予知保全とは?
予防保全との違いや
メリットデメリットについて

予知保全とは

予知保全とは何かを実現する手法と、他の保全方法と比較して説明します。

主な手法はCBM(状態基準保全)

予知保全は、従来の計画的なスケジュールに従って設備をメンテナンスする予防保全と異なり、監視機器を使って設備の状態を24時間リアルタイムで監視し、設備が故障する前に発見し対応する新たな保全の方法です。システム構成としては、設備状態の計測データをクラウド上で専門のSEがデータ解析し異常を判定する方法(クラウドコンピューティング)と、計測データを現場で判定する方法(エッジコンピューティング)の2種類があり、様々なソリューションが各社から提供され始めています。この予知保全によって、定期点検後に起こっていた設備の突発的な故障によるダウンタイムをゼロにすることが現実的になってきました。また予防保全でかかっていた過剰な部品交換費用の削減や、人手不足の解消なども期待されています。

予防保全と予知保全の違い

予知保全と予防保全の違いは点検を実施するタイミングです。予防保全は設備故障の有無に関係なく計画的に点検を実施するのに対して、予知保全は設備故障の兆候を捉えて必要な時に必要な人だけが点検を実施します。

予知保全とは 予知保全とは 予知保全とは

予防保全は設備の故障に関係なく、
計画的に点検を実施します。
「時間基準保全」のため、
過剰な部品交換や点検費用が掛かります。

予知保全とは 予知保全とは 予知保全とは

予知保全は設備の故障の兆候を捉えたら、
点検を実施します。
「状態基準保全」のため、
無駄な部品交換や点検費用が掛かりません。

予知保全のメリット

予知保全のメリットは4つあります。

製品の品質維持につながる

設備が故障してしまうと生産品目の品質に影響を与えることがあるため、設備の兆候を捉え計画的に点検を実施することで設備故障を抑制し生産品目の品質維持に貢献できます。

熟練技師のスキルに頼る必要がない

監視機器が設備の状態をデジタル技術により定量化するため、保全基準を明確に作ることができ、経験が少ない保全員でも熟練の保全員と同様の保全業務が可能になります。

設備停止による時間ロスが少ない

監視機器が故障の兆候を捉えることができれば、定期点検時に異常が発見できず点検後に起こっていた設備の突発停止(ダウンタイム)を抑制できる可能性が大幅に高まり、生産性の向上が期待できます。

設備を寿命まで使い切ることが
できる

予知保全は状態基準保全のため、定期点検の頻度が下がり、過剰な部品交換コストを削減可能。監視機器が故障の兆候を捉えることで設備が壊れる或いは製造品質に影響を与えるぎりぎりまで使用することができ、設備健康寿命の延伸に繋がります。

予知保全の
デメリットや課題

効果的な保全である予知保全ですが、下記のデメリットや課題があります。

初期導入に膨大なコストや
ノウハウが必要になる

現在展開されている現場設備のIoT化による予知保全は、センシングされた大量のデータを上位に送って分析判定/判別を行うことが一般的ですが、導入にあたっては製造現場に多数のセンサを配置したり、導入/ 運用にコストが掛かったり、高度なデータ解析が必要になったりと、導入障壁が高くなるケースがあります。

費用対効果が見えにくい

予知保全が製造現場で効果を発揮するかどうかは実際の設備で確認する事になりますが、装置異常の変化がなかなか現れず予知保全の導入効果が表れるまでに1年以上の歳月がかかる場合もあります。そのような投資対効果が実感しづらいものに対して投資判断が出来ず、導入障壁が高くなるケースがあります。

予知保全の事例

2つの予知保全活用事例についてご紹介します。

事例①食品業界
ホモジナイザ内パッキン消耗による
品質低下に対する予知保全

導入前の課題

油分/水分を均質化するホモジナイザは、製造品質を担保するために非常に重要な装置です。とくにホモジナイザ内部の消耗部品である樹脂パッキンの劣化は製造品質に関わる異常の1つですが、この劣化は今までどのような手段を用いても検知することが困難な異常です。そのため、早めの定期メンテナンスによる対応がメインでしたが、定期保全の間にもまだ品質低下のリスクが残ることとメンテナンスコストの増加が課題となります。

ホモジナイザ内パッキン消耗による品質低下に対する予知保全

実施したソリューション内容

パッキンを含む摺動部を駆動しているモータの状態監視を行うことで、パッキンの摩耗異常の検出が可能となりました。オムロンのモータ状態監視機器K6CM-CIはモータにつながる負荷側の異常の兆候を捉えることができます。

