マイクロスイッチは、微小接点間隔とスナップアクション機構を持ち、規定された動きと規定された力で開閉動作する接点機構がケースで覆われ、その外部にアクチュエータを備え、小型に作られたスイッチです。ここではマイクロスイッチの共通の注意事項を説明します。
共通の注意事項 |
各商品個別の注意事項は、各商品ごとの「正しくお使いください」をご覧ください。
●安全性を確保するために以下の各項目の内容を必ず守ってください。
●取りつけについて
スイッチの取りつけ、取り外しや配線作業および保守点検時は、必ず電源をOFFの状態で行ってください。感電および焼損の恐れがあります。
●配線作業について
●接点負荷について
スイッチ定格は接点負荷を確認して適切に選定ください。接点に対して過剰な接点負荷を通電すると接点が溶着、移転し短絡や焼損する原因となります。
●負荷の種類について
負荷の種類によって、下図に示すように定常電流と突入電流に大差がある場合があります。適切な負荷の種類に対する定格のスイッチを選定ください。閉路時の突入電流が大きいほど、接点の消耗量、移転量が増大し、接点が溶着、移転し短絡や焼損する原因となります。
負荷の種類と突入電流
●使用雰囲気について
引火性ガス・爆発性ガスなどの雰囲気中でのスイッチの使用はしないでください。開閉に伴なうアークやスイッチの発熱などにより、発火または爆発を引き起こす原因となります。
●スイッチ単品への衝撃について
落下させたり内部を分解しないでください。特性を満足できないばかりではなく、破損・感電・焼損の原因となります。
●耐久性について
スイッチの耐久性は、開閉条件により大きく異なります。使用にあたっては必ず実使用条件にて実機確認を行い、性能上問題のない開閉回数内にてご使用ください。性能の劣化した状態で引き続き使用されますと、最終的には、絶縁不良、接点の溶着、接触不良やスイッチ自体の破損・焼損の原因となります。
●スイッチのご使用にあたって
●正しいスイッチの選択
使用されます環境・負荷条件に合わせた適切なスイッチをお選び頂きご使用ください。
●電気的な注意事項
①使用負荷について
注. 誘導負荷は直流回路で特に問題となるため、負荷の時定数(L/R)の値をよく知っておく必要があります。
突入電流
②スイッチの電子回路への使用について
③微小負荷形の使用について
微小負荷回路の開閉時に一般負荷用のスイッチを用いると、接触不良の原因となります。下図を参照に使用領域の範囲でスイッチをお使いください。なお、微小負荷タイプを下図のエリア内で使用する場合でも、開閉時に突入電流などが発生する負荷の場合は、接点消耗が激しくなり耐久性の低下を生じる原因となりますので、必要により接点保護回路を挿入してください。最小適用負荷は、N水準参考値としています。これは信頼水準60%(λ60)での故障水準のレベルを表しています。(JIS C5003)
λ60=0.5×10-6/回は、信頼水準60%で回以下の故障が推定されるということを表しています。
④接点保護回路について
接点の耐久性を延ばしたり、雑音の防止、およびアークによる炭化物や、硝酸の生成を少なくするために接点保護回路(サージキラー)を用いますが、正しく使用しないと逆効果となります。以下に接点保護回路(サージキラー)の代表例を示します。なお、湿度の高い雰囲気においては、アークの発生しやすい負荷(たとえば誘導負荷を開閉する場合)のアークによって生成された窒素酸化物(NOx)と水分によって硝酸(HNO3)が生成し、内部の金属部分を腐食して動作に支障をきたす原因となります。高ひん度かつアークの出る回路条件で使用される場合は、下表に従って接点保護回路(サージキラー)をご使用ください。
また、接点保護回路(サージキラー)を用いた場合、負荷の動作時間が多少遅くなる場合がありますのでご注意ください。
接点保護回路(サージキラー)の代表例
○…適用 ×…不適用 △…条件付適用
分類 | 回路例 | 適用 | 特徴、その他 | 素子の選び方の目安 | |
AC | DC | ||||
CR方式 | △ * | ○ | *AC電圧で使用する場合 負荷のインピーダンスがC、Rの インピーダンスより十分小さいこと。 | C、Rの目安としては C:接点電流1Aに対し1~0.5(μF) R:接点電圧1Vに対し0.5~1(Ω) です。負荷の性質などにより必ずしも 一致しません。Cは接点開離時の放電 抑制効果を受け持ち、Rは次回投入時 の電流制限の役割ということを考慮 し、実験にてご確認ください。 Cの耐電圧は一般に200~300Vの ものを使用してください。AC 回路の 場合はAC 用コンデンサ(極性無し) をご使用ください。 ただし直流高電圧で接点間のアーク のしゃ断能力が問題となる場合に、 負荷間より接点間にC、Rを接続した 方が効果的になる場合があります ので実機にてご確認ください。 | |
○ | ○ | 負荷がリレー、ソレノイドなどの 場合は動作時間が遅れます。 電源電圧が24、48Vの場合は 負荷間に、100~200Vの場合 は接点間のそれぞれに接続 すると効果的です。 | |||
