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マイクロスイッチ 用語解説


マイクロスイッチは、微小接点間隔とスナップアクション機構を持ち、規定された動きと規定された力で開閉動作する接点機構がケースで覆われ、その外部にアクチュエータを備え、小型に作られたスイッチです。ここではマイクロスイッチの用語を解説します。

関連情報


一般的な用語

(1)一般用語

マイクロスイッチ

微小接点間隔とスナップアクション機構をもち、規定された動きと、規定された力で開閉動作する接点機構がケースで覆われ、その外部にアクチュエータを備え、小形に作られたスイッチをいいます。(以下スイッチという)

有接点

スイッチの種類の中で、スイッチ特性をもつ半導体スイッチと対比して用いられ、接点の機械的開閉によってスイッチ機能を果たすものをいいます。

接触形式

各種の用途にしたがって接点の電気的入出力回路を構成したものです。〔(16)に表示〕

定格値

一般にスイッチの特性および性能の保証基準となる値、たとえば定格電流、定格電圧などをいい、特定の条件(負荷の種類・電流・電圧・ひん度など)が前提になります。

樹脂固め(モールド端子)

端子部をリード線で配線後、樹脂の充てんによりこの部分を固定化、露出充電部をなくし防滴性を高めたものをいいます。

絶縁抵抗

非連続端子間、各端子と非充電金属部間、各端子とアース間の抵抗値をいいます。

耐電圧

定められた測定箇所に高電圧を1分間印加した時、絶縁破壊の起こらない限界値をいいます。

接触抵抗

接点の接触部分の電気抵抗を示しますが、一般にはバネや端子部分の導体抵抗を含めた抵抗値をいいます。

耐振性

誤動作振動…マイクロスイッチ使用中での振動により、閉路された接点が規定された時間以上の開離しない範囲の振動をいいます。

耐衝撃性

耐久衝撃…マイクロスイッチの輸送中または取りつけ時に受ける機械的な衝撃によって各部の損傷がなく、動作特性を満足する範囲の衝撃をいいます。
誤動作衝撃…マイクロスイッチ使用中での衝撃により、閉路された接点が規定された時間以上開離しない範囲の衝撃をいいます。

(2)構成・構造に関する用語

マイクロスイッチの構成・構造

(3)耐久性に関する用語

機械的耐久性

接点に通電せず、規定の操作ひん度で動作後の動き(OT)を規格値に設定して動作させた時の開閉耐久性をいいます。

電気的耐久性

接点に定格負荷を接続して、規定の操作ひん度で動作後の動き(OT)を規格値に設定して開閉した時の開閉耐久性をいいます。

(4)標準試験状態

スイッチの試験は下記条件とする。
 周囲温度:20±2℃、相対湿度:65±5%RH、気圧:101.3kPa

(5)N水準参考値

信頼水準60%(λ60)での故障水準のレベルを表しています。
λ60=0.5×10-6/回は信頼水準60%で回以下の故障が推定されるということを表しています。

(6)接点の形状と種類

形状名称主な
使用材料
加工方法主な用途
クロスバ金合金
銀合金
溶接
または
かしめ
微小負荷領域で安定した接触信頼性を得るために用います。
接触方式は直交となり、金合金など耐環境性に特に優れた
接点材料を用います。
特に高信頼性を必要とする場合は、クロスバが2本ある
ツインクロスバを用いることもあります。
ニードルリレー負荷程度の負荷領域における接触信頼性の向上を
得るために用います。
リベットタイプ接点の曲率半径Rを1mm程度まで極端に
小さくし、見かけ上の単位面積当りの接点接触圧力の
向上を目的としたものです。
リベット
銀メッキ
銀合金
金メッキ
一般用負荷から高負荷領域までもっとも広く用いられます。
固定接点には、スイッチ開閉により生じた生成物を除去する
溝加工する場合が多く、また保管中の銀接点の酸化、
硫化の影響を防止するために、金メッキをする場合もあります。
テレビの入力スイッチなど大きな電流を開閉する場合には
硬度の高い銀合金を用います。

