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FAコントローラ共通 FAコントローラ制御盤の設置について


ここではFAコントローラ制御盤の設置について解説します。

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はじめに

システムの信頼性や安全性を確保するために、システム設計に先立って設置場所の環境を十分把握してシステムを構成する必要があります。
基本的にはFAコントローラシステムに対するストレス(温度・湿度・振動・衝撃・腐食性ガス・過電流・雑音など)をできるだけ少なくすることが必要です。しかし、どの程度の対策まで実施するかは、トラブル発生時の影響度や設置環境および対策費を考慮の上で決定すべきものです。 事前に対策を施すことによりシステムの信頼性は向上し、長期的な稼動率の向上が期待できます。
また、各ユニット個別の仕様については、各ユニットのユーザーズマニュアルをご参照ください。

制御盤の据付け・環境

次に制御盤(以降、盤という)の据え付けに際しての環境条件や対策などについて述べます。

温度

FAコントローラの使用周囲温度は素子部品の使用温度の関係から、通常5℃~40℃程度が必要です。一方、強制クーリングによらない自然クーリングの盤などでは、装置やシステムの省スペースや小型化により盤自身も小型化し、盤内温度は盤外温度に比べて、時として10℃~15℃以上も上昇していることが経験的に知られています。従って設置場所や盤内の発熱に応じて、次のような対策を講じ、盤内温度がユニットの使用温度範囲を越えないように、できる限り十分な温度マージンを取って余裕ある温度範囲で使用することが必要です。

高温(図1. 参照)

①自然空冷式(盤の上下のよろい窓による自然通風)
盤内への据え付けの際、ファンやクーラなどの冷却装置を用いないですませるのが最良の方法です。この際のコントローラの取りつけに関する留意点は以下の通りです。

  • 盤内の暖められた空気のよどむ最上部には設置しない
  • 通風スペースを確保するため、上下部は他の機器、配線ダクトなどから十分距離をとる
  • コントローラ内部の異常発熱の原因となるような指定以外の方向(例えば縦置きや上下逆)に取りつけない
  • ヒータ、トランス、大容量抵抗などの発熱量の大きな機器の真上に取りつけない
  • 直射日光のあたる場所は避けること

②強制通風式(盤の上部のファンによる強制通風)
③強制循環式(密閉構造の盤のファンによる強制循環通風)
④部屋全体を冷却する方式(制御盤が設置された部屋全体をクーラで冷却)

《諸注意事項》

環境条件と冷却方式は次のとおりです。

  • 粉塵の少ない部屋内に盤を設置 → ① または ②
  • 粉塵がある場所に設置     → ③ または ④

ファンを使用する場合の対策

  • 外気の吸込口にはエアーフィルタをつけて、塵埃の侵入を防ぐ手段をとる
  • エアーフィルタの定期的な水洗いを実施する
  • ファンや空調機が故障した時に備え、コントローラの近くに温度センサをつけて、警報を発する

などの対策を講ずる

低温

寒冷地などで朝のスタート時に0℃より低くなる場合は、小容量のスペースヒータを盤内に取りつけ、盤内の空気を5℃程度に予熱してください。または、コントローラ電源を通電状態で発熱させるため電源を切らないでください。

湿度

FAコントローラの絶縁特性を維持するために、相対湿度は通常35%~85%の範囲内で使用することが必要です。特に冬場に暖房を入れたり切ったりした時には、急激な温度変化が起こって結露が発生し、ショートによる誤動作を招くことがあります。このような恐れのある時は、夜間でも電源を入れたままにしておくか、盤内にヒータを設置して弱い加熱を施すなどで結露を防ぐ必要があります。(図2. 参照)

