サーボモータとは?そのメリットと活用のポイントを解説

私たちの身の回りでは、モータが多く利用され、電力使用量のうち半分以上がモータで占められています*。しかしモータと一口に言っても、さまざまな種類があることをご存じでしょうか。おもちゃに使われる小型モータから、工場や発電所などで使われる大型モータまで、用途に応じて使い分けられています。なかでも、製造ラインでは「サーボモータ」と呼ばれる特殊なモータが採用されています。ここでは、サーボモータのメリットと、性能向上のポイントについて解説します。
*出典元:日本電機工業会「地球環境保護・省エネルギーのために トップランナーモータ」

サーボモータとは、どんなモータなのか

私たちが家電などで日常的に使っているモータの原型は、190年以上も前に考案されました。DCモータが発明され、その後、単相交流で回るACモータや3相交流で回る誘導モータなどが登場しました。では、これらの一般的なモータと、サーボモータでは、どのような違いがあるのでしょうか。

そもそもサーボモータのサーボ(Servo)とはラテン語の「Servus」=召使いに由来します。主人が何か指示を出すと、その指示に忠実に動いてくれる、それがサーボモータです。一般的なモータと比べ、俊敏かつ高速で正確に動きます。サーボモータはモータ単体だけではなく、モータを動かすドライバ(駆動装置)、位置(角度)/速度/回転力(トルク)を指示するコントローラで構成されます。

サーボモータの構成。サーボモータ+エンコーダ、ドライバ、コントローラのセットで使われる。サーボモータの性能は、これらの要素の組み合わせで決まる。
サーボモータの構成。サーボモータ+エンコーダ、ドライバ、コントローラのセットで使われる。サーボモータの性能は、これらの要素の組み合わせで決まる。

サーボモータは「DCサーボモータ」と「ACサーボモータ」の2種類に大別できます。

DCサーボモータは直流で駆動します。構造から、ロータ(回転子)のコイルへ電流を機械的に一定方向に流すブラシ(電極)が付いたタイプと、ロータに永久磁石を使ったブラシのないブラシレスタイプがあります。ブラシレスモータは、交流を使用している点からACサーボに分類される場合もあります。DCサーボモータは小型・低価格がメリットですが、ブラシのメンテナンスが必要です。

ACサーボモータは交流で駆動します。こちらも構造によりロータに永久磁石を使う「同期型」(SM)と永久磁石を使わない「誘導型」(IM)に大別されます。同期型は磁石を使うので高出力になると高価になりますが、高性能な永久磁石の登場により、現在主流のサーボモータです。一方、誘導型は磁石を使わないため、10kW以上の高出力な用途などに適しますが、制御系は複雑になります。

オムロンのACサーボシステム「1Sシリーズ」
オムロンのACサーボシステム 1Sシリーズ。高速制御周期125μs・高分解能23ビットエンコーダ・進化した制御ループにより、高速高精度追従制御を実現

同期型ACサーボモータの基本構造は、モータ軸にあたるロータと、その周りに配置されたステータから成ります。ロータには強力な永久磁石が埋め込まれています。またステータにはコアとなる鉄心に電線が巻かれており、電流を流すと電磁石になります。交流は電流の向きが交互に変わるので、電磁石のN極とS極が切り替わり、ステータの永久磁石を引き付けたり反発したりしながら回転させる仕組みです。

サーボモータに使われるエンコーダとフィードバック制御の仕組み

サーボモータは、コントローラの指示どおり正確に動くことが大きな特徴です。では具体的にどのように制御されているのでしょうか。制御のためには、モータ自体の情報を知る必要があります。そのために用いられるのが「エンコーダ」と呼ばれるセンサです。

エンコーダは、モータの回転(変位量)を測るセンサです。モータの場合はシャフトに取り付け、回転した分だけのデジタル信号(パルス)を出力します。たとえば1回転で3600パルスならば、0.1度の微小角度を1パルスとして検出できることになります。1パルスあたりの回転角度(≒検出できる最小の回転角度)を分解能と言い、分解能が20ビットほどの高性能な製品もあります。

サーボコントローラは、エンコーダが検出した回転量をパルス数によって検知し、指令値どおりにサーボモータが動いているかどうかを確認し、目標値との偏差を取って、ゼロに近づくように補正をかけます。これが「フィードバック制御」(クローズド制御)と呼ばれる制御方式で、この制御系を備えたモータがサーボモータです。

また、モータに指令値だけを与える「オープンループ制御」という方式もあります。サーボモータと同様に位置決めに使われるステッピングモータは、指令パルス数に比例したステップ角だけ回転する仕組みです。しかし、エンコーダを持たないため回転量をコントローラに戻すことはなく、指示だけで終わります。ただしステッピングモータでも、エンコーダを付加して制御系を構成すれば、サーボモータに近い動作となります。