ダイオード 方式 | × | ○ | コイルに貯えられたエネルギーを 並列ダイオードによって、電流の 形でコイルへ流し、誘導負荷の 抵抗分でジュール熱として 消費させます。 この方式はCR方式よりもさらに 復帰時間が遅れます。 | ダイオードは逆耐電圧が回路電圧の 10倍以上のもので順方向電流は負荷 電流以上のものをご使用ください。 | |
ダイオード + ツェナー ダイオード 方式 | × | ○ | ダイオード方式では復帰時間が 遅れすぎる場合に使用すると 効果があります。 | ツェナーダイオードのツェナー電圧は、 環境により負荷が動作しない場合が あるため、電源電圧×1.2倍程度の ものを使用します。 | |
バリスタ方式 | ○ | ○ | バリスタの定電圧特性を利用して、 接点間にあまり高い電圧が 加わらないようにする方式です。 この方法も復帰時間が多少 遅れます。 電源電圧が24~48V時は 負荷間に、100~200V時は 接点間のそれぞれに接続すると 効果的です。 | バリスタのカット電圧Vc は下記の 条件内になるように選びます。 交流では√2倍することが必要です。 Vc>(電流電圧×1.5) ただし、Vcを高く設定しすぎると 高電圧へのカットが働かなくなるため 効果が弱くなります。 |
なお、次のような接点保護回路(サージキラー)の使い方はしないでください。
しゃ断時のアーク消弧には非常に効果がありますが、接点の開路時Cに容量が貯えられているため、接点の投入時にCの短絡電流が流れるので、接点が溶着しやすくなります。 | |
しゃ断時のアーク消弧には非常に効果がありますが、接点の投入時にCへの充電電流が流れるので、接点が溶着しやすくなります。 |
●接続について
●機械的な注意事項
①操作ストローク設定について
操作ストロークの設定は、マイクロスイッチの信頼性に影響します。
下図は、動作力←→ストローク←→接点接触力を示すものです。高い信頼性を得るには、適切な接触力の範囲で使用する必要があります。
スイッチ取りつけの際は、十分ご注意ください。
②操作速度と操作ひん度について
操作ひん度と操作速度の設定は、スイッチの性能に影響します。以下の内容にご注意ください。
なお、許容操作速度、許容動作ひん度は開閉の信頼性を表すものです。
スイッチの耐久性は特定の操作スピードの値ですので、許容操作速度、ひん度間であっても、その条件により耐久性を満足しないことがありますので事前に確認試験を行ってください。
③使用状態について
常時押し込み状態での長期使用はしないでください。部品の劣化を早め、特性変化の原因となります。また、カムやドグをスイッチのアクチェータ(ローラ)に接触させた状態で移動させる時、移動距離が長くなるにしたがいローラやローラ軸の摩耗量も大きくなりますので、定期的な点検、交換を実施してください。
④スイッチの操作方法について
スイッチの操作方法はスイッチの性能に影響します。以下の内容を配慮して操作させてください。
●取りつけについて
①スイッチの固定
スイッチを取りつける際は、各スイッチ指定の取りつけねじを用い、平座金、ばね座金などの併用をおすすめしますが、ばね座金を直接あてて締めつけますと、ばね座金が樹脂に陥没しクラックが発生することがありますので、下図のように平座金を樹脂にあてるようにセットしてください。また、ねじ締め付けの際、インパクトレンチなどをご使用の場合は過大な衝撃や高周波の印加により、接点の粘着やスイッチの破損に至る場合がありますのでご注意ください。
ロック剤などの使用について
接着剤、ロック剤などを使用される場合は、スイッチの可動部に付着させたり内部へ浸入させたりしないでください。動作不良、接触障害の原因となります。また、種類によっては有毒ガスを発生し動作に悪影響を与えることがあるため、十分ご確認のうえ選定してください。
配線方法
リード線に引っ張り力が加わらないよう、配線してください。
取りつけ場所
保守・点検
点検が容易で、取り換えができる状態で取りつけてください。
取りつけ方向
低荷重スイッチの長レバータイプを取りつけた場合は、レバーの自重が直接押ボタンに加わらない方向に取りつけてください。スイッチの復帰不良の原因となります。
②端子への接続について
はんだづけ端子
配線は、印加電圧・通電電流に適した電線サイズを使用してください。
タブ端子
タブ端子への接続は、指定形状のタブ用リセプタクルを使用し、端子に対しまっすぐに挿入してください。端子の横方向および上下方向から過大な外力を印加しますと端子変形およびハウジング破損の要因となります。
配線作業
セパレータの使用
絶縁距離の確保が心配な時や他の金属部品や銅線が近くにある時は絶縁ガードつきのスイッチを採用いただくか、別売のセパレータを使用し、絶縁距離を確保してください。
●使用、保管環境
①取り扱いについて
押ボタン部、アクチュエータ部などの摺動部に注油しないでください。
動作不良、接触不良の原因となります。
②保管環境について
スイッチ保管の際は、端子(銀メッキ)の硫化による変色防止のため、ポリ袋に入れるなどご配慮ください。
また、悪性ガスの発生する場所や、高温、高湿になる場所は避けてください。保管場所によっては、製造後3~6ヶ月経過したものは、再検査後のご使用をお勧めします。