三機工業株式会社様 モバイルロボット採用事例

空調性能試験の工数75%を削減。
自社現場の労働時間短縮を狙った
自律走行型の風量測定ロボット[開発中]

三機工業株式会社

エンジニアリングを通じて快適環境を創造し、広く社会の発展に貢献

三機工業株式会社様(以下三機工業)は、社会インフラにかかわる多様な要素技術を保有し、空調、衛生、電気、情報通信、オフィス移転等の建築設備事業、搬送システム、コンベヤ等の機械システム事業、上・下水処理施設、ごみ焼却施設等の環境システム事業など、幅広い事業領域で社会に貢献され、2025年の創立100周年に向けて、「技術の力」でお客様への新しい価値提供に取り組まれております。
2018年には、R&Dセンターのある神奈川県大和市に、技術力と人財の質を高める研修・研究の戦略拠点として「三機テクノセンター」を設立。未来のエンジニアリングを担う人材育成に注力されています。

三機工業株式会社

課題

建築現場の人手不足を解決する省力化と信頼性の確保​​

「建築業界全体で人手不足の問題は深刻であり、なんとしても省力化を進める」と、同社の設備開発部 福森部長は力強く述べられました。
「なかでも建物の性能検査成績書として提出する空調設備の風量測定は、高層オフィスビルでは1,000箇所を越える空調の吹き出し口を繰り返し測定する事もあり、作業の省力化が課題となっていました」。
また、同社の実績豊富な医療施設、半導体製造工場、インターネットデータセンターといった特殊空調を備える施設の建築案件について「案件のグローバル化など、様々な要求仕様に対するエビデンス提示が重要な業務であり、​
1.大量・反復・長期に渡る検査のため、記述/転記ミスの撲滅​
2.測定データ・検査成績書の改ざんを防止​
3.測定員毎の"くせ"をなくし、測定作業の標準化・均質化​
といった省力化に加えて、高度な信頼性を確保するための対応が求められています」とロボット開発上の課題を語られました。

R&Dセンター 建築設備開発部 部長 福森様
R&Dセンター 建築設備開発部
部長 福森様

施工現場ニーズに応える「働き方改革」の具体化​

もうひとつは、施工現場での長時間労働。「今回の空調性能検査は、昼間の建設工事とは別に、休日・夜間での実施や、施主への引き渡し直前となるために短期実施が求められ、現場が長時間労働になることがあります。当社では全社を挙げて働き方改革『スマイル・プロジェクト』を推進しています。なかでも施工管理者の負担軽減と業務効率化に向けた働き方改革専門委員会『スマイル・サイト・プラン』では、施工管理を担当する技術職などの現場の声を反映することで施工管理者の業務負担を軽減、ひいては施工品質・安全衛生のさらなる向上を果たすことを目指しています」

また、開発プロジェクトの経緯について福森部長は「現場からのニーズがきっかけでした。R&Dセンターの中長期開発テーマとは別に、当社の現場から熱い要望と具体的な提案が入ったのです。通常の開発テーマでは起案から実際の設備が現場に配備されるまでに​2~3年はかかるところを半年で試作のロボットを製作。実際の建設現場で効果検証を​行うなど、"できることはすぐにやる"、"できることから始める"というスタンスで対応しました」と振り返られました。今後の取り組みとしては「深刻化する施工現場の人手不足を解決。そして、当社の進めている働き方改革の具現化事例、R&Dセンター開発テーマの柱として位置づけています。
今回は風量についてお話しましたが、例えば"温度"や、明るさの"照度"。あとは半導体用ウェハや液晶フィルムなどを作っているクリーンルームなどの"清浄度"。ごみがどれだけ飛んでいるか、といった状態を測定しないといけない施設や部門があります。​竣工後に、定常的や定期的に測定するアプリケーションがあり、今後ますますロボットを活用していきます」​と述べられました。

三機工業は、SDGsの中長期的な社会課題に事業を通じた貢献を表明
三機工業は、SDGsの中長期的な社会課題に事業を通じた貢献を表明

解決策

1. 自律走行型ロボットと、測定作業を標準化する昇降式測定器をドッキング

空調試験の工数、従来比75%を削減する自律走行型の風量測定ロボット(2021年3月現在の開発機)

