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4. DeviceNet 対応調節計の開発 デジタル調節計における
DeviceNet 対応設計について

片岡 裕樹、米田 元、若林 武志

Development of DeviceNet-compatible Digital Controller
Designing DeviceNet-compatible Digital Controller

Yuki Kataoka, Gen Yoneda, Takeshi Wakabayashi

近年、製造業の現場において、省配線、情報化などを目的とし、統一された通信ネットワーク上に各種機器を接続する傾向にある。調節計もその例に漏れず、オープンネットワーク対応の商品の需要が高まりつつある。

今回、デジタル調節計、形E5EKへの I/Fソフトの追加および、HMI機能の改造を行い、形E5EKのCompoBus/D(DeviceNet)対応を行った。

本稿では、このCompoBus/D通信に対応するために追加した機能の一部を紹介する。

1.まえがき

近年、製造業では生産コストの削減、競争力の強化を目的とした生産ラインの情報化が進みつつある。具体的な例としては、オープン化されたネットワーク上に各種機器(センサ、バルブ等)を接続することによる、省配線ネットワークがあげられる。現在これらのオープンネットワーク上に接続される機器はセンサ、バルブのほかインバータなど多種多様なものが各社から市場へと投入されつつある。

調節計(温度調節器含む)も例外ではなく、オープンネットワーク上での通信への対応が市場からの要求として高まりつつある。従来調節計では上位側との通信にRS-232C,RS-485の通信方式が用いられており、通信を行うに当たっては、各社の通信仕様にしたがったソフトの開発が不可欠であった。このため、システムの構築を行う際のソフト開発がの工数も増大する傾向にあり、簡易に各種データのやり取りができる機器の必要性が高まってきている。

今回、形E5EKデジタル調節計の改造を行い、

  • オープンネットワークでの通信に対応する
  • システムの構築がプログラムレスで行える

ことを基本仕様とした、DeviceNet対応デジタル調節計、形E5EK-AA2-DRTを開発した。本稿では、今回付加した機能に重点をおいて、特徴を説明する。

2.全体の構成

2.1 システム構成

図1 システム構成
図1 システム構成

形E5EK-AA2-DRT(以降EK-DNETとする)のシステム構成を図1に示す。EK-DNETでは、DeviceNetのメモリ資源(PLCのチャネル:以降CHと表記する)を1台につき最大32個(読出し16/書込み16)使用し、内部パラメータを上位側(マスタ)とやり取りする。

2.2基本原理

EK-DNETのソフトおよびハード構成を図2、図3に示す。今回の開発では、従来の形E5EKに対し、ハード、ソフトともにDEETI/F部分を追加した。さらに、ソフトでは、パラメータ処理部の改造、EDSによるサポートを、ハードではMS/NS LEDを追加した。

図2 ハード構成
図2 ハード構成

図3 ソフト構成
図3 ソフト構成

3.技術内容

3.1割付け機能の追加

調節計は多くのパラメータをもっているので、その通信機能には多様なデータの授受が必要とされる。従来開発されたDeviceNet対応機器の多くは、使用する上位側のメモリ資源を固定しているものが大半を占めるため、仮に調節計でこの方式を採用すると

  • マスタのCHをユーザの必要以上に占有する。
  • 使用CH数が多いほど、通信時間が長くなる。

という課題が発生する。このことは特に、複数台の接続を行った場合に顕著となり、ユーザにとって不経済となる。

EK-DNETのパラメータは、運転中に常時更新できるものと、立ち上げ時にのみ更新が行われるものの2つがある。これら2つのパラメータ群の数を浮ノ示す。通常、ユーザが必要とする(読出し/書込みを行いたい)パラメータはユーザ/アプリケーションによりそれぞれ異なる。EK-DNETにおいてマスタと通常やりとりを行うパラメータは、浮ノ示した40個が対象となる。そこで、EK-DNETではユーザの設定により、ダイナミックに使用するメモリ資源の数を変更でき、また自由にCHに必要なパラメータのみ割付けられる設定機能を追加した。概念図を図4に示す。この機能により、個々のユーザで必要最小限のマスタCH占有でネットワークを構成できるようになった。

普@パラメータ群と個数

パラメータ内容 個数
常時通信から更新されるもの 40
立ち上げ時のみ更新されるもの 96

調節計のパラメータには読出し専用のパラメータ、書込み専用のパラメータ、読出し/書込み両方のパラメータが存在する。そのため、読出し割付け時に書込み専用パラメータ、また、逆に書込み割付け時に読出し専用パラメータを設定しようとした場合、警告表示として表示の左端に読出し/書込みを表すキャラクタを表示するHMI仕様とした。また、同じパラメータの重複割付けを回避するため、これもキャラクタによる警告表示を行うHMI仕様とした。例を図5に示す。