振動・衝撃

FAコントローラは、環境試験方法(電気・電子)の正弦波振動試験法(JIS C0040/IEC68-2-6)および衝撃試験法(JIS C0041/IEC68-2-27)に準拠して試験されており、一般仕様内の振動や衝撃には誤動作しないようになっています。しかし定常的に振動や衝撃が、特にコントローラや盤に直接加わる恐れのある場所には設置しないでください。
振動や衝撃を和らげる方法として以下のようなものがあります。
①外部からの振動や衝撃に対しては、その発生源から盤を分離する。または、コントローラや盤を防振ゴムで固定する。
②建屋の構造、床などの振動防止を行う。
③盤内の電磁接触器などの動作時の衝撃に対しては、衝撃源またはコントローラを防振ゴムで固定し、衝撃が伝わらないようにする。

雰囲気

次のような場所で使用する場合は、コネクタ類の接触不良や素子・部品の腐食を誘発させるので、エアパージなどの対策を講じる必要があります。
①塵埃、塩分、鉄粉が多い場所や油煙・有機溶剤などが漂っている場所では、内部温度がさほど上昇しない大きさで密閉構造の盤とする。
②特に腐食性ガスのあるところでは盤のエアパージ(空気浄化)を行い、盤内を加圧気味にして外部からの進入を防ぐ。
③引火性ガスがあるところでは発火源となることがある。防爆機構を施すか、使用しないようにする。

作業スペースと空間

FAコントローラや盤を設置する際には、取り扱いや操作性および保守などの作業性を考慮して、次のことに注意してください。
①プログラム操作やユニットの交換が容易にできるようなスペースを取る。また保守・操作の安全性を考え、高圧機器や動力機器からできる限り離して設置する。
②デバックツールなど周辺機器の接続と操作のしやすさを考えた位置にコントローラ、入出力ユニットを実装する。
③コントローラ、入出力ユニットには保守点検用の表示灯がついていることが多く、オペレータの見やすい、手の届く高さの位置に実装する。
④コントローラを用いた制御システムにおいては、後々の改造、増設が多分に考えられるので、一般に1~2割程度の増設スペースを考えておく。
⑤必要に応じ盤の裏側には、保守通路として600mm程度のスペースを取る。

制御盤の電気的環境

電源、接地および雑音(ノイズ)などが主な電気的環境です。機器の据えつけ、配線に際しては、人体に対する危険を防止し、電気信号に障害(ノイズ)を与えないことなどを常に心掛けることが最も大切です。

FAコントローラの設置場所

保守・操作の安全性を考え、高圧機器(600V以上)や動力機器から分離して設置する。やむをえない場合はできる限り離して設置する。(図3. 参照)

コントローラと各ユニットの配置と布設(図4. 参照)

①CPUユニットと隣接するユニットは、特殊ユニットや入力ユニットなどノイズ発生の少ないユニットが望ましい。
②外部回路の電磁接触器やリレー類はそのコイルや接点がノイズ発生源であるため、コントローラから離して配置する。(目安として100mm以上)

電源系統の布線(図5. 参照)

①コントローラ電源と入出力機器の電源を分離し、コントローラ電源引込部の近くにノイズフィルタを付ける。
②絶縁トランスを追加することにより、大地間ノイズを大幅に減衰させることができます。この時絶縁トランスの二次側は非接地方式としてください。
③トランスとコントローラ間の配線は最短距離で密にツイストし、高圧線や動力線と離して配線してください。

外部入出力信号線の布線

①出力信号に誘導負荷が接続されている場合には、雑音を吸収するために交流回路ではサージキラーを、直流回路ではダイオードを各々誘導負荷のごく近くに接続する。(図6. 図7. 参照)

②出力信号線は、高圧線や動力線との束線、近接、並行配線は絶対に避けてください。近接する時は、ダクトで分離したり、別電線管配線します。この時ダクトや電線管は必ず接地します。(図8. 参照)

