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9.最適サイクル制御の力率改善効果
「形G3ZA」のハロゲンヒータへの適用事例

片山 史将、今村 隆司

弊社では、「簡単で高品質な温度コントロール」を目指して製品・技術の開発を行っている1)。弊社では、出力機器を多種取り揃えている。その中で今回取上げるのは、2006年12月にリニューアルした「形G3ZA」である。本器は、SSRと組み合わせることにより、負荷への電力供給を制御できる電力調整器である。電力調整器(電力供給を制御する装置の意味)は、さまざまな制御方式が存在し、それぞれ特徴がある。今回取り上げる最適サイクル制御は力率改善効果がある。本稿では、形G3ZA(最適サイクル制御)がもたらす「力率改善効果」を形G3PX(位相制御)との比較により適用事例と共に紹介する。

11.樹脂成形と力率

1-1.エネルギー管理と樹脂成形

製造業にとって製造にかかるエネルギーを削減するのは、コスト削減の観点から重要であるが、特に京都議定書の締結後は、その重要度が加速している。樹脂成形では樹脂を熱加工することから大きな電力、すなわち、エネルギーを消費するのが一般的であるので、本誌読者におかれても、多くの方がエネルギー削減に取組まれていることと推察する。

1-2.力率改善の重要性

特に、ある一定以上の大きなエネルギーを消費する「エネルギー管理指定工場」2)では、「毎年度、経済産業省令の定めるところにより、エネルギーの使用量とその他エネルギーの使用状況ならびにエネルギーを消費する設備の設置及び改廃状況に関し、経済産業省令で定める事項を主務大臣に報告しなければならない」2)という定期報告の義務がある。力率は、その報告内容の一部に含まれている項目であり、エネルギー使用効率を表す指標としては重要なものである.

  最適サイクル制御 位相制御
出力電流
波形例
最適サイクル制御 位相制御
説明 半サイクル毎にOn/Offする制御方法 半サイクル毎の同通時間(点弧角)、On/Offする制御方法
長所 ・高調波ノイズを発生させ 難しいため、位相制御のような対策が不要であり、全体的なコストが下がる。
・位相制御に比べて力率が良い。
・高精度で小さな単位での制御が可能
短所 ・位相制御のような細かい制御ができない。
・細かい制御ができないため、ハロゲンヒータのような負荷に対しては、突入電流が流れやすい。
・高調波ノイズの発生により、周囲の電子機器を誤動作させる可能性があり、対策が必要。
・最適サイクル制御に比べて力率が悪い。

表1 最適サイクル制御と位相制御の特徴

2.力率改善の方策

2-1.最適サイクル制御の導入

現在、電力調整器の多くは、位相制御で制御する。多様な特性のヒータがあり、それらの出力特性のリニアリティ確保や安全性の面から高精度な電力調整を必要とするからである。表1は、位相制御と最適サイクル制御の特徴をまとめたものである。表1より、最適サイクル制御にも、位相制御にも長短はある。しかし、エネルギー管理の視点から考えると位相制御より最適サイクル制御の方が、力率が良いという大きなアドバンテージがある。

2-2.最適サイクル制御の適用

表1の通り、最適サイクル制御にも、位相制御にも長短はあるので、位相制御から最適サイクル制御への切替は、いくつかの注意点がある。以下、本稿では、ハロゲンヒータを例として、これらについて紹介していく。注意点として以下2点が挙げられる。
1)制御開始時に突入電流が流れる。
2)低操作量で制御している際にヒータOffの時間が位相制御に比べて長い。
1)の突入電流の課題は、ハロゲンヒータのような、抵抗値が温度に依存するヒータで発生する。これには、ソフトスタート機能を付け、突入電流の抑制を試みた。「5.ハロゲンヒータ制御」でその効果の検証実験を行った。
また、2)の低操作量時のヒータOff時間の影響についても、検証を行い、影響度合いを確認した。

3.ハロゲンヒータとは

ハロゲンヒータとは、ハロゲンランプから放射される光を熱として利用するヒータである。このヒータは、一般的に、電力調整器で制御される。その理由の一つにハロゲンヒータ内部抵抗の変化がある。ハロゲンヒータにはタングステンが使われているがタングステンの抵抗率は、室温では、非常に小さく、高温になるほど大きくなり、温度依存する。

たとえば、後述する実験において使用したハロゲンヒータでは、定格12Aに対し、約140Aの電流が流れており、温度の違いによりハロゲンヒータ流れる電流が約11倍にもなっている。

4.制御方式が選択可能な電力調整器

形G3ZAは、以下3つの制御方式が選択できる電力調整器である。RS-485通信を備えており、上位機種として、形EJ1(多点温度調節器)やPLCなどを接続できる。
1)最適サイクル制御
2)ソフトスタート最適サイクル制御
3)3相最適サイクル制御