導入後の効果・結果

パッキンの劣化状態の見える化ができたため、品質問題の未然防止と保全コストを抑えることが可能となります。それにより食品の品質維持に繋がり、消費者に安心を与え企業ブランドの向上につながることが期待されます。

事例②デジタル業界
自動搬送装置における突発停止に
対する予知保全

導入前の課題

半導体の自動搬送装置の突発停止は生産計画の遅延や納期トラブルなどにつながり大きな機会損失を招きます。自動搬送装置制御盤の温度上昇による加熱保護での装置停止を起こしてから、暫定対策として定期的に保全員による温度点検を実施します。しかしながら、クリーンルーム内にある制御盤の点検は非常に多くの工数がかかるため、保全員は頻度高く点検できずに突発停止リスクが生じることが課題となります。

自動搬送装置における突発停止に対する予知保全

実施したソリューション内容

設備設計グループよりプロジェクトが立ち上がり、制御盤内の温度の常時監視が可能な点でオムロンの温度状態監視機器K6PMが検討対象となります。検討内容として、実際に異常を模擬し状態監視機器からの警報を受信後、対策のために保全員が現場に到着するまでの時間の評価が必要です。評価結果を確認することで、突発停止を防ぐ十分な検出精度と時間を確保できることがわかります。実際の効果の結果の確認が取れたことで他工場にも展開し導入を拡大している状況です。

導入後の効果・結果

お客様は多くのソリューションを同時に検証される中で、オムロンは検討や予知保全システム構築の簡単さと言った「短期間で持続的な保全活動に進化できる」という観点での貢献が可能です。具体的には装置の突発停止リスクを低減することができるだけでなく、導入における設備投資コスト、データアナリストの育成コスト、検出漏れリスクなどの点でオムロンの優位性が確認され、お客様の突発停止リスクの削減に貢献しています。

予知保全導入の進め方

予知保全の進め方として、一例を説明します。

設計工程

まずは、生産/保全状況の棚卸を実施し予知保全を実施する目的を定めどの工程の設備が止まったら機会損失が多いかを優先順位付けを行い、対象の設備を決定します。その設備の故障モードを把握し予知保全を実現するために必要なセンサを選択します。

検証工程 (PoC)

設計工程で決めた設備に対して検証を開始します。まずはスモールスタートで始めてクイックウィン(成果)を積み重ねます。クイックウィンを積み重ねることで実際の導入効果がわかり投資判断ができるようになります。

実装・運用工程

投資判断がされればあとは設備で実施していた検証を工程レベルまで展開しPLCやHMIを導入することで見える化を促進していきます。工程レベルで導入効果が認められれば工場レベルまで展開していきオフィスでのリモート監視やサーバーでの分析/判断システムなど拡張自在な構築をしていきます。

オムロンが考える
予知保全

レトロフィットで簡単設置

既存設備はわずかな変化で従来機能を損ないかねず、大掛かりな改造は生産への影響も大きいため、簡単には検証/導入はできません。状態監視機器はレトロフィットで簡単に導入することができます。

レトロフィットで簡単設置 レトロフィットで簡単設置 レトロフィットで簡単設置

現場完結でシンプルな設計

予知保全のメリットは感じているものの、導入がなかなか進まない理由として大きく2点あります。1つ目は技術・ノウハウ構築も含め、初期費用・工数が大幅にかかること、2つ目は投資対効果が見えにくいということです。オムロンの状態監視機器では、現場機器でデータ収集・分析・判定まで行うため、システム設計やデータ分析が不要になり少ない工数・少ない費用でスモールスタートすることができます。またスモールスタートすることにより、早い段階で投資対効果の確認ができ予知保全導入に向けた判断が可能となります。

従来PLCやクラウドを使った
予知保全システム
 

分析が難しく、IT/OTの融合も必要で、技術的な壁や組織的な壁があり、導入障壁が高い。

 
 

PLCやクラウドを使った予知保全システム
矢印

オムロンの
予知保全
オムロン状態監視機器を
使った

現場完結型の
予知保全システム

分析・見える化まで保全現場で完結するので、導入障壁が低い。またそこから展開に向けた拡張も容易。まず現場で投資対効果を検証し大きく展開していくストーリーを作りやすい。

オムロン状態監視機器を使った現場完結型の予知保全システム