③ダクトで分離できない時は、一括シールドケーブルを使用し、コントローラ側接地端子に接続し入力機器側は開放します。
④共通インピーダンスを持たないように配線することが理想です。しかし、この場合配線数が多くなるのでリターン回路を共用することがあります。リターン回路は十分余裕のある太い電線を使用し、同じような信号レベルを一まとめにして配線します。
⑤長い入出力線では入力信号線と出力信号線は分離して配線します。
⑥パイロットランプ(特にフィラメント型)はツイストペア線で配線します。
⑦入力機器や出力負荷機器の雑音発生源をCRサージアブソーバ、ダイオードなどで対策すると効果的です。

外部配線

種々の雑音に対して強いシステムを作り、より高い信頼性のもとにシステムが稼動できるのも配線の仕方により大きく左右されるといっても過言ではありません。配線作業に際し、特に雑音対策は経験に負うべきところが多く、マニュアルなどを基によく管理された体制で作業を進めることが必要です。

誤配線の防止

①ケーブルにマークバンドなどを付け、行き先表示をすれば、配線時の誤配線を防止できるのみならず、配線後のチェックや保守点検が容易になります。
②色分け配線をする。
③同じような種類の信号を伝送するケーブルは同じダクトに入れてグループ分けをする。

一般的注意事項

①電線は端子から端子までの配線に継ぎ合せのないようにする。
②多芯ケーブルの終端は電線の端に引張り力が加わらないように適切に支持・固定する。
③扉などの可動部分への接続は、一方を固定部分に、他方を可動部分に電線を固定し、可とう電線を用い、扉の開閉によって損傷しないようにする。
④電線の末端には圧着端子を用い、端子への接続はトルクドライバを用いて適切な圧力でビスを締めつけ接続する。特にAC電源ユニットへの端子接続はU型圧着端子ではなく、丸型圧着端子を用い安全確保することが望ましい。
⑤配線時にコントローラのユニットに防塵カバーが付されたものは、配線が完了するまでは除去せず、配線くずが入り込まないようにする。また、動作時、内部の温度上昇が大きくなり、機能低下が考えられるため、配線完了時は必ず防塵カバーを除去する。
⑥電源回路の配線はすべてツイストにする。
⑦ノイズフィルタの1次側と2次側を束ねることは、ノイズフィルタの効果を低減させるため行わない。

配線ルート

下記の組み合わせは、信号の種類・性質やレベルが異なるために、電気的誘導などによってS/N(信号対雑音)比が低下する原因となるため、別ケーブルを使用するか、別ルート配線を行うことを原則としてください。また区分・整理して配線しておくと後々の保守やシステム変更時の作業が容易になります。
①電力線と信号線
②入力信号と出力信号
③アナログ信号とディジタル信号
④高レベル信号と低レベル信号
⑤通信線と動力線
⑥DC信号とAC信号
⑦高周波機器(インバータなど)と信号線(通信)

配線方法

①性質の異なる信号ケーブルを同一ダクト内に入れる場合は必ず隔離する。
②複数の電源線を同一ダクトに収容することは極力避ける。止むを得ず収容する時はダクト内に隔壁を設け、この隔壁を接地する。(図9. 参照)

③電線管を用いて配線する時は、電線管が発熱するため1回路の電線を別々の電線管に入れてはならない。(図10. 参照)

④動力ケーブルと信号ケーブルは、お互いに悪い影響を受けないよう、平行させてはならない。
⑤高圧機器の設置されている盤内での取りつけは、ノイズが誘導されるため、高圧、動力系からできるだけ分離して配線、設置する。(図3. 参照)
⑥高圧線や動力線から200mm以上離してコントローラを取りつけるか、または高圧線や動力線を金属管配線して金属管を完全にD種接地(第3種接地)する。(図11. 参照)

