人と機械が最適に強調する“半自動化”

オムロン草津工場 外観検査自動化事例

人の感覚に頼った検査を自動化し、
不良流出ゼロへ

作業員の確保、スキル習得教育、高い品質の維持。目視に頼って外観検査を実施している現場にはさまざまな課題があります。
ここではオムロン草津工場で実践した、制御機器製品を対象にした外観検査工程の自動化による
不良流出ゼロと活人化の両立をめざした取組みをご紹介します。

課題

検査員のスキルに左右されやすい目視での外観検査が安定品質と混流対応の障壁に

検査員のスキルに左右されやすい
目視での外観検査が安定品質と混流対応の障壁に

目視の外観検査では、検査対象物を手で動かして光の当て方を変えたり目を細めながら、部品の取付や印字、嵌合状態などへの欠陥の有無を見極めていました。これには熟練したスキルが必要で、担当者によって品質が左右されやすい工程です。
また、多品種少量生産ラインにおいては、大量受注・段取り替え・普段は流れない品目への対応などが頻発します。増産や複数品目の混流に対応しながら、属人的なスキルに頼らない安定した品質保証の実現が求められていました。

解決策

多品種少量生産ラインでこそ活きる自動化を

これまで検査員が行っていた、部品の有無・マーキング印字・部品の取付状態などの外観検査を、画像処理システムとロボットを活用して自動化。多品種少量生産対応に求められていた熟練したスキルがなくても、安定した品質を担保できます。

作業分析にもとづく自動化への見極めの図
高速ハンドリング・撮影により、70秒で66項目を検査

高速ハンドリング・撮影により、70秒で66項目を検査

垂直多関節ロボットとY-θステージを連動させて高速ハンドリング。仕様の異なる28種の製品に対して70秒で、5面・29箇所(検査項目数66)の高速検査を実現しました。

高速ハンドリング・撮影により、70秒で66項目を検査
撮影画像例:文字のみ抽出した画像を合成(写真中央)
撮影画像例:文字のみ抽出した画像を合成(写真中央)

マーキング印字された文字を正確に高速抽出

照度差ステレオ照明により、1カ所の計測に最大9パターンを撮像。角度や光によって見え方の異なる汚れと、文字印字の検査を同時に実行します。複数方向から順番に照明を点灯し明るさの変化分析を行い、文字のかすれなどの高速抽出を実現しました。

撮影画像例:文字のみ抽出した画像を合成(写真中央)
撮影画像例:文字のみ抽出した画像を合成(写真中央)
ロータリスイッチが正しい向きに設定されているか、撮像画像を数値で判定
ロータリスイッチが正しい向きに設定されているか、撮像画像を数値で判定

操作性や使い勝手などの官能検査領域の検出も

電気的なテスターでは良品と誤認されることのある、ロータリスイッチの方向チェックなどの操作性・使い勝手に関わる項目も、閾値を定めて自動チェックできるようにしました。

<自動チェック化項目 一例>

ロータリスイッチ

ロータリスイッチが正しい向きに設定されているか、撮像画像を数値で判定
ロータリスイッチが正しい向きに設定されているか、撮像画像を数値で判定
製品ごとに異なる端子先端の位置や形状
製品ごとに異なる端子先端の位置や形状

AI技術導入による知能化で、
検査品質の向上と調整工数1/10化

バラつく良品基準をAIでパターン化・定量化し、ムダ・ムラのない安定した検査を実現しました。また、新機種立ち上げ時の調整作業を1/10以下に低減しました。

<検査項目>

コネクタ内部 端子曲がり

製品ごとに異なる端子先端の位置や形状
製品ごとに異なる端子先端の位置や形状

AI技術により過検出を防止、検査品質を向上

目視検査は「異常箇所の抽出」や「数値化しづらい判断」など、習熟した技術や適性を持った「人」に依存していました。
また、品質を優先するために、判定基準内のバラつきを過剰に判定してしまう「過検出」が発生していました。
AI技術の導入により、人の感性に依存していた“官能検査”を、熟練検査員と同じように良品状態にバラつきを持った判断ができるようになりました。結果、過検出ゼロの安定的な検査を実現、検査品質を向上できました。

AIが良品基準の設定をアシスト。立ち上げ工数を削減

従来の方法ではエンジニアが実際の画像を1枚1枚確認しながらOK/NGの判定しきい値を設定していました。また、熟練作業のエンジニアへの技術依存が大きく、多くの調整工数が必要でした。
AI技術ではOK/NGのサンプル画像を登録するだけで、良品判定の基準を自動生成し、判定しきい値の設定をアシストしてくれるため、立ち上げ時の調整工数を1/10以下に低減できました。

成果

検査品質の安定化・検査時間36%短縮と、活人化を両立

検査箇所・項目と良品基準を定量化し、外観検査を自動化したことにより、検査時間を短縮しながら、工場全体においての活人化と検査品質の安定化を実現。
また、自動化によって検査結果のエビデンスを残せるようになったことで、出荷時など他工程で重複実施していた検査・確認作業も削減できました。
この検査システムなら、多品種少量生産においても熟練したスキルがなくても対応可能です。マシンデータと製品全数の検査結果を紐づけて管理すれば、重複検査の廃止やポカミスによる不良流出ゼロも実現できます。

担当者の声

オムロン株式会社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 草津工場 生産管理部 生産技術課 西林 和則
オムロン株式会社
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー
商品事業本部
草津工場 生産管理部 生産技術課
西林 和則

今後も外観検査は進化を続けていきます

外観検査は細かい検査項目が多くあり、熟練作業者に依存する官能検査工程でした。今回の自動外観検査装置の導入により、人に依存しない検査品質を担保でき、生産性も向上する工程へ改善することができました。さらに、製品を持ち上げて回転させながら検査するため重量があり煩雑な作業が不要となり、作業者の方に喜んでいただけたことは生産技術者として非常にうれしい声でした。
今後は画像検査装置の更なる使いこなしにより、外観傷検査の安定化と嵌合部の検査精度UPを目指し、画像検査の完成度をさらに向上させていきます。また、エンジニアリング工数の削減にもチャレンジしていくことで、画像検査の可能性を引き上げていきます。