RFIDシステムとは、Radio Frequency IDentification System の略称で、日本語では「媒体に電波・電磁波を用いたIDシステム」のことをいいます。ここではRFIDシステムの概要を解説します。
概要 |
ID(Identification)とは、一般的にものや人の個別認識のことをいいます。
ものを認識するためには、バーコード、2次元コード、そしてRFIDなどが使用されています。
個人を認識するためのものとしては、目の虹彩(アイリス)、指紋などがあります。
「人間を介さず、ハードウェア、ソフトウェアを含む機器によって、情報媒体であるバーコード、2次元コード、RFIDシステム、アイリス、指紋などの情報を自動的に取り込み、内容を認識する」ことを自動認識 (AIDC:Automatic Identification & Data Capture)と呼びます。
このような「人やものの情報」を読み取り、認識するシステムがIDシステム(Identification System)です。
RFIDシステムとは、Radio Frequency IDentification System の略称で、日本語では「媒体に電波・電磁波を用いたIDシステム」のことをいいます。
ものに取り付けられたり、人が持ったりする「RFタグ(またはデータキャリア)」と「リーダライタ(またはアンテナ)」との間で通信を行い、必要なやり取りを行う一種の無線通信システムです。
RFIDシステムは、様々な場所で使用されています。
ものと情報の一元管理が可能となるため、生産現場では、主に作業指示(行先表示)や、履歴管理(生産履歴、検査履歴など)を目的に使用されています。
使用例:作業指示
分岐点に設置したリーダライタで、仕分け箱のRFタグ情報を読み取り、情報にしたがって、コントローラなどの制御システムを使い、製品の仕分けを自動的に行います。
RFタグに書き込まれた作業指示を自動で読み出すことで、人為的な読み取りミスを防止し、不良や廃棄のロスコスト低減に貢献します。
使用例:履歴管理
各工程ではRFタグの作業指示に従って作業を行い、その結果を書き込みます。
RFタグ内に、作業者、製造日、検査データなどを一元管理することによって部品の生産履歴管理を行うことができます。
このRFタグ内の情報は、生産性向上、品質向上、トレーサビリティ、予防保全などの実現に貢献します。
RFIDの特長は以下の通りです。
(1)非接触で、データの読み出し(Read)と、書き換え(Write)が可能
RFタグには、数キロバイトもの豊富な情報を格納可能です。各工程で必要な情報(工程履歴、検査情報など)を自由に、しかも非接触で書き換えできます。現場でのペーパーレス化を実現し、工程内の歩留まり低下要因を排除します。
(2)「ものと情報との一元化」により、高柔軟性・高信頼性システム構築が可能
情報の分散化技術により、上位システムの負荷を低減します。これにより、システム開発コストの削減、システム立ち上げ期間の大幅短縮、およびシステム変更時の柔軟化を実現します。また、各工程・現場で「ものと情報との一元化」が図れ、ミスのない確実な生産・工程管理、品質管理が可能です。さらに、RFタグへの最新情報格納により、緊急時のオフライン作業を可能とし、復旧回復期間を大幅に短縮します。
(3)高度な空間伝送技術・プロトコル採用により、高信頼性更新を実現
1/0判断のバーコードと違い、空間伝送には高度な空間伝送技術と専用プロトコルを採用しています。空間伝送情報には、16ビットCRCを付加、18ビット以上のバースト誤り検出率は、99.9985%以上と高信頼性交信を実現します。また、ラスタスキャン方式のバーコードのようなメカ機構がないため、故障やトラブルの心配を大幅に回避できます。
(4)電波・電磁波交信により、ラフな位置決めと、見えなくても読み書きが可能
バーコードと違い電波・電磁波で交信するため、汚れ、水分、油などによる誤読、読取り不良を解消します。樹脂や水分など、金属以外のものがアンテナとRFタグの間にあっても交信には影響ありません。また、幅広い交信領域のため、シビアな位置決めが不要で、メカ設計期間や設計コストを大幅に削減します。
(5)複数個のRFタグ情報を一括アクセス可能
リーダライタの交信領域内に存在する複数個のRFタグの情報を、同時に読み出しすることができます。
RFIDシステムを構築するためには、RFタグ、リーダライタ、上位機器が必要です。
上位機器から送られたデータは、リーダライタを通じ、RFタグに書き込まれます。
RFタグ内のデータは、リーダライタを通じて読み出されます。
RFIDシステム機能ブロック図(代表例)
周波数帯の分類
RFIDは電波・電磁波を利用したシステムであり、使用する周波数帯によって分類されています。
周波数 | 30~300KHz | 300KHz~3MHz | 3~30MHz | 30~300MHz | 300MHz~3GHz |
