パワーサプライは、交流電力または直流電力より必要とされる安定化された直流電力を供給するための機器です。ここではパワーサプライの用語を解説します。
●効率(%)
入力の有効電力をどれくらい出力電力に変換しているかを表します。パワーサプライの変換効率は100%ではないため、一部は熱になります。
各パワーサプライのカタログ(データシート)等に記載の効率は、定格入出力状態の値です。負荷率毎の実力値は、テクニカルデータでご確認いただけます。
●電圧範囲
各仕様規格項目を保証できる入力電圧の範囲を示しています。交流入力の場合は実効値で表わします。
●周波数
交流入力端子に印加する電圧の周波数
●力率
パワーサプライの力率は、力率改善回路のない機種は一般的に0.4~0.6程度、力率改善回路搭載の機種は0.9~0.95程度です。
●高調波電流規制
高調波電流とは、基本的な交流電流が50Hz/60Hzの正弦波であるに対して、その数倍~数十倍の周波数成分のことをいいます。
ほとんどのスイッチング方式の電源(家電製品の電源なども含む)はコンデンサインプット方式のため、正弦波の入力電圧に対し、入力電流は正弦波でなく急峻なパルス状の電流波形となり、これが高調波を含んでいる状態になります。
高調波電流を多く含む機器は力率が悪いため、実際に消費される電力(W)よりも皮相電力(VA)が大きくなる(電流の値が大きくなる)ので、このような機器が多数取りつけられた場合には、より余裕のある電力設備が必要になります。
公共の低電圧配電系統へ接続される機器について、このような高調波電流を抑制するための規制として、国際的にIEC1000-3-2が制定されており、欧州でもIEC1000-3-2に整合する形で、EN61000-3-2が制定されています。規制の対象は、公共の低電圧配電系統に接続される定格入力電力が75W以上の装置です。
なお、国内においては経済産業省が「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」を発行し、高調波電流抑制の取り組みを実施しています。
パワーサプライを工業用途でご利用になる場合は、工場などでは受配電設備にて高調波抑制の対策をされる場合が多いため、スイッチング電源自体に高調波抑制機能が必要になる場合は少ないですが、一般の家庭用電源などの公共の低電圧配線系統に接続する場合など、スイッチング電源から発生する高調波を抑制したい場合や、規制への適合が要求される場合には、IEC61000-3-2に適合した製品をご使用ください。
●入力電流
標準的なパワーサプライは、交流入力を直接整流しています。この場合、整流方式はほとんどコンデンサインプット方式で、平滑コンデンサに無効電流が流れます。このために、入力電流は出力電力・入力電圧・力率・効率で決まります。
効率については各パワーサプライのカタログ(データシート)等を参照ください。
入力部整流平滑回路
●リーク電流
パワーサプライは、スイッチング・ノイズの入力ラインへの帰還を制限するため、内部にフィルタ回路を構成しています。リーク電流は、ほとんどこの入力フィルタ回路部のコンデンサを通じて流れるものです。
リーク電流は設置するパワーサプライの数だけ増加しますので、複数台使用には注意が必要です。
●突入電流
パワーサプライは入力投入時に、入力平滑コンデンサを充電するピーク電流が流れます。この電流を突入電流といいます。突入電流の値は入力投入時のタイミングや突入電流防止回路によって異なりますが、定常状態の入力電流に比較すると、数倍から数十倍の大きさになります。
また、パワーサプライを複数台用いる場合には、突入電流が加算されます。特に突入電流で外付ヒューズが溶断したり、ブレーカが動作しないよう、ヒューズは溶断特性、ブレーカは動作特性を確認して、ご選定ください。
●電圧可変範囲
指定された出力特性を保証しながら出力電圧を可変できる範囲をいいます。
注1. 実力的には、規定の可変範囲以上に出力電圧を可変できますが、調整時には実際に出力電圧を確認して規定の出力電圧可変範囲内でご使用ください。
2. 出力電圧× 出力電流が定格出力容量を超えないようにし、かつ出力電流は定格出力電流以下でお使いください。
3. 出力電圧調整トリマ(V.ADJ)が破損する恐れがありますので、必要以上に強い力を加えないでください。
●リップルノイズ電圧
パワーサプライは高速(20kHz以上)でスイッチング動作しているため、出力にリップルおよびノイズが発生します。リップルノイズの代表的な波形を下図に示します。
●静的入力変動
出力条件を一定とし、入力電圧のみ入力範囲内でゆっくりと変化させた時の出力電圧の変動値をいいます。
●静的負荷変動
入力条件を一定とし、出力電流を指定の範囲内でゆっくり変化させたときの出力電圧の変動値をいいます。
●温度変動
