スカラロボットとは?用途や活用事例を紹介

産業用ロボットはこれまで、さまざまな目的・用途で導入・運用されてきました。近年は従来の大量生産から、顧客の多様なニーズに応える多品種少量生産への対応が求められ、製造の現場においても生産体制のフレキシビリティがより重視されるようになりました。

そのような中、技術革新も相まって産業用ロボットも進化を遂げ、生産ラインの柔軟な構築や変更を行うことができるようになりました。

これまで適用が難しかった食品・医薬品・化粧品の三品業界や中小企業の製造現場においても、ロボット本体の小型化や、安全性の向上による人との協働の実現、生産ラインの組み替えに伴う作業プログラミングやティーチングの容易さなどで環境が整い、産業用ロボットの導入・活用が進んでいます。

産業用ロボットの1種で、幅広い生産ラインで活用されているスカラロボット(水平多関節ロボット)について、その目的・用途や活用事例をご紹介します。

スカラロボットとは

小型で構造がシンプルなスカラロボット
小型で構造がシンプルなスカラロボット

スカラロボットは、水平方向にアームが動作する産業用ロボットです。英語の呼称「Selective Compliance Assembly Robot Arm」の頭文字を取って「SCARA(スカラ)ロボット」と呼ばれます。

軸数は3~4軸、水平方向の動作と上下方向の動作アームで構成され、先端部は可動範囲内で水平移動と上昇、下降を行います。4軸構成では先端部が回転することで、動作の自由度を高めています。3~4軸構成のコンパクトな構造のため、省スペースで設置でき、上下動作は剛性が高く、高速・高精度で動作することができます。また大きな力が必要な圧入などの組付け作業も得意です。

産業用ロボットには、スカラロボットのほかに、「垂直多関節ロボット」や「パラレルリンクロボット」があります。垂直多関節ロボットは搬送、加工、溶接、塗装、組立、検査など活用できる汎用性の高いロボットです。また「パラレルロボット」は、並列につないだ3本のアームの先端1点の動きを制御するパラレルリンクシステムを使った産業用ロボットで、高速・高精度な動きが可能です。

これらの産業用ロボットと比べ、スカラロボットは構造がシンプルという特性を持ちます。そのことから本体が安価で運用コストも低く抑えられ、操作などが比較的簡単、といった点がメリットと言えます。また、技術向上により、さらなる小型化・高出力化も進んでいます。

一方で垂直多関節ロボットのような3次元的な動作は行えないため、自由度の高い作業が行えないという点がデメリットです。

スカラロボットの用途と活用例

スカラロボットは、先端部にハンドを取り付けることで「つかむ」「ねじを締める」などさまざまな動作に対応できます。ハンドを用いて生産工程を自動化する、代表的な工程をご紹介します。

ピックアンドプレース

製品をある場所から取り出し、所定の位置に置く一連の作業です。真空ポンプの吸着力で対象物を把時する吸着パッドや、挟んでつかむチャックハンドなどを取り付けることで、パーツの組み込みや容器・製品の整列工程に使われます。

センサやカメラ、パーツフィーダなどとの連携で、多種類の製品の選別・仕分け整理を自動化することもできます。

AnyFeeder(パーツフィーダ)2台とスカラロボットを組み合わせた多品目の同時整列

フィーダで送られてくる製品の種類をセンサやカメラで正確に識別、スカラロボットで高速にピックアップし、決められた位置でプレースします。人の手では発生しがちなミスを解消しながら、正確・スピーディな作業を実現しています。

ねじ締め

先端に電動ドライバを取り付けることで、ねじ締め工程を自動化します。プログラミングの制御で正確・高速にねじ締めを行うことができます。

圧入

所定の位置に部品などを押し込む作業です。スカラロボットのうち、製品に押し付ける先端部のトルクを制御できるタイプでは、荷重をコントロールしながら、一定の圧力で精度の高い圧入作業を実現できます。

材料塗布

製品の表面に接着剤やシール材などを塗る作業です。先端部にディスペンサと呼ばれる材料の吐出機を取り付け、塗布する位置や軌跡をプログラミングすることで、高速・正確な作業を行います。

箱詰め

加工部品の箱詰めを自動化し、梱包の時間短縮と人為ミスを削減(自動車部品メーカー事例)

加工された製品の梱包は人の手によって行われており、単調な作業で梱包数のミスなどが発生するリスクがありました。

そこで、これら作業をスカラロボットで自動化。センサとカメラで製品の向きや位置を確認し、スカラロボットで高速ピックアップして箱詰めし、作業の時間短縮とカウントミスなどのリスクを解消しました。

I-Webメンバーズ
導入事例:部品メーカ様『 自動車部品の無人箱詰めを実現』

スカラロボット活用のポイント

以上のようにさまざまな工程において、人の手では決して実現できない正確さとスピードで生産ラインの能力を数倍に引き上げられるのが、スカラロボットの強みです。工程の省人化のほか、人為ミスの削減、高速・正確な作業による生産性の向上など、スカラロボットでさまざまなメリットを得られます。

ただし工場や生産ラインの最適化には、ロボット以外のさまざまな機器との連携も不可欠です。製品を送るフィーダ、製品の種類を識別・向きや位置を把握する各種センサやカメラ、それらを制御するソフトウェアなど、さまざまな機器の統合制御によって、最適化が実現します。

こうした機器の連携を含めた、自動化のトータルソリューションを実現するのがオムロンの製品・サービスです。スカラロボットは可搬重量別、床置き、天吊りなど複数の設置タイプをラインアップしているほか、垂直多関節ロボット、スカラロボット、パラレルロボット、協働ロボット*、自律走行搬送ロボット(AMR)などのロボットも取り揃えています。また、さまざまな対象物に最適化したハンド、パーツフィーダ(AnyFeeder)、ソフトウェアコントローラも揃えています。

オムロンはロボットへの理解を深めるための体験会やセミナ、導入計画のサポート、導入後のメンテナンスや障害対応などのアフターフォローにも対応。豊富なノウハウや機器ラインアップで、工場全体や生産ラインの自動化ソリューションをご支援します。

  • *オムロンは、「人と機械の新しい協調」を実現するロボットとして、協働ロボットの商品名称を「協調ロボット」としています