第7回 普及・進化するOPC UA

第7回 普及・進化するOPC UA

インダストリー4.0の推奨規格に採用され、デジタル時代のものづくり・製造DX(デジタルトランスフォーメーション)を支える世界標準の相互運用規格として、OPC UAへの注目がますます高まっています。 また、スマートマニュファクチャリングを実現するための産業用IoTのソリューションに「OPC UAに対応」というような表現が使われることが多くなりました。「OPC UAなので簡単に接続できる」や「セキュリティに強いOPC UA」などです。

2019年に「OPC UAとは?」と題して、OPC UAの特長や事例、動向を全6回で紹介しました。今回は、その後のOPC UAの普及や、規格の進化、オムロンの取り組みと新しい導入事例を紹介します。

普及が進むOPC UA

OPC UAの普及が進んでいることを示す事実を3つ紹介します。

1つめは、OPC UAの規格策定・普及を進めているOPC Foundationの会員が増え続けていることです。 会員数は2020年に800社に達しました。ここ数年間、毎年会員が増え続けています。

OPC Foundation 会員数

(出典: 日本OPC協議会)

2つめは、近年加入される企業に新たな特徴が見られることです。その特徴は2つあります。 1つはIT系企業の加入が増えていること、もう1つはエンドユーザ企業が加入され始めたことです。

IT系企業では、Google Cloud, Amazon Web Services, Inc. (AWS)が加入しました。この2社の加入により、OPC Foundation設立当初から加入されているMicrosoftと合わせて、クラウドサービスの3大ベンダーが加入したことになります。また、日本の通信事業者のNTTコミュニケーションズも加入されました。

エンドユーザ企業では、自動車のグローバル大手・フォルクスワーゲン(Volkswagen AG)、世界最大の化粧品会社・ロレアル(L’Oreal Operations)が加入しました。

製造現場を持つエンドユーザが導入を推進し、製造DXのシステム実現に欠かせないIT技術が導入を支える。-これらの企業の参画により、OPC UAの普及が加速することが期待できます。

3つめはOPC UAを国家規格に採用する国が登場したことです。シンガポールと中国がOPC UAを国家規格化しました。 シンガポールはSS IEC62541:2019へ、中国はGB/T 33863へ、それぞれ国家規格とされました。 特に中国では、OPC UAが産業政策「中国製造2025」の実現に向けた重要な規格に位置づけられているようです。これらの国や地域では、OPC UAの普及が加速することが予想されます。

これらの例のように、OPC UAは業界や分野、企業や地域を越えて広がりつつあります。このことから、「OPC UAはオートメーションの国連」と呼ばれ始めています。

進化するOPC UAの仕様

OPC UAは、工場や産業のあらゆるものを「つなげる、伝える、安全に」が実現された世界を目指しています。 OPC UAは、現在まで主にFAとITの橋渡しをする、上位接続・縦方向の相互接続に価値を提供してきました。そして、今後は製造現場・横方向の相互接続にも価値提供の範囲を拡大することを目指しています。それがField Level Communicationイニシアティブ (FLC)の取り組みです。 概要は「第6回 OPC UA最新動向」で紹介しました。

オムロンは、FLCのステアリングメンバとして参画し、規格化を進めています。
FLCの規格は2つのステップに分けて策定が進められています。

  • ・バージョン1: C2C (コントローラ to コントローラ) (下の図中 赤色の枠)
  • ・バージョン2: C2D, D2D (コントローラ to デバイス, デバイス to デバイス) (下の図中 緑色の枠)
進化するOPC UAの仕様

(出典: 日本OPC協議会)

仕様は策定中のため公開されていませんが、FLCの概要がわかるテクニカルペーパーが公開されており、OPC FoundationのWebサイトからダウンロードできます。40ページに渡り、FLCを構成する技術や、想定するシステム構成について説明されており、FLCが実現しようとしている内容に触れることができます。

進化するOPC UAの仕様

オムロンのOPC UAへの取り組み

普及が進むOPC UAは、オムロンにとっても重要な規格です。オムロンは、グローバルオープンな産業用ネットワーク・接続規格に積極的に対応してきました。センサから制御・情報・上位接続まですべて国際規格(IEC)化され、普及が進むオープンな規格に対応した製品を提供しております。

上位接続はOPC UA, 情報系・安全系はEtherNet/IP、フィールドネットワークはEtherCAT、そしてセンサレベルはIO-Linkを採用しています。

オムロンのOPC UAへの取り組み

センサやロボットなどのフィールド機器、コントローラや装置の情報を収集し、上位のITとつないで分析・活用するために、OPC UAがますます重要になると考えています。

・対応製品の拡充

オムロンは2018年から、OPC UAサーバ機能の提供を開始、マシンオートメーションコントローラ NX102シリーズ・NJ501シリーズに標準搭載をしてきました。 そして、2021年1月から最上位モデル NX701シリーズにもOPC UAサーバを標準搭載しています。