(7)接点間隔

接点間隔には0.25mm、0.5mm、1.0mm、1.8mmの4種類が規定されています。接点間隔は設計上の狙い目です。ご使用の際、最小接点間隔の必要がある場合、別途ご確認の上選定をお願いいたします。一般に接点間隔は0.5mmが標準です。同一のスイッチ機構であっても接点間隔が小さいほどMD(応差の動き)が小さくなり高感度であり機械的耐久性(寿命)も長くなりますが、直流のしゃ断性能と耐振動・耐衝撃の面では不利になります。マイクロスイッチは電流開閉による接点消耗によって接点間隔が広まりMD(応差の動き)が大きくなって感度が悪くなりますので、接点間隔0.25mmのマイクロスイッチを高感度に着目してご使用になられる場合は電流開閉による接点消耗が小さくなるように開閉電流を小さく抑えることが必要です。接点間隔の大きいものは耐振動・耐衝撃性やしゃ断性能が優れます。

MD(応差の動き)のついては、(10)動作特性に関する用語をご覧ください。

表示文字接点間隔直流電流
しゃ断
動作に必要な
力と動き
精度および
耐久性(寿命)
耐振動
耐衝撃
主な特長
H0.25mm極小高精度・高耐久性
G0.50mm一般用
F1.00mmGとEの中間特性
E1.80mm耐振動・耐衝撃性大

☆:もっとも良  ◎:良  ○:普通  △:劣る

(8)スナップアクション機構

スナップアクション機構とはスイッチを操作する速度とできるだけ無関係に、可動接点が一つの固定接点から他の固定接点に素早く移動できるようにした機構をいいます。例えばナイフ・スイッチでも、取っ手を素早く動かせば、素早い動作ということになりますが、取っ手を動かす速度がそのまま接点の運動速度に関係する機構はスナップ動作形とはいわず、スロー動作形といいます。接点の開閉速度が速い程接点間に生ずるアークの接続時間が短くなります。
その結果、接点の消耗や損傷が少なくなり安定した特性が維持できます。しかしこの開閉速度にはアーク量低減に効果のある速度限界(経済速度)がある他に、機械的な問題で限度があり、特に閉路時に開閉速度が速すぎると、可動接点と固定接点との衝突エネルギーが大きくなり、衝突による跳躍現象(バウンスまたは、バウンシング)によって生ずるアークで接点は著しく損耗され、ときには開路が不能となる接点溶着をおこすおそれもあります。この素速い動作をさせるための機構は一般に死点(一つの状態から他の状態に跳躍的に変化するときの臨界作用点)を利用したばね機構を用います。
下図にマイクロスイッチの引張りばねと、圧縮ばねを組合わせた代表的なスナップアクション機構例を示します。

双投形(形Z)スナップアクション機構の動作原理について説明します。
スイッチとしての力関係は下図に示すように、アクチュエータに外力を加えていない自由位置では、圧縮ばねの反力F1は、力F2とF0の2つの力によって平衡状態にあります。F0は可動接点cを一方の固定接点bに押しつける圧力となっています。
つぎに引張ばねの一部にアクチュエータを通じて力を加えていき引張ばねを変位させると、N点における力F1とF2はしだいに大きくなるがお互いの角度は180°に近づき、やがてF1 とF2だけの、平衡つまりF0=0の状態になります。自由位置からF0=0となる間に、接点は水平方向に移動させられるしゅう動作用があり、圧縮ばねはさらにたわめられます。
このF0=0の位置からさらに外力による微少量変位を引張ばねに加えると逆方向の力F0を生じ、最大にたわめられた圧縮ばねの強い力が可動接点cを下方向に鋭く押し出し、可動接点cは空間を横切って対向固定接点aに移動します。
マイクロスイッチはこのような動作原理を利用し、引張ばねを押す外力の速度に関係なく、スイッチ固有の切り替わり速度(開離速度)で接点が切り換えられます。F0=0になる位置を動作位置といい、引張ばねの一部が始点を通過する位置にほとんど一致しています。
外力を抜いてもどりの操作をする場合も同じ動作原理ですが、この場合はばねのたわみ反力がもどりの原動力になります。

引張ばねと圧縮ばねの組合せによる基本スイッチの動作原理図

状態スイッチの動作状態(形Z)力の関係(形Z)双投形(形Z)双投形(形V)双断形(形WL)
位置
自由位置
動作位置
動作限度位置

(9)接触抵抗・接点接触力特性

接触抵抗は接点接触力により変動してきます。下図にこの関係を示します。接点接触力が大きくなると接触抵抗は安定(小さく)してきます。また逆に接触力が小さくなると不安定(大きく)になります。

