Page top

本文

インバータ 用語解説


インバータは、誘導モータの電源の周波数を自在に変化させることで、誘導モータの回転速度を制御する機器です。ここではインバータの用語を解説します。

概要用語解説
参考資料 

関連情報


性能仕様

出力電圧

インバータの出力端子間の電圧

最大電圧

定格入力電圧において、インバータが出力できる実効値相当の電圧の最大値

出力電流

インバータの出力端子間に流れる電流

出力周波数

インバータの出力端子間の電圧の周波数

制動抵抗器

負荷の減速時や昇降軸の降下時に発生する回生エネルギーを消費するために外部に接続する抵抗器
インバータの過電圧検出を防止する

回生制動機能

負荷の減速時や昇降軸の下降時に発生する回生エネルギーを、内部または外部の回生制動回路を使用し、モータからの回生エネルギーを外付けの制動抵抗器で熱として消費させ、インバータ内部の直流電圧を低下させる機能
ただし、本機能は外部制動抵抗器または回生制動ユニットが接続されていないと機能しない

回生エネルギー

モータに接続された負荷は、回転している場合は運転エネルギーを、高い位置にある場合は位置エネルギーをもっており、モータが減速、または負荷が降下する時にはインバータにそのエネルギーが返ってくる
この現象を回生と呼び、そのエネルギーを回生エネルギーと呼ぶ

ノイズフィルタ

インバータ内部でパワーデバイスがスイッチングする際に発生するノイズを吸収するためにインバータの電源側または負荷側に接続する高周波フィルタ

冷却ファン

インバータ主回路の半導体素子などの発熱部品のために使用しているファン

リアクトル

インバータから発生する高調波を抑制する場合に使用するDC(直流)リアクトルおよびAC(交流リアクトル)があり、共に急しゅんな電流の変化を抑制する働きがある

高調波

交流を直流に変換して平滑するときに流れる、通常流れる電流の正弦波と異なる電流歪み
インバータは、高調波を発生する機器のため、インバータから発生した高調波が電気設備および周辺機器に影響を及ぼす場合がある

機能仕様

速度制御(ASR)

モータの回転速度を制御すること
(Automatic Speed Regulator)

制御モード

インバータによるモータ速度制御の方式(V/f制御モード、ベクトル制御モードなどがある)

V/f制御 / V/f特性

コイルに一定の電流を流して、一定のトルクを出力させる制御方式およびその特性
詳細は「概要」の「原理」参照

定トルク特性

出力周波数と出力電圧を比例関係としたV/f特性周波数に応じて一定のトルクを出力する
ただし、出力周波数が「0~基底周波数」までは、比例的に出力するが、「基底周波数~最高周波数」までは、周波数に関係なく出力電圧は一定台車、コンベア、天井走行クレーンなどで、回転速度に関係なくトルクを必要とする用途に適している

低減トルク特性

ファンやポンプなど、低速域で大きなトルクを必要としない用途に適している
低速域では出力電圧を下げているため、効率向上、低騒音および低振動化を図ることができる

特殊低減トルク特性(2乗低減負荷トルク特性)

