エンドエフェクタとは?基本を解説。
ロボットと連携し自動化効果を高めるポイントも
製造業では、労働力人口の減少などにより、従来は作業者が行っていた業務の自動化が進められています。作業を自動化する際に重要になるのが、人間の手の代わりとなるエンドエフェクタです。現在、さまざまな作業に対応可能なエンドエフェクタが開発されています。
ここでは、エンドエフェクタの概要について解説し、どのような種類のエンドエフェクタが開発されているのかを紹介します。
エンドエフェクタとは?

エンドエフェクタは、ロボットアームの先端に取り付けられ、掴む、加工する、ネジを締める、塗装する、などの動作を行う機器です。ロボットハンドともよばれます。
生産工程で必要な作業を自動化するためには、人手で行っているさまざまな作業をロボットに任せる必要があります。そこで、ロボットアームに、作業者の手の動きを模擬できるエンドエフェクタを搭載することで、作業の自動化を実現できます。
エンドエフェクタが使用されるのは製造業だけではありません。物流分野、医療分野でもロボットアームと共に導入が進められています。用途に合ったエンドエフェクタを選定することで、作業を自動化でき、人の負担を軽減することが可能です。
エンドエフェクタの種類

エンドエフェクタには、さまざまな種類があります。
製品の扱い方による違い
製品を掴むエンドエフェクタは、対象物の取り扱い方の違いにより把持方式・吸着方式に分類されます。また、その中でも動力の違いで細分化されています。
把持方式
把持方式は、製品を把持する数本の爪と爪を開閉するための指がついているエンドエフェクタです。扱う製品の形状や材質に合わせて爪の本数や材質を変更することで、さまざまな製品を把持することが可能です。
一般に2本の爪の間にワークを挟む構造のタイプが主流ですが、円柱形のワークを把持しやすい3本爪のタイプもあります。
指を開閉する際の動力はモータで行う電動方式、エアーで行うエアー方式に分類されます。把持方式の動作は次項で説明する吸着方式と比べて遅くなります。
電動方式は、把持位置の繰り返し精度が高く、対象物の材質に応じた把持が可能です。エアー方式は、小型・軽量でありながら高い把持力を実現できるため、ロボットのサイズダウンや省スペース化に繋がります。
吸着方式
吸着方式は、把持方式と並んで代表的な方式で、真空圧やマグネットによる吸着力で製品を把持します。吸着方式は把持方式に比べて、軽量から重量のある製品まで対応できます。また爪を動かす時間が必要ないため、高速で動作可能です。一方で、吸着する面は平面である必要があるなど、扱える対象物の形状に制約があります。
吸着の方式には主に真空(バキューム)方式とマグネット方式があります。
真空方式は、真空圧を使用するため平坦で穴のない製品が対象です。他の方式に比べ高速での動作が可能で、吸着部を増やすことで高い把持力を実現します。一方で、繰り返し把持の精度は低く、吸着する対象物の特性次第では、吸着痕が残ってしまう場合があります。
マグネット方式は、磁力を使用するため鉄など金属製の対象物に限定されます。磁性体であれば、形状は問わず吸着可能です。磁力方式の把持精度や動作速度は、磁力や対象物、環境などにより異なります。
専用ハンドと汎用ハンドの違い
エンドエフェクタは専用ハンドと汎用ハンドという違いもあります。特定の対象物しか把持できないもの、特定の作業だけに対応しているものを「専用ハンド」、色々な対象物に対応するものを「汎用ハンド」といいます。
専用ハンドは、対象物に合わせて設計されるため着率(対象物をつかめる確率)を高めることが可能です。一方で、設計のコストや、対象物が変更される場合に交換の手間が発生する点がデメリットとなります。
専用ハンドに分類されるのは、生産工程で必要な製品の研磨、把持、ネジ締め、溶接、塗装など、特定の工程に特化した機能を持つエンドエフェクタです。そのほかに、電動ドライバ、はんだごて、切削・加工・研磨用ツール、塗布・充填ツールなども含まれます。
汎用ハンドは、さまざまな対象物の把持、把持と加工など複数の機能を行うことが可能なエンドエフェクタです。専用設計が不要なためコストを抑えることが可能であり、対象物が変わっても交換の手間が必要ない点はメリットです。一方で、専用ハンドに比べると着率など作業精度が劣る点はデメリットです。

エンドエフェクタの機能を最大化するために考慮すべきポイント

導入するエンドエフェクタの機能を最大限活かし、効果を発揮させるためには、扱う対象物や機能に合わせた選定が必要です。また、エンドエフェクタだけでなく周辺機器を含めた統合制御まで含めて検討することが重要です。
対象物や作業に合ったエンドエフェクタの選定
エンドエフェクタを選ぶ際の観点として、対象物の材質や形状、硬度、重量、作業時間が挙げられます。
例えば、対象物に穴が開いている場合、真空を作ることができないため吸着方式を採用することができません。また、マグネット方式は材料が磁性を持つ場合のみ採用できます。把持方式の場合には、対象物の大きさや重量によって、爪の本数や材質を調整する必要があります。
対象物の重量も重要なポイントです。把持方式の場合には、挟み込む力が弱いと対象物を持ち上げられず、一方で強すぎると対象物を傷つけてしまう可能性があります。吸着方式の場合には、吸着箇所を増やすことで重い対象物に対応できますが、吸着時間が長くなる点がデメリットです。
このように、エンドエフェクタを選ぶ際にはその対象物の材質と、自動化する作業工程・タクトタイムといった視点から総合的に検討を進める必要があります。
エンドエフェクタだけでなく周辺機器を含めた統合制御
適切なエンドエフェクタを組み合わせたロボットの活用により、人作業の自動化は進む一方、複雑な作業の自動化を実現するためには、エンドエフェクタだけでなく、取り付けられるロボット本体やカメラ、力覚センサなどの周辺機器をシームレスに統合制御する必要があります。
ロボットと周辺機器を統合制御することで、複雑な工程がシームレスに繋がり、作業精度やタクトタイムの短縮を実現できます。
オムロンではロボットハンド(Plug&Play)として、汎用的に使用可能な電動グリッパーや吸着グリッパーに加えて、ねじ締めなどさまざまな工程に対応するエンドエフェクタを取り扱っています。また、協働ロボットや産業用ロボットに加え、周辺機器や安全機器などのさまざまな制御機器を取り揃えており、ライン全体の自動化をご支援します。