多品種少量生産を実現するために押さえるべきポイント

多様な顧客ニーズに対応した多品種少量生産は、生産効率やコスト面で大きな課題を抱えてきました。しかし協働ロボットを活用することで、これらの課題を解決しつつ、多品種少量生産を柔軟かつ効率的に行うことができます。ここでは多品種少量生産が求められる背景や課題、その解決のカギを握る協働ロボットの特長やロボットで実現できること、最新事例の紹介など、多品種少量生産について押さえるべきポイントを解説します。

多品種少量生産が求められる背景と課題

同一の工場で類似性の低い製品を多品種に少量ずつ生産する生産方式を一般的に多品種少量生産と呼びます。

これまでの製造現場では、単一の製品をたくさん作る大量生産方式が主流でした。大量生産であれば、製品の質を均一に保ちながら、生産数に応じて生産コストを下げることができます。

しかし近年は顧客ニーズが多様化し、商品のライフサイクルが早まっています。年齢や地域、個々の趣味嗜好などに応じて多彩なラインアップが求められるようになりました。大量生産はつねに在庫リスクを抱えることになりますが、多品種少量生産であれば在庫リスクを減らすことができ、売れた商品のみ少量ずつ増産して、売り逃しリスクを減らすこともできます。製造現場では多品種少量生産の必要性が高まるようになりました。

とはいえ多品種少量生産には、大量生産しないことゆえの課題があります。第1に少量生産ではそれだけ生産コストが上がります。第2に商品の仕様ごとにラインを変更する必要があり、生産効率も低下してしまいます

そこでこれらの課題を解決できる自動化手法として、協働ロボットに注目が集まっています。

多品種少量生産に期待の高まるロボット

なぜ協働ロボットは多品種少量生産に適しているのでしょうか。ここからは協働ロボットの特徴や多品種少量生産に適している理由、その適用対象について解説します。

従来型のロボットと協働ロボットの違い

従来型の産業用ロボットは大量生産向けであり、単一の商品を低コストで大量に生み出してきました。一方で従来型の産業ロボットは安全柵の設置が必要なため、主な稼働場所は工場の大型ラインで、人と分離した状況で固定的に使用されてきました。しかし協働ロボットは安全柵がなくても利用可能で、人と同じ空間で作業を行うことができます。

人と共に作業する協働ロボット
人と共に作業する協働ロボット

協働ロボットが多品種少量生産に向いている理由

協働ロボットは従来型ロボットよりも汎用性が高く、1台のロボットで多工程に対応することができます。多工程に適している理由として、大きく2つの特徴を挙げることができます。

<1.移動や作業環境の柔軟さ>
協働ロボットは安全柵が不要なため、ロボットを容易に移動できます。工程間の移設が可能となり、狭いスペースや人が介在する生産ラインなど様々な環境でロボットが活用できるようになりました。

<2.ティーチングの容易さ>
協働ロボットはティーチングが容易です。高度なプログラミング知識がなくてもロボットの動作や処理ロジックを簡単に記述できる設定ツールが搭載されていたり、ロボットに直接触って動作を設定するダイレクトティーチングが可能であったりと、作業効率を高めるための技術が進化し続けています。

この2つの特徴によって、製品の仕様ごとに生じるライン変更に柔軟に対応することができ、ラインを変更するための工数やコストを削減できるようになりました。

かつて協働ロボットをいち早く導入したのは自動車や電子デバイスなどの少品種大量生産の現場でしたが、協働ロボットの適用対象が広がり、今後は多品種少量生産が主流で自動化が進んでいなかった三品業界と呼ばれる食品・医薬品・化粧品業界への協働ロボットの導入拡大が見込まれています。

搬送も多工程に対応

さらに近年はAMR(自律走行搬送ロボット)の導入によって、作業工程だけでなく搬送工程のラインも容易に変更できるようになりました。従来のAGV(無人搬送車)は決まったルートを走行することしかできませんでしたが、AMRはラインの敷設が不要で、行き先や経路を柔軟に変更しながら自律走行することができます。障害物や人を避けながら、安全で効率的なルートで目的地へと自動搬送するので、製造内容の変動にも柔軟に対応することができます。

このように協働ロボットや搬送ロボットの活用によって人手不足を解消し、多品種少量生産であっても生産効率や生産コストの課題を改善することができます。

自動搬送するモバイルロボット
自動搬送するモバイルロボット

ロボットによる多品種少量生産の対応事例

ここからは、ロボットを活用して多品種少量生産を行っている事例をご紹介します 。

多品種少量生産の現場で生産性の向上と投資回収期間の短縮を実現

オムロン上海有限公司では、2万2000点にもおよぶ多品種少量生産を実現するために、コンポーネント組立現場で協調ロボット*TMシリーズを導入しています。
TMシリーズは「TMランドマーク」という座標でワークの位置を把握し、配置換え後も簡単に再起動することができます。段取り替えごとの再ティーチングも不要なため、頻繁に作業工程が変わる組立現場で稼働率を下げずに生産できるようになりました。ロボットへの投資も短期間で回収し、作業者の負担も減りました。

導入事例:オムロン上海有限公司『多品種少量生産の現場で生産性の向上と投資回収期間の短縮を実現」
  • *オムロンは、「人と機械の新しい協調」を実現するロボットとして、協働ロボットの商品名称を「協調ロボット」としています

搬送作業の自動化で多品種少量生産の効率的なラインを実現

多品種少量生産を行うにあたって製造現場で課題になるのが、頻繁に発生するライン変更です。AMR(自律走行搬送ロボット)であれば、ロボット自らが人や物にぶつからずに最も効率的なルートを自動で選択しながら、指定されたゴールに向かって走行することができます。

ソリューション解決提案:『搬送作業の自動化で、作り方が異なる複数品種の生産ラインを実現」

オムロンのAMRは、最大100台の現在位置、稼働状況、空き状況を常に管理・把握しつつ、それぞれのロボットを最適な搬送ルートで走行させることもできます。セル生産やコンベアライン間において無駄な搬送動作や工程間の停滞を削減し、設備投資を極力抑えつつ、多品種少量生産の効率的なラインが実現できます

デモ動画:100台までのモバイルロボットを管理可能 Enterprise Manager