回転速度の2乗に対してほぼトルクが一定となる特性(トルクの発生曲線が2乗カーブになっている特性)で、かつ低速域ではトルクを必要とする特性

基底周波数

モータが定格トルクを連続で発生できる最高の周波数
インバータでは、50Hzまたは60Hzとなる

ベクトル制御

インバータから誘導モータへの電圧と電流出力を参照し出力波形を修正する制御のこと
詳細は「概要」の「原理」参照

センサレスベクトル制御/PGなしベクトル制御

エンコーダによるフィードバックがないベクトル制御のこと
詳細は「概要」の「原理」参照

PG付きベクトル制御

エンコーダフィードバックつきベクトル制御のこと
詳細は「概要」の「原理」参照

加速時間

出力周波数が0Hzから最高周波数になるまでの時間

減速時間

出力周波数が最高周波数から0Hzになるまでの時間

始動周波数

運転信号をONにしたときの、インバータ出力を開始する周波数のこと

最高周波数

インバータが出力する周波数の最大出力値

最低出力周波数

周波数設定信号の最小値(4~20mA入力なら4mA)を入力したときの出力周波数

零速

最低出力周波数以下のこと

キャリア周波数

パルス幅変調周期を決定する周波数
キャリア周波数を高くすると、モータからの金属的な騒音を小さくできる

トルク制御

モータの発生トルクが、入力したトルク指令値と一致するように制御すること

始動トルク

モータが始動の瞬間に出すトルク
始動トルクよりも大きい負荷がモータにかかっているとモータは回りださない

トルク制限(トルクリミット)

モータの出力トルクを制限する機能

直流制動

誘導モータに直流電圧を印可して、モータを制動する(確実に回転を止める)機能
始動時・停止時のいずれかに動作させる

  • 始動時直流制動:
    慣性などで回転しているモータを、回生処理なしに停止させて起動する場合に使用する
  • 停止時直流制動:
    負荷が大きい場合、通常の減速では停止しきらずに、慣性で回転してしまう場合に使用する

トリップ

過電圧、過電流などに対して、インバータの保護機能が動作して、インバータからモータへの電力供給を遮断すること

異常リトライ

トリップ状態にあるインバータを自動的に再始動すること

ストール状態

モータに大きな負荷がかかったり、急激な加減速を行った場合に、モータステータ側の回転磁界にロータが追従できなくなった状態
モータが失速した、モータが脱調した、とも言われる

過電流

定格出力電流の基準の割合以上を出力した状態

過電流抑制機能

インパクト負荷などで急しゅんな電流成長による過電流を抑制する機能
出力電流が基準の割合以上を出力した場合に、加速を一時停止する

過電圧

出力電圧が定格値以上になった状態

減速時過電圧抑制機能

減速時にモータが発生する回生エネルギーによる過電圧トリップを回避する機能
電圧上昇を一定レベルに保つよう自動減速するタイプと一定レベルを超えると加速動作に入るタイプがある

不足電圧

インバータで、電源電圧が定格値以下になった状態

過トルク

出力トルクが定格値以上になった状態

過トルク(オーバートルク)検出機能

モータの出力トルク推定値が設定レベルよりも大きくなったことを検出して出力する機能

アンダートルク検出機能

モータの出力トルク推定値が設定レベルよりも小さくなったことを検出して出力する機能

電子サーマル

モータが過負荷状態で焼損することを保護する機能

モータ過負荷

モータに定格トルクを超える負荷が加わった状態

インバータ過負荷

電子サーマルによりインバータ過負荷保護が動作した状態

モータ保護

インバータ内部にモータの特性データを持たせることでインバータ運転時に内部で演算を行いモータの保護を行うこと

入力欠相

入力電源の欠相が発生したことを検出する機能
主回路電流電圧の変動で検出しているので、電源電圧の変動や、アンバランス、主回路コンデンサの劣化なども同様に検出できる

出力欠相検出

インバータ出力端子の欠相が発生したことを検出する機能各出力相に流れる電流値で検出して

ドライブモード

インバータが運転指令を受け付けるモード

デジタルオペレータ

インバータの操作・表示部のこと
インバータ本体から引き出して、制御盤前面に設置したり、遠隔操作を行うこともできる

周波数指令

モータへの供給電源の周波数指令のこと

アナログ指令

インバータの設定周波数指令をアナログ信号で行うこと
アナログ信号:0-5V, 0-10V, 4-20mAなどの連続的な信号

停止指令

インバータを介して、モータを停止する指令
デジタルオペレータまたは接点入力などによって行う
フリーラン停止(フリーランストップ)、減速停止が可能

減速停止

一定比率で減速してから停止させること

フリーラン停止(フリーランストップ)

