ここではマシンオートメーションコントローラの概要を解説します。
マシンオートメーションコントローラNJ/NX シリーズは、機械制御に必要な高度な機能・高速性能と、産業用コントローラとしての安全性・信頼性・保守性を両立した、次世代コントローラです。
従来のプログラマブルコントローラの機能を包含し、モーション制御に必要な各種機能を付加した統合型コントローラとして、セーフティ機器、視覚装置、モーション機器、I/O などの入出力機器を、高速なEtherCAT® 上で同期して制御できます。
Sysmacは、オムロン株式会社製FA機器製品の日本及びその他の国における商標または登録商標です。
Microsoft、Visual Basic および Windows は米国 Microsoft Corporationの米国、日本およびその他の国における登録商標または商標です。
ATI™、Radeon™は、米国Advanced Micro Devices, Inc.の商標です。
NVIDIA、NVIDIAロゴ、GeForce、GeForceロゴは、米国およびその他の国におけるNVIDIA Corporationの登録商標または商標です。
EtherCAT®は、Beckhoff Automation GmbH(ドイツ)よりライセンスを受けた特許取得済み技術であり登録商標です。
EtherNet/IP™およびDeviceNet™はODVAの商標です。
Celeron、Intel、Intel Coreは、米国およびその他の国におけるIntel Corporationの商標です。
その他、記載されている会社名と製品名などにつきましては、各社の登録商標または商標です。
ハードウェア上の特長
制御用ネットワーク EtherCAT を標準装備
CPU ユニットはEtherCAT 通信マスタ機能ポートを標準装備しています。
EtherCAT は、Ethernet システムをベースとし、より高速で高効率な通信を実現する高性能な産業用ネットワークシステムです。各ノードがEthernet フレームを高速で転送することにより、短い定周期な通信サイクルタイムを実現することができます。
制御用ネットワーク EtherCAT を標準採用したことで、マシン制御に必要な I/O システム、サーボドライバ、インバータ、視覚装置などの機器を1 つのネットワークで接続できます。
EtherCAT スレーブターミナルをサポート
EtherCAT スレーブターミナルを使用することで省スペース化ができます。また、豊富な種類のNXユニットによりフレキシブルなシステム構築ができます。
EtherCAT 上にセーフティサブシステムを実現
NX シリーズ セーフティコントロールユニットを使用することによって、シーケンスコントロール、モーションコントロールのシステムに、セーフティコントロールをEtherCAT上のサブシステムとして統合することができます。
CJ シリーズユニットをサポート
NJ シリーズCPU ユニットでは、EtherCAT ネットワークの各種スレーブ以外にも、I/O バスシステム上に、各種CJシリーズ用ユニット(基本I/O ユニット、高機能ユニット)を装着して使用できます。
EtherNet/IP 通信機能ポートを標準装備
CPU ユニットに、EtherNet/IP 通信機能ポートを標準装備しています。
EtherNet/IP は、Ethernet を使用した産業用のマルチベンダネットワークです。コントローラ間のネットワークやフィールドネットワークとして使用することができます。また、標準のEthernet 技術が使用されているため、さまざまな汎用Ethernet 機器とも混在させて使用することができます。
USB ポートを標準装備
パソコンにインストールしたサポートソフトからUSB にてCPU ユニットに直接接続できます。
SD メモリカードスロットを標準装備
ユーザプログラムから、CPUユニットに装着したSDメモリカードにアクセスすることができます。
高いハードウェア信頼性
PLC 並みのハードウェア信頼性とRAS 機能を用意しています。
マルチコアプロセッサによる並列実行
CPU ユニット形NX701- □□□□は、マルチコアプロセッサを搭載しているため、複数のタスクを並列に実行できます。これにより、大規模な装置も高速に制御できます。
ソフトウェア上の特長
シーケンス制御とモーション制御を統合
1台のCPUユニットでシーケンス制御とモーション制御の両方をカバーします。これにより、シーケンス制御と多軸同期制御を同時に実現します。同じ制御周期の中で、シーケンス制御・モーション制御とI/Oリフレッシュが実行されます。
また、制御周期はEtherCAT のプロセスデータ通信周期と一致します。これにより、定周期でゆらぎの少ない高精度な、シーケンス制御およびモーション制御を実現できます。
マルチタスク対応
複数のタスクにI/Oリフレッシュやユーザプログラム実行などの一連の処理を割り付け、それぞれに実行条件と実行順序を指定し、それらを組み合わせることでアプリケーションに合わせて柔軟な制御が構築できます。
国際標準規格IEC 61131-3準拠のプログラミング言語仕様
IEC 61131-3に準拠した言語仕様を搭載しています。一部、オムロン独自の改良を加えています。PLCopen® に準拠したモーション制御命令をはじめ、IECルールに則った豊富な命令群(POU)を用意しています。
メモリマップを意識しない、変数によるプログラミング
パソコン上で高級言語を使用するときと同様に、すべてのデータは変数によりアクセスします。作成した変数はCPUユニットのメモリ上に自動的に割り付けられ、ユーザがそれを意識する必要はありません。
