2023国際ロボット展(iREX 2023)メディア記事

人とロボットが高度に協調した
モノづくり現場を目指すオムロン

提供 :株式会社マイナビ 掲載メディア :TECH+

この記事は、2023年12月12日にTECH+「テクノロジーチャンネル」に掲載された記事を転載しています。

2023年11月29日から12月2日まで東京ビッグサイトにて開催された、世界最大規模のロボット専門展「2023国際ロボット展(iREX2023)」で、オムロンは、同社が掲げるモノづくり革新コンセプト「i-Automation!」に基づく未来の製造現場として、人の器用な動きを再現するフル自働化ライン、および人とロボットが協調するフレキシブルラインなどを展示。“成長しつづける強いモノづくり現場”を実現する同社のソリューションをアピールした。

2023国際ロボット展のオムロンブース
2023国際ロボット展のオムロンブース

人とロボットが協調する“高度な自働化”に貢献へ

慢性的な人材不足に加え、生産拠点のグローバル分散化も進む昨今では、製造現場における省人化と生産性向上を両立させるための抜本的な変革が必要とされている。また同時にSDGsへの関心も高まっており、作業従事者の働きやすさ、カーボンニュートラルに貢献するエネルギー効率の向上も求められている。

こうした流れを受けオムロンでは、人と機械がもつ可能性を最大化し、サステナブルなものづくり現場を実現するため、i-Automation!をコンセプトとして、高度に進化したロボット技術の効果的な活用や設備制御、安全性向上、データ活用の進化を目指している。

そして今回のオムロンブースでは、資本生産性と柔軟性を両立して無人にもかかわらず生産効率を向上させる「フル自働化ライン」、近年のトレンドである少量多品種生産に最適化された人とロボットによる「次世代フレキシブルライン」など、実際の生産ラインを想定した展示が行われた。

統合コントローラによる制御で繊細な作業をフル自働化

フル自働化ラインを想定した展示では、フレキシブルコネクタ(FPC)を基板の適切な位置に差し込む作業を、ロボットによって自動で行い、検査に進む工程のデモンストレーションが行われた。

FPCの差し込みを自働化したデモンストレーション
FPCの差し込みを自働化したデモンストレーション

薄く柔軟性があるFPCは繊細な形状の変化を伴うため、基板への高精度な差し込み作業をロボットで行うのは難易度が高く、人手に頼ることが多かったという。しかし、生産性の向上に加え作業従事者の労働環境向上も求められる昨今では、こうした繊細ながら単純な作業は機械化していくことが望まれる。

オムロンはその機械化の実現に向けた同社の強みとして、ロボットと制御機器の制御を同一のシステムで制御する「ロボット統合コントローラ」の存在を挙げる。同コントローラによって、生産ライン上のロボット・カメラ・センサなどを統合制御しており、またその通信に高速な産業用イーサネットであるEtherCATを用いることで、最速2ミリ秒でのフィードバックをロボットに対して行えるとのこと。これにより、高い正確性や精密さが求められる作業を自働化することができるとする。

さらも同社ブースでは、繊細な力覚が必要とされるシール貼り作業の自働化デモも展示。単純に載せるだけでは気泡が入るなど欠陥が生じやすいこの作業の自働化にあたっては、統合コントローラでの高速制御に加え、斜めからシールを貼り付けることで気泡の入り込みを防ぐなどのカスタマイズを重ね、高精度での自動化を実現したとしている。

シール貼り作業の自働化デモンストレーション

多品種少量生産に最適化されたフレキシブルな製造ライン

ニーズの多様化などにより少量かつ多品種の製品を生産することが求められる今後は、大規模な生産ラインを固定して設置するのではなく、各作業用の生産ブースを設置し、その間をロボットや人の手でつなぐ柔軟な生産体制が効果を発揮するとされる。こうしたフレキシブルな生産体制をイメージした展示では、協調ロボットを用いた部品のピッキング工程が紹介された。

協働ロボットが各工程をつなぐフレキシブルラインのデモ展示
協働ロボットが各工程をつなぐフレキシブルラインのデモ展示

同展示では協調ロボットを2台設置。まず1台目は、複数種類の部品を必要な量だけピッキングし、運搬用ボックスへと入れていく。この時、部品の形状はそれぞれ大きく異なるものの、ロボットハンド部分が場合に応じて最適な形状へと変化し、しっかりと把持することができるという。そして部品が揃ったボックスは、次の工程へとつながるレールへと移動。そこに待つ2台目の協調ロボットが、次の工程へとボックスを運搬する。

こうした協調ロボットを用いたピック&プレイス工程におけるオムロンの特徴として、担当者は、さまざまな形状の部品を同じ装置で適切に把持する環境を構築できる点を挙げる。ロボットのハンド部分はパートナー企業が開発したもので、当然ながらハードウェアの性能はその開発に依存する。しかし実際にそれを動作させるためには、適切な力覚や位置を制御することが必要になり、その部分で高い制御技術を有する同社は強みを発揮するとしている。

手のような形をしたロボットハンド。その正確な把持を支えるのも、オムロンの統合コントローラだ
手のような形をしたロボットハンド。その正確な把持を支えるのも、オムロンの統合コントローラだ

半導体ウェハの搬送を想定した新製品デモも展示

さらにオムロンブースでは、協調ロボットを使用したさまざまなユースケースにおけるデモ環境を展示。半導体工場におけるウェハ運搬を想定した環境としては、2023年内の発売が予定される25kg可搬の協調ロボット「TM25S」を用いた運搬デモが行われた。

新製品「TM25S」を用いた半導体ウェハの運搬デモ
新製品「TM25S」を用いた半導体ウェハの運搬デモ

技術革新により大口径化が進む半導体ウェハは、当然それに伴って重量も大きくなり、人手での運搬の負担が増大することになる。そうした中でオムロンは、ウェハ運搬の自働化にも対応できる可搬重量25kgのTM25Sのラインナップ追加に至ったとのこと。これにより半導体メーカーはもちろん、そのほかのさまざまな運搬用途へと適用範囲を拡大できたとする。

AMRに乗せたままの外観検査を可能にするランドマーク機能とは

またAMR(自律走行搬送ロボット)を用いたデモとしては、機械部品の外観検査工程の自動化ソリューションを紹介。AMRがワークを運び、検査用のブースに移動することで、人の手を介さずに外観検査を完了することができるという。

従来の外観検査では、検査環境内に固定したカメラでの撮像によって検査を行っていたため、ワーク位置のわずかな誤差が認識精度の低下につながっていた。しかしオムロンの画像センサ「FH」では、ランドマーク機能を搭載。ワークに固定されたランドマークをカメラで認識し、そこからの相対位置をもとにして検査を行うことにより、設置位置に多少のずれが生じても正確な画像認識を行うことができるという。

ワークの左下にある穴が並んだランドマークを認識することで、多少の位置のずれに左右されない外観検査が可能になるという<
ワークの左下にある穴が並んだランドマークを認識することで、多少の位置のずれに左右されない外観検査が可能になるという

同機能が実現されたことで、ワークの位置を厳密に決定するメカ機構などが不要に。ラインを移動するAMRに乗せたまま外観検査を実施でき、さらなる自動化につながるとしている。