海外でのモノづくり企業に寄り添うユニークなグローバル企業
シークス株式会社様(以下シークス)は、前身であるインキメーカ・株式会社阪田商会(現サカタインクス株式会社)貿易部輸出係の創設以来、約60年に渡り様々な海外事業を展開してきました。 1998年7月に社名を「シークス株式会社」と改称し、今日では民生機器のほか、車載機器、産業機器など幅広いエレクトロニクス分野を対象に、部材調達、物流機能も併せたEMS(電子機器受託製造)サービスを提供するユニークなグローバル企業であり、国内トップクラスのEMS企業です。
課題
人への負荷や能力の限界に縛られない、バラつきのない「全数検査」が必要
不良品の混入を避けたい
シークスでは『不良を現場に 入れない 出さない 作らない』というコンセプトのもと、モノづくりをしています。まず、受け入れ検査により「不良の流入」を防止。実装後や出荷検査時の各種検査機器による自動検査の他に、治具を用いた作業メンバの目視検査などの対応により「不良の流出」の防止に努めています。
加えて、万が一、シークスから出荷された製品に不良が混入した場合、ダイレクトにお客様の製品不具合につながるというリスクを避けるため、「全数検査」を必須とするよう、検査工程の見直しが検討されました。これまでの人による検査では、作業員にかかる負荷の限界と、時間の制約から「抜き取り」対応となっている場合がありました。
高速性と高精度の両立を追求する
また、自動車業界では今「100年に1度」と言われる変革期を迎え、昨今のADAS*、自動運転、高速データ通信などの技術進化に伴い、「全数検査」かつ「一定の検査精度」を問われる場合が増えてきました。
その場合、従来の人による検査ではバラつきがあるため、一定の繰り返し精度を維持することは困難です。一方で、CNC測定器などの専用機器を用いた場合、精度は保証されても、機器に検査対象品をセットするのに人が介在するため、「全数検査」するには限界がありました。
*ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems 先進運転支援システム
解決策
車載要求品質での全数検査を可能にする寸法検査装置の開発を、オムロンと協業により実現
元々、基板外観検査装置(VT-S730)を通じて技術的交流があったオムロンから、シークスに対し、新たな製品開発を提案しました。そこで2017年より、製品の検証に携わるなどオムロンとシークスにて協業することが決まりました。シークス相模原工場の現場にオムロンの寸法検査装置の開発機を持ち込み、サンプル試験や、実際の量産品での検証を重ね、 2018年12月、オムロンから「寸法検査装置VT-M121」を発売しました。
開発の過程では、車載要求品質の精度確保のために、シークスの検査ノウハウのプログラム反映や、全数検査に見合う検査タクトタイム実現の技術改善を加え、動作実験を繰り返し、完成しました。
成果
ADB*システム用ヘッドランプLED基板の全数検査を実現
*ADB:Adaptive Driving Beam ハイビームで走行中、対向車や前走車などの出現を車載カメラで検知し、ハイビームの照射エリアを制御するシステム
寸法検査装置(VT-M121)の導入により、これまで「抜き取り」だった受け入れ検査や、実装後・組付け時などにおける寸法検査を「全数検査」に切り替えることができました。これにより、作業メンバの抜き取り検査による工数とバラつきという課題を解決するとともに、全数保証が実現されました。
シークスとしては以下の点を明確にお客様へ提示することにより、より安心・安全なモノづくりをアピールできるようになりました。
(1)全数自動検査
(2)繰返精度±8μmを保障し、顧客要求に応える精度を達成
(3)検査の履歴を残せる
具体的には「ADBシステム用ヘッドランプLED」基板の全数検査を実現し、将来の自動運転に繋がる重要な技術の進化に追従する成果としてお客様から大きな信頼を得る事ができました。
シークス相模原工場に続き、海外各拠点で活用
相模原工場での実績に合わせ、積極的な顧客へのご提案を行うことで、ビジネスの拡大につながりました。現在、VT-M121の海外各拠点での活用が進んでいます。お客様の世界でのモノづくりに、ジャパン品質でお応えできるシークスならではの実力強化につながっています。
お客様の声
シークスの新たな挑戦へ
目視検査に割いていた工数を、VT-M121の検査プログラム登録や、検査結果のサプライヤへの報告資料作成など、他の活動に有効活用できる様になりました。
今後、このVT-M121をシークスのサプライヤ各社様にも導入することをおすすめし、検査データの共有や活用による最適なモノづくりを実現するための“フィードフォワードのしくみづくり”にも挑戦していきたいと思っています。
またVT-M121による定量的な検査情報により、良品の“特性”を分け、後工程での最適な組み合わせに活用したり、生産工程へフィードバックしたりすることで、よりセンター値に近いモノづくりにも取り組んでいきたいと考えています。