産業用PCによる制御と情報の融合 前編 ~製造業を取り巻く
市場の変化~

高い信頼性と拡張性を兼ね備えた産業用PC(以下IPC)は、製造現場データの可視化やデータ処理、計測、制御に最適なアーキテクチャーとして注目されています。ここでは、その理由・背景などを市場の変化や他のアーキテクチャーとの比較などで明らかにしていきます。

産業用PCによる制御と情報の融合

製造業を取り巻く
市場の変化 
~カギは "IoT" と "Easy To Use"~

実際に使っているエンドユーザの趣味趣向の変化によって、市場も変化しています。

消費者の傾向と製造現場の関係

従来のユーザは、価格重視、限られた情報量で充分と言う姿勢でしたが、最近では、値段はそこそこだけど、より安全で高品質、選択肢は多い方がよく、扱えるデータが非常に大きいものへと変化しています。

消費者の傾向と製造現場の関係

スマートフォンだと・・・

例えばスマートフォンでは、従来のスマートフォンは四角いフォルムで箱のように作られて、限られた情報にしかアクセスできませんでした。それが現在では曲線のフェースを持っていたり、非常に手触りいい質感だったり、大容量のメモリを持っていたりというものに進化しています。

スマートフォンだと・・・

当然、こういった製品を作りこむためには、装置や製造現場も変化しなければなりません。従来はひとつの機械でひとつのものを製造していましたが、質感が複雑になると、加工工程が複数になり、異なる機械を複数つなげてライン化するようになります。

すると異なる種類の機械同士のつなぎが上手くいかず、これがボトルネックになって工場の生産性が落ちてしまいます。そのため、機械をうまく動かすよりも、水平方向のデータをうまくハンドリングすることが重要となるのです。

一方で、垂直方向のデータ、つまり工場全体のデータを最適化させることで生産性を向上させようとする動きもあります。これが、いわゆるIoT化の動きです。現場データをうまく上位層に送ることで、生産管理を最適化し工場の生産性の向上を目指します。

IoTでは水平方向と垂直方向のデータの動きをうまく扱うことが必要です。また、それぞれの装置についても、直感的な操作性やスキルの低い人でも使える操作画面、美しいHMIといったEasy to Use の作り込みも求められます。

業界垣根の喪失 
~コントローラの
ボーダレス化~

次に、市場の変化についてご説明します。次の図はどんな業界でどういったコントローラが使われているかを示したものです。

業界別の主なコントローラと
その特徴

石油・化学プラントや電力といった大きな設備では、Distribution Control System(DCS)と呼ばれるものが使われており、国防・高度医療などの特殊用途で使われるところでは、専用や特殊なコントローラが使われています。

そして、オムロンが最も注力している現場の製造活動に使うFactory Automation(FA)の領域では、PLCが非常に大きなシェアを占めています。素材の製造や生活支援部分では、ボードやPCそのままが占めている領域です。

これらの領域の間には、見えないボーダーがありました。しかし、現在は、ボードやPCの性能が向上し、技術が発展して、このボーダーがあいまいになってきています。

業界別の主なコントローラとその特徴

業界垣根の喪失 
~PAC,IPCの台頭~

製品製造(FA)の領域では、従来はPLCがあれば、機械が動かせて効率が上げられていました。ところが、情報という切り口からどんどんPCが使われるようになってきました。PLC自体も機械を動かすだけのものから、情報を扱えるProgrammable Automation Controller(PAC)などに進化しています。

さらに、IPCがFA現場に入ってくる状態になっています。例えば、後でご紹介するオムロンのIPCは、PLCと従来のIPCの良いところを併せ持っていて、PLC並みの耐環境性、長期安定供給、高いデータハンドリング性を持っています。

業界垣根の喪失 ~PAC,IPCの台頭~

PCアーキテクチャの進化 
~現場に浸透するPC~

こうした変化は「従来のPCはFA現場では使えない」という常識が崩れてきていることを示しています。

次の図はPLC、産業用PC、オムロンのIPCを比較した図です。

前述の様にPLCは機械を動かすことに非常に優れています。FA現場で使いやすく、小さく、コストメリットがある一方で、データハンドリング、ネットワークについてはメモリ容量の制限などで弱い部分がありました。

これに対して、産業用PCは情報を扱うことが非常に得意です。メモリ容量やストレージ容量も非常に大きく、大容量データを扱うことができます。その反面、I/O制御が上手く動かせなかったり、2年たったら交換部品が無くなるなど長期安定供給に弱点があったりしました。

    PCアーキテクチャーは現場で
制御が使えるようになった
     
  動的制御 静的制御 動的・静的制御
  PLC 産業用PC オムロンIPC
制御 得意 不得意 得意
情報 不得意 得意 得意
  標準言語、標準バス対応でPC機能も取り込む 長期供給と現場環境対応で現場で使用可能 4種類のタイプでPLCと産業用PCの良いとこ取りで、制御と情報処理の融合を図る

オムロンのIPCは、PLCと産業用PCの良い部分を併せ持っていて、PLC並みの耐環境性、長期安定供給、それに加えてデータ処理をしっかり行えるといった新しいコントローラとして作り込んでいます。

項目 PLC 産業用PC オムロンIPC
耐環境性(現場対応)
機器構成の充実度 ×
サイズ
I/O拡張性
演算能力
データ保存量
ファイル操作 ×
ネットワーク接続
開発環境
代表的なアプリ ディスクリート、
モーション制御
プロセス制御、
SCADA
ディスクリート、
モーション制御、
プロセス制御、SCADA
保守性

ここまで見てきたように「制御進化と情報革命の融合」というのが大きなキーになって来たのがお分かり頂けたと思います。