マシンオートメーションコントローラ NX701シリーズは、最速125μs周期での制御、最大256軸のモーション制御ができます。そのため、高速・高精度が要求されたり、大規模制御が必要な装置や工程で使われています。例えば、飲料や医薬品の高速充填機や包装機、車載用リチウムイオン電池の捲回・積層工程などです。 このような装置・工程では、高速・高精度な制御だけでなく、MESや生産システムとの接続、品質トレーサビリティシステムへのデータ格納も求められます。 そのため、NX701シリーズでは、上位接続のために、OPC UAサーバとデータベース直結機能を搭載。2つの上位接続を併用することができます。

2つの上位接続は、NXシリーズの小型モデル・NX102シリーズにも搭載しています。

対応製品の拡充

・OPC UA認証の更新

OPC UAは、"The Industrial Interoperability Standard"、つまり産業分野の相互運用(インターオペラビリティ)の実現を目指しています。そのためには、真につながって、安心できる製品を使って、システムを構築することが重要です。 OPC Foundationでは「コンプライアンス」と呼んでおり、いくつかのサービスを提供しています。その内容は、「第4回 OPC UAの活動(2)コンプライアンス」で紹介しました。そのサービスでもっとも力を入れているのが「認証テスト」です。

OPC Foundationは、認証テストを通じて、OPC UA製品に一定の信頼性があることを保証します。そのために専用のテストラボを運営しています。認証テストに合格するとOPC Foundationから認定証と認証ロゴが発行されます。

認証の有効期間は3年間です。

オムロンのOPC UAサーバ標準搭載・マシンオートメーションコントローラ NX701-1□□□も認証を取得しています。また、NX102-□□□□/NJ501-1□00は2021年に認証更新、再取得しました。

OPC UA認証の更新

・採用が進む - OPC UA導入事例

OPC UAを搭載したコントローラを採用いただくことが増えてきました。採用いただくポイントは「国際標準で、標準搭載されていて、簡単に使える」ことです。 「第5回 OPC UA対応商品と導入事例」では4つの導入事例を紹介しました。

  • ・OPC DAからOPC UAへリニューアル
  • ・工場の情報化基盤をグローバルで共通化
  • ・後付けで稼働監視
  • ・セキュリティ対策、製造データ改ざん防止(データインテグリティ)

その後、新たに採用いただいた事例のうち、4つ紹介します。

MES・トレーサビリティ接続の標準化

・既存ラインに後付け

様々なメーカの機器、装置が導入されている製造ラインで、上位システムとの接続方法が統一されていませんでした。 その方法を標準化するためにNX1を後付けで導入。MES(SAP)との接続はOPC UAで、品質トレーサビリティデータベースとの接続はデータベース直結で標準化。この方式をグローバル標準インタフェースとして各工場に順次導入いただいています。

既存ラインに後付け

・新規装置に搭載

自動車部品の最終検査で、判定に必要な数10kHzの高速アナログ信号の収集と解析、検査結果を全数、トレーサビリティデータベースに格納し、状態や結果をSCADAで表示、そして搬送制御を1台のコントローラNX7で実行しています。アナログ信号の収集・解析、およびデータベースへの格納にデータベース直結を、状態や結果を表示するSCADAとの接続にOPC UAが使われています。

新規装置に搭載

装置のインタフェースとして当たり前に使用

・掘削機の遠隔監視

鉱山で使われる掘削機を遠隔で監視するために、掘削機と監視室のSCADAをOPC UAで接続されています。簡単に接続でき、難しい知識がなくても使えるのが良いと評価いただきました。

掘削機の遠隔監視

・情報処理用IPCと制御用PLCの接続

画像処理用に産業用PC(IPC)を、搬送制御用にコントローラNX1を使われている装置で、IPCとNX1を接続するためにOPC UAが使われています。 このお客さまの用途では、十分に高速な通信(100ms未満)がOPC UAを介して実現できているようです。

オムロンは、これからも引き続き産業用の相互接続標準、OPC UAの普及に貢献していきます。

※「オリジナル解説 OPC UAとは?」は、英語版と中文(簡体字)版もご覧いただけます。

(OPC UAとは? 第7回の内容は、2021年2月時点の情報に基づいています)

  1. 第1回 OPC UAの概要 "The Industrial Interoperability Standard"
  2. 第2回 OPC UAの特長 "つなげる・伝える・安全に"
  3. 第3回 OPC UAの活動(1)コラボレーション
  4. 第4回 OPC UAの活動(2)コンプライアンス
  5. 第5回 OPC UAの対応商品と導入事例
  6. 第6回 OPC UAの最新動向
  7. 第7回 普及・進化するOPC UA
  8. 第8回 導入事例(OPC UAに対応した巻線機)
  9. 第9回 OPC UAの新たな取組


写真はイメージで実際のアプリケーションではありません。
ここでご紹介したシステム構成は参考例です。
Sysmacは、オムロン株式会社製FA機器製品の日本及びその他の国における商標または登録商標です。
EtherCAT®は、ドイツBeckhoff Automation GmbHによりライセンスされた特許取得済み技術であり登録商標です。
Safety over EtherCAT®は、ドイツBeckhoff Automation GmbHによりライセンスされた特許取得済み技術であり登録商標です。
EtherNet/IP、CIP Safety CompoNetおよびDeviceNetは、ODVAの商標です。
OPC、OPC UAはOPC Foundationの商標です。
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