停止時にインバータ出力を遮断する停止方法
「フリーラン停止」後、モータは惰性で回転し、モータや装置の負荷や摩擦で減速する

多機能入力

多機能入力端子に、運転指令、停止指令などの機能を割り付けることで、設定した機能を動作することができる

多機能出力

多機能出力端子に、運転中信号などの機能を割り付けることで、設定した信号を出力することができる

AVR(自動電圧制御)機能

インバータ受電電圧が変動しても、モータへの出力電圧を自動的に補正する機能
モータの出力トルク低下や過励磁状態を回避する
ただし、インバータ受電電圧を超える電圧を出力することはできない

多段速運転

多段速指令を用いて運転速度を複数設定し、外部信号で選択して速度を切り替える機能

ジョギング運転

モータ停止時の位置決め、微調整を行う機能

PID制御

流量、風量、圧力などのプロセス制御を行うことができる比例(P)動作、積分(I)動作、微分(D)動作
の組み合わせによって、設定された目標値にフィードバック(検出値)を一致させる制御

  • 比例(P)動作:
    操作量が偏差(目標値‐現在値)に比例する動作
  • 積分(I)動作:
    操作量が偏差の時間積分値に比例する動作
    現在値が目標値に近づくと偏差が小さくなるため、P動作の効果が少なくなり、目標値に到達するのに時間がかかることを補う
  • 微分(D)動作:
    操作量が、偏差の変化の割合に比例する動作
    PI動作だけでは応答時間がかかるが、D動作は応答性を補う

オートチューニング

モータの回路定数(モータの巻線の定数や負荷慣性モーメントの大きさなど)を、インバータ自身が自動的に測定し記憶する機能
主にベクトル制御時に使用する。なお、モータを回転させて測定する方法と回転させないで測定する方法がある

ジャンプ周波数

機械の共振周波数を避けるため、指定した周波数帯で出力周波数を変化させずに一定の出力をする周波数

瞬停再始動

瞬停・不足電圧発生時に、トリップするかリトライ(再スタート)するかを選択する機能

トルクブースト

低速時にモータのトルクが不足する場合、トルク不足を調整する機能
手動で調整する手動トルクブーストと自動的に調整する自動トルクブーストの2つがある

自動トルクブースト

低速時にモータのトルクが不足する場合、自動でトルクを増加するようインバータの出力電流(トルク)を検出して、出力電圧を自動的に制御すること

自動省エネ運転機能

一定速運転中のインバータ出力電圧が、最小となるように自動調整する機能
ファン、ポンプの低減トルク特性の負荷に適している

ブレーキ制御機能

昇降システムなどに用いられる外部ブレーキ(誘導モータについている電磁ブレーキ(無励磁作動型))をインバータから制御する機能

運転方向制限選択

モータの回転方向を制限する機能
(モータは一般的に軸方向から見て反時計回りが正転、軸方向から見て時計回りが逆転)

速度制限

モータの回転速度を制限すること

速度偏差

速度指定値と、モータの現在回転速度との差

スリップ補正

出力電流からモータの出力トルクを計算し、出力周波数を補正する機能

トルク補償

モータの負荷が大きくなったことを検出して出力トルクを増加させる機能

トルク補償リミット

ベクトル制御時に、モータの最大トルクが不足する場合や逆に必要以上のトルクを出したくない場合にトルクを調整すること

その他

誘導モータ

交流電圧を利用して内部コイルに電流を流し、誘導の力によって回転子を回転させるモータ

モータ極数

モータの中にできる磁極の数
トルクを発生する軸に巻いてある電磁石の数に相当する

モータ定格

モータの定格には、電流、電圧、トルクなどがあり、決められた条件での使用限界を示す

制動トルク

モータの回転を妨げる方向に働くトルク

出力トルク

モータの出力トルクのことで、回転軸まわりの力のモーメント

負荷トルク

モータが負荷機械を動かすときに必要なトルク
負荷トルクは回転速度に対して一定とは限らず変動する

負荷率

負荷電流(負荷トルク)の定格電流(定格トルク)に対する比率

漏れインダクタンス

トルクを発生するために使われずに、外部へ漏れたり発熱(鉄損)に使われる磁界を示すもので通常磁界を発生させるインダクタンス(コイル)成分として示されるもの


最終更新日:2025年01月06日