梱包・箱詰め作業をロボットで自動化!メリットや選び方/導入事例を解説

梱包・箱詰め作業は出荷前の最終工程であり、ミスが許されません。しかし、単純作業を繰り返し行うことや、作業環境が必ずしも整備されてはいないことから、集中力を保つのが難しい業務です。人為的なミスが発生しやすいこれらの作業は、ロボットの導入による自動化が進んでいます。

ここでは、梱包・箱詰め作業における代表的な課題と、ロボット導入により自動化することのメリットについて解説します。また、導入するロボットの選び方や具体的な導入事例も紹介いたします。

梱包・箱詰め作業の課題とは?

単純作業を繰り返し行う梱包・箱詰めの工程

冒頭で述べたように、梱包・箱詰めは単純作業を繰り返し行うことが多く、集中力の維持が難しいため、人為的なミスが発生しやすい作業です。また、梱包・箱詰めは出荷前の最後の工程であり、梱包内部の確認ができないため、出荷前にミスに気付くことができません。ここでは、梱包・箱詰め作業で発生しやすいミスを5つ紹介します。

1. 箱詰め商品の抜け漏れ・数量間違い

異なる種類の商品を1つの箱に詰め合わせたり、複数の同一商品を1つの箱に詰めたりする場合に、商品の抜け漏れや数量間違いが発生しやすくなります。商品の欠品や数量間違いは、クレームや問い合わせに繋がり、対応する手間や時間がかかるほか、不足分の再送など不要な作業が発生してしまいます。

2. 向きや位置の間違い

汎用的な箱や段ボールなどに商品を箱詰め・梱包する場合には、向きや位置の間違いが発生しかねません。箱詰めの向きや位置の間違いは、商品に大きな影響を与えない場合がほとんどです。
しかし、商品が届いた際に間違いがあると、適切な管理や検査が行われていない印象を与え、信頼を損なう懸念があります。

3. 梱包時のキズや汚れ

丁寧に梱包作業を行っているつもりでも、忙しく時間に追われている状況では、気付かないうちに梱包する商品や梱包した外箱にキズや汚れがついてしまう可能性があります。

4. 髪の毛などの異物の混入

人が作業を行うと、作業中に髪の毛などが梱包箱内に混入することがあります。異物混入を防ぐには、作業着やヘアーキャップの着用、定期的な交換・清掃を実施します。品質維持のためにはこれらの対応が必要ですが、作業効率の面では省きたい部分でもあります。

5. 生産性の変動

長時間の作業は身体的な疲労の蓄積と共に、作業効率や品質も低下します。特に迅速で大量の作業が必要な梱包・箱詰め作業では定期的な休憩が必要となります。

ロボットによる自動化で課題解決が可能

これらの課題は、梱包・箱詰め作業が単純な反復作業で集中力を保ちにくいこと、さらに出荷数によっては忙しく余裕がない状況で作業をせざるを得ないことから生じます。梱包・箱詰め作業にロボットを導入し自動化することで、人為的なミスを削減し、こうした課題を解決することが可能です。
近年は、商品や箱を検知してより精度の高い箱詰めを実現するビジョンセンサや、複数の商品を同時に扱うことができるロボットなどの技術開発が進んでおり、梱包・箱詰め作業の課題解決に期待が高まっています。

梱包・箱詰め工程をロボットで自動化するメリット

梱包・箱詰めの工程に、ロボットを導入し自動化することで得られるメリットを紹介します。

作業品質の向上

ロボットに搭載したビジョンセンサで箱詰めする商品の数や位置を監視することで、作業時に発生する数量や位置の間違いなどのミスを排除できます。導入ロボットのハンドに吸着式などを用いることで、人同様の繊細な動きが可能となり、商品のキズや汚れを防ぐことが可能です。

省人化・生産性の向上

従来は人が行っていた作業をロボットに任せることで、作業者は他の工程や人にしかできない作業に専念できるため、省人化を実現できます。また、ロボットは人より長時間安定した作業を行うことが可能であり、生産性の向上にも繋がります。

