リミットスイッチは、マイクロスイッチを外力、水、油、塵埃などから保護する目的で金属ケースや樹脂ケースに組み込んだスイッチです。ここではリミットスイッチの概要を解説します。
リミットスイッチとは内蔵マイクロスイッチを外力、水、油、ガス、塵埃などから保護する目的で封入ケースに組み込んだものであり、特に機械的強度や耐環境性を要求されるところに適用できるように作られたスイッチをいいます。
形状は横形、縦形、マルチプル形に大別され、一例として下図に代表的な縦形リミットスイッチの構造を示します。リミットスイッチは大別して5つの構成要素から成り立っています。
■リミットスイッチ駆動機構
リミットスイッチの駆動機構はリミットスイッチにとってシール性能や動作特性に直結した重要な部分です。この構造はつぎの表に示すように3つに分類されます。
(1)プランジャタイプ
シール方法の違いにより表のAタイプとBタイプの2種類あります。AタイプはOリングやゴムダイヤフラムでシールするものであり、シールゴムが外部に露出していないため工作機械の切屑などに対して強い反面、砂、切粉などをプランジャ摺動面にかみ込む恐れがあります。Bタイプは砂、切粉などのかみ込みはなくシール性能はAタイプより優れていますが、熱い切屑の飛来でゴムキャップが破れる恐れがあります。使用場所によってAタイプとBタイプの使い分けが必要になります。
プランジャタイプはまたプランジャのピストン運動による空気の圧縮・吸引が行われます
このため長時間プランジャを押し込んだままにしておくとリミットスイッチ内の空気が逃げ内圧は大気圧と同じになり、急にプランジャを復帰させようとしてもプランジャはゆっくり復帰する傾向があります。この不具合を引き起こさないためにプランジャの押し込みによる空気の圧縮量をリミットスイッチ内全空気量の20%以内に設計しています。
また、この構造にはリミットスイッチの寿命を伸ばすため、プランジャの動きに対して内蔵スイッチを押す補助プランジャの動きを途中で止め、OT吸収ばねを用い残りのプランジャの動きを吸収するようにしたOT吸収機構を設けています。
(2)ヒンジレバータイプ
プランジャの動き量がレバーの先端部(ローラ)ではレバー比分拡大されるためOT吸収機構は一般には用いません。
(3)回転レバータイプ
代表例として形WLの構造を示しましたが、これ以外に、復帰プランジャの機能をプランジャにもたせたもの、コイルばねで復帰力をとり、カムで補助プランジャを動かすようにしたものがあります。
(1)プランジャタイプ | (2)ヒンジレバータイプ | (3)回転レバー (ローラレバー)タイプ | |
マイクロ スイッチ 駆動構造 | ![]() | ![]() | ![]() |
補助プランジャ の動き | ![]() | ![]() | ![]() |
カ・ストローク の特性 | ![]() | ![]() | ![]() |
精度 | 高い | 普通 | 低い~普通 |
■スイッチの構成材料
スイッチの主要部分はつぎのような材料で構成されています。
部品 | 材料 | 材料記号 | 特徴 |
接点 | 金 | Au | 耐食性に極めて優れ、微小負荷用として用いられる。 柔らかい(ビッカース硬度HV25~65)ので粘着(接点 同士がくっつく)を起こし易く、また接点接触力が大き い場合接点が凹み易い。 |
金・銀合金 | AuAg | 90%Au、10%Ag合金は耐食性に極めて優れ、硬度 もHV30~90と金よりも高いので微小負荷用スイッチ に多く用いられる。 | |
白金・金・銀合金 | PGS | 69%Au、25%Ag、6%Pt合金は耐食性に極めて優れ、 硬度もHV60とAuAgと同程度であり、微小負荷用ス イッチに用いられる。1号合金と呼ぶ。 | |
銀パラジウム合金 | AgPd | 耐食性が良いが、有機ガスを吸着してポリマーを 生成しやすい。 硬度は50%Ag、50%PdでHV100~200。 | |
銀 | Ag | 導電率、熱伝導率は金属中最大。 低い接触抵抗を 示すが、欠点としては硫化ガス雰囲気で硫化被膜 を生成しやすく微小負荷領域では接触不良を生じ やすい。 硬度はHV25~45。一般負荷用スイッチのほとんど に用いられる。 | |
銀ニッケル合金 | AgNi | 90%Ag10%Niは導電率はAgに近く、耐アーク・ 耐溶着性に優れている。 硬度はHV65~115。 | |
