オムロンはハノーバーメッセ2018(2018年4月23~27日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、AIコントローラーおよび「i-BELT」の実働デモを披露するとともに、マスカスタマイゼーションのカギとされる“動く製造ライン”を披露し、注目を集めた。
AIとIoTで現場での機械との協調を加速するオムロン
オムロンでは2017年8月に産業用IoT基盤「i-BELT」を発表。「i-BELT」はオムロンの「AI搭載マシンオートメーションコントローラー(以下、AIコントローラー)」を軸に、オムロンが保有する幅広い制御機器などからのデータを製造現場レベルで簡単に収集・分析し活用するためのIoTサービス基盤である。制御機器やセンサーなどの入力機器からのデータをAIコントローラーを経由して同一フォーマット上で収集して蓄積できるようにする他、蓄積したデータの「見える化」や分析、分析結果のフィードバックなどを実現できるという。ハノーバーメッセ2018ではこのデモを実施した。
実演デモではオムロンの産業用ロボットが、ベルトコンベヤーで回る容器に液体を注入するというデモを行った。このロボットとベルトコンベヤーの制御をAIコントローラーで行うとともに、これらの機器から得られた情報をリアルタイムで収集して可視化できる形で示していた。
オムロンヨーロッパのCEO 臼井博之氏は「設備機器には総合設備効率(OEE)などの指標があり、情報を可視化することでOEEにどれだけの影響があるかをすぐに把握できる。業種にもよるものの、OEEは優れた企業であっても60%前後である場合が多く、残り40%前後に改善の余地がある。そこをAIなどを活用し高めていくことができる」と述べている。
マスカスタマイゼーションのカギ、自律移動する製造ラインを実働デモ
一方、マスカスタマイゼーションのカギとされる「物理ラインの可変」を具現化したのが「コンベヤーレスライン」である。2017年の国際ロボット展で披露したが、ハノーバーメッセでも紹介した。
「コンベヤーレスライン」は、生産ラインでモノを流すコンベヤーの代わりに自動搬送車(AGV)を用いて柔軟な生産ラインを実現したもの。AGVが自由に工程間を動き回ってワークに必要な工程間を移動しながら製品を完成させていく。AGVには「屋内用モバイルロボットLDプラットフォーム」の製品群を活用。生産の一連の流れをAGVによるロボット搬送によって実現する姿を示した。
AGVに搭載されているSLAM(Simultaneously Localization and Mapping)技術により、最初にAGVを運んで空間を認知させるだけで自動で地図を作成。さらに、AGVの移動を管理するソフトなどにより同時に140台のAGVの管理などが可能で、工程間を自律的に行き交う可変ラインを実現可能としている。
既にこのAGVによる「コンベヤーレスライン」は多くの引き合いを得ているというが、臼井氏は「インダストリー4.0でのマスカスタマイゼーションの実現という理想像を、いち早く現実的な形で実現できたと考えている。ロボット事業はアデプトテクノロジーを買収してから本格化したが、もともと原型となる技術をアデプトテクノロジーは持っていた。これをオムロンの持つさまざまな製品やグローバルサポート能力を組み合わせたことで本格的に受注が拡大し始めている」と述べている。