接触抵抗・接点接触力特性

(10)動作特性に関する用語

動作特性の定義

用語略語単位バラツキの
表示方法
定義
動作に必要な力
(Operating Force)
OFN最大自由位置から動作位置に動かすのに
必要なアクチュエータに加える力
もどりの力
(Releasing Force)
RFN最小動作限度位置からもどりの位置まで動かすのに
必要なアクチュエータに加える力
全体の動きに必要な力
(Total travel Force)
TTFN自由位置から動作限度位置まで動かすのに
必要なアクチュエータに加える力

動作までの動き
(Pre travel)
PTmm、度最大アクチュエータの自由位置から動作位置までの
移動距離、または移動角度
動作後の動き
(Over travel)
OTmm、度最小アクチュエータの動作位置から動作限度位置までの
移動距離、または移動角度
応差の動き
(Movement Differential)
MDmm、度最大アクチュエータの動作位置からもどりの位置までの
移動距離、または移動角度
全体の動き
(Total travel)
TTmm、度アクチュエータの自由位置から動作限度位置までの
移動距離、または移動角度

自由位置
(Free Position)
FPmm、度最大外部から力が加えられていないときのアクチュエータの位置
動作位置
(Operating Position)
OPmm、度±アクチュエータに外力が加えられ、可動接点が自由位置の
状態からちょうど反転するときのアクチュエータの位置
もどりの位置
(Releasing Position)
RPmm、度アクチュエータに外力を減少させ、可動接点が動作位置の
状態から自由位置の状態にちょうど反転するときの
アクチュエータの位置
動作限度位置
(Total travel Position)
TTPmm、度アクチュエータがアクチュエータ止めに到達したときの
アクチュエータの位置

バラツキの解釈例について

(例)形Z-15G-B OF(動作に必要な力) 2.45~3.43N
解釈:アクチュエータに加える力を0から強めていって3.43Nまでには、どのスイッチもすべて動作することを意味しています。
   スイッチのストロークの設定は、マイクロスイッチ 共通の注意事項の「① 操作ストローク設定について」をご覧ください。

(11)力・ストローク・接点接触力特性

マイクロスイッチの動作特性は力・ストローク特性で表わせます。
下図にこれを示しました。横軸にストローク(アクチュエータの動き)を縦軸にアクチュエータに加わる力をとっています。マイクロスイッチの特長はつぎのとおりです。

  1. 動作時と復帰時に力が急に変動するとともにスイッチの切り替わり音がするのでスイッチの動作位置(OP)・復帰位置(RP)が判ります。
  2. 応差の動き(MD)があるのでアクチュエータを操作する操作体のぶれや小さな上下動があっても可動接点は固定接点のどちらかに安定しており機械の検出用スイッチに適しています。
  3. 接点の切り替わりが素早く行われるので、電流開閉時のアークの接続時間が短く小型のスイッチの割りには大きな電流が開閉できます。

ストロークと接点接触力の関係を下図に示しました。自由状態での接点接触力はアクチュエータを押し込むにつれて減少し、OPまで押し込むと接点接触力は零となり、可動接点は常時閉路(NC)側から常時開路(NO)側に反転して直ぐに接触力が発生します。
更にアクチュエータを押し込むとNO 側接触力は増大していきます。アクチュエータはもどる場合はNO側が零になってからNC側に接触力が発生します。

(12)接点切り替わり時間

操作速度と接点切り替わり時間の関係を下図に示します。
接点切り替わり時間はアクチュエータの操作速度が遅くなるにつれ長くなる傾向にあります。このため接点切り替わり時間は規定された最小操作速度で測定します。測定回路は下図で、通電電流は微小負荷用マイクロスイッチは1mA、一般用マイクロスイッチは100mAとします。下図のように接点切り替わり時間は不安定時間と反転時間およびバウンス時間の和になり、一般のマイクロスイッチで5~15msです。ここで、不安定時間は前述の接点反転寸前における接点接触力低下および接点ワイピングによる接触抵抗不安定によるものです。

反転時間はスナップアクション機構の機械的な反転によるものです。バウンス時間は可動接点が固定接点に衝突するときのバウンシング(はね上がり)によるものです。不安定時間とバウンス時間は接点を発熱させ、接点溶着を引き起こしたり、電子回路との接続では電子回路の誤動作を引き起こしたりすることがありますので、マイクロスイッチは不安定時間とバウンス時間ができる限り小さくなるように設計されています。

(13)接点のワイピング

スナップアクション機構の種類によって接点部にワイピング(摺動)を生じるものとほとんど生じないものがあります。ワイピング作用とは可動接点がある接触力のもとで固定接点面上を摺動する動作のことをいいます。下図に可動接点の動作の時ともどりの時の場合のワイピング説明図を示します。
ワイピングは接点表面の浄化作用と突入電流などによる接点溶着の引外し作用の効果があります。