5.ハロゲンヒータ制御

弊社では、さまざまなヒータに対して、簡単に、そして、安心して形G3ZAを使用してもらうために、「ソフトスタート最適サイクル制御」を開発した。

ここでは、実際に、特殊なヒータの代表としてハロゲンヒータを使用し、ソフトスタート最適サイクル制御における実験を行い、以下3点の検証を行った。その結果を紹介する。
1)制御開始時の突入電流の抑制効果
2)低操作量時のOff時間が温度に与える影響
3)最適サイクル制御の力率改善効果

5-1.実験条件

図1に実験のシステム構成を示す。上位(G3ZAに出力を指示する) 機種に形EJ13)を用い、形EJ1からRS-485通信を使用し、形G3ZAへ操作量を送信し、出力操作量をコントロールしている。操作量の信号をシリアル伝送することで省配線を実現できる。SSRには、ゼロクロスありSSR(形G3PA)を使用している。

図1 G3ZAシステム構成図例
図1 G3ZAシステム構成図例

5-2.実験方法

ハロゲンヒータを同操作量で、位相制御と最適サイクル制御を行い、電流波形、温度波形、有効電力量、無効電力量の4点を計測し、比較を行った。

最適サイクル制御の代表例として形G3ZAを、位相制御の代表例として形G3PXを使用した(いずれも弊社製電力調整器)。

5-3.実験結果

ハロゲンヒータの制御実験を行った結果は、以下の通りである。

(1)突入電流の抑制実験

図2は、最適サイクル制御、位相制御、ソフトスタート最適サイクル制御でハロゲンヒータを制御し、突入電流を計測したものである。従来の形G3ZAで行ってきた最適サイクル制御のみでは、突入電流のピークは 約140Aに達している。それに対し、ソフトスタート最適サイクル制御では、位相制御(ソフトスタート付)突入電流のピーク値はいずれも 60A強となり、位相制御並に突入電流のピーク値の抑制ができていることが確認できる。

図2 突入電流の削減効果
図2 突入電流の削減効果

(2)低操作量時のOff時間の影響

図3は、操作量(MV)=10%において電力調整器(形G3ZA、形G3PX)を使い、最適サイクル制御と位相制御でハロゲンヒータの制御を行った際の整定時1,500s間の温度波形である。操作量10%では、Off時間は、180ms(50Hzの場合)となる。

各電力調整器に同じ操作量を送り、ハロゲンヒータを制御した。図3から見ても分かる通り、最適サイクル制御でのハロゲンヒータの温度揺れ幅は、最大0.6℃程度、位相制御でのハロゲンヒータの温度揺れ幅は、最大0.5℃程度であった。したがって、ほぼ同等と言える。

これは、ハロゲンヒータの特性において、最適サイクル制御のOff期間では、1℃以上冷めることはなく、次のOn期間がくるからであると考えられる。また、形G3ZAと形G3PXの整定温度の差は、それぞれの出力特性の違いにより、同操作量で制御を行っても、ヒータに与える電力量が異なるためである。

図3 低操作量時における最適サイクル制御と位相制御でのハロゲンヒータの温度波形(MV=10%)
図3 低操作量時における最適サイクル制御と位相制御でのハロゲンヒータの温度波形(MV=10%)

(3)力率改善効果

図4は、最適サイクル制御と位相制御で、ハロゲンヒータを運転したときの無効電力量と有効電力量の関係である。縦軸を無効電力量、横軸を有効電力量としてある。

同じ有効電力量で、それぞれの無効電力量を見ると、最適サイクル制御の方が位相制御を下回っていることが確認できる。有効電力が同じ場合、無効電力が少ないほうが力率が良い。したがって、最適サイクル制御の方が位相制御に比べて、力率が良い。

図4 最適サイクル制御と位相制御の有効電力量と無効電力量
図4 最適サイクル制御と位相制御の有効電力量と無効電力量

6.結論

本稿では、ハロゲンヒータを代表例として力率改善効果の検証をソフトスタート最適サイクル制御で行ってきた。その結果、表2の結果を得た。

したがって、以下2点の結果が言える。
1)最適サイクル制御は位相制御よりも力率が良い。
2)ハロゲンヒータへの適用性が高い。

No. 検証内容 結果
1 突入電流の抑制 ○(抑制される)
2 低操作量時のOff時間が温度に与える影響 ○(影響はない)
3 力率改善効果 ○(改善する)

表2 形G3ZAによるハロゲンヒータの実験結果

7.今後の展望

今回は、ハロゲンヒータを代表例として力率改善を検討してきた。しかし、最適サイクル制御による力率改善効果は、ハロゲンヒータに限られたものではないと考えている。特に、今回、形G3ZAに搭載された「ソフトスタート最適サイクル制御」を使用すれば、さまざまなヒータ(負荷)に最適サイクル制御を使用することが可能になると考える。弊社では、今後、さまざまなアプリケーションに対し最適サイクル制御による力率改善効果の検証に取組んでいきたい

参考文献

  • エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)
  • 田中均 ほか、傾斜温度制御法を搭載した温度調節器形EJ1の開発、OMRON TECHNICS Vol.47 No.1(通巻155号)2006