梱包・箱詰め作業をロボットで自動化!
メリットや選び方/導入事例を解説

梱包・箱詰め作業は出荷前の最終工程であり、ミスが許されません。しかし、単純作業を繰り返し行うことや、作業環境が必ずしも整備されてはいないことから、集中力を保つのが難しい業務です。人為的なミスが発生しやすいこれらの作業は、ロボットの導入による自動化が進んでいます。 ここでは、梱包・箱詰め作業における代表的な課題と、ロボット導入により自動化することのメリットについて解説します。また、導入するロボットの選び方や具体的な導入事例も紹介いたします。

そもそもパレタイジングとは?

パレタイジングとは、木製や金属製、プラスチック製などの定型の枠(パレット)の上に、資材・部品や製品が入った段ボール箱や缶などを、荷崩れしないように積んだり、降ろしたりする作業のことを指します。単にパレタイズと呼ばれることもあります。また、荷降ろしをデパレタイジングと呼んで区別する場合もあります。

資材・部品や製品を運ぶ物流は、一般に、企業間をまたいで行われます。その際、パレットに載せたまま、発地から着地まで輸送できれば効率が高まります。逆に、個々の企業で使うパレットのサイズを統一しておかないと、経由地の倉庫や物流センターなどでパレット間での移し替えが発生し、管理や搬送が困難になり非効率です。このため、パレットは、フォークリフトで持ち上げて搬送しやすい形とサイズに標準化されています。日本では、JISが規格化したサイズが1100×1100×144mmの「T11型パレット」がよく使われています。ただし、搬送するモノの形状や特徴に合わせて、業界ごとに固有のサイズのものが使われることも多く、日本国内では約100種類のパレットが使われているようです。

パレタイジングでは、1枚のパレットに、いかに多くのモノを荷崩れすることなく積み上げるかが重要になります。パレット上に積む荷物には、家電製品のようにダンボール箱に入ったものもあれば、油や醤油のように缶に入った液体製品などもあります。荷物の形状は多様です。パレット上になるべくデッドスペースを生まないように、より多くのモノを積載できれば、効率的に搬送できるようになります。

また、運ぶモノによって、「ブロック積み」や「交互列積み」、「ピンホール積み」など荷積みの方法も使い分けられています。パレタイジングは、単にモノを積み上げているだけの作業に思えますが、モノの形や内容、重さに合わせて、搬送時に荷崩れしないように積み上げるのに高度なスキルが求められます。このため、パレタイジングの作業を熟練者が人手で行っているところが多くあります。

ただし今では、人手によるパレタイジングは、重労働で単調、それでいて人手を割く作業としては付加価値が低いとみなされています。特に、重たいモノをパレタイジングする際には、腰を痛めたり、反復運動過多損傷(RSI)など疲労障害を起こす可能性があり、労災を防ぐ何らかの対策が必要です。さらに近年では、少子高齢化による人手不足の顕在化に加え働き方改革による労働環境の改善が求められており、持続的な工場運営を実現するためには、パレタイズによる作業負荷から人を解放する手段の導入が必要不可欠になっています。

ロボットを使ってパレタイジングを自動化するメリット

重たい荷物を積み下ろしする現場の中には、パレタイジングに、電動クレーンや手動で動かすハンドクレーン、パワースーツなど重たいモノの持ち上げを補助するアシスト機器を利用するところもあります。ただし、あくまでも人をアシストする機器であることには変わりなく、負荷軽減はできても、パレタイジングから人を解放することはできません。

これが近年、技術の進歩によって、ロボットによりパレタイジングを完全自動化できるようになりました。ロボットを活用すれば、安全性と生産性の両立が実現します。

ロボットを用いてパレタイジングを自動化する際には、積み上げる高さの微妙な設定など、これまで熟練者の属人的スキルで補っていた微調整を行う機能が必要になります。最新のロボットでは、パレタイジング専用の設定ソフトウェアにより積み上げ方を簡単に指定できます。さらに、積荷を持ち上げるアームに搭載したカメラで荷物を置く位置や荷姿を確認しながら、荷崩れしないように適切な場所に正確に積み上げることもできます。

加えて、工場内の搬送を自動化する搬送ロボットや資材や製品を運ぶコンベアなど周辺設備の動作制御を連携させることで、倉庫内に過度の在庫を貯めることなく、工場内の搬送と工場外への搬送を連携させながら円滑な移送ができます。

週に1度や、月に一度、資材の搬入や製品の搬出が発生する小規模な現場では、ヒューマンアシスト機器を利用するメリットがあるかもしれません。しかし、常時、パレタイジングの作業が発生する現場では、ロボットによる自動化の方がより多くのメリットがあります。

利用シーンに合った、費用対効果の高いロボットであること

費用対効果を高める上で、ロボット自体の価格も重要ですが、1台のロボットの稼働率が高く、パレタイジングの作業のスループットが高いことの方がより重要です。また、ロボット単体の性能だけでなく、パレタイジングの作業全体の生産性を高めるためには、パレタイジング用ロボットと搬送用コンベアの連携制御が可能な製品を選択することが望ましいでしょう。

