海外現地生産も見据えた、冷凍ケーキのパイオニア
五洋食品産業株式会社様(以下 五洋食品産業)は“ストックできるスイーツ”として冷凍ケーキを開発・製造・販売するパイオニア企業です。解凍時に出来たての味を再現できる冷凍ケーキを1日15万食、生産・出荷し、お客様へ安定供給されています。
2010年には福岡県糸島市に新設した糸島工場を拠点に、確かな技術、徹底した品質管理のもと、主力製品のベイクドチーズケーキやモンブランを、自社ブランド製品のほか、業務用OEMとして日本全国をはじめ海外へ出荷しています。さらには海外での現地生産を視野に、設備の拡充を手掛けています。
動画でみる 五洋食品産業様との共創ストーリー「現在、そして未来へ」
課題
人ならではの作業品質を再現できる自動化
売上の多くを占める人気のモンブランは、人による作業で1.5秒/個、1日で4万2千個生産されています。この主力製品に対し、もし何か不測の事態が起き、人に頼った生産ができなくなってしまったら…という企業リスクの観点で生産自動化を検討されています。ロボットによって自動化する場合、作業後の仕上がりによって、売り物になるA品か、破棄となるB品かに分別するため、B品が発生してしまうことは仕方がないという発想が根底にあります。
一方、人が作る場合は、作業をしながら同時に目視検査を行うことで、B品にならないように補正しながら仕上がりの品質を確保しています。こうした人ならではの作業まで再現できなければ、ロボットへ置き換えることはできないのです。
解決策
オムロンの最新技術の体感・実証施設へ実物を持ち込み、
ロボットによる作業品質を評価
オムロンは、まずSEが現場に入り、業務内容や作業者の動作を緻密に分析し、自動化の方策をご提案しました。
さらに、提案内容をより具体化するために、最新のファクトリーオートメーション技術を体感・実証できる施設「オートメーションセンタTOKYO POC LAB」での実機検証をご提案しました。
ケーキ材料を空輸いただき、冷凍設備もあるこの「POC LAB」で実機検証を行いました。
コンベアを流れる⽣地への追従性・粘度が異なる複数品種の盛付け特性・タクトタイムなど、様々な作業品質を評価しました。
成果
最速1.39秒のタクトタイムで職人技を再現。導入計画が具体化
五洋食品産業様では、以前にもモンブランの製造⼯程に専⽤装置の導⼊を検討されたことがあったものの、動きが機械的で⼈の⼿でもたらされるような品質を確保できず、当時は導⼊を⾒送られたことがあったそうです。
今回の実機検証の結果、以下の成果が得られたことで、ロボット導⼊計画を具体化することができました。
コンベアを流れるモンブランへの追従作業に成功
ロボットビジョン(ロボットの"眼"となるカメラシステム)の演算結果とコンベア速度、加えてワークの位置情報をコントローラに送ることで、生地がランダム配置やコンベア速度にムラがあっても追従しながら盛付け作業をします。
ロボットだけではなく、カメラ・照明の調整やコンベアとの同期まで、現場を知るオムロンならではの強みです。
最速1.39秒のタクトタイムでクリーム盛付けに成功
オムロンのSEは、ロボットの動きをプログラミングする前に、作業者の作業・動作を分析します。
熟練作業者の動作は、無駄のない最小限の動きで良品を生産しており、これをもとに最も効率のよい動作パターンを作り出すことで最速1.39秒のタクトタイムを実現できました。
複数品種において仕上げ品質テストに合格
定番商品となる栗のクリームから、熟練作業者も神経を使う粘度の高いクリームまで、段取り替えや投入タイミングにも生産現場を想定しながら動作パターンとその調整を繰り返しました。
五洋食品産業様は同社の中期経営計画「MIRAIE 2021」において、生産性4倍の未来工場を目指しておられます。
熟練作業者にしかできない工程を自動化するには、AI活用に向けたデータ蓄積・分析・活用のプロセスが必要であり、これらもあわせてご提案しています。
具体的には、気温・湿度・材料に変動があっても品質維持ができる仕組みづくり、海外生産でも同一品質の実現へ、オムロンからの提案にご期待いただいています。
お客様の声
生産性4倍、人が主役のスマート工場へ
ロボットによる自動化後、その前後の工程も自動化し、製造工程全体の生産性を高めたいと考えています。まずは早期に現有体制で現在と同等の生産能力を確保しながら、自動化ラインと融合したスマート工場で4倍の生産性を発揮したいです。
自動化は進めていきますが、あくまで工場の主役は人です。人と機械が一緒になって作りながら、人がさらなる美味しさと品質向上を追求していきます。