動作周囲温度のみを変化させたときの出力電圧の変動値をいいます。
●起動時間
入力電圧を投入してから、出力電圧が定格出力電圧の90%まで立ち上がるまでの時間をいいます。
●出力保持時間
入力電圧を遮断後、出力電圧が電圧精度の範囲の出力を保持している時間をいいます。
●ピーク電流出力
過電流保護機能が搭載されているパワーサプライでは、過電流保護点の電流まで、ピーク電流を流すことができます。
過電流保護点以上の電流が流れた場合は、出力電圧が低下します。
ピーク電流が必要な場合は、過電流保護点がピーク電流の最大値以上となるパワーサプライを選定ください。
●過電流保護機能
過電流(出力短絡時も含む)によるパワーサプライ自身の破損を避けるための保護機能です。負荷電流が過電流検出値(機種により異なります)より多く流れようとした時に保護機能が働き、出力電流を制限します。さらに過負荷状況(負荷のインピーダンス)に応じて出力電圧も垂下させます。
なお、垂下レベルは過負荷状況・負荷線のインピーダンスにより変わります。
出力短絡および過電流状態での使用が継続しますと、内部素子の劣化、破損をまねく恐れがあります。
実際の特性(出力の電流・電圧など)は機種ごとに異なりますので、テクニカルデータ等でご確認ください。
●過電圧保護機能
電源内部の帰還回路の故障などでセンサなどの負荷に過大な電圧がかからないように過電圧を検出して出力を遮断させる保護機能です。
復帰する場合は、入力電源をOFFにし、一定時間放置後、入力電源を再投入してください。放置時間はカタログ(データシート)等でご確認いただけます。
(電源の過電圧保護回路が動作した場合は、電源自体が故障している可能性がありますので、過電圧保護回路動作後の入力電源再投入時は負荷線をはずした状態で出力電圧をご確認ください。)
出力側に外部(負荷など)からサージなどの過電圧が印加された場合にも、過電圧保護回路が動作することがあります。
●直列運転
複数のパワーサプライの出力を直列に接続することで
(1)出力電圧を増加させる
(2)±(プラスマイナス)出力ができる
の2通りの使い方ができます。
(1)出力電圧を増加させる
(2)±(プラスマイナス)出力ができる
●並列運転
複数のパワーサプライの出力を並列に接続することで、
(1)出力電流を増加させる
(2)バックアップ運転ができる
の2通りの使い方ができます。
(1)出力電流を増加させる
(2)バックアップ運転ができる
●リモートセンシング機能
パワーサプライの出力端子から負荷までの配線の抵抗分による電圧降下を補正する機能です。
●リモートコントロール機能
入力電圧を印加したままで外部信号により、出力電圧をON、OFFさせる機能です。
●使用周囲温度
連続使用可能な周囲温度の許容範囲です。周囲温度は、パワーサプライ自体の発熱による影響が及ばない位置の温度をいいます。
注. 周囲温度は、一般的にパワーサプライ本体の50mm 下で規定しています。(一部の機種を除く)
●保存温度
長期間の保存によって性能に劣化を生じない周囲温度の許容範囲です。パワーサプライ自体は稼働していない状態をいいます。
●使用周囲湿度
連続使用可能な周囲湿度の許容範囲をいいます。
●耐振動
製品が輸送中、保管中または使用中に、周期的な力によって発生する振動を受けるとき、その振動に対する機械的な頑丈さを示します。カタログ等には、製品が耐えられる振動試験条件を記載しています。
振幅と周波数から加速度を求めるには、下記の式を参照してください。
加速度[m/s2]=0.02×(片振幅[mm]×2)×(周波数[Hz])2
加速度[G]=加速度[m/s2]/9.8[m/s2]
●耐衝撃
製品が輸送中、保管中または使用中に、衝撃を受けるとき、その衝撃に対する機械的な頑丈さを示します。
カタログ等には、製品が耐えられる衝撃試験条件を記載しています。
●雑音端子電圧
スイッチング電源の入力側の電源を介して伝播するノイズの大きさをいいます。
A: 工業地域・環境で使用される機器
CISPR Pub.11 Class A(ISM機器(工業・科学・医療用装置))
CISPR Pub.22 Class A(ITE機器(情報技術装置))
VCCI ClassA、EN55022 Class A
B: 住宅地域・環境で使用される機器
CISPR Pub.11 Class B(ISM機器(工業・科学・医療用装置))
CISPR Pub.22 Class B(ITE機器(情報技術装置))
VCCI ClassB、EN55022 Class B
FCC規格のPart15とPart18の電源端子妨害電圧の限度値は、2002年9月9日にCISPR Pub.22とPub.11に統合されました。
●放射妨害電界強度
スイッチング電源から直接空気中に放射される電界の強度(ノイズの大きさ)をいいます。