梱包を自動化するロボット選びのポイント

梱包・箱詰め作業の自動化に導入するロボットの種類は、任せたい作業内容や、時間当たりに取り扱う商品の数量によって異なります。
ロボットの設置スペースを最低限に抑えながら、高速で作業を行う場合にはスカラロボットが効果的です。スカラロボットは水平方向にアームを移動させるような箱詰め作業を得意としています。スカラロボットよりも箱詰め速度が必要とされる場合には、上部から吊り下げて用いるパラレルリンクロボットの活用が効果的です。
梱包作業をすべて自動化することが難しい場合、作業者とロボットが協力して作業できる協働ロボットが最適です。ただし、スカラロボットやパラレルリンクロボットに比べると動作が遅くなるため、時間当たりに扱う数量が少ない場合のみ採用できます。

このように、行う作業によって導入すべきロボットの種類が異なります。また、商品を掴むロボットハンド(エンドエフェクタ)の種類も様々あり、商品に適したものを選択することがポイントとなります。梱包・箱詰め作業では、商品を複数本の爪でつかむタイプや空気圧などで吸着するタイプが多く採用されています。特に、傷つきやすい商品を扱う場合には、複数本の爪で抱えるように扱うハンドや、吸着痕ができにくい素材を使用した吸着タイプのハンド採用することで、キズや汚れを抑えられます。

箱詰め、梱包した製品を出荷エリアへ搬送する工程も、自律走行搬送ロボットであるAMRにより自動化できます。AMRはカメラやセンサで周辺を認識して自律走行するため、人と同じエリアで搬送を任せることが可能です。AGV(無人搬送車)と異なり、搬送ルート認識用の磁気テープを貼る必要がなく、搬送ポイントやレイアウト変更に応じて柔軟に変更できます。

ロボットによる梱包・箱詰め作業自動化の例

梱包や箱詰め作業における課題を、ロボットの導入による自動化で解決した事例を紹介します。

パラレルリンクロボットによる食品のパレット詰め自動化

こんにゃくのパレット詰め作業をロボットで自動化

株式会社古野食品様におけるこんにゃくのパレット詰め作業は、高温多湿の工場内で製造直後の熱い板こんにゃくを扱うこともあり、人手不足が課題でした。静電容量形センサでこんにゃくの位置を検出し、パラレルリンクロボットで板こんにゃくをピッキングしてコンベア上のパレットに詰めることで、作業を自動化しました。吸着タイプのロボットハンドを採用することで、包装を傷つけることなく2人から1人へ作業人員の省人化を実現しました。

I-Webメンバーズ
導入事例:株式会社古野食品様 板こんにゃく生産ライン『パラレルロボットでパレット詰めを自動化』

パラレルリンクロボットによる冷凍食品の整列工程自動化

冷凍ワッフルの整列工程をロボットで自動化

大手冷凍食品メーカ様では、包装工程の前に食品を整列させる工程が必要で、3人体制で生産を行っていました。しかし、作業は単調かつ冷たい作業環境ということもあり、今後の生産維持に向けては人材不足が課題となっていました。アメリカ合衆国農務省の衛生基準をクリアした2台のパラレルリンクロボットを活用し、整列ラインの自動化を実現することで、3人必要だった作業を1人で対応できるようになりました。

I-Webメンバーズ
導入事例:大手冷凍食品メーカ様 冷凍ワッフル生産ライン『パラレルロボットで包装前の食品整列工程を自動化』

スカラロボットによる自動車部品の無人箱詰め

自動車部品の箱詰め作業をロボットで自動化

自動車部品メーカ様では、複数の加工機に対して梱包人員が必要でした。夏場は暑く冬場は寒い環境で、単調な作業が多いことによる人材不足に加えて、過去には作業者の計測ミスによる納入不良が発生したことがあるため、自動化の検討が進められていました。
加工機から搬出されコンベア上に流れてくる部品の形状と向きをカラーカメラで認識し、吸着ハンドを搭載したスカラロボットで箱詰めを行います。高性能なカメラにより、高精度にワークをキャッチし高速なロボット動作を実現しました。

I-Webメンバーズ
導入事例:部品メーカ様『自動車部品の無人箱詰めを実現』

このように、梱包や箱詰め作業はロボットの活用で自動化が進められていますが、複雑な作業の自動化を実現するためには、ロボットだけでなく、カメラ、ロボットハンドなどの周辺機器をシームレスに統合制御する必要があります。ロボットと周辺機器を統合制御することで、複雑な工程がシームレスに繋がり、作業精度やタクトタイムの短縮を実現できます。
オムロンでは、梱包・箱詰め作業の自動化に必要なロボット本体に加え、さらなる品質や生産性の向上を実現するためのビジョンシステム、それらを制御する統合コントローラを取り揃えており、ライン全体の自動化をご支援します。