風量測定ロボットの開発をご担当された小林様に、実証実験や今後の開発内容について伺いました。
「試作のロボットを用いて、実際に同じ構造のフロア・吹き出し口位置を持つ建設中のオフィスビルで、4フロアずつ従来手法との方式比較を行い、75%の工数削減を確認しました。"基準階"と呼んでいるフロアで、一度プログラミングやティーチングを行えば、あとの3フロアでロボットの繰り返し動作となるため最も効果を発揮できる。そういった現場で実証できたと思っています。これが超高層ビルだと、十数フロア・数千箇所の繰り返し測定になりますので、より工数削減の効果が高まります。
試作ロボットの現場実証で得られた知見を基に、オムロンのモバイルロボットを採用した現行の開発機を製作しました。現在は、より大きな効果を発揮するために、建設用図面データとの連携により、ティーチング工数をさらに削減する機能を検証中です。同時に、複雑なレイアウトでも対応できるよう、カメラを使った位置補正など、対応できる建物のバリエーションを広げる取り組みを行っています」

R&Dセンター 建築設備1課 小林様
R&Dセンター 建築設備1課
小林様

2. 効果を最大化し現場を支援するIoTシステムとのドッキング

風量測定ロボットの要求仕様書を作成され、クラウドを使ったIoTシステムを構築された飯田様にお話を伺いました。「元々、当社ではLPWA通信*1で、建築現場での熱中症モニタリングやビル空調の集中監視を手軽に構築できるサーバーアプリケーションを発表しています」。ご自身のキャリアとしても、特殊空調の監視制御システムを開発されていた飯田様は、オムロンのモバイルロボットを以下のようにご評価いただきました。

「我々には技術資産や現場経験の蓄積があったことと、オムロンロボットがOEM向けモデルとしてAPI*2が充実していたため、欲しい機能をゼロから作らずに済みました。現場のニーズに随時応える開発をする上で、とても進め易かったポイントです。ロボット自律走行のための開発も、オムロンのSEが迅速かつ柔軟に対応してくれたおかげで、試作ロボット以上の位置精度と工数の削減効果を実現することができました」
さらに技術やノウハウの蓄積については「建築中の建物では構内LANの構築前となることから、Wi-Fiが使えない。あるいは、電波が届かない超高層ビルのケースもあり得ます。こういった現場での伝送手段の用意や代替策の備えなど、これまで構築したビル管理のデータ収集プログラム資産だけでなく、現場経験のノウハウをうまく活かすことができました」

R&Dセンター 主席研究員 飯田様
R&Dセンター 主席研究員
飯田様
  • *1. LPWA通信:Low Power Wide Area-network「省電力かつ長距離での無線通信が可能」という特長をもつ通信技術の総称
  • *2. API:Application Program Interface 必要な機能別に組込み/利用可能なプログラム部品のこと

成果

空調性能試験の工数75%(従来比)を削減。
建設現場の働き方改革を推進

実際の建設現場で実証

実際の建設現場で実証

従来、2名の作業員が数百箇所以上を繰り返し測定。
2019年プロトタイプのロボットを使い、同じフロア配置のビル4フロア分で実証試験を実施し削減効果を実証。同じプログラムが適用できる"基準階"が連続するビルではさらに工数削減が可能です。

上向き姿勢での反復作業を防止

上向き姿勢での反復作業を防止

高層ビルでは1,000箇所以上にも及ぶ。測定機器の運搬・30秒間天井への保持といった肉体的な負担のかかる作業から解放され、ロボットが設定通りの測定時間や測定手段を正確に再現します。

測定を終えてからの帳票作成・入力作業ゼロ

測定を終えてからの帳票作成・入力作業ゼロ

無人で24h自動測定。測定データがサーバにWi-Fi伝送され自動で成績書を作成。計測作業後に机上での帳票作成から検査員は解放されました。

お客様の声

Society5.0時代の「建築現場」と
オムロンへの期待

「自社用として開発中である風量測定ロボットは、当社の現場からの"図面データと連携してロボットが風量測定できないか?"という相談から開発が始まりました。一緒になって仕様や運用を詰めていき、ターゲットを絞って試作を行い、具体的な成果を出すことができました。社内で進めている働き方改革『スマイル・サイト・プラン』の主旨とも合致する取り組みとなっています。
オムロンのモバイルロボットは、ロボット自身の位置精度の良さや思い通りに動いてくれる動作性能に加え、OEM向けモデルとして通信用APIといったアプリケーション開発者への備えが充実しています。また、ロボット管制システムのためのソフトウェアが分かり易く、拡張性が高いので、段階を踏んで開発を進める今回のようなアプリケーションでは、先の見通しが立ち、効率的な開発ができそうです」

R&Dセンター 建築設備1課 課長 吉岡様
R&Dセンター 建築設備1課
課長 吉岡様
三機工業 R&Dセンター「風量測定ロボット」開発メンバーの皆様
三機工業 R&Dセンター「風量測定ロボット」開発メンバーの皆様