サーボモータの特徴とは? 複数台の制御も可能で、複雑な自動化も実現

前述のとおりサーボモータはエンコーダを備え、フィードバック制御で速度/位置/トルクを制御できる点が大きな特徴です。たとえば位置制御ならば、ある点にピタリと停止。速度も毎分数千回転という高速域まで一気に加速したり、逆に減速したりすることも可能です。トルクについては、負荷が急に変化しても、常に一定の力が出せるように電流値をコントロールできます。最近は、サーボのゲイン(感度)や制振制御まで自動で設定してくれるサーボシステムもあります。

また産業用途に用いられるため、連続的な繰り返し動作や、頻繁な起動/停止を繰り返しても、容易には壊れない堅牢性を備えています。サーボモータ/サーボドライバの選定には、適切なワークロードで、繰り返しのサイクルタイムなどを考慮しながら、容量にあった製品を選ぶことがポイントです。オムロンでは、目的・仕様別に選定できる無償ツールを用意しています。こうしたツールを利用してみるとよいでしょう。 サーボモータ/サーボドライバ 目的・仕様別選定

1台のサーボコントローラで複数のサーボモータを制御することもできます。XYテーブルにサーボモータを取り付け、2軸を同時に制御して複雑な絵や文字を描くデモンストレーションを見たことがあるかもしれません。直交した2軸に対して同期制御を行い、合成軌跡が直線あるいは円弧を描くように補間しながら移動させます。また、カムのような複雑な動作も行えます。最近のコントローラはフィールドバス経由(EtherCAT、CC-Link IE、MECHATROLINK-IIなど)で、256軸のサーボモータを配下にして完全同期制御が可能です。

サーボモータの用途や活用事例

サーボモータは、いまや産業機械の構成要素として必要不可欠なものとなっています。自動車製造、工作機械、半導体・液晶製造、電子部品の実装、射出成形、ラベル包装、プレス加工、食品ピッキング、医療機器など、さまざまなシーンで活用されています。

たとえば、以前は材料のプレス加工といえば油圧でしたが、最近は加圧部の動きをNC制御とサーボモータを利用する「サーボプレス」という技術が登場しています。サーボモータで駆動部の速度や停止位置を制御することで複雑なプレス加工に対応し、NC制御と組み合わせることでマグネシウムなどの難加工材や複雑な形状のプレスにも対応できます。

 

金属の切削、穴開け、研磨など、さまざまな機械加工では、高速・高精度な動作が求められます。そこで、滑らかな回転と加速性能を発揮できるサーボモータが使われます。工作機械の送り軸に使われるほか、工具や治具の交換といった移動装置にも使われています。

工場での製造ラインでねじを締める際に、ねじやワークの種類によっては、速度やトルクなどを微妙に制御できるサーボモータが使われます。ねじ締めは簡単に思われますが、樹脂やアルミといった材料のねじ留めでは、ねじを寸止めし、優しくねじ込み、増し締めし、ねじ浮きを確認するなど、繊細な制御が求められます。

また部品同士の突当てや嵌合といった接触を伴う作業でも、サーボモータ各軸からフィードバックされる力(負荷)を制御に利用し、位置ずれを上手く吸収することができます。これは「コンプライアンス制御」と呼ばれるもので、押し当て力を調整し、過大な力の負荷から保護できます。

コンベアから流れてくる部品をピックアンドプレースする際にも、協調動作でサーボモータが利用されます。生産性を向上させるために、いかにタクトタイムを短縮するか、動作のタイミングも重要です。また完成品の箱詰めをして、出荷する際のパレタイジングでもサーボモータが活躍します。

このようにサーボモータは製造工程で多用されています。産業用機械、特にロボットの関節部に組み込まれ、自由度の高い多関節ロボットとして大活躍しています。

高度なサーボモータの活用で製造ラインの自動化が進められていますが、複雑な作業の自動化を実現するためには、サーボモータだけでなく、ロボットやセンサなどの周辺機器をシームレスに統合制御する必要があります。 統合制御により、作業精度やタクトタイムの短縮を実現できます。

オムロンは、普及著しい産業用ロボットはもちろん、安全柵なしで人との協働作業が可能な協働ロボット*や、走行ラインの敷設が不要で、人を避けながら安全にモノを運べる自律走行搬送ロボットと呼ばれるAMRのロボットを取り扱っています。

また、これらロボットに加え、制御機器や安全機器を幅広く取り揃えており、ライン全体の自動化をご支援します。

  • *オムロンは、「人と機械の新しい協調」を実現するロボットとして、協働ロボットの商品名称を「協調ロボット」としています