(14)端子記号と接触形式

記号端子記号
COM共通端子
NC常時閉路端子
NO常時開路端子

(15)端子の種類

種類形状
はんだづけ端子
タブ端子(ファストン端子)(#110、#187、#250など)
ねじ締め端子
プリント基板用端子
アングル端子

注. このほか、端子接続部をモールドしたリード線付きのものなどがあります。

(16)接触形式の種類

シンボル名称
双投形(c接点)
常閉形(b接点)
常開形(a接点)
分割接触形 形Z-10FY-B
維持接触形 形Z-15ER
2回路双投形 形DZ
EN61058-1規格に関する用語
  • 感電保護クラス:感電防止レベルを表し、次の4つのクラスがあります。
    Class 0:感電防止として基礎絶縁だけで保護するもの。
    ClassⅠ:感電防止として基礎絶縁に加えて、アースでも保護するもの。
    ClassⅡ:感電防止として二重絶縁あるいは強化絶縁で保護し、アースを必要としないもの。
    ClassⅢ:感電防止として安全超低電圧(50VAC以下、あるいは70VDC以下)回路使用のため、感電対策の
          必要がないもの。
  • Proof Tracking Index(PTI):耐トラッキング指数を意味します。
    共試品に2本の電極をたて規定の溶液(塩化アンモニウム0.1%)を電極間に50滴落下させ短絡が発生しない最大の耐電圧値で、レベルとしては下記の5レベルがあります。ULイエローブックのCTI値とPTIの関係は下表の通りです。
PTIULイエローブックによる分類
500PLCレベル1 400≦CTI<600 (材料メーカにCTI500認定の確認が必要)
375PLCレベル2 250≦CTI<400 (材料メーカにCTI375認定の確認が必要)
300PLCレベル2 250≦CTI<400 (材料メーカにCTI300認定の確認が必要)
250PLCレベル2 250≦CTI<400
175PLCレベル3 175≦CTI<250
  • 操作回数:規格で規定された耐久試験の開閉回数を表します。
    各メーカは下表の回数から選択し、スイッチ上に記号で表示します。IEC規格では高ひん度操作のスイッチの目安は50,000回、低ひん度操作のスイッチの目安は10,000回となっています。
回数表示記号
100,0001E5
50,0005E4
25,00025E3
10,000表示不要
6,0006E3
3,0003E3
1,0001E3
3003E2
  • 使用周囲温度:スイッチが使用可能な温度範囲です。表示記号の意味は次の表をご参照ください。
表示記号T8525T85
温度0~+85℃−25~+85℃
  • はんだ端子タイプ1:はんだ端子の耐熱性による分類の一つで次の試験条件を満たしているものです。
    はんだ槽使用端子:+ 235 ℃のはんだ槽に規定の速度、時間、深さではんだ端子をつけて、端子のゆるみ
                絶縁距離の変化がないこと。
    はんだごて使用端子:規定のはんだごてのこて先温度+ 350℃で直径0.8mm のはんだを2 ~3 秒端子上に
                 溶かし、端子のゆるみ絶縁距離の変化がないこと。
  • はんだ端子タイプ2:はんだ端子の耐熱性による分類の一つで次の試験条件を満たしているものです。
    はんだ槽使用端子:+ 260 ℃のはんだ槽に規定の速度、時間、深さではんだ端子をつけて、端子のゆるみ
                絶縁距離の変化がないこと。
    はんだごて使用端子:規定のはんだごてのこて先温度+ 350℃で直径0.8mmのはんだを5秒端子上に溶かし、
                 端子のゆるみ絶縁距離の変化がないこと。
  • 空間距離:2つの充電部間の空間を通じての最小距離あるいは、充電部とスイッチ外郭(絶縁物)に密着させたメタルホイール間の空間を通じての最小距離を言います。
  • 沿面距離:2つの充電部間の絶縁材の表面を沿った最小距離あるいは、充電部とスイッチ外郭(絶縁物)に密着させたメタルホイール間の絶縁材の表面を沿った最小距離を言います。
  • 絶縁層(Distance through Insulation):充電部とスイッチ外郭(絶縁物)に密着させたメタルホイール間の最小直線距離で空間距離と外郭絶縁物の板厚を加えたものです。空間距離がない場合は外郭絶縁物の板厚の値となります。

最終更新日:2024年11月11日