その他の注意事項

①入出力モジュールは、機種によりマイナスコモンとプラスコモンがあるため、極性に注意して配線してください。
②光ファイバケーブルの外観は、一般の通信ケーブルや電力ケーブルに似ていますが、内部はファイバとそれを保護するテンションメンバーや介在紐、介在物で成り立っており、取り扱いには十分注意が必要です。特に布設施工は規定の方法ならびに基準で行い、過激な衝撃張力、過度の曲げ、ひねり、過度のしごきを与えないようしてください。
光ファイバケーブルの配線につきましては以下のマニュアルを用意しております。
①SYSMAC C/CVシリーズ ハードプラスチッククラッド光ファイバケーブル(H-PCF)布設マニュアル(マニュアルNo. SBCC-482)
②Controller Linkユニット光リングタイプユーザーズマニュアル(マニュアルNo. SBCD-311)

接地

接地の目的

接地には2つの目的があります。
①漏えいや誘導、時には故障などによって生じた電位を接地電位に保つことにより、人体を感電から防止するための保安上の目的である保護接地です。
②外部から侵入して来る雑音を防止したり、機器や装置自体から発生する雑音によって、他の機器や装置に障害を与えないように雑音防止用の接地などを含め、その機器またはシステムの機能を果すために必要な接地(機能接地)です。
これらの接地については、経験的に時には実験的に解決しなければならない場合があります。事前に十分な検討と注意を払って接地を行うことが大切です。

接地の仕方と注意事項

(1)1点接地の原則

接地線は「電位を決めるもの」と考えておく方が望ましいです。
正常状態では接地線には電流を流してはいけません(電流の帰って来るリターン回路には接地を共用してはならない)。

(2)接地はできるだけ専用接地(その接地極を他の接地極から10m以上離す)としてください。

①接地工事はD種接地(第3種接地)で行い、他の機器の接地とは分離した専用接地が最良です。(図12(. a)参照)
②専用接地が取れない時は、図12(. b)のように接地極で他の機器の接地極と接続する共用接地とする。
③特にモータ/インバータなどの大電力機器との共通接地は絶対に避け、相互に影響を受けぬよう個別に設ける。
④単に感電防止が目的で多くの機器がつながれた接地極(時には鉄骨のこともある)への接地は避ける。
⑤接地極はできるだけコントローラ側近くとし、接地線は短くする。

(3)接地上の注意事項

①信号線接地と筐体接地が同一である場合は、チャネルベース(接地されている制御盤など内の金属板)とは絶縁体による絶縁が必要です。(図13. 参照) 

②コントローラを収納した盤は電気的に他の機器と絶縁して設置する。これは他の電気機器からの漏えい電流による影響を防止するためです。
③高周波設備がある時は、高周波設備を接地するとともに、コントローラを収納した盤自体も確実に接地してください。
④シールドケーブルを用いて入出力を配線する場合のシールド導体の接地は、図14に示すようにコントローラ側に近いシールド導体を筐体接地端子に接続する。なお、通信ケーブルについては、その通信ユニットのマニュアルのシールド処理を守ってください。

(4)コントローラの接地端子

コントローラには次の2つの接地端子が設けられています。

コントローラのシャーシに接続していて、電撃防止のための保護接地端子で常に接地する。
ノイズフィルタの中性点に接続していて、電源ノイズで誤動作するときに接地する機能接地端子。

機能接地端子を正しく接地すると電源のコモンモードノイズを減衰させる効果があるが、時として接地することによって逆に雑音を拾うケースが多いので、注意して使用してください。

(5)AC電源ユニットへの配線において、設備の電源の片相が接地されている場合は、接地相側を必ずL2/N(またはL1/N)端子側へ接続してください。

参考文献①プログラマブルコントローラ(PLC)保守・点検ハンドブック 平成14年5月 NECA発行
②マシンオートメーションコントローラ NJシリーズ CPUユニット ユーザーズマニュアル ハードウェア編(SBCA-358)
③SYSMAC CJシリーズ CJ2 CPUユニット ユーザーズマニュアル ハードウェア編(SBCA-349)

最終更新日:2024年04月22日