略称 | 長波(LF) Low Frequency | 中波(MF) Medium Frequency | 短波(HF) High Frequency | 超短波(VHF) Very High Frequency | 極超短波(UHF) Ultra High Frequency |
RFIDで 使用される 周波数 | 123/135 KHz | 400~530 KHz | 13.56 MHz | RFID用途は 少ない | 433 MHz/ 860~960 MHz/ 2.45 GHz |
空間伝送方式 | 電磁誘導方式 | 電磁結合方式 | 電磁誘導方式 | − | 電波方式 |
一般的に、高い周波数の電波は波長が短いため、短い時間により多くの情報を伝送できます。
また、その電波はまっすぐ進む性質があります。
一方、低い周波数の電波は、波長が長いために障害物等にあまり影響されずに遠くまで安定して情報を伝えられる傾向があります。
下図は、周波数帯分類別に性能を比較したレーダーチャートです。
UHF帯は交信距離では最も優れていますが、電波の反射/干渉に関しては他の周波数帯が優位です。また、HF帯はすべての項目において平均的に優れています。
したがって、用途に合わせ、適したRFIDシステムを選定する必要があります。
RFIDシステム伝送方式の分類
RFIDシステムの伝送方式には主に以下の3つの方式があります。
伝送方式 | 電磁結合 | 電磁誘導 | 電波(UHF) | ||
交信周波数 | 400~530KHz | 120~150KHz | 13.56MHz | 860~920MHz | |
交信距離 | △ 0~150mm | ○ 0~1m | △ 0~50mm | ○ 0~700mm | ◎ 0~10m |
データの書込み | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
交信速度 (交信レート、処理速度) | ○ | △ | ◎ | ○ | ○ |
交信の指向性・シャープさ | △ | × | ○ | △ | △ |
交信時の反射/ 干渉等の影響 | ◎ | △ | ◎ | △ | × |
現場での安定した交信 | ○ | △ | ◎ | ○ | ○ |
耐電磁界ノイズ性 | ○ | △ | ◎ | ○ | ◎ |
耐光ノイズ性 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
耐水性・耐油性 (水分の影響) | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ |
耐汚れ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ |
ガラス・樹脂の透過 (遮蔽物の影響) | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ |
電磁結合方式は広義には電磁誘導方式に含まれます。
様々な通信方式が存在するのは、各々の方式の特徴が異なるためです。いずれの方式も優れた点と留意しなければならない点があり、その特徴をしっかりと理解して、アプリケーションに最適な方式を選定する必要があります。
RFタグ(データタグ)の分類
RFタグはその用途により、様々な種類が製造されています。
・形状による分類
RFタグにさまざまな形状がある理由は、アプリケーションによって求められるRFタグの形状が異なるためです。アプリケーションに最適なRFタグの形状が選択できるように、数多くの種類が存在します。
・機能による分類
オムロンでは、主にリードライトタイプのRFタグを取り扱っています。
自由に情報の読み書きができるところがRFIDの特長です。
項目 | リードオンリー (RO) | ワンタイム ライト (WORM) | リードライト (R/W) | ||
メモリ機能 | EP-ROM | EEP-ROM | EEP-ROM | Fe-RAM | S-RAM |
機能 | メーカで データ書込 ユーザ書込不可 | ユーザで 1回書込 | ユーザで 自由に書換え | ユーザで 自由に書換え | ユーザで 自由に書換え 電池有 |
メモリ容量 | 数10ビット | 数10~100ビット | 数10~数Kバイト | 数10~数Kバイト | 数Kバイト |
・電力供給方式による分類
ロープライスでメンテナンスフリーのパッシブタグが最も多く採用されています。
アクティブタグは、RTLS(Real Time Locating System)などにおける所在管理アプリケーションで有効です。
パッシブタグ(Passive Tag) | セミパッシブタグ(Semi-Passive Tag) | アクティブタグ(Active Tag) |
・アンテナ(リーダライタ)からの 供給電力のみで動作 ・交信距離 : 数mm~数m | ・アンテナ(リーダライタ)からの 供給電力と内蔵電池エネルギーで動作 ・交信距離 : 数cm~数m | ・内蔵電池のエネルギーで 自ら動作 ・交信距離 : 数m~数10m |
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