ロボットSIerとは?SIerのタイプや必要性、選定のポイントを解説

自社が導入したいロボットを、自社の環境に合わせて導入するためには、ロボットSIerの協力が必要不可欠です。一方で、ロボットの導入を検討していても、ロボットSIerの役割や必要性について把握しきれていない方もいるのではないでしょうか。
ここでは、ロボットSIerの業務内容やなぜロボットSIerが必要なのかについて紹介し、ロボットSIerを選ぶ際に注意すべきポイントについて解説します。

ロボットSIerとは

製造業では、労働力人口の減少による人手不足の解消や、グローバルな競争力をつけるための生産性向上と、検査の自動化などによる品質向上を目的として、ロボットの導入が進められています。しかし、ロボットは導入するだけでは、その効果を十分に発揮できません。ロボットを最大限活かすためには、最適なロボットシステムを構築することが重要です。

ロボットシステムは、ロボット本体、ロボットハンド(エンドエフェクタ)、制御機器、ソフトウェア、入出力機器、安全システム、センサ、カメラなどの周辺機器で構成されます。さまざまな構成要素を持つロボットシステムを構築する際に、システム全体の導入提案、設計、組立、実際の立上まで、幅広い役割を担うのがロボットSIerです。

ロボットSIerとは

ロボットSIerの必要性

ロボットSIerはなぜ必要とされるのでしょうか。
製造工程にロボットを導入し、実際に稼働させるためには、自社の生産現場にあわせて動作するロボットシステムを構築する必要があります。

ロボットシステム構築には、ロボットの選定に加え、さまざまな知識や技術が必要です。具体的には、ロボットと制御機器を繋ぐ入出力の設定、狙いの動作を実現するプログラムの構築と制御機器への読み込み、用途に合ったエンドエフェクタ、センサなどの選定・導入、作業者の安全を確保するための安全システムの構築などが挙げられます。

ロボットのSIは他のFA機器と異なる専門性が求められるため、社内にてロボットSI人材育成をするには、時間が必要になります。また、ロボット導入にあわせてライン全体の見直しが必要になりますが、ロボットメーカは必ずしもロボット以外の領域に精通しているわけではありません。

そこで、ロボットシステムを導入する際には、ロボットSIerへのサポート依頼が必要となります。

ロボットSIerの種類

ロボットSIerは、主にロボットメーカ系と独立系の2つに大別され、それぞれに依頼するメリット・デメリットが存在します。

大規模なシステム開発が得意なロボットメーカ系SIer

ロボットメーカ系のSIerとは、大手電機メーカなどロボット取り扱い企業によるSIer事業です。自社開発したロボットを自社工場に導入する際の経験・ノウハウの活用や、SI事業者の買収により、ロボットSI事業に参入しています。

ロボットメーカ系のSIerは、ロボットシステムに加え、システムを導入する生産ライン全体の設計など、大規模なプロジェクトを得意としています。ロボットシステムのノウハウに加えて、最新のITに関するノウハウを保有しているため、多くの独立系SIerが苦手とする領域で事業を拡大しています。

一方で、独立系のロボットSIerに比べるとコストが高い傾向があります。生産ライン設計まで含めた依頼など、付加価値が高い場合には問題ありませんが、ロボットシステム単体を導入したい場合や十分な予算がない場合には、ロボットメーカ系のSIerはコストが合わない可能性があります。

得意分野に特化した独立系SIer

独立系のSIerは、大手電機メーカなどとの資本関係を持たないSIerです。多くの独立系SIerが中小企業であり、得意分野に特化しています。例えば、自動車、食品などの業界を得意とする場合や、溶接、加工、包装などの特定作業を得意とする場合が挙げられます。
ロボットメーカ系SIerのように、生産ライン全体の設計などを行う独立系SIerは限られています。対応領域を得意分野に絞っているため、ロボットメーカ系SIerに比べ小規模なロボットシステム導入への対応や、導入コストに合わせた提案をしてくれます。一方で、得意分野以外は対応してできない場合があるため、依頼先を選定する際には注意が必要です。

ロボットSIerを選ぶ際のポイント

ロボットSIerを選ぶ際のポイント

ロボットSIerは日本中に数多くあります。その中から、自社に合ったロボットSIerを選ぶ際に考慮すべき3つのポイントを解説します。

1.自社が導入検討している領域を得意としているか?実績はあるか?

自社の業種や自社で導入したいロボットを得意としているか、過去に扱ったことがあるかは重要なポイントです。特に、独立系SIerは得意分野に特化していることが多いため、事前に自社の要望に対応可能かを確認しておく必要があります。

特定業界や工程に知見のあるSIerに依頼するメリットとして、導入環境に対して注意すべきポイントや業界特有の課題を把握しており、導入・運用において発生しうる課題を未然に防ぐことができる点があります。

また、導入検討ロボットの過去実績を持つSIerであれば、当該ロボットと相性のいい機器や、導入時に考慮すべきポイントを把握しており、スムーズな導入を実現できるでしょう。

2.自社工場のある地域はサポート対象エリアか?

ロボットメーカ系SIerは大手電機メーカなど規模が大きいため、全国各地に拠点があり、どの地域でも対応可能です。一方で、独立系SIerは地域に特化した企業が多いため、自社工場のある地域がサポート範囲かどうかは確認しておく必要があります。

まずは、自社工場と同一県内にあるロボットSIerなど、比較的近い範囲で得意分野に合致する企業を探すことをおすすめします。

3.予算とコストのバランスはとれているか?

ロボットシステム導入にかけられる予算と、ロボットSIerに依頼する際のコストの関係も重視すべきポイントです。

ロボットSIerはロボットシステムの構築に必要なロボットや制御機器などを、商社やメーカから仕入れます。同一のロボットであったとしても、ロボットSIerごとに仕入れ金額は異なる可能性があります。

導入するロボットシステムのスペックと予算のバランスを考慮する必要があります。

ロボットメーカにSIerの選定を依頼できないか?

ロボットSIerを選定する際のポイントを3つ紹介しました。特に初めてロボットを導入する際は、ロボットSIerを交えてどのように検討を進めていけばよいかわからない場合もあると思います。

ロボットの導入であればロボットメーカからSIerの紹介があるのではないかと思われるかもしれませんが、ロボットメーカの多くはSIerの紹介を行っていません。一方で、自社でロボットSIer事業を行っていなくても、自社のロボットを扱うSIerと連携しているメーカがあります。そのような企業のロボットを導入する際には、SIerと連携して、自動化を実現するロボットシステム全体について総合的に相談ができます。

オムロンは、自社ロボットを扱うロボットSIerと連携しているため、ロボット単体だけでなく制御機器や周辺機器、安全システムまでを含めた総合的な自動化をご支援します。