銀・インジュウム・錫合金 | AgInSn | 硬度、融点は高く、耐アーク性に優れ、溶着や転移 を生じにくい。 | |
可動ばね、 可動片 | ばね用りん青銅 | C5210 | 展延性・耐疲労性・耐食性がよい。 低温焼なましが 施してある。 ばね限界値(Kb0.075)はC5210-Hが390N/mm2 以上、C5210-EHが460N/mm2以上とやや低いが、 小形マイクロスイッチの可動片に多く用いられる。 |
ばね用ベリリウム銅用 (時効硬化処理形) | C1700 C1720 | プレス加工後に時効硬化処理する。 導電率が高く、 かつ時効硬化処理後のばね限界値(Kb0.075)が C1700-Hで885N/mm2以上、 C1720-Hで930N/mm2以上と非常に 高くばね限界値の高いことが必要なマイクロスイッチ に用いられる。 | |
ばね用ベリリウム銅 (ミルハードン材) | C1700-□M C1720-□M | 材料メーカで時効硬化して出荷されるもの(ミルハード 材という)で、部品加工(プレス)後の時効硬化処理 は不要です。 ばね限界値Kb(0.075)がC1700-HMで 635N/mm2以上(参考値)、C1720-HMで635N/mm2 以上とばね用りん青銅より高く、マイクロスイッチの 可動ばねに多く用いられる。 | |
ばね用ステンレス (オーステナイト系) | SUS301-CSP SUS304-CSP | 耐食性が優れている。 ばね限界値(Kb0.075)はSUS301-CSP-Hが490 N/mm2以上、SUS304-CSP-Hが390N/mm2以上。 | |
ケース、 カバー | フェノール樹脂 | PF | 熱硬化性樹脂。マイクロスイッチのケース材として 多く用いられる。 UL温度指数150℃、UL難然グレード94V-1以上、 吸水率0.1~0.3%。 マイクロスイッチはアンモニアレスの材料を用いる。 |
ポリブチレンテレフタレート 樹脂 | PBTP | 熱可塑性樹脂。 ガラス繊維強化タイプはマイクロ スイッチのケース材として多く用いられる。 UL温度指数130℃、UL難然グレード94V-1以上、 吸水率0.07~0.1。 | |
ポリエチレンテレフタレート 樹脂 | PETP | 熱可塑性樹脂。 ガラス繊維強化タイプはマイクロ スイッチのケース材として用いられる。 UL温度指数130℃、UL難然グレード94V-1以上、 吸水率0.07~0.1。 | |
ポリアミド(ナイロン)樹脂 | PA | 熱可塑性樹脂。 ガラス繊維強化タイプは耐熱性 がPBTやPETより優れる。 吸水率が大きいので できるだけ吸水率の低いグレードを選定して用 いる。 UL温度指数180℃、UL難然グレード94V-1以上、 吸水率0.2~1.2。 | |
ポリフェニレンサルファイド | PPS | 熱可塑性樹脂。 PAよりさらに優れた耐熱性を有 している。 UL温度指数200℃、UL難然グレード94V-1以上、 吸水率0.1。 | |
スイッチ ボックス | アルミ(ダイカスト) | ADC | リミットスイッチのスイッチボックス(ケース)の材料 として多く用いられる。 JIS H5302に規格がある。 |
亜鉛(ダイカスト) | ZDC | ADCより薄肉物に適し、耐食性もADCより優れて いる。 JIS H5301に規格がある。 | |
シールゴム | ニトリルブタジエンゴム | NBR | 耐油性が優れており、リミットスイッチに多く使用 されている。 結合ニトリル量によって極高(43% 以上)、高(36~42%)、中高(31~35%)、 中(25~30%)、低(24%以下)ニトリルの5段階 に分類され、耐油性・耐熱性・耐寒性が少しずつ 異なる。 使用温度範囲は−40~130℃。 |
シリコンゴム | SIR | 耐熱性、耐寒性が優れており、使用温度範囲は −70~280℃であるが、耐油性は劣る。 | |
フッ素ゴム | FRM | NBR、SIRよりも優れた耐熱性・耐寒性・耐油性 を有している。 ただし、耐油性で油の成分に よってはNBRより劣ることがある。 | |
クロロプレンゴム | CR | 耐オゾン性、耐候性がよい。 耐候性の要求される マイクロスイッチに多く用いられる。 |
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