設置、運用スペースを最小化できること

パレタイジングを自動化するロボットを設置するには、相応のスペースが必要になりますが、より狭いスペースに設置できるに越したことはありません。また、ロボットアームのリーチも重要なチェック項目です。積荷が積み上がっていくと、パレットの隅々までアームが届きにくくなります。届かない場合には、最悪、ロボットを複数台導入する必要があり、導入コストを押し上げます。さらに想定している高さまで積み上げる際に、隅々まで届く製品を選択する必要もあります。

可搬重量が利用シーンに合っていること

荷物を持ち上げたロボットアームは、長い棒の先端に重たいモノを付けた不安定な状態になります。持ち上げる荷物の重量をあらかじめ想定し、余裕を持って持ち上げ、作業できる仕様のロボットを選ぶ必要があります。

人や他の機械と共存できるロボットであること

産業用ロボットは、人の巻き込み事故を防止するたため、人が働く場所と産業用ロボットを動かす場所を隔離する必要があります。ただし、人の接近や接触があっても安全性を確保できる機能を備えた協働ロボットならば、同じ場所で人とロボットが協働作業をすることができます。このため、産業用ロボットよりも生産性が高く、より多くのシーンで活用できるようになります。

パレタイズに協働ロボットを導入するメリット

ロボットによってパレタイジングを自動化する際、一般的な産業用ロボットでは、倉庫のレイアウトを変更しなければならない課題がありました。動く産業用ロボットに人が接触しないように、安全距離を確保し、周囲を安全柵で囲う必要があるからです。十分なスペースがない倉庫では、産業用ロボットの導入自体ができず、作業の効率化や労働環境の改善ができませんでした。

協働ロボットならば、人との共存が可能なため、レイアウト変更なしでパレタイジングの自動化が可能になり、課題を解決できます。人手による積み上げ作業を想定して用意していたスペースがあれば、導入・活用が可能です。さらに、人が接近した際に安全な速度で稼働する機能や、接触した際に迅速停止する機能のある協働ロボットを使用することで、高効率な作業と安全性の両立を図ることができます。

さまざまな利用シーンで活用できる協働ロボットですが、多段積みする場合には、上層に荷物を積む際に隅々までリーチが届かない場合があるという課題がありました。これでは、自動化できるパレタイジングの条件が限定され、より重労働な上層への積み上げを人手で行う必要があるという本末転倒な状況になってしまいます。

協働ロボットの台座に、昇降機構を付加することで、こうした課題を解決することができます。同時に、旋回機構も盛り込めば、1台の協働ロボットで、左右に置かれた2枚のパレットの隅々まで荷積み可能になります。

パレタイジング用協働ロボット導入事例

協働ロボット導入でパレタイジング作業に必要な床面積を30%削減

オムロンでは、自社工場の倉庫で行うパレタイジングに、協働ロボットを導入しています。協働ロボットとセーフティ・レーザスキャナを併用することで、人の接近を検知して安全な速度での稼働に自動的に移行する機能を実現し、確実な安全確保と省スペース化を両立。場所・人を選ばないパレタイジングの自動化を実現しました。人と安全に共存できる協働ロボットを活用することで、安全柵を不要にし、パレタイジングの作業に必要な床面積を30%削減しました。

また、協働ロボットによって自動化した荷積み作業を、コンベアによる積荷の搬送や荷積みを終えたパレットのモバイルロボット(AMR)による搬送の制御と連携させることで、無駄のないパレタイジングを実現しています。荷積みを自動化・効率化するだけでなく、パレタイジングの作業全体の効率化も実現しています。

パレタイジング用協働ロボットの導入の流れ

パレタイジングの自動化に向けた協働ロボットの導入は、以下のような流れで進めます。

まずは、検討段階です。協働ロボットの機能・特長を調べます。カタログなどの資料を読んで概要をつかみ、さらにロボットベンダーが開催する体験会やセミナーに参加することで、協働ロボットの導入効果に対する理解を深めることも、導入に向けた流れを知る上で有効です。

次は、導入段階です。導入イメージを固めたら、具体的な導入計画をまとめます。そして、SIerが導入する現場の状況をヒアリングし、具体的な設計とシステム構築を行います。ロボットの運用には安全教育が欠かせません。そして、SIerの支援を受けながら現場に導入、動作を確認します。

より大きな効果を得るためには、導入を終え、運用が始まった後にも、活用法を逐次ブラッシュアップしていくことを欠かすことはできません。運用段階において、わからないこと、運用上の疑問が浮かんだ際には、ロボットベンダーのサポートにすぐに問い合わせて解決してください。また、小さなトラブルが大規模障害につながる前に対処することも重要です。定期的なメンテナンス契約を結ぶことで、安定・安心・安全な稼働が実現します。

こうした導入プロセスの詳しい流れは、「協調ロボット導入までの7つのステップと運用における3つのポイント」資料をご参照ください。
https://www.fa.omron.co.jp/product/robotics/download/01/

オムロンでは、パレタイズに活用できる協調ロボット(※注)や搬送ロボットに加え、安全機器などの周辺機器も取り揃え、お客様の自動化支援を行っています。

  • (※注)協調ロボットは、オムロン株式会社の商品名称です。「人と機械の新しい協調」を実現するロボットとして商品名称を「協調ロボット」としております。