conference

300名を超える方が参加し、OPC Foundationが重点的に進めてきたコラボレーションの質と量を実感できる空間がそこにありました。

コラボレーションは、OPCの当初の適用範囲である工場自動化分野にとどまらず、ビルオートメーション、エネルギー、オイル・ガス、輸送といった業界や、IoTやセキュリティなどの技術分野にも拡大しています。

コンパニオン仕様は、ジョイントワーキンググループを中心に作成されており、OPC Foundationの会員*1であれば参加することができます。

*1 ロゴ会員を除く、コーポレート会員、エンドユーザ会員。

コラボレーションの具体例

実際にコンパニオン仕様が創出されているコラボレーションの実例をいくつか紹介します。

1) PLCopen

最も早く取り組まれたコラボレーションの1つで、2006年にOPC FoundationがPLCopenにコラボレーションを提案、2008年にジョイントワーキンググループが設立されました。

PLCopenが普及推進しているPLCの国際標準規格IEC61131-3と、OPC Foundationが推進しているIEC62541(OPC UA)を連携させ、特定のメーカやプラットフォームに依存せずに、PLCが持つ制御や製造現場の情報を生産管理システム(MES)や監視制御システム(SCADA)などの上位システムに提供できるようになるコンパニオン仕様が策定されました。2010年にV1.0として公開されています*2

オムロンのNX701-1□□□/NX102-□□□□/NJ501-1□00に標準搭載しているOPC UAはこのコンパニオン仕様「OPC UA Information Model for IEC 61131-3」に準拠しています。

PLCopen - OPC UAコンパニオン仕様のシンボルマーク

その後もコラボレーションを継続し、コンパニオン仕様のバージョンアップや、イベントで共同展示を行うなど、コンパニオン仕様の普及推進に取り組んでいます。

2) FDT

FDTは、機器メーカ、機種、通信プロトコルを問わず、一元的に、統一された表示方法、操作感でフィールド機器の設定を行うことが可能になるソフトウェアインタフェース技術です*3

FDT Groupのロゴマーク

FDT GroupとOPC Foundationは、2014年にコラボレーションを開始し、OPC UA情報モデルをFDT技術に適用するコンパニオン仕様の策定が行われてきました。そして2016年11月、FDT/OPC UA仕様として公開され、2017年ドイツ・ハノーバメッセでデモ展示が行われています。

このコンパニオン仕様により、OPC UAに対応した上位システムやアプリケーションから、フィールドバスの通信プロトコルや制御機器に依存した設定、パラメータが透過的に扱えるようになることが期待されます。

3) OMAC

OMAC (The Organization for Machine Automation and Control)*4 では、食品・日用品の包装ラインの構築コストを削減し、運用効率の向上を図るため、Packaging Working Groupを設立し、包装機械の動作・操作・上位インタフェースのガイドラインを策定、PackML (ISA-TR88.00.02)として公開しています。

OMAC-PackMLシンボルマーク

PackMLでは、上位インタフェースなどのデータ構造は明確に定義されていますが、通信プロトコルは定義されていませんでした。その後 2016年にOMACとOPC Foundationの間で、PackMLの標準通信プロトコルとしてOPC UAを適用する検討を開始することが合意されました。PackMLで定義されているデータ構造や情報モデルと、OPC UAの親和性が非常に高いこと、特定のメーカやプラットフォームに依存していないことがポイントとなりました。現在、ジョイントワーキンググループでコンパニオン仕様が策定中で、近日公開が期待されています。
また、OMACのガイドラインではプログラミング言語としてIEC61131-3が推奨されていることもあり、2016年9月にはOMAC, PLCopen, OPC Foundationの3者が共同で、標準化を推進していくことが発表されました。

(次回へ続く)

  1. 第1回 OPC UAの概要 "The Industrial Interoperability Standard"
  2. 第2回 OPC UAの特長 "つなげる・伝える・安全に"
  3. 第3回 OPC UAの活動(1)コラボレーション(本記事)
  4. 第4回 OPC UAの活動(2)コンプライアンス
  5. 第5回 OPC UAの対応商品と導入事例
  6. 第6回 OPC UAの最新動向
  7. 第7回 普及・進化するOPC UA
  8. 第8回 導入事例(OPC UAに対応した巻線機)
  9. 第9回 OPC UAの新たな取組


写真はイメージで実際のアプリケーションではありません。
ここでご紹介したシステム構成は参考例です。
Sysmacは、オムロン株式会社製FA機器製品の日本及びその他の国における商標または登録商標です。
EtherCAT®は、ドイツBeckhoff Automation GmbHによりライセンスされた特許取得済み技術であり登録商標です。
Safety over EtherCAT®は、ドイツBeckhoff Automation GmbHによりライセンスされた特許取得済み技術であり登録商標です。
EtherNet/IP、CIP Safety CompoNetおよびDeviceNetは、ODVAの商標です。
OPC、OPC UAはOPC Foundationの商標です。
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