図4 CH割付け
図4 CH割付け

図5 異常割付けと警告表示
図5 異常割付けと警告表示

3.2コンフィグレータによるパラメータの設定

3.1で述べたように、調節計には多くのパラメータが存在する。調節計に付属しているキースイッチからこれらのパラメータを設定することができるが、煩雑なキー操作よりも簡易な操作のパソコン設定ツールがあれば便利である。

ところが、使用する機器に応じて設定ツールも一品一様で存在するため、同一のネットワークに接続されていながら設定ツールを統一できなかった。オブジェクト指向で記述されたDeviceNets仕様には、設定ツールの I/Fを盛り込んでいるため、異なる機器の間で設定ツールを共通にすることができる。
EK-DNETでは

  • パラメータを設定・モニタできるように、ペンダ固有のオブジェクト仕様の組み込み
  • 規定したペンダ固有オブジェクトに対応するEDS(Electronic Data Sheet)の作成を行った。
 

EDSとは、パラメータの設定情報を、DeviceNet仕様に基づいて、一定のフォーマットのテキストファイルに編集したものである。EDSは各ペンダから提供され、ODVA(Open DeviceNet Vendor Association)のホームページからダウンロードできる。

コンフィグレータツール(パソコンツール)にこのEDSをインストールすると、コンフィグレータツールからEK-DNETのパラメータ設定が可能となる。また、DeviceNet仕様に基づいて作成されているため、他メーカのコンフィグレータツールにおいてもEDSをインストールして、EK-DNETのパラメータ設定ツールとして活用することが可能になる。

ED-DNETのEDS例を図6に示す。このEDSでは、2つのパラメータを記述している。パラメータ1には数値設定、パラメータ2には文字列選択の設定 I/Fを指定しているコンフィグレータにEK-DNETのEDSをインストールさせたときの、パラメータ1、パラメータ2、それぞれの設定 I/Fの例を図7、8に示す

3.3MS/NS表示LED機能

図9 MS/NS表示LEDの構成
図9 MS/NS表示LEDの構成

EK-DNETでは、本体の状態を示すMS(Module Status)LED表示と、通信の状態を示すNS(Network Status)LED 表示をフロント面に配置し、各種異常状態を判別できるようにした。上記2種のLED表示は、各々赤/緑の2色発光のLEDで構成され、判別できる異常状態とそれに対応するLED表示はDeviceNetの基準に適合している。EK-DNETは従来の形E5EKとの共用設計である。したがって、フロントケースは形E5EKと共用し、MS/NS表示LEDは、フロントケースの未使用のキースイッチ押下用穴のある位置に配置した。密接した2個のLED光のお互いの干渉を小さくしてフロント面まで導くために、図9のように、基板に実装した面実装LEDの光を新規設計した導光板によりシート面上まで導く構成とした。こうして共用設計することにより、外観的にも従来の形E5EKのシリーズ品としての統一感を損なうことなく、MS/NS表示LEDを追加できた。これらのLED表示により、ユーザが各種異常状態を盤面から迅速に識別し、対処することが可能となった。

4.結果

形E5EKのシリーズとして、DeviceNet 対応調節計を開発した。これにより、

  • プログラムレスでのシステム構築が可能となる。
  • ユーザのニーズに合わせた読出し/書込み可能なパラメータの選定が可能となり、オープンネットワークに簡易に接続して、データのやり取りができる。

5.あとがき

世界初の「DeviceNetを搭載した調節計」を実現することができた。また、コンポ調節計が簡単にオープンネットワークに接続できるようになり、生産ラインの情報化やデータ管理のニーズに応えることができるようになった。これにより、DeviceNet機器を用いたアプリケーションの広がりとともにDeviceNet機器全体の販売量の拡大が期待できる。

今後、プロセスコントローラに対するDevice Net仕様に注目しながら、さらなるDevice Net商品開発につなげていきたい。

執筆者紹介

片岡 裕樹 Yuki Kataoka

産機コンポ統轄事業部、
監視制御事業部開発室、
1989年神戸大学大学院工学研究科電子工学専攻修了、
同年入社、専門:ソフトウェア

米田 元 Gen Yoneda

産機コンポ統轄事業部、
監視制御事業部開発室、
1992年大阪工業大学大学院修士課程経営工学専攻修了、
同年入社、専門:システム工学、日本ファジィ学会会員

若林 武志 Takeshi Wakabayashi

産機コンポ統轄事業部、
監視制御事業部開発室、
1990年大阪府立大学工学部機械工学科卒業、
同年入社、専門:ハードウェア