協働ロボットとは何か?定義や導入メリット、事例を解説
労働力不足や後継者不足に悩まされている製造業において、省人化・省力化による生産能力と品質の向上を目的として「協働ロボット」の導入が進んでいます。ここでは、協働ロボットとは何か、一般的な産業用ロボットとは何が違うのかなどの基礎知識や、「協働ロボットで実現できること」について解説します。
協働ロボットとは
協働ロボットは、文字通り「人と"協"調して"働"く」ロボットであり、当社においては「人と機械の新しい協調」を実現するロボットとして協調ロボットと呼んでいます。英語では「Collaborative Robot(s)」となり、しばしば「Cobot(コボット)」と略されます。協働ロボットは、従来の産業用ロボットと同様に、人が行っていた単純作業や反復作業を代替することと併せ、人と直接、モノや治工具などの受け渡しを行って、協働作業ができることが特色です。
製造業現場へのロボット導入の課題
従来、産業用ロボットは、人と同じ空間での協働作業、協調作業を行うことができませんでした。産業用ロボットは非常に高速に稼働し、かつ甚大な力を発揮します。そのため、人がロボットの可動範囲内に不用意に近づいてしまえば、深刻な事故につながりかねませんでした。一般的な産業用ロボットを安全に稼働させるためには、安全柵を設置し、人の作業エリアとの隔離が必須であると「労働安全衛生規則(第150条の4)」で定められています。
産業用ロボットの導入に際しては、ロボット本体のサイズと併せ安全柵を設置するエリアも加味しなければならず、工場内の作業空間が限られている、あるいは生産ラインが小規模である場合、導入が困難でした。国土が狭い日本、特に地価が高いために敷地が狭くなりがちな都市部近辺の工場では、占有床面積がネックになることもありました。
一方、協働ロボットは、人がそばにいるときは安全な速度と力で動作し、万が一人と接触した場合は安全に停止する。人がいない場合には、産業用ロボットに近い速度で動作できることから、その導入においては、厚生労働省が定めるリスクアセスメント*を実施した上で、安全柵の設置が不要になります。安全柵が要らず、かつ機体自体もコンパクトかつ軽量であるため、限られた作業空間や小規模な生産ラインにも導入可能です。
- *労働安全衛生法第28条の3による危険性等の調査
協働ロボット導入のポイントやメリット
協働ロボットは、さまざまな場所に設置して、人と協調した作業が行えることから、人とロボットそれぞれの短所を補って作業することや、お互いの長所を活かした相乗効果が狙えます。
協働ロボット導入のポイントやメリット
以降では、協働ロボットがものづくりの現場でどのように活躍しているのか、例を紹介します。
自動機への材料投入と取り出し(マシンテンディング)工程の自動化
生産ラインや加工機、検査機などの自動機への材料投入、取り出し一連の作業を、協働ロボットに任せることが可能です。加工機の例では、部品をトレイから取り上げて把持し、さらに装置の扉を開け、部品をセットして扉を閉じ、加工が終わったらまた装置から部品を取り出すまでといった、複雑な工程をこなすことができます。人手不足の解消、単純作業からの解放、労災リスク軽減といった効果が狙えます。
導入事例:株式会社有川製作所様 プレス機への製品セット・取り出し作業の自動化『ロボット導入で省人化と企業魅力度を向上』機器の組み立て工程の自動化(ねじ締め作業)
協働ロボットは、その時々の柔軟な判断や、複雑で細やかな作業が要求される、多品種少量生産の自動化にも最適です。ねじ締結の作業は繰り返し作業になり、締め付けトルクの過不足や、ねじ浮き、ねじ締め忘れなどが起こりやすくなります。また、同じ姿勢を長い時間維持し、手先を使う作業を継続すると、身体にも負担がかかります。人の集中力や体力には限界があり、体調面からも長時間の作業により作業ばらつきが発生し、製品品質が安定しないリスクがあります。そこで、協働ロボットにねじ締め作業を任せて自動化すれば、作業品質を安定させることが可能です。集中力が必要な上に身体にも負担がかかる、長時間の単純作業から人を解放することも可能です。
導入事例:大手部自動車品メーカ様『協調ロボットによるねじ締め工程の自動化』オムロンの協調ロボット*「TMシリーズ」は、直感的に操作可能な専用ソフトウェアやダイレクトティーチング機能により、簡単に立ち上げが可能です。さらに、高性能カメラと位置認識システム「TMランドマーク」を搭載しており、必要な場所へロボットを移設し、複数の作業を指示することもでき、その都度の再ティーチングも不要であるため、配置変えや新たな作業の実行に柔軟に対応できます。段取り替えにも対応可能で、多品種少量生産も得意です。また、ロボットハンドを取り揃えており、様々な動作を自動化することが可能です。さらに、センサ、コントローラや安全機器などさまざまな制御機器も取り揃えており、導入する作業内容に合わせたSIerとの連携により、ライン全体の自動化をご支援します。
- *オムロンは、「人と機械の新しい協調」を実現するロボットとして、協働ロボットの商品名称を「協調ロボット」としています