豊富なセキュリティ機能
操作権限の設定、IDによるユーザプログラムの実行制限など、豊富なセキュリティ機能を用意しています。
コントローラ全体の監視機能
CPUユニットは、装着されたユニット、EtherCATスレーブを含めたコントローラ全体の事象(イベント)を監視します。
異常時の対処方法は、Sysmac StudioまたはNAシリーズ表示器でガイドされます。発生した事象(イベント)は履歴として記憶されます。
オートメーションソフトウェア Sysmac Studio
Sysmac Studioは、コントローラだけでなく周辺機器やEtherCAT上の機器までを、1つのソフトウェアでカバーした統合開発環境です。機器の違いにかかわらず、統一した操作性を提供します。設計から、デバッグ、シミュレーション、立ち上げ、運用開始後の変更までの、すべての工程を支援します。
豊富なシミュレーション機能
仮想コントローラの実行機能、デバッグ機能、タスク実行時間の検証機能など、豊富なシミュレーション機能を用意しています。
NXシリーズのシステム構成の概要
NXシリーズのシステム構成は、以下のとおりです。
基本構成
NXシリーズでは、EtherCATネットワーク構成とサポートソフトを基本構成とします。
NXシリーズシステム構成例
NXシリーズシステムは、以下の通信システムを構築できます。
NJシリーズのシステム構成の概要
NJシリーズのシステム構成は、以下のとおりです。
基本構成
NJシリーズでは、EtherCATネットワーク構成、CJユニット構成およびサポートソフトを基本構成とします。
NJシリーズシステム構成例
NJシリーズシステムは、以下の通信システムを構築できます。
NJ/NXシリーズCPUユニットは、シーケンス制御およびモーション制御のためのユーザプログラム実行、I/Oリフレッシュ、外部との通信などの処理を行います。これらの処理は、CPUユニットのソフトウェアが行います。
また、CPUユニットには、各種設定、ユーザプログラム、変数などのデータがあります。CPUユニットはこれらのデータを使って処理を行います。CPUユニットとI/Oとのアクセス、および外部との通信には、これらのデータのうち、変数を使用します。
CPUユニットは、ソフトウェアおよび、変数を使ったI/Oとのアクセスにより、シーケンス制御とモーション制御の両方を実行することができます。
注. CJユニットを使用できるのは、NJシリーズCPUユニットだけです。
POU(Program Organization Unit)とは、IEC 61131-3におけるユーザプログラムの実行単位です。
複数のPOUを組み合わせることにより、ユーザプログラム全体を構成します。
POUの構成要素には、以下の3種類があります
POUの構成要素説明 | 説明 |
プログラム | メインルーチンに相当するアルゴリズムを記載する主となる要素です。 アルゴリズムに、すべての命令、ファンクション、ファンクションブロックを記述すること ができます。 |
ファンクションブロック (以降「FB」と省略します) | 入力の値が同じでも、異なる値の出力ができる要素です。 プログラムまたは別のFB から呼び出されることで起動します。 プログラム上でFBを使用するには、「インスタンス」としてプログラムに配置する必要 があります。 また、内部変数の値を保持することができます。そのため、タイマやカウンタのように 状態を持つことができます。 |
ファンクション (以降「FUN」と省略します) | 入力の値が同じであれば、常に均一の値を出力できる要素です。 プログラム、FB、またはFUN から呼び出されることで起動します。 |
視認性のよいプログラミング
あるPOUから他のPOUを呼び出すことにより、プログラムを階層的に構成することができます。たとえば、制御単位で階層化することで、プログラムの視認性を高めることができます。
下図は階層化した場合の例です。
再利用性の高いプログラミング
FBおよびFUNは、プログラムを部品化するためのしくみです。ある処理をFBとして部品化しておくと、同様な処理が必要な別の装置でも、FBのインスタンスを呼び出すことで再利用できます。
CPUユニットは、ユーザプログラムで変数を使用します。変数は、割り付けられたI/Oのデータとアクセスします。CPUユニットでは、以下のようにI/Oと変数を割り付けます。CJユニットの高機能ユニットは、アクセスするデータによって使用する変数が異なります。
I/O | データ | 変数 | |
EtherCATスレーブ | 「軸」に割り付けられていない EtherCATスレーブ*1 | − | EtherCATスレーブデバイス変数 |
「軸」に割り付けられている EtherCATスレーブ | − | 軸変数 | |
CJ ユニット*2 | 基本I/Oユニット | − | CJユニットデバイス変数 |
高機能ユニット | ・運転用データ ・設定用データ | CJユニットデバイス変数 | |
割付任意エリアのデータ*3 | ユーザ定義変数 |
*1. Sysmac Studio Ver.1.09以降では、「軸」に割り付けられたEtherCATスレーブも、EtherCATスレーブデバイス変数のアクセス対象となります。
*2. CJユニットを使用できるのは、NJシリーズCPUユニットだけです。
*3. 拡張機能やスレーブの入出力などを、ユーザがメモリエリアに割り付けて使用するデータです。割付任意エリアのデータは、デバイス変数でアクセスできません。