バリ取りの自動化は可能?ロボットでバリ取りを行うメリットと課題
加工した対象物のバリ取りは、製造工程の中でも作業者負荷が高い業務の一つです。金属や樹脂などを加工した際に生じるバリは、製品の品質や安全性に影響するため、バリ取り工程で取り除くことが必要です。バリ取りは作業者負荷が高く、自動化のメリットが大きいため、さまざまな方法が検討されています。
ここでは、バリ取りについての基本知識に加え、自動化方法やロボットで行う際のメリットと課題も合わせて解説します。バリ取り作業の自動化に悩んでいる方はぜひご確認ください。
バリ取りとは

金属などの材料を加工する際に発生してしまう意図しない突起、残留物がバリです。バリが発生する加工法の例としては、切削加工や鋳造が挙げられます。切削加工の場合には、金属や樹脂材料の塑性によりバリが発生し、鋳造の場合には、型のすき間に流れ込んだ金属がバリになります。
JIS B 0051(2004年)によると、バリとは「かどのエッジにおける,幾何学的な形状の外側の残留物で,機械加工又は成形工程における部品上の残留物」と定義されています。発生したバリを除去する作業をバリ取りといいます。
バリが残っていることによるデメリット

製品や部品にバリが残っていることでさまざまな不具合が生じます。バリがあることによる具体的なデメリットについて解説します。
製品や部品を扱う人のけがに繋がる
バリは鋭利な形状をしており、製品の組み立て時に、部品に残ったバリに触ってしまうと、指を切るなど、けがに繋がる場合があります。また、バリが残った状態で製品が流通した場合、製品使用者もけがをする危険があります。
製品品質・生産性の低下
バリが残る部品を使用して製品を製造した場合、バリにより完成品の寸法が基準値に収まらず、不良品になってしまうことがあります。また、部品を組み立てる際にバリの部分が邪魔になり、そもそも組み立てられないという場合もあります。バリが過度に残った部品は使用できず、歩留まりが低下し、生産性の低下やコストの増加につながります。
故障などの製品不具合を誘発
残っていたバリが組み立て時に製品の内部に残ってしまうことで不具合を誘発する可能性があります。例えば電化製品の場合には、電子基板にバリが触れ、ショートする原因となります。また、バリによる傷は、製品の摩耗や劣化の要因となり、不具合が発生しやすくなります。
人手によるバリ取り作業の課題
このように、バリは製品不具合や製品を扱う人のけがに繋がることから、取り除く作業が必須になります。バリ取り作業は微細な凹凸を削り取る繊細さが必要とされるため、従来作業者が目視で確認し、手作業で行われていました。
具体的には、やすり、刃物、ブラシ、研磨シート、研磨ディスクなど材料を削れるもので、バリの部分を削り取っていきます。手作業でのバリ取りは、目視で確認しながら確実に除去するため高精度である一方、時間がかかり、力を入れ続ける作業者への負担が大きい点がデメリットです。また作業者の熟練度や疲労により、品質にばらつきが発生する可能性があります。
バリ取り作業の自動化
近年では、バリ取りの作業を自動化する取り組みが行われています。
工作機や専用機を用いたバリ取りの自動化
作業者への負荷が高いバリ取り作業は、工作機械やバリ取りの専用機を用いて自動化が進められています。導入される専用機の種類としては、バレル研磨やショットブラストが一般的です。また、これら以外にもバリの部分だけを燃焼、除去する熱的加工法や薬品によってバリを溶融させる化学加工法もあります。
バリ取りの専用機を導入することで作業者の負担を軽減できますが、専用機の設置にはスペースが必要になるため、作業者がバリ取り作業を行っていたスペースに設備を導入できない場合には、工程のレイアウト変更が必要になります。
ロボットを用いたバリ取りの自動化
ロボットの中でも、人の腕の動きに近い動作が可能な垂直多関節ロボットや、人間と協力して作業できる協働ロボットは、バリ取りに適したエンドエフェクタ(ロボットハンド)を設置することでバリ取りが可能です。
ロボットは、エンドエフェクタと制御プログラムなどを変えることで他の用途にも活用できます。また、協働ロボットであれば、産業用ロボットと異なり安全柵が不要でスペースをとらないため、作業スペースが狭い場合にも、専用エリアを設けずに導入可能です。
このように、負荷の高いバリ取り作業は、専用機やロボットの導入により自動化が進められています。
ロボットでバリ取りを行うメリット
ロボットでバリ取りを行うことは、以下のようなメリットが挙げられます。
・作業者の負荷軽減・人材不足の解消
作業者が手作業で行うバリ取りは負担が大きく、熟練工の高齢化など人材も不足しています。ロボットを導入することで、作業者の負荷軽減と人材不足解消に繋がります。
・生産性、作業効率の向上
人手によるバリ取りは時間のかかる作業ですが、ロボットは高速でバリを削り取れることから、生産性が向上します。また、負荷の高い作業を行う作業者には定期的な休憩が必要ですが、ロボットであれば休憩時間も不要なため、作業効率の向上に繋がります。
・品質の向上、安定
バリ取りを作業者が行う場合、バリが取れたかどうかは作業者の目視確認で判断されることが多く、人によるばらつきがありました。バリは目視で確認しにくい場合も多く、十分に除去できていない状態でバリが残ったままの製品が流出してしまうリスクがあります。また作業者の作業習熟度、疲労により作業ばらつきが発生します。
ロボットは、付属のカメラで対象物を画像認識し、基準に照らしてバリを検出するため、見落としを防ぐことができます。また除去作業の精度も一定に保つことができ、製品品質の向上、安定に繋がります。さらに、検査時の画像データを保存することにより、トレーサビリティも向上できます。
ロボットでバリ取りを行う際の課題
ロボットでバリ取りを行うことは大きなメリットがありますが、一方で課題もあります。
・ロボットは使用にあたりティーチングが必要
ロボットを活用するには、動作を教え込むティーチングが必要です。ティーチングは誰でもできるわけではなく、労働安全衛生法にて指定された特別教育を受講した担当者のみが実施できます。また、作業精度を高めるためには動作プログラムを微調整する必要があり、時間や工数がかかります。
・ロボットを導入するための費用が必要
バリ取りロボットをライン上で稼働させるには、ロボット本体に加えて周辺機器の購入が必要なため、初期費用が掛かります。また、導入後は不具合が生じないように定期的なメンテナンスが必要なため、継続的な保守費用が必要です。
オムロンでは、バリ取りに使用できる産業用ロボットや、ティーチングが容易かつ汎用性の高い協働ロボットを取り扱っています。
また、バリ取り工程を自動化するには、ロボット本体だけでなく、高い精度を実現するための力覚センサやカメラなど、周辺機器の取り揃えが必要ですが、オムロンは、周辺機器や安全機器などのさまざまな制御機器を取り揃えており、ライン全体の自動化をご支援します。